最 初 の 儀 式
     The Lesser Banishing Ritual of the Pentagram





     小五芒星儀礼式次第



1. 東面し、直立する。額に触れ、アテーを振動させよ。


2. 胸に触れ、マルクトを振動させよ。

3. 右肩に触れ、ヴェ・ゲブラーを振動させよ。


4. 左肩に触れ、ヴェ・ゲドラーを振動させよ。


5. 胸の前にて両手を握り合わせ、ル・オラーム・アーメンを振動させよ。


6. 東へと進み出よ。地の追儺の五芒星を描き、IHVH(ヨッド・ヘー・ヴァウ・
ヘー)を振動させよ。

7. 南へと進み、五星を描き、ADNI(アドナイ)を振動させよ。


8. 西へと進み、五星を描き、AHIH(エヘイェー)を振動させよ。


9. 北へと進み、五星を描き、AGLA(アーガラー)を振動させよ。


10. 東へと帰還し、円環を完成させたならば中央へと進め。


11. 両腕を広げ唱えよ。



       "我が前にラファエル、我が後ろにガブリエル、
       我が右手にミカエル、我が左手にアウリエル、
       我が周りに五芒星は燃え、柱のうえに六芒星は輝けり"

12. 1−5を繰り返す。




最初の解説


 
  「無限」とは我々が感知し得ない存在の前提である。一つの円と、その中心にある一個の点は未顕現から「存在」が生じた状態−即ち、ケテルの出現を表象する。円環は日々描かれることにより「場」に固定されるが、中心もまたその確定的な位置を「場」に刻印する。
「小五芒星儀礼」は世界中の数多くの魔術団体において最初に教示されるものである。何も難しいことはない。魔術師はゆったりとリラックスし、上に掲げられた動作と言葉を発すればよいのである。さて、ここで一体何が起こるのであろうか? この簡素な儀礼を行った後に、あなたの構築した魔法の円環に如何なる変化が起こるのだろうか? そして、あなた自身に一体何が起こるというのだろうか?

  魔術の作業の第一段階においてすら、如何に制御されたイメージ形成能力が必要であるかが理解されねばならない。魔法修行の最初の要求はこうである。

       「あなたの身体が上方へと向かい拡大していく様を想像せよ」

  最初のステップ(1−5)は一般に『カバラ十字』と呼ばれている。「想像せよ」と述べられているのだから拡大していく身体は生身の肉体ではなく、「想像上の身体」であるということが理解される筈だ。想像上の身体をここでは「アストラル体」とよぶことにしよう。魔術師志願者は後にその身体を用いて、自由にアストラル界を探索するようになるだろうが、ここでは必要以上にそのことについて述べるのはやめておこう。しかし、一般に誤解されている一点についてはここで明確にしておく必要がある。
あなたはきっと「幽体離脱」や「体外離脱現象」などという言葉を耳にしたことがあるだろう。また「臨死体験」や「死後の世界」に関するテレビ番組を耳にしたことがあるかもしれない。一般的な誤解とは、実はそれらの現象と魔術師の「アストラル・プロジョクション」、星幽体投射とを混合することを指している。魔術師はあくまでも想像上の身体を用いてアストラル界へと旅立つのであり、その際の最大の武器は能動的な想像力と視覚化能力であることを忘れてはならない。いわゆる「幽体離脱」現象は、我々の用語では「エーテリック・プロジェクション」と呼ばれており、体内にある精妙なエネルギーを実際に体外へと放出するという点において「アストラル・プロジェクション」とは大きく異なっている。故に、カバラ十字は何も危険ではないし躊躇する必要もない。儀礼の前にリラックスしておくことは重要である。もし、可能であれば中央に祭壇を置き、四大の象徴物を置く。勿論、なければないで一向にかまわない。

  東面したならば、あなたの想像上の身体がみるみる巨大化していく様を強くイメージする。勿論、最初の内はかなりイメージし辛いだろうし、半ば馬鹿らしくも思えてくる筈だ。生身のあなたはすぐそこにいて、呼吸しているというのに、どうして想像上の身体などをイメージせねばならないのか? しかし、ここであなたは理解せねばならない。"その迷いを振り切る唯一の方法は想像上の身体に自らの意識を完全に同化させ、批判する自我を置 き去りにするしかないのだ"と。
あなたのアストラル体の視覚を通して巨大化していく自分自身を見なければならない。あなたの足元にはあなたの住んでいる町が見えるが、それは急速に小さく小さくなっていく。やがて、地球そのものが小さな丸い球になってしまいあなたは太陽系へと飛び出す。しかし、まだ拡大のイメージを止める段階には至っていない。さらに外宇宙へと拡大して行き、我々が所属している銀河系すらも飛び越えねばならない。これらのイメージングに最初の内は3分から5分の時間をかけてもよいが、習熱するにつれ、ものの数秒から数十秒でこれらのイメージングを行うことが出来るようになるであろう。ここで注意すべき点が一つある。それはいかなる場合でも、あなたの足は絶対に地球から離れることはないということである。このルールは遵守する必要があるが、後にはマルクトから完全に離脱し、飛翔する「諸界への上昇」というテクニックを学ぶであろう。これこそが正真正銘、アストラル探索のためのテクニックである。
一体どこまで自分のアストラル体を拡大させるべきかについては、あなた自身の経験によって学ぶべきである。いずれにしても、次にあなたは遥か彼方上方にある一点の光の存在を感じとることになる。この輝きは全き白輝光であり、やがてあなたの頭上まで近づいてくる。あなたは短剣(dagger)もしくは指先によって、この宇宙の最頂点からの光を捕え、額へと引き下ろし、"アァァァァァァー テェェェェェェェーー"を振動させるのである。
AthH=《汝》の振動は、我々が接触し得る最も高貴なる光を肯定し、その神性原理へ 向かい心身を開放する行為となる。あなたは頭上に輝く目映い光の輝きこそが自らの意識 の根源であり、人間存在が知覚し得る最も神聖なる光であることをここで強く認識せねば ならない。
 振動により共鳴が発生したならばあなたの作業が上手くいった証拠である。振動を伴った光が、あなたの額に更なる振動をもたらす様をイメージし、可能な限りにおいて輝きのイメージを増幅させるよう努力せねばならない。成功のコツはできるだけ声をくぐもらせ、実際の肉体そのものが振動するように弛緩を心掛けることである。

 次に短剣もしくは指先を用いて光を誘導し、肉体の中心線に沿って胸(太陽神経叢)の位置まで降下させ、"マァァァァァァァァルゥゥゥゥゥゥゥクゥゥゥゥゥゥススススス"を振動させる。
MLKVTh=《王国》とは、あなた自身が立っている大地を表象している。即ち、ここで神性原理であるAthH(高次の天才、イェキダー)とあなた自身の肉体(グフ)を表象するMLKVThの間での均衡が樹立するのである。換言すれば、我々は霊と肉体は対立する二者ではなく、人間存在を形成する二つの相補的なる極、陰と陽であるのだという哲学を体現するのである。
アレスター・クロウリーの追従者達は、胸の上でMLKVThを振動させる替わりに彼の聖守護天使の名前である"Aiwass"を振動させる。それは太陽神経叢に対応するセフィラ、ティファレトの象徴体系="聖守護天使の知識と会話"と関連しており、MLKVThそのものは性器の位置にて振動させられる。

 続いて、短剣もしくは指先を右肩へと移動させ、宇宙の右方向より来る光の矢をとらえ、"ヴェェェゲェェェヴゥゥゥゥゥゥゥゥルラァァァァァァァァ"を振動させる。
VGBVRH=《力と》とは宇宙の異化作用及び動的側面を表象する。この力の存在がいかに必然的なものであり、宇宙(或いは我々の魂に)不可欠なものであるかはディオン・フォーチュンの著者『神秘のカバラ』において既に学習済みのことと思う。ゲヴラーとゲドゥラー(ケセド)は一方のみで存在するものでも、機能するものでない為、早々に次へと移行することとしよう。

 右肩より入った光は水平に進み左肩へと到達する。ここで魔術師は、"ヴェェェゲェドゥゥゥゥルラァァァァァァァァ"を振動させる。
VGDVLH=《栄光》とは宇宙の同化作用及び静的側面を表象する。VGBVRHとVGDVLHもまた、対立する概念ではなく、宇宙の相補的なる二極を表しているにすぎない。それは、ロッジ・ルームにおけるヤキンとボアズであり、生命の樹における峻厳の柱と慈愛の柱、さらにはヘルメスの七大原理におけるポラリティー、宇宙に内在する二極のエネルギーである。ここでも、それらの二極性の間に均衡が樹立する。かくして「光の十字架」が完成するのである。

 最後に胸の前で両手を組み"ルゥオォォォォォラァァァァァァムムム アァァァァァメェェェェェンンン"を振動させる。光 の十字架のイメージを強化するとともに、十字架の交点に真紅の薔薇が咲き誇る様をイメージする。恐らく、この時にアストラル体全体が光と共鳴するイメージや光そのものがスパークする感覚が沸き起こってくる筈である。ポイントは全身は緊張させず、リラックスを心掛け、振動そのものと同調すること。そしてより大切なことは心を無に帰し、魂そのもので"祈り"の感情を喚起することである。この一連の動作をもってカバラ十字、もしくは「身体光輝化」を終了することも出来るが、巨大化したアストラル体のイメージを保持したまま、宇宙の中心に立つ自分をイメージし、暫し光を体感しても良い。

 ここからいよいよ五芒星の刻印へと進む。まず、アストラル体のイメージは保持したままで、実際の肉体を円環の東へと進ませる。短剣もしくは指先を用いて、逆「V」の字を空間に刻印し、「地」退去の五芒星を完成させる。燃え盛る白光、もしくは青白い炎の五芒星を前方にしっかりと視覚化することが重要である。五芒星の頂点を頭頂に、下部の二角を左右の大腿部付近に、上部の二角を両肩の高さに設定し、描くのが一般的である。
個人的な差異は顕著であるものの、誰もが最初から鮮明な視覚化像を構築できるわけではない。実際、五芒星の朧げな輪郭すらも巧くイメージできないという場合すらあるだろう。まず、最初に批判的な思考、理論的な左脳の活動を、芸術的、抽象的右脳の活動へとシフトするよう努めねばならない。理論の魔術とは違って実践の魔術は、その多くを能動的想像の能力に負っている。そして、この能力と訓練された集中力が相まった時、鮮明な視覚化像が出現するのである。

 次に魔術師はゆっくりと深く息を吸い込み始める。この息は実際には鼻から流入してくものであるが、あなたはあたかも全身で息を吸い込むかのようにダイナミックにイメージすべきである。吸い込まれた息はあなたの身体の中心線を伝って、足元にある大地へと降下していく。それと同時にあなたの実際の肉体の両腕を耳の高さまでゆっくりと掲げていく。そして、息を吐くと同時に左の足を一歩踏み込み、両手を前方へと振り下ろす。伸びた指先とあなたの視線が完全に一致し、指先から白光の光線が放射される様をありありとイメージする。この光線とともに五芒星の中心を貫くイメージで神名"ヨド・ヘーー・ヴァウ・ヘーー"を振動させるのである。
即ち、あなたは「黄金の夜明け」団において"入場者のサイン"と呼ばれたホルスのサインとともに神名を発するのである。この光線が追 の力流を形成し、神名は"彼方"まで放射される。続いて、あなたは左足を素早く引き寄せ、左足で足踏みを一回行い、左手の人差し指を静かに唇にあてる。このサインは「黄金の夜明け」団ではハーポクラテスのサインまたは沈黙のサインとよばれていた。この動作によってあなたはあなた自身が放射した力流を断ち切ることが出来るのである。

 再び短剣、もしくは指先を五芒星の中心へと持って行き、そのままの高さを保持したまま南へと向かう。この時、移動する短剣の切っ先を用いて、白光の軌跡を描き、南へ到達
すると同時に外周円の四分の一が形成される様を視覚化する。
五芒星の刻印、呼吸法、神名の振動などは東点と同じく行うが、ここでは"アーー・ドー・ナイ"を振動させる。

 続いて、西へと移動する。短剣を用いて光の軌跡を描くことによって外周円の二分の一が完成する。ここでは"エー・ヘー・イェイ"を振動させる。

 北へと移動する。短剣を用いて光の軌跡を描くことによって外周円の四分の三が完成する。ここでは"アー・ガー・ラー"を振動させる。

 最後に短剣を用いて光の軌跡を描き、東へと帰還し、円環を完成させる。この行為によってあなたはあなた自身の宇宙を確定したことになる。今やあなたは輝く光の円環に囲まれ、燃え盛る五芒星と神の名によって防御されているのだ。

 これまでに登場してきた振動術式が必然的に二種類に分類されることに注意を払っていただきたい。一つはカバラ十字で用いられたものであるが、これは身体そのものを振動させるものであり、共鳴と増幅を生ましめる方法である。対して五芒星の中心から放射する神名の振動は外部(外宇宙)へと投射する振動方法である。最初の方法は後に「中央の柱」を実践するときに大いに役立つだろうし、その効能についても知ることが出来るだろう。後者の方法は然るべき儀式魔術に活用することができる。従って、この段階を学習、実践するにおいても決して気を抜いてはならない。何故なら、あなたは小五芒星を単に儀式の場を聖別するための退去儀礼として用いるのではなく、あなた自身の宇宙を覚醒させるために用いなければならないからだ。この認識は大袈裟に過ぎるだろうと思われるかも知れない。しかし、多くの魔術の実践指南書に記されているように、小五芒星儀礼にはあらゆる儀式魔術の基本的諸要素が凝縮されているのである。

 ここまできたならば、次にあなたは宇宙を構成する四大元素について考察せねばならない。円環を完成させた後、再び円環の中心へと戻り、東面する。両腕を外側へと開き、肉体そのもので十字架を形成する。あなたは今、宇宙の中心に立ち、四大の元素の諸力が交差する宇宙の十字路に立っているのである。前方(東)に意識を集中すると、やがて緑なす美しい草原が出現してくる。熱く湿った風を前方に感じると同時に黄色い衣を纏い、巨大な藤色のオーラを放つ大天使ラファエルが出現してくる。彼は美しく、若々しい男性の大天使であり、右手には「風」のエレメントの魔法武器である短剣を握っている。彼は病を癒す不思議な力を持つエネルギッシュな大天使である。彼の活動性を全身に感じながら「我が前にラァァファ・ァァァィィ・エェェル」と発声せよ。

次に自分の後方に美しい湖が出現する。輝く湖面はとてつもなく優しい寛容である。冷たく湿った水を後方に感じると同時に青い衣を纏い、巨大なオレンジ色のオーラを放つ大天使ガブリエルが出現してくる。彼女は端麗で、優美な美しい女性の大天使であり、右手には「水」の魔法武器である杯を保持している。あなたの中にある優しさと静寂が一気に溢れ出てくるのを感じながら「我が後ろにガァァァー・ブリィィィィ・エェェル」と発声せよ。

 今度は、あなたの右方向に灼熱に照らされた原野が出現する。真夏の太陽が容赦なく照りつけ、辺りを黄金色に染めている。熱く乾燥した火の火照りを右側から感じると同時に赤い衣を纏い、緑色のオーラを放つ大天使ミカエルが出現してくる。彼は力強く屈強な男性大天使であり、右手には「火」の魔法武器である杖を握っている。彼は勇敢にして正義心溢れる活動的な大天使である。あなたの中にある燃え上がる活性性が噴出してくるのを感じながら「我が右手にミィカァ・ィィィィィィィィ・エェェル」と発声せよ。

 最後にあなたの左方向に巨大な山並みと大地が出現する。広大な大地とそびえ立つ山々は重厚にして不動であり、あなたの内部にある堅固さを呼び覚ます。冷たく乾燥した地面の感触を左側から感じとると同時に黒い衣を纏い、白色のオーラを放つ大天使アウリエルが出現してくる。彼女はゆったりとした仕草が特徴で、優しい微笑みをたたえた女性の大天使であり、「地」の魔法武器であるペンタクルのついた腰帯をつけている。大地の。揺るぎなき不動性を体感しつつ「我が左手にアァァウ・リィィィィィィ・エェル」と発声せよ。

  "我が周りに五芒星は燃え"を発音すると同時に四方向にある燃えるペンタグラムは再度、輝きを増し、燃え上がる。この時、あなたの円環そのものが極めて強固な霊的バリアーとなっていることを感じるだろう。
"柱の上に六芒星は輝けり"の発音と同時に頭上と足元のそれぞれに燃え上がる黄金の六 芒星を視覚化する。ここであなた自身の調和的宇宙が確立される。四つの五芒星(5×4=20)と二つの六芒星(6×2=12)の角は全部で32(20+12)となる。これはあたかもこの儀礼の実行によって生命の樹の32番目の小径に対応するタロット・カードの「宇宙」が召喚されたかの如くである。

  ここで再度カバラ十字を切るが、あなたのアストラル体は宇宙的規模にまで拡大したままであるのだから、即座に頭頂よりの光を引き下ろすことが出来る筈である。最初のカバラ十字よりも強い光のイメージを体感することが理想である。薔薇十字形成に集中した後にアストラル体を徐々に収縮させ、元の肉体へと帰還せよ。


第二の解説


 円環が完成したならば、その後は思う存分、魔術の実践を行うことが出きる。ここでは小五芒星儀礼の活用法とそこから発生する魔術の訓練について言及してみたいと思 う。
これまでに発表されてきた多くの魔術書においては、お決まりの常套句が用いられてきた。即ち、"小五芒星儀礼とは、あなたの作業の場からネガティブば影響力を一掃するために行われるのである"といったような言葉である。筆者の認識からすると、これは間違いである。作業の場からネガティブな諸力が一掃されてしまったならば、後には何が残るというのだろうか…?   ポジティブな影響力?
魔物達があなたの円環の外部を取り巻き、あなたの魔術作業を妨害しようと企ててると考えるよりも、邪な魔物たちはあなた自身の内に潜んでいると考えねばならない。あなたにとって何がポジティブであり、何がネガティブであるのか、どのような妄想があなたに取り憑き、どのような感情があなたの魔術作業を邪魔しようとしているのか…?
根本的な原因を突き止めようともせず、ただ盲目的にネガティブな諸力のみを一掃しようとしたところで、著しい変化と進歩を体感することは不可能である。

 小五芒星儀礼を単なる霊的防御のテクニックのみに止まらせておく必要はない。しかし、まず"恐怖"という名の抵抗し難き感情があなたの作業を妨害している場合のことを考えてみよう。あなた自身がこの感情に捕らわれている時、(特に魔法修行の最初の段階では誰もが不安を抱くものである)恐らくあなたは魔法修行そのものに気乗りせず、部屋の明かりを薄暗くしてまで魔術の実践を行うことに大きな抵抗を感じる筈である。自己観察能力が十分に開発されていない段階であれば、もしかするとあなた自分を脅かそうとしている邪悪な存在に過敏になり、一瞬視界をかすめる黒い影を見るやも知れない。古の魔術書は"ネガティブ"な諸力を一掃すべく、作業の前に小五芒星儀礼を行うべし、とあなたに説いている。そこであなたは気の進まないままにそれを行う。しかし、ここでそれを行ってみたところで、ただやみくもにあなたの恐怖心は増幅されるのみである。
正しき認識と自己観察能力を有している魔術師のみが恐怖を追いやることができるのである。とはいえ、恐怖は完全に追放できるものでもないし、またその必要もないが、あなたは小五芒星儀礼に習熟することによって"調和"と"確立"があなたの脅威を然るべきポジションへと押し戻してくれていることを理解するだろう。即ち、魔術作業の為に必要な心身の均衡の確立である。

 恐らく、ネガティブな諸力を追いやる方法だけを追求するのであれば、小五芒星儀礼を行うよりも、大声を出して笑いだした方がより大きな効果が得られるだろう(これは主に混沌魔術師たちによって用いられているテクニックである。彼らはしばしば笑うことによってヴァニシングを行う)。

  注目すべき点は、小五芒星儀礼にはあらゆる魔術訓練の基礎が凝縮されているという点である。リラクゼーション、振動術式、視覚化、四大及び大天使のイメージなどなど、今後の魔術修行においてはそれらの要素が更に深く、緻密に追求されていくことだろう。
既に「最初の解説」で述べたように、この儀礼では想像力の行使が随所で要求されている。それとともにアストラル領域での作業が実質的な儀礼の鍵を握っているという点も明らかになった。そこで実際の肉体は動かさず、想像(創造)された思念体のみを用いて行うアストラル小五芒星儀礼についても言及しておこう。

 これはアストラル感覚(Astral Sense)の獲得と平行して訓練されるべきである。アストラル感覚とは思念体そのものの感受性のことを指すがピンとこない人も多いことだろう。
具体的なエクササイズを下記に記すことにする。
まず、あなたの作業の場の四方位に次の象徴物を配す。東には香炉を置き、香を焚く。南には燭台を置き、蝋燭の火を灯す。西には杯を置きミネラル・ウォーターを注いでおく。北には小皿を置き粗塩を盛る。中央には瞑想用の椅子とベル(これは儀式を行う際に用いるチャイムである。輸入雑貨店に行けば手頃なベルを入手することが出来るだろう)を用意しておく。それらの用意が整ったならば、あなたの実際の肉体を東へと向かわせる。ここであなたは香炉を取上げ、暫し香の香りを嗅ぐ(火傷をしないように吊り香炉などを用いること)その香りを十分に脳裏に焼き付けた後に、南へと向かう。ここでは燭台を取り上げ、蝋燭に手をかざし、暫しその暖かさを感じる。次に西へと向かい、杯を持ち上げ、美しい水の表面を観察し、指先でそれにそっと触れてみる。続いて北へと赴き、小皿に盛ってある粗塩を少しとり、口へと運ぶ。以上、四方位でそれぞれの象徴物を感じ取った後に中央へと戻り、ベルを四回鳴らし、目を閉じて椅子に腰掛ける。

  さて、ここからが本格的な訓練である。次にあなたが行うことは、今、行った行動を思念体を用いて追体験することである。最初に座っている自分の前に法衣を纏った自分自身をイメージすることから始める。自分自身の容姿を明確に想起し、前方に構築することは極めて難しいが、あなたはこの困難な作業を乗り越えるよう努力せねばならない。
次にあなたの意識を思念体へと移す。これは文字にすると非常に簡単なように思えるが実際には非常に難しい。筆者の体験ではゆっくりと自分の意識を思念体へと移して行くのではなく、一気に思念体の方へと意識を移動させ、すぐさま思念体の視線で物を見るようイメージする方がやり易かった(勿論、あなた自身の方法を発見するのがベストである)。

  意識を思念体に移動させたならば、実際の肉体の目はずっと閉じたままにしておくこと。これから先はあなたのアストラルな視覚のみが唯一の視覚となる。まず、東に進み出、先程と同様に香りを嗅ぐ。ここではアストラルな嗅覚のみが唯一の嗅覚となる。その香しい匂いをありありと再現し、感じること。ここで重要な鍵を握っているのは自分自身の記憶力である、とあなたは気が付くかもしれない。しかし、分析する思考ではなく、あなた自身の感受性と直観のみを働かせるように努力せねばならない。そして、そのような精神状態を維持すべく努めることが、いかに集中力獲得への訓練となっているのかをよく理解して臨むべきである。次にあなたの意識を思念体に乗せたまま南へと向かう。ここで、あなたは炎の暖かさを十分に感じ取らねばならない。続く西においても同じことなのだが、あなたのアストラルな触覚をフルに発揮し、純粋な水の冷たさを感じ取るよう努力せねばならない。いうまでもなく、北点ではあなたのアストラルな味覚を通して、粗塩の辛さを味わうこと。これは比較的容易に行えるのではないだろうかと思う。最後に中央へと戻り、ベルを鳴らす。あなたのアストラルな聴覚は、その清らかな音色を聞くことが出来たのであろうか?以上の訓練が終了したならば、実際の肉体の背後に立ち、意識を肉体へと帰還させる。 まだ意識レベルはかなり低下したままだろうから、手を打ち鳴らしたり、暖かいコーヒーを飲むなりして、しっかりと意識を肉体へと戻すこと。

 これはAstral Sense養成のための、極めて初期の訓練である。いずれ段階が進んだならば、あなたはアストラル界に自分だけの(勿論、集団での構築も可能だが)テンプルを持つことになるだろう。その様式はあなたの属する魔術の流派によって異なるものの、恐らく聖なる象徴群に囲まれた壮麗な神殿となるだろう。例えば、ラピス・ラズリとジャスパーに彩られた壁と、銀と黄金の床を有しており、周囲には四つの門がある神殿かも知れないし、森の奥深くの絶壁の上に聳える古城の一室に用意された華麗な儀式神殿かも知れないといった具合だ。更にこの四方の門を任意の元素界への扉とし、タットワの象徴を用いてアストラル界へと足を踏み入れることもできるし、その他の象徴を用いて固有のアストラル領域を探索することも可能になるだろう。しかし、アストラルの神殿は決して気ままに構築できるものではないし、遊び半分に手を出すものでもない。少し話が脱線してしまったが、下記の言葉にご注目いただきたい。

 小五芒星儀礼には、あらゆる儀式魔術の要素が凝縮さけているのと同様に、アストラル小五芒星儀礼には、あらゆるアストラル魔術の要素が凝縮されている。アストラルな五感の発達はその基盤である。アストラル小五芒星儀礼の式次第については、細かい解説を繰り返す必要はないだろう。まず思念体を前方に構築し、意識をそちらへと移す。実際の肉体は中央に座したままで、以後の動作は全て思念体とアストラルな五感のみを用いて儀式を行う。振動術式はあなたのアストラル体そのものを振動させるだろう。また設定された円環と五芒星の感覚もアストラルな感覚を用いて十分に知覚すること。