第十二回
猫の春便り

 そろそろ猫のシーズンです。
 つまり発情期がおとずれるということです。診察室でも「さかりが来た」「猫がへん」という問い合わせが多くなります。それは日照時間が伸びて発情を起す季節繁殖動物であるからで、そのため毎年この時期が繁殖の季節となるのです。

 オス猫は発情したメスをめぐってオス同士で抗争したり、発情したメスを求めて遠出したりすることがあります。室内やその周辺では、尾を挙げたまま振動させて、柱や壁に尿をかけるマーキング、或いはスプレーと呼ばれる性的行動をとります。これは精巣ホルモンのアンドロジェン及びエストロジェンによるもので、去勢によって90%減少させられます。しかし、マーキングは多頭飼いや他所の猫の接近した時などに反発して行うこともあるので、即、去勢してしまうのではなく、よく観察して原因を見つけてあげたい時もあります。

 猫は他の動物とくらべると「尻癖」が良く、トイレの優等生でもあります。それでも上記のマーキング以外に、疾病やトイレが気に入らなかったりして意識的に排泄することがあります。最近ではこれを問題行動として取り上げられることもありますが、猫にしてみれば必死の「訴え(アピール)」でもあるのです。

 猫は膀胱炎になると残尿感によって常に排尿をしたがります。そのためトイレ以外の場所でも排尿してしまうことがあります。また、やたらとトイレにしゃがんでいる時間が長くなったり、頻繁にトイレに行く様になります。さらに尿石症になると全く排尿されなくなり、尿毒症に発展することもあるので、その様な場合は早急に動物病院で診察を受けるべきです。

 猫はトイレが汚れていたり、真新しくても気に入りません。また、落ち着かない場所にトイレが置かれていたり、猫砂が不潔であっても気に入りません。従って猫砂は常に清潔に保ち、排泄された尿や便は速やかに始末して洗浄しておかなければならないのです。人間には気付かない臭いでも猫は敏感に感じます。そうした時はトイレ容器などに熱湯をかけて臭いを取り除くと効果的です。猫トイレを設置する場所は、静かで安心出来る場所が好まれます。特に部屋の隅、人の影響が及ばない場所を好むのです。

 毎日の排泄からでも、猫の様態を観察することが出来ます。その習性を理解することで、問題が問題でなくなる場合もあります。飼い主も出かける事が多くなるこの時期、その直前にでも飼い猫が何か訴えてないか聞いてあげられたら、きっと猫も安心することと思います。
「ドギー&キャッツ」 2004年3月号掲載

第13回に続く

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