Aの作曲家



ルイ・オベール Louis Aubert (1877-1968)

フランスの指揮者,ピアニスト,作曲家。本名ルイ・フランソワ・マリー・オベール(Louis François Marie Aubert)。1877年2月9日,イール・エ・ヴィレーヌ(Ille-et-Vilaine)のパラメ(Paramé)に生まれる。幼少期から音楽家の父の手ほどきを受けて育ち,パリの聖マドレーヌ(St. Madeleine)教会の合唱隊に入ってガブリエル・フォーレに師事。彼の『レクイエム』初演では独唱を担当するなど、早くから神童と謳われ、歌手としての才能を開花させた。1887年、パリ音楽院へ進んでアントワーヌ・マルモンテル、ルイ・ディエメル(Louis Diémer)にピアノ,ポール・ヴィダルに伴奏法,アルベール・ラヴィニャックに和声法,次いでガブリエル・フォーレに作曲法を師事。同時に,サント=クロワ大学でも音楽教育を受ける。舞台音楽,映画音楽の分野で成功。ラヴェルの『高雅にして感傷的なワルツ』の初演を手掛けるなど、ピアニストとしても活躍した。作風は恩師フォーレの流れを汲むが,和声面では親交の深かったラヴェルの影響下にもあり,後期ロマン派と印象主義の折衷的な表現で,親しみやすく軽妙な作品を多数遺す。1956年には、フロラン・シュミットの後任としてパリ音楽院の院長に就任。学士院委員にも選ばれた。著述家としても、管弦楽法の教科書(1951年:ランドウスキとの共著)やシャルパンティエの評伝(1956年)などを残している。1968年1月9日パリにて死去。(※肖像はChristina Ariagnoさんのご厚意でご提供いただきました。決して複製・転載しないでください。 Acknowledgement : The portrait of the composer is kindly provided by Ms. Christina Ariagno. Never bring this photo out from this page.


主要作品
 ※Landowski, M. 1967. Louis Aubert: musicien Francais. Durand. 入手。時間出来次第全面改訂予定。

舞台作品 ・ミイラ La momie (1903) {ballet}
・菊の花 Chrysanthemis (1904) {ballet}
・青き森 La forêt bleue (1907) {opera 3act /2p /vo, p}
... Jacques Chenevière原詩
・魅せられし夜 Nuit ensorcelée (1923) {ballet}
管弦楽曲 ・交響詩【ハバネラ】 La habanera (1919) {orch /2p}
・交響的絵画【ドリアデス(森の精)】 Dryade -tableaux symphonique (1921)
・夏の祝祭 La fêtes d'été (1937)
・捧げもの Offrande (1947)
・シャトーブリアンの墓 Tombeau de Chateaubriand (1948)
・交響的絵画【シネマ】 Cinéma -tableaux symphonique (1952)
・夕べの薔薇 Roses du soir (-) {orch}
・セレナード Sérénade (-) {orch}
協奏曲 ・幻想曲 Fantaisie pour piano et orchestre (1899) {p, orch /2p}
・奇想曲 Capriccio (1925) {vln, orch}
・降誕祭のパストラール Noël pastoral (1927) {p, orch}
器楽 ・マドリガル Madrigal (189-) {fl (vln), p}
・序奏とアレグロ Introduction et allegro (1922) {fl, p}
・ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 Sonate pour violon et piano (1927) {vln, p}
・夜想曲 Nocturne (-) {fl, p}
・ロマンス Romance (-) {fl, p}
・歌 Lied (-) {fl, p}
ピアノ曲 ・小組曲 Suite brève (1900/1913) {2p /orch} ... Menuet, Berceuse, Air de Balletの3曲。
・3つの素描 Trois esquisses (1900) {p}
・心象の一葉 Feuille d'images (1930) {2p /orch}
・航跡 Sillages (1908-1912) {p}
・フォレの名による素描 Esquisse sur le nom de Fauré (-) {p}
・小悪魔 Lutins (-) {p}
・組曲 Suite (-) {2p}
・ヴァルス=カプリス Valse-caprice (-) {p}
・2つの小品 Deux pièces (-) {p}
歌曲
合唱曲
・樹海 Sous bois (1892) {vo, p}
・ヴィエール(中世の楽器)伴奏によるスペイン風の歌 vielle chanson espagnole (1894) {vo, p}
・優しき韻詩 Rimes tendres (1896) {vo, p}
・アポロンとウラニアの婚礼 Les noces d'Appollon et Uranie (1897) {cantata}
・手紙 La lettre (1900) {vo, p}
・秋の黄昏 Crepuscules d'automne (1908) {vo, p}
... prelude, grisaille, silence, l'ame eriante, erodenses feuilles sur l'eauの6曲
・6つのアラブの詩 Six poèmes Arabes (1907) {vo, orch}
... 1) le vaineu, 2) le visage penché, 3) le destin
・汝はペトロなり Tu es Petrus (1917) {choir, org}
・ムーアの夜 Nuit mauresque (1907/1911?) {vo, p/orch}
・四季 Les saisons (1937) {vo, choir, orch}
・海の歌 Chanson de mer (-) {vo, p}
・ Déclaration (-) {vo, p}
・ D'un berceau (-) {vo, p}
・エレーヌ Hélène, extrait des Tablaux antiques A.De Bengy-Puyvalée (-) {vo, p}
・祈り Invocation à Odin (-) {btn, m-choir/orch}
・手紙 La lettre (-) {vo, p/orch}
・メランコリア Melancholia (-) {vo, p}
・オデレット Odelette (-) {vo, p}
・プルミエール Première (-) {vo, p}
声楽曲 ・カシュカシュ Cache cache (-) {msp, tnr}
・ Chanson des quenouilles (-) {msp, 2f-vo}
・鐘 Les cloches (-) {msp, 2vo}
・夜想曲 Nocturnes (-) {msp, btn (tnr)}
... フルート曲と同じ?
・2つの詩 Deux poèmes de Jacques Cheneviève (-) {2vo, p?}
... 1) le parc d'automne, 2) avril
・慈しみ深きイエス Pie Jesu (-) {msp}
・ La lampe du ciel (-) {msp, tnr}
・オ・サルタリス O salutaris (-) {tnr (sop), vln, hrp, org, choir}
不明 ・血統の伝説 la legende du sang (1902)
文献 Vuillemin, L. 1921. Louis Aubert et son oeuvre. Paris: Durand.


オベールを聴く


★★★★☆
"Poèmes Arabes / Nuit Mauresque / Aigues-Marines / De Ceylan / Au Pays / Pays sans Nom / Vieille Chanson Espagnole / Chants Hébraiques / Chansons Françaises / D'un Berceau / La Berceuse du Marin / Tendresse / La Mauvaise Prière" (Maguelone : MAG 111.134)
Françoise Masset (sop) Christophe Crapez (tnr) Claude Lavoix (p)
音楽監督がディディエ・アンリさんだけに,仏近代の作曲家へ途方もなく暖かい視線を送って下さるマゲロヌは,近代好きにはティンパニやアコール並みに有り難いレーベル。そんなレーベルの面目躍如たるCDが,恐らく現状では唯一のオベール歌曲集であるこのCDです。本業が歌い手さんだったためか,彼の残した作品は殆ど評価して貰えず,最近までいつものようにちびマル子の足跡のみが残る未開の大地となっていました。マルコ盤は決して悪い内容ではありませんでしたが,どちらかというと師匠世代のテイストを上手く採り入れて,器用に立ち回った軽めの作家との印象を拭えない内容。正直,小生も本盤を聴いて初めて,ラヴェルと深い交友関係を持った彼の,純音楽的な才気を十全に聴くことができたように思います。さすがは歌い手さん。ラヴェルのカラフルな歌曲に,後年のドビュッシーが持つ,淡い色調の神秘主義をコラージュ。得も言われぬデリカシーと呪術性を備えた素晴らしい秘宝に溜息が出ます。メゾはドゥエ音楽院とパリ音楽院で学び,ヴェルサイユやソルボンヌのバロック音楽センターで経験を積んだ人物。某映画で有名になった台詞【カルペ・ディエム】を名乗る室内楽団で活動中。テノールはメプレのお弟子さん。天然作家フランソワ・パリを歌ってた合唱隊【TMプラス】の一員で,やはりソロ歌手専科の人ではないようです。確かに女性の方はヒーザー・ハーパー似の影を帯びた声質で,かなり癖はあるものの,喉のコントロールは素晴らしく達者。エキゾチックな神秘性のあるオベールの歌曲では,却ってこの声質で女郎蜘蛛めいた凄みが加わっているとも聴け,テノールも声量こそ乏しいながらコントロールは達者。いち合唱団員とは思えぬ仕事をなさっているのでは。ピアノはパリ音楽院で一等。コレ作品集でもお見かけしました。

★★★★
"Orchestral Works :
Cinéma / Feuille d'Images / Offrande / Dryade / Tombeau de Chateaubriand" (Marco Polo : 8.223531)

Leif Segerstam (cond) Staatsphilharmonie Rheinland-Pfalz
今ではすっかり忘れられてしまったカワイソーな作曲家ルイ・オベール。本盤は,現在彼の管弦楽作品をまとめて聴くことのできる唯一の選択肢として,発表から十余年が経過してなお,揺るぎない存在価値を有するCDです。まして本盤が出た当時,他にオベールを聴けるCDなんて存在しませんでした。セーゲルスタムとライン管ってほんと凄いと,うら若い私は,決して上手いとは言えない演奏なんかアバタもえくぼで瞠目したもんです。シャルル・ケックランの『7つの星の交響曲』の向こうを張った『シネマ』に『シャトーブリアンの墓』。映画好きの彼の横顔が標題にも。ルーセルを思わせる躍動感と,その後ミヨーやイベールらによってどんどんどぎついものに変わってゆくことになる,フランス的エスプリに富んだ軽妙さを併せ持つ彼の作品は,小器用さと親しみやすさがあります。『ダフニスとクロエ』にそっくりな『シネマ』の「シャーリー・アムルー」など,印象主義の影響も和声のはしばしに。基本的には後期ロマン派の作風で,ロジェ=デュカスやアンリ・ラボーら,懐旧的なロマン派の延長線上に位置する作曲家と思っていただいて宜しいでしょう(「交響的絵画」という,どこかマスネー的な標題にもそれは見受けられる)。通俗的でリズミカル,そして分かり易い。良く言えば映画音楽のように明瞭で親しみやすく,間口が広い。そしてその割に下品でない。新旧のパラダイムが入り交じったパリの地で,これが彼一流のバランス感覚だったのでしょうねえ。

★★★★
"La Jeunesse d'Hercule / Danse Macabre / Phaéton / Le Rouet D'Omphale (Saint-Saëns) Joyeuse Marche / Gwendoline, Ouverture / Bourrée Fantasque / España (Chabrier) Scherzo (Lalo) Suite Algérienne (Saint-Saëns) Sylvia (Delibes) Les Deux Pigeons / Isoline (Messager) Habanera (Aubert)" (EMI : 7 24358 52102 3)
Louis Fourestier (cond) Orchestre de l'Association des Concerts Colonne : Orchestre National de la Radiodiffusion Française : Orchestre du Théatre National de l'Opéra de Paris
最近,著作権切れ音源を大挙CD化しているEMIの【Les Rarissimes de...(希少音源再発集)】シリーズ。本盤もその中の一枚で,実は作曲家としても有能だったルイ・フレスティエの名演集。1892年モンペリエ生まれの彼は,1925年に『アドニの死』でローマ大賞を受賞したものの,1927年にオペラ・コミークの指揮者となってパリへ出たのちは,指揮の世界で活躍。1946年から1948年に一度だけニューヨークへ渡った以外は,生涯に渡ってフランスを離れることはありませんでした。彼はドイツ流儀の指揮が隆盛だった時代,今のクリヴィヌのようなフランス流儀の指揮を美学にしていたらしく,レパートリーもフランス限定で男気まっしぐら。お陰でパレーやモントゥー,あげくツィピーヌの陰に隠れて,すっかり知名度落ちになってしまいました。このCDも演目はオール・フランス。売れなくなってもフランス一途な生き様は,確かに洒脱な指揮ぶりにも反映。現代の耳には,却って彼の優美な弦あしらいがナチュラルに響き,時代を感じさせない。むしろ先見の明があったとはいえまいか,などと興奮最高潮。残念なことに収録曲は長老組オンパレードで,一部のサン=サーンスを除くと,およそプレモダン。脂汗を垂らしながら耐えること二時間半,耐えた貴方には素敵なご褒美が。掉尾でハバネラのリズムを取るオベールと来たら素晴らしいの何の。ドビュッシー『映像〜夜の香り』の形式感と『海』の管弦楽法を,オノレの中で巧みに醸成した,得も言われぬ筆致に感動必至。フレスティエさんアンタは男だと興奮倍加。彼には晩年に吹き込んだドビュッシーの素晴らしい録音があるとかで。こちらも聴いてみたいものです。

★★★★
"Sillages (Aubert) / Tombeau de Claude Debussy (Dukas; Roussell; Malipiero; Goossens; Bartok; Schmitt) / Tombeau de Paul Dukas (Schmitt) / Clairs de Lune (Decaux)" (3D : 3D 8005)
Marie-Catherine Girod (piano)
大勢に媚びない近代ファンのジャンヌ・ダルクことジロ女史のCD中でも,これは最もロコツに趣味丸出しの一枚。ドビュッシーが亡くなった折りに,追悼企画として実現した「ドビュッシーの墓」を全曲録音した本盤,奏者の好き者度はこれだけでも充分に伺える。さらにはマルコ盤くらいしか見たことのないオベール,1曲しか知られていないドゥコーなど仏近代フェチ感涙必至の豪華オタ精選。ドゥコーはフランス人ですが,シェーンベルクの無調技法にいち早く反応した先見の明の持ち主。ドビュッシーが『映像』を書いていた当時,彼と同じくらいハイな作曲家がここにもいたのかと感心しきりです。『航跡』はこのCDくらいしかお目に掛かったことのない珍曲ですが,無名なままに捨て置かれているのが罪作りなほどの名品。シューマン,リスト,ショパンらの影もちらつきますが,分散和音を多用し,機能を離れた旋法性の高い書法は,既に片足半以上印象主義。管弦楽作品よりも,彼のシリアスな音楽性が良く出ていて,初期のドビュッシーやデュポン辺りの,後期ロマン派と印象派の分水嶺周辺の作品に目がない方は間違いなく愛聴盤となるでしょう。ひょっとしたら競合盤もあるかも知れませんが,ここまで魅力的なカップリングのものは恐らくない筈。お薦めです(付記:本CDの入手に際してはmyaさんのご助力を頂きました。有り難うございます)

2002. 12 22 uploaded ; 2013. 03. 03作品表小改訂