Bの作曲家



アルフレッド・ブリュノー Alfred Bruneau (1857-1934)

フランスの作曲家。本名アルフレード・ルイ・シャルル・ボナヴァンチュル・ブリュノ(Alfred Louis Charles Bonaventure Bruneau)。1857年3月3日,パリ生まれ。国際作曲者連盟(l'union internationale des composieurs; 1884年)の創設者でもあったヴァイオリニストの父のもと,幼少期からチェロを学んだ。1876年,16才でパリ音楽院に進み,1879年まで在籍。オーギュスト・フランショーム(Auguste Franchomme)にチェロ,マリー・ガブリエル・サヴァール(Marie Gabriel Savard)に楽典と和声法を学び,1879年から1881年までジュール・マスネーに作曲法を師事。1876年にチェロ科一等を得た。パドルー管弦楽団のチェロ奏者に就任後作曲を始める。1881年にカンタータ『ジュヌヴィエーヴ』でローマ大賞第2位を獲得しローマへ留学。1895年にレジオン・ドヌール賞を受け,のちにフォレの後任として学士院視学官(Inspecteur)を務めるなど早くから評価され,とくにオペラ作家として成功。1888年に自然主義の作家エミール・ゾラ(Emile Zola)の【夢(Le Rêve)】を読んで強く共鳴し,それ以降は彼との親交のもと,イタリア・ロマン派オペラやワグネリズムの手法に根ざした懐旧的な舞台作品を多数執筆した。1900年から1904年まで,オペラ・コミークでタクトを執るなど,指揮者としても活躍。批評家としても,独立批評(Revue Indépendante)誌(1889-1890)を皮切りに,ジル・ブラ(Gil Bras)誌(1892-1895),フィガロ誌(1895-1901),ル・グラン・ルヴュ(Le Grande Revue)誌(1902),ル・マタン(Le Matin)誌(1904-1907, 1909-1933)で健筆を揮った。1934年6月15日パリにて死去。


 主要作品

歌劇 ・悪戯と奸計と復讐 scherz, list und rache (1878)
・ケラム Kérim (1887) {3acts}
・夢 le rêve (1891) {4acts}
・水車小屋への襲撃 l'attaque du moulin (1891-1893) {4acts}
・メシドール messidor (1894-1896) {4acts}
・暴風 l'ouragan (1897-1900) {4acts}
・ラザール lazare (1899) {1act}
・子どもの王 l'enfant roi (1902) {5acts}
・付帯音楽【アベ・ムーレの罪】 la fate de l'Abbé Mouret (1904-1905)
・ミクランの誕生 naïs Micoulin (1906) {2acts}
・あの四日間 les quatre journées: conte lyrique (1908-1916) {4acts}
・喜劇【王カンドール】 le roi Candaule (1917-1919) {4acts}
・天上の楽園 le jardin du paradis: conte lyrique (1913-1921) {4acts}
・アンゲロ Angelo, tyran de Padoue (1927) {5acts}
・喜劇【ヴィルジニー】 virginie (1928-1930) {3acts}
バレエ ・バッカス神の踊り子 les bacchantes (1887)
管弦楽曲 ・英雄的な序曲 ouverture heroïque (1883-1884)
・眠れる森の美女 la belle au bois dormant (1884-1886)
室内楽 ・幻想曲 fantaisie (1901) {hrn, p}
歌曲 ・ジャンヌ・ダルク Jeanne D'Arc (1878)
・2つの小品 deux morceux de genre (1878) {vo, chamber}
・5つの歌 cinq mélodies (1879)
・若さの歌 mélodies de jeunesse (1881)
・カンタータ【ジュヌヴィエーヴ】 cantata 'Geneviève' (1881)
・レダ Léda (1882) {vo, orch}
・独唱による2つの歌 deux mélodies pour un voix (1882-1884)
・小さきものたち les petiots (1887) {2f-vo}
・ペンテジレア penthésilée (1884-1888) {vo, orch}
・3つの歌 trois mélodies (1882)
・五月の夜 nuit de mai (1886) {vo, chamber}
・10のフランスの歌 dix lieds de France (1891-1892)
・6つの踊りの歌 six chansons à danseur (1894-1912)
・レクイエム réquiem (1896)

・生命の歌 chants de la vie (1911-1912)
・タンバリン le tambour (1915) {vo, orch}
・旗の歌 le chant du drapeau (1915-1916) {vo, orch}
・船 le navire (1917) {vo, orch}
・古風な歌 chants antiques (1922-1927)
・子どもらしさと若さの歌 chansons d'enfance et de jeunesse (1922-1927)
・戸外にて plein air (1932)
・四部合唱による2つの歌 deux chansons ou quatuors vocaux (1933) {4vo}


 ブリュノーを聴く


★★★★
"Requiem / Lazare" (RCA : 74321 75087 2)
Jacques Mercier (cond) Francoise Pollet, Mary Saint-Palais (sop) Sylvie Sullé (msp) Jean-Luc Viala (tnr) Laurent Naouri (btn) Orchestre National d'ille de France : Choeur Régional Vittoria d'ille de France
ブリュノーは新旧それぞれの価値観が激しくぶつかった前世紀末のフランスで活躍したオペラ作家です。ドビュッシーよりも僅か6才年齢が高いだけですが,その作風は印象主義者として革新の道を選んだドビュッシーらとは正反対。イタリア歌劇やワグネリズムなどに深く傾倒し,模範的といってもよいくらい徹底して保守的な作風を堅持しました。保守派の優等生でエリートな彼は当然,年長者にも受けが良く,結局3位止まりだったラヴェルとは反対に,あっさりローマ大賞を受けてイタリアへ留学。その後も華やかなパリ社交界に寄与し,平穏無事に生涯を終えたといえるでしょう(その代わり,最終的には報われたドビュッシーらとは正反対に,今では殆ど知る人もいない)。彼のCDはマルコ盤も出ていますが,内容は極めて保守的なロマン派オペラ。シュミット『サランボー』の録音もあるジャック・メルキエと仏ヴィットリア管による本CD,比較的後年の作品でもあり『レクイエム』という宗教的な素材だけに,あるいはと思ってお布施を捧げてみたものの,やはり彼の徹底したオペレッタ趣味に大きな変化はありません。シャルパンティエ,マスネ,グノーなど,フォーレやフランクよりもさらに懐旧的で大仰なロマン派を好む方のための音楽です。

★★★★
"Entr'acte pour IVe acte de Messidor / Le Légende de l'Or / Prélude du Naïs Micoulin / Suite Tirée de l'Opera L' Attaque du Moulin" (Marco Polo : 8. 223498)
James Lockhart (cond) Staatsorchester Rheinische Philharmonie
ブリュノーは保守派の優等生として,多くの舞台作品を残しましたが,それらの中から管弦楽で奏される断章部分を幾つか切り出したのがこのCD。上記盤が出るまでは,最も手軽に入手でき,内容も最もまとまったブリュノー作品集だったのではないかと思います。作風はやはり基本的に師匠世代の流儀に則っているものの,古色蒼然とした曲のはしばしで披露する移調センスは秀抜ですし,各声部への配慮が行き渡った構成力もさすがローマ大賞2位。非凡な才気は充分に伺える。保守派の作家たちにも応分の理解をお持ちの方であれば,秘曲としてかなり愉しんでいただけるのではないかと思います。演奏するは,オベール・ルムランもポール・ル・フレムも何でもござれ。厳窟王マルコが最も信頼するドイツの迷オーケストラ,ライン州立管弦楽団とロックハート。優美かつ伸びやかに鳴る筈の弦部が,相も変わらず各フレーズの入りが乱れ,随所で誰かが間抜けに音を外し,聞き苦しいことおびただしいのは,もう改めて咎め立てする気にもならぬ当楽団の性です。「いちいち演奏に文句をいうなら買うなよ,ただし他の選択肢はないぜ・・」そんな彼らの含み笑いが,演奏のそこここからちらついて参ります。・・そうです。これこそ,マイナー漁りをする貴方には,生涯付いて回る哀しい業なのです。

(2005. 1. 29 Upload, US west standard time)