森の大百科事典

松くい虫被害

戻る  2004.3


5月下旬
 5月の下旬になると、前年に枯れたマツの中で育ったマツノマダラカミキリ (運び屋)が、マツノザイセンチュウ(マツを枯らすセンチュウ)を身体に付着して飛び立ちます。マツノマダラカミキリはマツの葉を食べ、マツノザイセンチュウはその食痕から元気なマツの樹木の中に入り、夏から秋にかけてマツを枯らしてしまいます。マツノザイセンチュウによって枯れたマツは、ヤニ(樹脂)が止まります。マツノマダラカミキリは、マツノザイセンチュウが枯らしたマツに卵を産みます。ヤニが流れていないので、卵がかえり、幼虫になります。
 
マツノマダラカミキリによって運ばれたマツノザイセンチュウがマツの中に入るのを防ぐため、マツノマダラカミキリがマツを食害する前に、薬剤を散布しておきます。運び屋であるマツノマダラカミキリは、薬剤が付いた葉を食べることにより駆除されます。

 ヘリコプターによる薬剤の空中散布は、危被害を防止するため、日の出とともに行いました。

夏から秋にかけて
 松の葉が、赤茶けています。今年の夏までは元気だったのですが、一気に枯れてしまいました。
 こうした枯れ方は、松くい虫によるものです。松くい虫の被害は、マツノマダラカミキリ(運び屋)とマツノザイセンチュウ(マツを枯らすセンチュウ)の組み合わせによるものです。
 晩秋の今ごろは、幼虫になったマツノマダラカミキリが、幹や太い枝の中を後食しながら、蛹(さなぎ)室を作っています。羽化・脱出するのは翌年の5月下旬ころからです。

秋から冬にかけて
 枯れたマツを放置しておくと、翌年の5月下旬ころからマツノザイセンチュウを運ぶ、マツノマダラカミキリが枯れたマツの中から飛び立ちます。そこで春までに、枯れたマツを伐倒して、マツの中にいるマツノマダラカミキリを薬剤によって駆除します。
 ここは海岸のクロマツ林ですが、林内に伐倒したマツの伐根が見えます。
 伐倒したマツは、細い枝を含めて集積します。枝は、幹の下に入れてあります。
 この後は、薬剤をかけ、ビニールで覆って、くん蒸します。
 2月に森林公園のアカマツ林を歩いていたら、写真の光景に出会った。
 ビニールに覆われた中を見ると、短く切られたアカマツの丸太であった。これは、松くい虫の被害の拡大を防止するため、前年の夏以降に松くい虫の被害にあって枯れたアカマツを、伐倒して、薬剤でくん蒸しているところである。
 松くい虫の被害のピークは、昭和50年代の後半である。しかし、マツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウの共生関係によって、その被害は今でも続いている。薬剤のくん蒸によって、運び屋であるマツノマダラカミキリの発生を抑えようとしている。
 写真は、松くい虫の被害で枯れたアカマツの切り株である。
 重要なマツ林は、行政により薬剤空中散布、被害木伐倒駆除が行われ、保護が図られている。切り株の左上に小さくナンバーテープが見えるが、現場の伐倒木と書類の伐倒木を結ぶ番号である。

 松くい虫の被害で枯れたマツからは、ヤニが出てこない。これは、マツノマダラカミキリに運ばれたマツノザイセンチュウが、人間の血管にあたるマツの管を止めてしまうためだと聞いた。ヤニの流れが止まったマツの中では、運び屋であるマツノマダラカミキリの幼虫が育ち、5月ころから外に飛び立っていく。