モミ、ツガ、トウヒの仲間

※ このページは、写真が多く、細かい部分の多い写真はあまり圧縮できず、少し重くなっています。 ご了承ください。

 植物観察会などで、「針葉樹はみんな同じに見えて・・・」という声がよく聞かれます。 確かに花も風媒花で目立たず、葉も細く似ているうえに、種類も多いとなれば、「針葉樹の仲間」とまでは簡単に分かっても、その先に進みにくいのは理解できます。
 では、針葉樹にはどんな種類があるのでしょうか。 裸子植物を大きく分けると、ソテツ類、イチョウ類、球果類(針葉樹類)、マオウ類に分けられますが、この球果類(毬果類=針葉樹類)を分類の「科」レベルでまとめると、次のようになります。
球果類(針葉樹類)の分類
科  名 解          説
ナンヨウスギ科 3属で、 ほとんどが南半球に分布。
ヒノキ科 ヒノキの葉」で解説しています。
スギ科
マツ科 一部は「クロマツの葉」「マツボックリの年齢は?」で触れています。
コウヤマキ科 コウヤマキ」で解説しています。
マキ科(イヌマキ科) 種子鱗片が種子を包み込んでしまう。 イヌマキ、ナギなど。
イヌガヤ科 種子鱗片無し。 1属のみ。 イヌガヤなど。
イチイ科 基部に種衣があり、成熟すると種子を取り巻いて肉質となる。 イチイカヤなど。
 こうしてみると、マツ科以外は、図鑑などを見ても、なんとなく「科」のイメージが作れると思います。 しかし、マツ科は種類も多く、手強い。 アカマツやクロマツだけがマツ科ではありません。 エゾマツ、トドマツ、シラビソ、オオシラビソなどなど、みんなマツ科なのです。
 マツ科で日本に自生するものを、分類の「属」レベルでまとめると、次のようになります。 なお、この他に、ヒマラヤスギ属のヒマラヤスギもよく植えられていますが、日本に自生はありません。
日本に自生するマツ科
属  名 解        説
マツ属 針葉は短枝にのみ付き、長枝には鱗片葉のみ(「クロマツの葉」参照)。
カラマツ属 落葉の針葉樹
トウヒ属  (下で解説)
ツガ属  (下で解説)
トガサワラ属 トガサワラ一種で、紀伊山脈や高知県などで見られるが、数は少ない。
モミ属  (下で解説)
 この中で、マツ属を別にすると、特にトウヒ属とモミ属は種類も多いのですが、「下で解説」と書いた3属は、じつは身近なところで観察することができるのです。 
 この3属をマツ属に加えてマスターすれば、マツ科の概略を知ることになり、ひいては針葉樹全体の概略を知ることにつながります。

 モミ・ツガ林は、暖温帯林として分布しています。 私の家の近くにある標高600mにも満たない槙尾山などでも、モミもツガもたくさん見ることができます。 また、これらの木は、庭に植えられたりもしています。 私の家の近所の高倉寺にも両方植えられています。 また、山本周五郎の小説「樅の木は残った」では、原田甲斐がモミを仙台から江戸の寺に移植し、伊達家の命脈を託しています。
 トウヒの仲間は、エゾマツなど、少し寒いところに多い植物で、大阪府下では自生は見ることができません。 ところが、ドイツトウヒがクリスマスツリーを飾りつける木などとしてたくさん輸入され、公園などにもたくさん植えられて、すっかり身近な木になってしまいました。
 堺市の桜井神社のモミ
(撮影:平成17年12月3日)
 ではこれから、この身近な、だけど似ている針葉樹、モミ、ツガ、ドイツトウヒを使って、モミ属、ツガ属、トウヒ属の見分け方を見ていきましょう。

【 球果(コーン) 】
 生物にとって子孫を残すことは重要です。 ですから、生殖に関する形質は簡単には変えられませんし、逆に言えば、生殖に関する形質が違えば、分類的にはかなり違ったグループである、ということになります。
 モミ属、ツガ属、トウヒ属は、もちろんみんな球果(コーン)で種子を作りますが、その球果の様子はかなり違います。

 モミ属の球果は、通常は木の頂近くに、直立するように付きます。
モミの球果 撮影:平成17年10月16日 高倉寺にて
 そして、種子が熟すと、この球果の鱗片はバラバラになり、種子を散布します。 下の写真は、上の写真と同じ木の同じ球果で、その様子を記録したものです。
平成17年10月2日撮影
平成17年11月13日撮影
球果の色は茶色になり、頂近くから少し
ほぐれてきている。
平成17年12月10日撮影
鱗片は飛び散り、軸だけが残っている。
 ツガ属の球果は、前年枝の先に頂生して下垂します。 種子が熟すと、鱗片の隙間が開きます。 モミ属のように球果がバラバラになることはありません。
ツガの球果 撮影:平成17年9月10日 槙尾山にて

 トウヒ属の球果も、枝に頂生し、垂れ下がること、種子が熟すと鱗片の隙間が開くことなどはツガ属と同じですが、ツガ属に比べて、球果はかなり大きく細長くなります。
ドイツトウヒの球果 撮影:平成17年11月23日 泉北ニュータウン泉ヶ丘地区の緑道にて  球果だけの写真はこちら

 以上、モミ属、ツガ属、トウヒ属の球果の様子の違いについて、説明しました。 でも、球果は若い木ではできませんし、モミ属やトウヒ属の球果は、通常かなり高いところにつきます。 球果の違いがグループを見分ける根本的な違いではあるのですが、なかなかじっくり球果を見ることはできません。
 慣れてくれば、枝ぶりや全体から受ける印象、樹皮の様子など、違う点はいっぱいありますので、一目で区別できますが、じつは、葉の付け根の様子も、モミ属、ツガ属、トウヒ属を区別するいいポイントになるのです。

【 葉の付き方 】
 モミ属では、葉が枝につくところが吸盤状になっています。 写真にはありませんが、葉が落ちたあとも、円形の葉痕が残ります。 この写真の葉は、先端が2裂して鋭くとがっていますが、これは幼木にのみ見られる特徴です。
モミの葉 撮影:平成17年9月10日 槙尾山にて

 ツガ属では、葉の付く枝の部分が少し持ち上がっています。 この部分を「葉枕(ようちん)」と呼んでいます。 この葉枕に細長い葉柄がつき、折れ曲がって扁平の葉身となります。 なお、この写真は葉の裏側を写していますので、白い気孔帯が写っています。
ツガの葉 撮影:平成17年9月10日 槙尾山にて

 トウヒ属では、葉枕が著しく発達し、小枝にも深い溝ができていますし、葉枕の先は柄状に突き出し、その先に細長い葉がつきます。 写真で葉柄のように見える茶色の部分が葉枕です。 もちろん葉が落ちても、葉枕は残ります。 なおトウヒ属は、この写真のドイツトウヒのように、葉の横断面が菱形の種類が多いのですが、例外もあり、トウヒなどは扁平な葉を持っています。
ドイツトウヒの葉 撮影:平成17年8月7日 泉北ニュータウン泉ヶ丘地区の緑道にて

 いかがだったでしょうか。 モミ属、ツガ属、トウヒ属の違いをマスターして、とっつきにくい針葉樹にぜひとも親しんでくださいね。