Aの作曲家



ジョルジュ・オーリック Georges Auric (1899-1983)

フランスの作曲家。1899年2月15日ロデーヴ(Lodève)生まれ。モンペリエ音楽院でルイ・コンベ(Louis Combes)にピアノを学び,次いでパリ音楽院へ進学。ジョルジュ・コサードに対位法を師事。最後はスコラ・カントールムへ進んでヴァンサン・ダンディに作曲法を学んだ。ピカソ,コクトー,サティら多分野に渡って進歩的な芸術家と交流(コクトー『雄鳥とアルルカン』(1918)はオーリックに献呈されている)。ミヨー,プーランク,デュレー,タイユフェール,オネゲルと共に反印象主義を標榜して『新青年(のちの六人組)』を結成。その中心的な存在として活躍した。1920年代はディアギレフのロシア・バレエ団のためにバレエ音楽を多数執筆。その後1930年代に入ると,コクトーらと共同で映画音楽の分野へ進出。特に映画音楽には熱心で,マルク・アレグレ(Marc Allegret),ジャン・ドラノワ(Jean Delannoy)などの作品に100を超える曲を提供。新しいメディアへ意欲的に取り組んだ。1954年にはオネゲルの後任として作家・作曲者協会の会長に就任。1979年には名誉総裁を務めたほか,1962年から1968年までパリ・オペラ・コミークの音楽監督も歴任している。近代の書法を用いつつも作風は擬古典的で,雑多な音素材を即物的に組み上げるコラージュ技法に長け,軽妙かつ通俗的でキッチュな筆致を得意とした。1983年7月23日パリにて死去。


主要作品

舞台作品 ・付帯音楽【モリエールの憂鬱】 les fâcheux de Molière (1921/1926) {orch /small-orch}
・バレエ【虚脱】 les fâcheux (1923)
・バレエ【船乗りたち】 les matelots (1924)
・付帯音楽【トルアドク氏の婚礼】 le mariage de monsieur le Trouhadec de Jules Romains (1925)
・バレエ【田園詩曲】 pastorale (1925)
・付帯音楽【調教師】 le dompteur de A. Savoir (1925)
・付帯音楽【ヴォルポーヌ】 Volpone (1927)
・バレエ【鳥】 les oiseaux (1927)
・歌劇【仮面の下で】 sous le masque (1927)
・バレエ【アルシーヌの妖精の魔法】 les enchantements de la fée d'Alcine (1928)
・バレエ【競技会】 la concurrence (1931)
・バレエ【若さの源泉】 la fontaine de jouvence (1946)
・バレエ【フェードラ】 phèdre (1949) {orch} ...交響詩版あり
・バレエ【画家とモデル】 le peintre et son modèle (1950) {orch}
・バレエ【光の道筋】 chemin de lumière (1951)
・バレエ【部屋】 la chambre (1954)
・バレエ【強盗団の悪漢】 le bal des voleurs (1960)
映画音楽 ・詩人の血 le sang d'un poète (1930)...J.コクトー監督
・自由を我らに a nous la liberté (1931)...ルネ・クレール監督
・乙女の湖 Lac-aux-dames (1934)...マルク・アレグレ監督
・マカオ Macao, l'enfer du jeu (1939)...
ドラノワ監督
・永遠の帰還 l'eternel retour (1943)...
ドラノワ監督
・血の仮面 la bossu (1944) ....ドラノワ監督
・シーザーとクレオパトラ Caesar and Cleopatra (1945)...ガブリエル・パスカル,ブライアン・デスモンド・ハースト監督
・しのび泣き la part de l'ombre (1945)...ドラノワ監督
・美女と野獣 la belle et la bête (1946) {orch}...J.コクトー監督
・双頭の鷲 the eagle has two heads (1947) {orch}...J.コクトー監督
・乱闘街 hue and cry (1947) {orch} ...
チャールス・グライトン監督
・スペードの女王 the queen of spades (1948) {orch}...
ソロルド・ディキンソン監督
・娼婦マヤ Maya (1949) ...
レイモン・ベルナール監督
・脱走兵 silent dust (1950) {orch}...
ランス・コンフォート監督
・ムーラン・ルージュ(赤い風車) moulin-rouge (1952) {orch}...
ジョン・ヒューストン監督
・夜ごとの美女 les belles du nuit (1952)...クレール監督
・ローマの休日 Roman holiday (1953)...ウィリアム・ワイラー監督
・歴史は女で作られる Lola Montes (1955) ...
マックス・オルフュス監督
・ノートルダムのせむし男 Notre-Dame de Paris (1957) ...ジャン・ドラノワ監督
・白い砂 heaven knows, Mr.Allison (1957)...
ヒューストン監督
・悲しみよこんにちは bonjeur tristesse (1957) ...
オットー・プレミンジャー監督
・旅 journey (1958) ...リトヴァク監督
・恋ひとすじに Christine (1958) ...ピエール・ガスパール・ユイ監督
・オルフェの遺言 le testament d'orphée (1960) ...コクトー監督
・さよならをもう一度 goodbye again (1961) ...アナトール・リトヴァク監督
・クレーヴの奥方 la princesse de clèves (1961) ...
ドラノワ監督
・回転 the innocents (1961) ...ジャック・,クレイトン監督
・太陽に架ける橋 bridge to the sun (1961) ...エチャンヌ・ペリエ監督
・火刑の部屋 la chambre ardente (1962) ...ジュリアン・デュヴィヴィエ監督
・マインド・ベンダース mind benders (1963) ...ベイジル・ディアデン監督
・大進撃 la grande vadrouille (1966) ...ジェラール・ウーリー監督
・悪のシンフォニー the poppy is also a flower (1966) ...テレンス・ヤング監督
・女と女 Thèrese et Isabelle (1967) ...ラドリー・メツガー監督
・クリスマス・ツリー l'arbre de noël (1969) ...
テレンス・ヤング監督
管弦楽曲 ・序曲 ouverture du 14 juillet (1921)...「エッフェル塔の花嫁花婿」の序曲
・リトゥルネロ riturnelles (1921)...
「エッフェル塔の花嫁花婿」の一部
・セーヌ川,ある朝に la seine, un matin (1937) ...ドラノワ,イベール,ミヨー,ソゲ,プーランク,シュミット,タイユフェルと共作
・スコットランド風 écossaise (1952)
・ML (1956)
器楽 ・ファンファーレ fanfare (1924) {brass?}
・ブラス・バンド brass band (1924) {brass}
・マルグリット・ロンの名による変奏曲集 variations sur le nom de Marguerite Long (1924) {6inst}
・アリア aria (1927) {fl, p}
・ヴァイオリン・ソナタ sonate pour violon et piano en sol majeur (1934) {vln, p}
・吹奏三重奏曲 trio en ré majeur (1938) {ob, cl, bssn}
・即興曲 impromptu (1946) {ob, p}
・心象の産物その1 imaginées I (1968) {fl, p}
・心象の産物その2 imaginées II (1969) {vc, p}
・心象の産物その3 imaginées III (1971) {cl, p}
・心象の産物その6 imaginées VI (1976) {vo /ob, inst}
ピアノ曲 ・ガスパルとゾエ Gaspar et Zoé ou l'après-midi dans un parc (1914) {p}
・前奏曲 prélude (1919) {p} ...
『六人組のアルバム』の1曲
・さらばニューヨーク adieu, New Nork! (1919) {p}
・ソナチヌ sonatine en sol majeur pour piano (1922) {p}
・5つのバガテル cinq bagatelles (1925-1926) {p}
・小組曲 petite suite (1927) {p}
・ピアノ・ソナタ sonate pour piano en fa majeur (1930-1931) {p}
・3つの小品 trois morceaux (1934) {p)
・3つの即興曲 trois impromptu (1940) {p}
・9つの短い小品 neuf pièces brèves (1941) {p}
・フランス舞曲 danse française (1946) {p}
・ワルツ valse (1949) {2p}
・パルティータ partita (1953-1955) {2p}
・心象の産物その5 imaginées V (1974) {p}
・ドゥーブル・ジュー(ふたり遊び)doubles-jeux I-III (1974) {2p}
歌曲 ・3つの間奏曲 trois interludes (1914) {vo, p}
・ジャン・コクトーの3つの詩 trois poèmes de Jean Cocteau (1918) {vo, p}
・アルファベット alphabet: de R.Radiguet (1920) {vo, p(orch)}
・炎の交歓 les joues en feu: de R. Radiguet (1920) {vo, p}
・5つの詩 cinq poèmes de Gérard de Nerval (1925) {vo, p}
・ヴォーカリーズ vocalise (1926) {vo, p}
・2つのロマンス deux romances de M. Desbordes-Valmore (1926) {vo, p}
・3つのカプリース trois caprices de T. de Banville (1927) {vo, p}
・4つの詩 quatre poèmes de G. Gavory (1927) {vo, p}
・5つの歌 cinq chansons de L. Hirtz (1929) {vo, p}
・春 printemps (1935) {vo, p}
・3つの詩 trois poèmes de Louise de Vilmolin (1940) {vo, p}
・3つの詩 trois poèmes de L.P. Fargue (1940) {vo, p}
・6つの詩 six poèmes de P. Eluard (1940-1941) {vo, p}
・4つの不幸せなフランスの歌 quatre chants de la France malheureuse (1943) {vo, p}
・3つの詩 trois poèmes de Max Jacob (1945-1946) {vo, p}
・2つの詩 deux poèmes de Henri de Montherlant (1965)
・心象の産物その4 imaginées IV (1973) {vo, p}
その他 ・想起されたもの les imaginaires (1933)
・5つのフランス歌曲 cinq chanson français (1940) {choir}


オリックを聴く


★★★★
"La Belle et la Bête" (Marco Polo : 8.223765)
Adoriano (cond) Axios / Moscow Symphony Orchestra

六人組の中でも,音楽的に最もお調子者だったオーリック。教条的な伝統を踏まえ,ロマン派や古典派のもつオーソドックスな旋律・リズム・和声の音素材をちゃんと使いながら,なお現代の耳に堪える音楽を作りましょう・・これが元々,それら全てを徹底して抽象化し解体してしまうドビュッシーに対するアンチテーゼで集まった,六人組のお約束でした。しかし,根っからエスプリと皮肉の世界に生きるパリジャンの中でも,特に鼻持ちならない音楽インテリが六人も集まったのです。まともな古典帰りなんてあり得ません(笑)。オーリックの場合は,それら素材をピカソの絵の如くハチャメチャに組み替えて,バカっぽくしてしまうコラージュ技法が大得意。仰々しく,けばけばしいその素材利用テクニックは,六人組の通俗的でキッチュな側面を,最も色濃く反映していると言えるでしょう。申すまでもなく,その作品にクラシックらしい品格を期待するのはほぼ不可能です。そんな中で唯一,道化師芝居めいたところのない彼の姿を垣間見ることができるのは,御執心だった映画音楽。基本的にBGMなので,どうしても純音楽的な妙味は減退するのがこのジャンル。しかし,もともとその妙味が皆無なオーリックとなると話は別。アホウドリ方向へ偏倚する彼を映画スタッフ一同抑え込み,意外に穏健でカラフルな印象派風の管弦楽書法を聴けます。演奏もまずまず。

★★★☆
"Mélodies :
Alphabet / Les Joues en Feu / Trois Interludes / Six Poèmes / Quatre Chants de la France Malheureuse / Trois Poèmes (M. Jacob) / Trois Poèmes (Louise de Vilmorin) / Printemps" (Timpani : 1C1049)

Sonia de Beaufort (msp) Martial Defontaine (tnr) Alain Jacquon (p)

張りのあるお声でブーランジェの『空の隙間』や『詩篇集』,ルネ=バトンの歌曲集なども吹き込んでいる美貌のソプラノ歌手ボーフォル女史のオーリック歌曲集。映画音楽で若干の選択肢がある以外は,その殆どが抱き合わせ販売でしか世に出てこないオーリックに興味をお持ちの方には,貴重な機会を提供しているCDです。古典帰りを旨とする六人組のなかでも,その帰る古典を「裸の王様化」しようとする政治的意図が強かったこの御仁。ましてジャンルはシャンソンです。これでヤツが宴会芸を開始しないはずないでしょう。記憶が確かなら,シャンソン的な軽さと生来の馬鹿っぽさが最高度に横溢したこのCD,買った次の瞬間島流しの刑に処してしまいましたので,感想はいずれ,日を改めて書くことに致します・・って,目下日本唯一のまともなオーリック・ページなのに,なんちゅうヒドイ扱い(笑)。でも悪いのは,一向にまともな音楽を聴かせてくれないヤツですよ!あっしじゃありません。何せ私は彼のために3枚も・・(以下略)

★★★☆
"Sonate pour Piano (Auric) Sonate pour Piano (Dutilleux) Sonate pour Piano (Jolivet)" (Solstice : SOCD 18)
Marie-Catherine Girod (piano)
近代ものピアノ作品に殊更造詣が深く,本作を始め多くの無名作家に慈悲の光を当てるフランスの女流ピアノ弾き,ジロ女史による近代ピアノ・ソナタ集です。オーリックの作品を聴いたのは久しぶりですが,やはり初期のミヨーに共通する斜に構えた擬古典音楽。ピカソの絵のように,至って古典的なソナタ風の主題をぶっつぶっつと裁断し,おどろおどろし気にデフォルメしてくっつけ直すシニカルな制作態度が眼に見えるようです。いかにも移り気でムラッ気の多いフランス人らしい作品という印象ながら,歌曲など聴く限り通俗的で下品の極みなオーリックとしては,取り敢えずクラシックに聞こえるこの作品なんか,入口には丁度良いかも知れません。ところで,本ソナタ集はいずれも速いパッセージの多い技巧的な作品が並びますが,演奏は実に見事。これまで聴いた彼女のCDの中でも,「鬼気迫る」という点では最高度の出来映えではないかと思います。特に出色はデュティーユのソナタ!これは凄い。献呈者ジョワをも遙かに凌駕する,異常に速いテンポ取りに唖然とさせられる本ソナタは妖気すら漂う怪演で,完全に独自の世界を構築しているといっても宜しいのではないでしょうか。デュティーユ・ファン必聴。オーリックのソナタも,演奏に関しては恐らく現存する最強レベルの録音ではないかと思います。

(2005. 1. 22)