背戸画廊

 

福島県いわき市にある夏井川の支流、江田川に「背戸画廊」と呼ばれる渓谷があります。この渓谷に一風変わった名前を付けたのは詩人、草野心平です。

穏やかな山並みが続く阿武隈山中に存在するとはいえ、大断層、双葉断層帯の中にあるためか、侵食された花崗岩の断崖の中、滝や淵が連続して存在し、まさに深山幽谷の雰囲気が味わえる素晴らしい渓谷です。とりあえず遊歩道はついているものの、ゴルジュ帯もナメ状の地域も険悪な状況下にあり、御気軽、御気楽なハイキング気分では到底追い返されてしまうような遊歩道ですよ。

遡行の為の沢道具や特別な技術は要らないまでも、山慣れているか、腕力、足腰の強い人向きの遊歩道ですね。数年前の厳冬期に凍りついた沢道を歩いたことがあったのですが、その時は石で氷を砕きながら足場を作って遡行しました。今年は冬の間、少々楽をしすぎたので、ゆるみ始めた腹の筋肉を少ししめようと、春の花を探しがてら、久々に沢歩きをしてみたのですが・・・・・予想どおり、この渓谷で花を愛でるには少し時期が早かったようです。しかし、そんな状況下で見つけたわずかな山野草達は花壇や温室、植物園などで過保護に育てられた花などよりも遥かに美しく、とても素直に季節を語っているように思えました。

何よりも、ドジを犯せばヒトさへも凍死しそうな春まだ浅い山深い渓谷の中で力強く花を咲かせているのですから・・・・・

 

              

源頭部から吹き付ける冷たい風と水の音だけが支配する瀬戸画廊の風景でした。