第五回
猫と入道雲

 夏の暑い日、暖められた空気が上昇して、もくもく大きくなる雲を積乱雲、または入道雲と呼んでいます。
 この雲の下では夕立を発生させたり、雷を発生させたりします。

 こんな暑い日の猫は、上手い程涼しい場所を見つけて夕立や雷が起こるまで寝ているものです。この時の寝相はたいがい腹を出した無防備な格好をしているので、ついヒゲや耳に触れて反応させてみたりしていませんか。

 猫は1日約16時間睡眠をとっており、この内の12時間はうたた寝で、残り4時間の中に30〜60分おきのレム睡眠と呼ばれる深い睡眠をとっていると言われています。
 その一見無駄そうな猫のうたた寝ですが、暇やさぼりからではなく、エネルギーの温存をしている目的があるのです。
 そのエネルギー温存のためのうたた寝の時、実は家庭で出来る健康診断のチャンスなのです。

 基本は体温、呼吸、糞便、尿など。また、腹を走るノミを見つけられるかも知れません。
 猫の体温は通常38.0〜38.8℃。個体差があるので平常時のものをあらかじめ確認しておくと良いでしょう。今では即座に検温できる小児用の電子体温計を利用して耳から測る事もできます。
 呼吸は胸の動きで数えられ、一分間で20〜30回。脈拍は股間に指をはさめば測れます。安静にしている時の脈拍は1分間に110〜130回。怪我をしていたり興奮していれば、脈拍はそれ以上に上がってしまいます。
 こうした正常値を普段から知っておく事によって、体調の変化に気付いてあげられます。

 日中の行動に異変を見つけた場合も、このうたた寝時に確認してみると良いでしょう。
 例えば、起きている時に盛んに舐めていた個所を確認し、腫れていたり痛みがあれば外傷が考えられます。
 また、前肢で口を掻こうとしたり、ついばむ様な食べ方をしていたら口唇を少しめくり、薄ピンク色を呈した歯肉が歯肉炎となっていることがあります。
 歯がぐらつく様であれば細菌感染を起しています。その様な時は獣医師に相談すべきです。
 また、頭を頻繁に振ったり、盛んに掻くようなら、耳道や垢を確認してみましょう。
 特にミミダニであればその痒みは一際で、ルーペと明かりで白い小さなミミヒゼンダニが動くのを見付けることもあります。ただ、あまりしつこく耳に触れると嫌がって何処かに行ってしまうのでほとほどにしておきたいです。
 先に懐中電気で耳の穴を照らしてから確認するのも良い方法です。

 鼻が詰まって呼吸が苦しそうなら、こよりを作って鼻の穴をこすり、くしゃみと共に鼻水を飛び出させます。馬鹿馬鹿しい方法ですが、鼻をかめない猫には効果的です。
 猫は臭覚が利かなくなっただけで食欲が落ちますから、鼻詰まりはとても困まるのです。

 入道雲の発達は抑えられなくても、猫の病気はこうした健康診断によって抑えることが可能です。もし暑い日に腹を出している猫を見たら是非、健康診断を思い立ってみて下さい。
「ドギー&キャッツ」 2003年8月号掲載

第6回に続く

谷中猫TOPへ