西表島リゾート開発差止訴
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裁判について 学会等要望書一覧 資料

2003年9月10日

トゥドゥマリ浜(西表島浦内川河口右岸)におけるリゾート開発の問題点について

環境省 自然環境計画課長
野生生物課長
環境影響評価課長
沖縄県 自然環境課長
    環境政策課長
    環境振興課長
竹富町 町長
(株)ユニマット不動産 代表取締役


(財)世界自然保護基金ジャパン
                       WWFジャパン
                       事務局長 日野迪夫


 拝啓,時下,ますますご清祥のこととお慶び申し上げます.
 日頃より,本会の活動につきましてはご理解を賜り,厚くお礼申し上げます.
 さて,本会は,地球上で進む環境破壊をくいとめ,生物多様性を未来の世代に引き継ぐために,地球上で200の代表的で重要な環境を選び「WWFグローバル200」として重点的に保全活動を行っています.このWWFグローバル200のなかには,国内では,南西諸島,琵琶湖が含まれており,南西諸島につきましては,本会はこれまで,石垣島白保海域のサンゴ礁,沖縄島山原(やんばる)の森および海域の保全をはじめ,多くの保全活動を行ってきました.
 このような背景から,最近,多くの本会会員あるいは一般の方々から,西表島西部,浦内川河口右岸のトゥドゥマリ浜のリゾート開発について,環境破壊を心配する意見や問い合わせを受けています.これは,西表島の環境に関して,多くの方々が関心をよせていることを表しています.
 本会は,このリゾート開発問題を検討したところ,多くの問題が含まれていると考えるに到りました.そこで,その考えをまとめ,別紙のような見解書「トドゥマリ浜(西表島浦内川河口右岸)におけるリゾート開発の問題点」として公開することにしました.
 皆さまには,わが国だけでなく世界に誇れる西表島について,自然環境保全の観点から問題が解決されるよう,ご配慮をいただけるように,心からお願い申し上げます.

 

敬具

 

【意見書】

トゥドゥマリ浜(西表島浦内川河口右岸)におけるリゾート開発の問題点

1. はじめに

 沖縄県竹富町,西表島の浦内川河口右岸トゥドゥマリ浜において,(株)ユニマット不動産(本社:東京)による大規模なリゾート開発計画が進められている.このリゾート計画については,西表島の自然環境や生物に多大な影響を与えるとして,日本生態学会(2003年3月)が建設工事の一時中断と生物・環境および地域社会への影響評価の実施を求め,日本魚類学会(2003年6月)も希少な魚類の保護の観点から同様の要望を行っている.また,西表の未来を創る会,西表の自然を愛する会などの住民団体,日本エコツーリズム協会などの環境関連団体が,自然環境および地域社会への影響が大きいとして,建設工事の中止と住民,行政,事業者の話し合いの場,地域社会や環境への影響調査を求めている.さらに,国会議員による現地視察,国会質問が行われるなど,すでに地域の問題から全国問題へと広がっている.しかし,一方では,建設工事はすでに着工され,進行している.
ここでは,西表島の環境保全と(株)ユニマット不動産による西表リゾート開発計画について,WWFジャパンの見解を述べる.

2. 西表島の自然環境の重要性

南西諸島は数多くの自然豊かな島々からなり,固有種も多く生物多様性に富んでいる.そのため,自然環境の重要性が世界的に認められ,保護区を設定するなどの保全対策が必要とされている地域である(IUCN,UNEP,WWF 1980,WWFジャパン 1997, 2002).一方,古くから人々は自然と共存した生活を営んできたが,近年では開発が優先されており,新たな共存,環境保全のための方策が必要とされている.2003年5月には,国の自然遺産候補地のひとつに上げられている(環境省2003).
西表島は,南西諸島のなかでも,自然環境上,特に重要な地域のひとつである.亜熱帯の森林,河川,サンゴ礁海域が連続した自然状態のままで保存されている地域として価値が高い.なかでも浦内川流域は,南西諸島のなかでは約35キロメートルの最長の河川であり,一部観光施設があるものの,流域全体としてはきわめて良好な自然状態にある.特に,河口付近のマングローブ林は100ヘクタールをこえる面積があり,西表島のなかでも生物多様性の高いところであり重要地区である.また,浦内川は,絶滅のおそれのある魚類の種数が多く,希少種の生存を支える生息地になっている.リゾート建設の現場である砂浜や海岸林,小川などトゥドゥマリ浜一帯およびその周辺も,多くの野生生物の生息場所になっている.特別天然記念物,天然記念物,絶滅危惧種,希少種なども,この地域で多くの種が記録されている(日本生態学会2003,日本魚類学会2003).
西表島の陸域では,1972年に中央部の自然林地域12,506ヘクタール(島の面積の約35%)が国立公園に指定されている.しかし,島周縁の平地部は,浦内川河口の平地部も含めて指定からは外れている.指定された当時は,森・川・海の連続的な保全という考え方はほとんどなく,また,本土復帰にともなって開発できる可能性のある平地部は除外されたと推測される.しかし,その後,自然環境の保全に関する考え方や地域指定の方法などが進歩している.沖縄県(1998)は,「自然環境の保全に関する指針」を定め,このなかで,ウナリ崎からトゥドゥマリ浜にかけての沿岸域を「自然環境の厳正な保護を図る区域」とし,同陸域を「自然環境の保全を図る区域」としている.また,環境省(2002)は,浦内川を「日本の重要湿地500」に含め,河口部の重要さを指摘している.
このように,浦内川河口部のトゥドゥマリ浜一帯は,浦内川および西表島全体の環境保全を考え,実施する上で,重要なポイントであることに注目すべきである.

3. リゾート建設による自然環境,地域社会への影響

リゾートの全体計画は明らかにされていないが,現在知られている計画((株)タイム・アンド・タイド 西表リゾート開発計画開発全体事業計画概要 2002年9月20日)では,浦内地区のトゥドゥマリ浜(月が浜)からウナリ崎(太陽の村)にかけて,5つのプロジェクトがあり,合計13.5ヘクタールの開発面積で,2棟161室のホテル,37棟302室のコテージ,レストラン,店舗などが建設される.また,将来の隣接地への拡大の可能性については否定されていないと言われる.この地区は,保護区等の指定はなく,また,開発面積が20ヘクタール以下であることから,環境アセスメントを実施する法的義務はないとされている.そのため,沖縄県から2002年10月に開発許可,2003年3月に建築許可が下り,同年3月に着工した.
しかし,先に述べたように,重要な自然環境を有する西表島のなかでも特に重要な浦内川河口地区の開発に関しては,当然のことながら慎重な配慮が必要である.面積20ヘクタール以下の開発であっても,自主的な環境アセスメントが実施されるべきであり,それが企業や地元自治体の社会的責任であると言える.さらに,もし,事業者が,将来,隣接地区への事業拡大を考えているとすれば,開発の総面積は20ヘクタールをこえる可能性が高く,分割して開発することによって環境アセスメントを回避することを意図しているのであれば,あるいは意図せず結果的にそうなったとしても,これは,環境アセスメント忌避であり,反社会的行為との批判は避けられないだろう.竹富町,沖縄県の関係当局の責任もさらに重くなるだろう.
自然環境への影響としては,日本生態学会や日本魚類学会の要望書が指摘しているように,この開発は,河口域・海岸林の生態系,汽水域に生活史の一部を依存する回遊性の魚類・甲殻類・貝類など,また,八重山諸島の固有種,絶滅のおそれのある種に対して,大きな影響を与える可能性がたいへん高いのである.リゾート建設地のトゥドゥマリ浜およびその周辺の海岸林は,カンムリワシ(特別天然記念物・絶滅危惧?A類),カグラコウモリ,キンバト,キシノウエトカゲ,セマルハコガメ,オカヤドカリ,ムラサキオカヤドカリ(それぞれ天然記念物・絶滅のおそれのある種),ヨナクニサン(県指定天然記念物)など希少種の重要な生息場所になっている.また,砂浜はアオウミガメの産卵場所であり,河口域(汽水域)には,多種にわたる絶滅危惧種の魚類,将来レッド・リストに記載される可能性のある種,浦内川以外では記録のない種が生息している.リゾート建設による直接的な自然環境の改変は,これらの野生生物に大きな影響をおよぼすと考えられる.また,リゾート施設が稼働した場合には,排水や廃棄物,騒音などの影響も発生するとみられる.特に,大量の生活雑排水からの窒素,リンの増加は富栄養化をもたらす可能性が大きい.例え下水処理をして排水基準値以下にしたとしても,これまで排水がなかった流域に連続して排水されれば汚染が進むことは明らかである.
自然環境だけでなく,地域の社会環境,生活環境に対しても,このリゾート建設は大きな影響をおよぼすことは間違いない.現在,西表島の人口は,1,043世帯,2,109人で,西部地区は634世帯,1,232人,観光客数は年間約305,000人である(竹富町 2003).観光客はその80パーセントが日帰り客であり,リゾート施設は年間205,000人の宿泊者数を見込んでいると言われる.シーズンによってばらつきはあるだろうが,これまでの宿泊客約6万人に,さらに約20万人が滞在するとなると,膨大な観光客のために,上水道,下水道(島に下水道はない),ゴミ処分場(生活ゴミは野焼き),交通手段など,社会的インフラ整備が必要になるはずである.西表の未来を創る会などの住民団体が指摘しているように,大型リゾート施設の導入は,地域社会や住民生活に大きな影響を与えるだけでなく,大がかりなインフラ整備(ダム,上水道,下水道,廃棄物処分場など)が必要になる.しかし,大型リゾートを見込んだ整備計画は立てられておらず,今後進めるとしても財政支出など竹富町の住民や行政に大きな負担をもたらすものとなるだろう.また,多くの観光客の流入は,地域の伝統や文化に対しても影響をおよぼすと思われる.
以上のように,ユニマット不動産によるリゾート建設は,自然環境および社会環境,地域住民の生活環境への影響が大きいことは明らかである.しかし,それがどのような影響なのかは明らかでない.事業者のユニマット不動産および竹富町役場は,きちんと調査を行って影響を評価し,住民に情報を公開するべきである.それが社会的責任であり義務であると言える.

4. 合意形成の重要性

西表の未来を創る会の資料「月が浜リゾート開発の経緯」(同会ホームページ)および同会宛のユニマット不動産の文書(2003年3月3日)によれば,前竹富町長がユニマット不動産に対してウナリ崎地区の開発を依頼したのは,1999年のことであるという.その後,2000年7月に同社は開発を受諾し,同年末までには現地の測量,立木伐採,ボーリング調査等を開始している.この時点まで,住民は何も知らされず,立木伐採等によって初めて不安と疑問を持ち役場へ説明を求めたという.
役場による説明会は2000年12月から,事業者による説明会はようやく2001年9月から始められ,2002年7月までの間に複数回開催された.しかし,この開発に疑問を持つ住民は,説明会自体が,資料がない,説明内容が不十分,あるいは質問に答えていないなど,きわめて不満足なものと位置づけている.さらに,その間に,事業者によって開発許可申請書が出され,住民合意がないままに,町役場は県に進達し許可されるという事態になったため,いっそうの不信感を募らせることになった.このような一連の動きを見ると,以下のような問題点が明らかになる.
? 開発計画に関する情報公開がなされていない.
? 意志決定を役場と事業者のみで行い,住民参加がなされていない.
? 住民への説明会は形だけのものにすぎない.
 したがって,この開発は,直接的に大きな影響を受ける地域住民の意見,意思が十分反映されていないと言うことができる.住民のコンセンサスを得ずに,事業者,役場が強引にリゾート建設を進めているのであり,企業責任,行政責任は果たされていないという大きな問題を残している.

5. 結論

西表島は,原生的な自然環境を残し,生物多様性に富み,生物地理学的にも重要な南西諸島のなかでも,最も重要な地域のひとつであり,開発に当たっては,細心の注意をはらうべき地域である.このような地域,沿岸域の開発に当たっては,事業者と行政当局は,日本だけでなく国際的に重要な自然環境の保全に関して責任があることを認識するべきである.
? ユニマット不動産によるリゾート計画に関しては,将来の計画も含めて公開し,自然環境および社会環境におよぼす影響について,科学的な環境アセスメントを実施すべきである.特に,給水および排水処理,廃棄物処理については,その方法と規模が自然環境に与える影響をきちんと評価すべきである.
? これまで,いくつかのリゾート開発が行われては失敗し,自然環境に影響をおよぼしたまま撤退している.このようなことを繰り返さないためにも,西表島の環境保全については,国,県,町が国民の意見を聞いて,それぞれの立場で整合性のあるマスタープランをつくる必要があるだろう.特に,平地部の地域指定の見直しが必要である.豊かな地域づくりとしての計画にもそれは必要である.
? ユニマット不動産によるリゾート開発計画については,すでに進行中ではあるが,建設工事の中断を含めて計画の再検討を行うべきである.この計画に関しては,地域住民,事業者,行政機関,学識者等による合意形成のための協議会を設置して,十分な検討を行うべきである.

6. 資料

・ 日本生態学会第 50 回大会総会.2003年3月23日.西表島浦内地区におけるリゾート施設建設の中断と環境影響評価の実施を求める要望書(提出先: 環境大臣、文部科学大臣、国土交通大臣、沖縄県知事、竹富町長、ユニマット不動産社長).
http://wwwsoc.nii.ac.jp/esj/
・ 日本魚類学会.2003年6月12日.ユニマット不動産による西表リゾート開発の中断と環境影響評価の実施を求める要望書(提出先:環境大臣,文化庁長官,沖縄県知事,竹富町長,(株)ユニマット不動産代表取締役社長).
http://wwwsoc.nii.ac.jp/isj/htmls/030612-2.html
・ IUCN,UNEP,WWF.1980.World Conservation Strategy.
・ WWFジャパン.1997.特集WWFのグローバル200.WWF 245:1−6.
・ WWFジャパン.2002.特集世界の自然を守るWWFのグローバル200.WWF295:1-10.
・ 環境省.2003年5月26日.世界自然遺産候補地に関する検討会について.
http://www.env.go.jp/nature/isan/kento/030526/index.html
・ 沖縄県.1998.自然環境の保全に関する指針.
http://www.pref.okinawa.jp/okinawa_kankyo/shizen_hogo/hozen_chiiki/shishin/index.html
・ 環境省.2002.日本の重要湿地500.
・ (株)タイム・アンド・タイド.2002年9月20日.西表リゾート開発計画開発全体事業計画概要.
・ 竹富町.2003.竹富町地区別人口動態表.http://www.town.taketomi.okinawa.jp/
・ 西表の未来を創る会.2003年7月.月が浜リゾート開発の経緯.
http://www5e.biglobe.ne.jp/~irimira/index.htm

以上



この件に関する問い合わせ
花輪伸一
WWFジャパン自然保護室
〒105-0014東京都港区芝3-1-14
TEL.03-3769-1713 FAX.03-3769-1717
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