“双子”のドングリ A

 「“双子”のドングリ@」で、1つの殻斗(ドングリの“おわん”)に2個のドングリが入っているアカガシのドングリを紹介しました。 また、「3果のスダジイ」では、兵庫県三田市にお住まいの宮国さんに教えていただいた“3つ子”のスダジイを紹介しています。 そして「3果のスダジイ」のなかで、大阪市立自然史博物館におられた岡本先生の言葉として、アカガシのようなコナラ属の多果殻斗は、シイ属に比較して、たいへん珍しいことだと紹介しました。 そして、「“双子”のドングリ@」で、もしどこかで“双子”のドングリをみつけたら、お知らせくださいとお願いしていたところ、上記の宮国さんから、すばらしい報告をいただきました。
 私のホームページをご覧になった宮国さんは、兵庫県、大阪府、京都府のあちこちのドングリを調べられました。 その結果、“双子”や“3つ子”など、多果系のドングリは確かに珍しいのですが、特定の樹では、かなりの頻度で見られることが判りました。 ただ、特定の樹種についても、無いところでは100本以上観察しても全く発見できず、あるところではけっこう見つかるような状況のようです。 特に、三田市の深田公園(「人と自然の博物館」のあるところ)では、23本のシラカシの木に対して8本(約1/3)が多果系で、そのうちの4本については、1本当たり数10個、多いものでは100個以上の2果もしくは3果であったということです(下の写真)。
兵庫県三田市深田公園のシラカシ(撮影:宮国) 兵庫県三田市深田公園のシラカシ(撮影:宮国)
 コナラ属の常緑性のものでは、上記のシラカシ以外にも、ツクバネガシ(京都御苑:2果/3果でこれも1本当たり50個以上、下の写真左)、アカガシ(妙見山:2果)で、多果殻斗のドングリを発見されています。
 また、マテバシイ属でも、シリブカガシ(長居植物園:2果/3果、下の写真右)で、シイ属では、「3果のスダジイ」で紹介した以外に、ツブラジイ(大阪市立大学付属植物園:2果)、スダジイ(三田谷公園:2果)で、多果殻斗のドングリを見つけられました。
京都御苑のツクバネガシ(撮影:宮国) 大阪府長居植物園のシリブカガシ(撮影:宮国)
 ただ、コナラ属について言えば、西日本では最も普通に見られるアラカシについては、何百本も観察されても、1個も見つけることができなかったということです。 また、落葉性のコナラ属のドングリについても、多果殻斗のドングリは見つけられなかったそうです。 なお、マテバシイ属のマテバシイについても相当数観察の結果、多果殻斗のドングリは見つからなかったとのことでした。
 この観察結果を聞いて私が思うのは、クヌギ・コナラなどの落葉性のコナラ属やアラカシなど、普通に見られる、つまり繁栄している植物ほど、種内の個体間競争が激しいのではないかということです。
 これは宮国さんもおっしゃっていますが、多果殻斗のドングリの木は、おそらく毎年多果殻斗のドングリができる、つまり遺伝的なものであると考えられます。 多果になると、一つひとつのドングリは小さくなり、落果も早いようです。 近くに同種の正常なドングリがたくさんあれば、多果殻斗の遺伝子を持った小さなドングリから芽生えるドングリの木は、生存競争に負けてしまうのではないかと考えます。
(最終更新:H18.12.30.)