Composer of 'C'



セシル・シャミナード Cécile Chaminade (1857-1944)

フランスのピアノ奏者,作曲家。1857年8月8日,パリ生まれ。本名セシル・ルイーズ・ステファニー・シャミナード(Cécille Louise Stéphanie Chaminade)。父は船乗りであったが,母はピアニストであり,自宅に著名な音楽家を招いて音楽会を催す裕福な家庭のもと,音楽に囲まれて成長。8才で作曲を始めるなど才能を発揮した。まだ女性の入学が認められていなかったため音楽院への進学はできなかったものの,「僕の小さなモーツァルト」と呼んで可愛がっていた隣人のビゼーが,両親を説得。在宅のままフェリクス・ル・コペー(Felix Le Coppey)にピアノ,オギュスタン・サヴァール(Augustin Savard)に対位法とフーガおよび和声法,マルタン・マルシック(Martin Marsick)にヴァイオリン,バンジャマン・ゴダール(Benjamin Godard)に作曲法を師事した。1875年(77年の資料もあり)にパリでピアノ奏者としてデビューを果たし,欧州各国を楽遊。1879年には国民音楽協会の会員となり,1908年にはアメリカ公演も果たすなど,ピアニストとして国際的に活躍。その傍ら,200曲におよぶピアノ作品を中心に,350曲を超える作品を残し,広く愛好された。「音楽が私の愛であり,私は音楽に仕える尼僧です」,「芸術家同士の結婚はおぞましい。いつも一方が相手を破滅させる」の言葉通り,生涯に渡り独身。57才で第一次大戦の勃発に直面し,音楽を捨てて看護婦となるも,激務が祟り片足の切断を余儀なくされた。1944年4月18日,モンテカルロにて死去。


主要作品

舞台作品 ・喜劇【セヴィリアの女】 la Sévillane op. 19 (1882) {1act}
・交響的舞踏【カリロエ】 callirhoé (1888) {ballet, orch}
・喜劇【愛のロンド】 la ronde d'amour (-)
管弦楽曲 ・管弦楽のための組曲 第1番 suite pour orchestre No. 1,op. 20 (1881)
・管弦楽のための組曲 第2番 suite pour orchestre No. 2 (-)
協奏曲 ・演奏会用小品 concertstück pour piano et orchestre, op. 40 (1896) {p, orch}
・小協奏曲 concertino pour flûte et orchestre , op. 107 (1905) {fl, orch}
・6つの小品 six pièces pour piano et orchestre, op. 55 (-) {p, orch}
室内楽/器楽 ・ロマンチックな小品 pièce romantique, op. 9 (-) {fl, p}
・ピアノ三重奏曲第1番 ト短調 trio, op. 11 (1881) {vln, vc, p}
・舞踊アリア air de ballet, op. 30 (-) {fl, p}
・ピアノ三重奏曲第2番 イ短調 trio, op. 34 (1887) {vln, vc, p}
・ロンド rondeau, op. 97 (-) {vln, p}
・星のセレナード sérénade aux étoiles op.142 (-) {fl, p}
・スペイン風セレナード sérénade espagnole, op. 150 (1903) {vln, p}
・スカーフの踊り scarf danse (-) {fl, ob, cl, bssn}
・3つの小品 trois pièces pour violon et piano (-) {vln, p}
・子どもらしいパストラール pastorale enfantine (-) {fl, p}
・瞑想曲 méditation (-) {org}
ピアノ曲 ・2つのマズルカ deux mazurkas, op. 1 (1869)
・とんぼ libellules, op. 24 (1881)
・セレナード sérénade, op. 29 (1884)
・交響的練習曲 étude symphonique, op. 28 (1890)
・ピアノ・ソナタ sonate pour piano en ut mineur, op. 21 (1895)
・演奏会用練習曲 six études de concert, op. 35 (1886)
・異教徒の踊り danse païenne (1896) {2p}
・青の物語 contes bleus, op. 122 (1906)
・子どものアルバム album des enfants, op. 123 (1906)
・戯けた練習曲 étude humoristique, op. 138 (1910)
・小さな負傷兵の子守歌 berceuse du petit soldat blessé, op.156 (1919)
・スペイン風カプリース la morena, op. 67 (-)
・カルナヴァル風のワルツ valse carnavalesque, op. 73 (-)
・交響的 symphonique, op. 117 (-) {2p}
・3つの小品 trois pièces (-) {2p}
・ヴァルス=カプリス valse caprice (-)
・ピエレット pierette (-)
・アラベスク arabesque (-)
・即興曲 impromptu (-)
・古風な形式の小品 piece dans le style ancien (-)
・牧歌 idylle (-)
・ブルターニュの歌 chanson Bretonne (-)
歌曲 ・劇的交響曲【アマゾーヌ】 les amazones (1890) {vo, choir, orch}
・忍び逢い le rendez-vous (1892) {vo, p}
・もしも私が庭師なら si j'étais jardinier (1893) {vo, p}
・我が心の歌 mon coeur chante (1896) {vo, p}
・夏の夜 nuit d'été (1896) {vo, p}
・蒼き故郷にて au pays bleu (1898) {vo, p}
・宝石箱 ecrin (1902) {vo, p}
・見えない恋 amour invisible (1905) {vo, p}
・幸せな女たち les heureuses (1909) {vo, p}
・肖像 portrait: valse chantée (-) {sop, fl, p}
・安逸な月 la lune paresseuse (-)
・ un soufflé a passe (-) {vo, p}
・ ton sourire (-) {vo, p}
・ソンブレロ sombrero (-) {vo, p}
・ avril s'éveille (-) {vo, p}
・行け我が友よ viens, mon bien-aime (-) {vo, p}
・初めての手紙 ma première lettre (-) {vo, p}
・愛の言葉 mots d'amour (-) {vo, p}
・ plainte d'amour (-) {vo, p}
・ヴィラネル vilanelle (-) {vo, p}
・アレルヤ alleluia (-) {vo, p}
・悲しい歌 chanson triste (-) {vo, p}
典拠 Jenic, D.P. 1994. Women composers: the lost tradition found. NY: The Feminist Press.


シャミナードを聴く


★★★★
"Oeuvres pour Piano :
Sonate / Arabesque / Impromptu / Automne / Tarentelle / Piece dans le Style Ancien / Scherzo / Idylle / Chanson Bretonne / Fileuse"
(EMI : 7243 5 65563 2 4)
Danielle Laval (piano)
シャミナードは生粋のパリジャンで,裕福な家に育った育ちの良いお嬢さんです。育ちが良い反面,娘の教育にはやや不熱心な父親の存在という障害を抱えることになりました。しかしビゼーに見いだされ,パリ音楽院に行かずして音楽院の教師たちから最上の教育を施されるという幸運。ティーンエイジャーで演奏活動をこなした才媛でもありました。そんな彼女だけに,作風はいたって穏健。シューマンの『謝肉祭』に『革命』のショパン風味を少しだけ加えたような,多弁なサロン音楽という感じですか。ルノワールの明るい色調で描かれた「ピアノを弾く少女たち」。お洒落でちょっと勝ち気そうなあの娘たちの雰囲気をイメージすると,それほど外れていないことでしょう。調性感はいたって明瞭で,旋律,構成なども平明かつ具象的なので,前述した作家が駄目な人には聴き映えするところは殆どないと思いますけれど,許容範囲が広い方なら,薄幸じゃないショパンの面持ちでそれなりに興じ入っていただけると思います。美貌の才媛ダニエル・ラヴァル女史の演奏も,ラローチャ風の力感に溢れていて,良いです。

★★★☆
"Un Souffle a Passé / Ton Sourire / Avril S'éveille (Chaminade) Cendrillon / Paysage Triste / Ariette / En Silence / Non n'Irons plus Au Bois / Le Printemps / La Derniere Feuille / Priere / Impressions Fausses (Féjard)" (Maguelone : MAG 111.114)
Ghyslaine Raphanel (sop) Simone Féjard (p)
ピアノ曲であれば,最近は随分有名になった気がするシャミナード。ただ個人的には,婦女子の手習い用サロン音楽の域を出ないピアノ曲は,大きな印象が残らないのも事実。となれば,仏近代の伝統である歌曲で一発長打を期待するしかありません。ピアニストとしての自負を持ち,ピアノ曲ばかり200曲も書いた彼女が遺した他ジャンルの作品は少なく,ここでも僅かに三曲しか聴けませんけれど,彼女を見出したビゼーや,師匠だったゴダールに通じる,穏健な仏歌曲。個人的には物足りなさを禁じ得ぬものの,歌手の皆さんが幕間にでも挿入すれば,ちょっとオシャレなアクセントなるのでは。いっぽう驚いたのは,併録のフェジャール女史。高度な旋法表現を駆使した,アンニュイで神秘的な旋律美,霧に霞む風景の如く繊細な和声あしらいは,紛れもなくドビュッシー。さすがに本家と比べると随分薄味とはいえ,埋もれさせるには惜しい才能です。パリ歌劇場付属歌唱学校での歌唱指導をなさっている彼女は,作曲家としては100%無名と言って良いと思いますけれど,実はパリ音楽院でロジェ=デュカスに師事し,卒業時にはピアノ科,伴奏,和声法,作曲法科で入賞。仏歌曲賞を獲得した実績もお持ちだとか。歌曲以外にも吹奏八重奏曲,ヴァイオリン・ソナタ,管弦楽のための組曲を1つずつ書いているようです。「作曲は趣味」と割り切っている彼女に,この先さらなる録音をお願いするのは無理かも知れませんが,この筆致で無名に終わらせるのは惜しい。美声ながら線が細く,弱音のコントロールに不安定さの拭えないソプラノ(バーゼル歌劇場の専属歌手)に引き比べ,ピアノ伴奏は抑制が利き,ジェントルで素晴らしい。もっと欲を出しましょうよ。ジャズメンなんて,大した受賞歴がなくてもばんばんCD作ってるんですから。

(2005. 2. 10 USW Standard Time)

情報・音盤蒐集に際し,あんぐら社中某氏の協力を得ました。