第3回
猫とアメフラシ

●起きている時間の一割は毛づくろい

 貝殻はないけど巻き貝の仲間の軟体動物、アメフラシ。
 このアメフラシに悪さをすると陽気がくずれるという言い伝えがあります。大量に紫色の体液を煙幕のように吐き出すその様子が、一天にわかに覆う暗雲を連想させるからでしょうが、実はなんの根拠もありません。
 ところが、生き物の様子から天候を占うものの一つに、「猫が顔を洗うと雨が降る」という言い伝えが世界各地にあります。
 日本では地域によっては逆に「晴れる」といわれたり、中国では来客の前兆といわれたりしています。また雨がほとんど降らないゴビ砂漠で飼われている猫も顔を洗います。
 獣医学書にも書かれていないこの行為はいったい何なのでしょうか。

 そもそも「猫が顔を洗う」行為は毛づくろいの一環で、人間が顔を洗ってさっぱりするものとは異なります。生後6週齢の頃からほとんどの猫に見られます。
 手順は顔から始まって、背中、横腹の順で舐め、更に肛門や指まで徹底的に舐めることもあります。起きている時間の一割は毛づくろいに費やすといわれています。それだけ体毛を大切にしなければならない理由があるのです。
 一つは汚れや臭いを取除くため。
 二つはマッサージによって副交感神経を刺激してリラックス。
 三つは気持ちの高ぶりを抑える転移行動。
 すべては体毛をベストな状態に維持することに結びつきます。


●地域限定の天気予報

 では、なにゆえにベストを目指すのか。
 猫が毛づくろいするのは、微細微妙な変化に即応できるよう調整しているからなのです。
 特に梅雨から夏にかけては、ノミの発生や湿度の上昇など、とかく感度が鈍りがちのセンサー調整に追われ、つまり、毛づくろいする機会も多くなります。

 「雨が降る」という言い伝えに地域差があるのは、毛づくろいに個体差があるからです。
 それぞれ微妙に違う変化を読み取れば、猫から天候の変化を教えてもらえるはずです。例えば手入れの時間が長くなったり、頭を大きく振るなどです。そして顔を洗う仕草も通り一遍のものから、極端に丁寧になったりと、微妙に変化します。
 お宅のコのそうした毛づくろいの変化と天候の変化を記録することによって、地域限定の天気予報も可能になるかもしれません。

 昔の人は農作物と雨の関係を特に大切に考えていたはずです。その大切な雨を予知してくれる猫の仕草を、今の人々以上にしっかりと観察していたのでしょう。
「ドギー&キャッツ」 2003年6月号掲載

第4回に続く

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