Composer of 'C'



アンリ・コレ Henri Collet (1885-1951)

フランスの批評家,作曲家。1885年11月5日,パリ生まれ。大統領の特赦を得て,14歳半で学士号を得るほど才能を示すとともに,ボルドー音楽院へ進み,ピアノをジョセフ・ティボー(Joseph Thibaud:高名なヴァイオリン奏者ジャック・ティボーの兄弟)に師事。その後トゥルーズでセヴラックに,スペインでフェリペ・ペドレル,オルメダ,ファリャに作曲法を学んだ。早くから文学を通じてスペインに憧憬を抱いた彼は,1900年(学士号を得た3年後)には渡西。スルバラーン(Zurbarán)に居を構え,カスティリア地方を旅行しながら民謡や中世多声音楽の採集にあけくれた。その功績が評価されてカサ・ヴェラスケス研究院(Casa Velasquez)の教授職に就任。その後は作曲活動にも本格的に取り組む。1913年の帰仏後は,仏西の楽壇を結ぶ架け橋的な存在として活躍。1920年1月16日および23日付の『コメディア(Comoedia)』誌上で新青年のメンバーを指して「六人組(Groupe des Six)」と呼び,以後,専ら六人組と呼ばれた彼らの名付け親として後世に名を残すことになった。文筆家としては,一連の研究成果をまとめた『16世紀西班牙音楽の神秘(Le mysticisme musical espagnol au XVIe siècle)』や,グラナドス,トゥリーナ,ファリャらとの交流をもとに書かれた『20世紀西班牙音楽に関するエッセー(L'essor de la musique espagnole au XXe siècle)』のほか,1929年に小説『バラタリアの島(L'île de Barataria)』で,国民文学賞の受賞がある。1951年11月23日パリで死去。


主要作品

舞台作品 ・バレエ音楽【スペイン酒場】 le cabaret Espagnol (1918)
・ intermède 'la cueva de Salamanca' (1923) {1act} ...
M. de Cervantes台本
・ godefroy: bouffonnerie musicale, op.81 (1926) {1act} ...
G. Courteline台本
・バレエ音楽【クラベリトス】 clavelitos, op.87 (1928) ...
A. Bonifacio台本
・バレエ音楽【】 el baile de los enanos (1929)
・喜劇【アルジェのセルバンテス】 Cervantes a Alger (1930) {3act} ...
J. de la NibleおよびR. Thomas台本
・無言舞踏【闘牛士たち】 los toreros (1932) {1act, 7tbl} ...
F. Rosan台本
・ les trois tonadillas: intermède lyrique espagnol (1936) {3tbl} ...
17世紀の民話が原作
・喜劇【黄金の山羊】 la chèvre d'or (1937) {7tbl} ...
P. AreneをもとにA. Birabeau台本
・(邦訳不詳) font aux cabres:musique de scene (1938) {3act} ...
J. CassouおよびJ. Camp台本
・サルスエラ【サラメアのポルトガル人】 el alcade de zalamea (1946) ...
数字は初演年。サルスエラはスペイン版軽劇のこと。
・オペレッタ【】 La gitanilla (1938) {3act} ...
CervantesをもとにM.Boukai台本
・オペレッタ【ゼラニウム婦人】 mademoiselle Geranium (1938) {1act} ...
P. Bass and F. Salomon
・ les amants de Galice: piece de theatre (1942) {12tbl} ...
L. de VegaをもとにCamp台本
・オペレッタ【ドン・ホセ】 Don José (1951) {3act} ...
CampおよびJ. Raymond台本
・喜劇【ドンファンの手管】 les fils de Don Juan (-)
管弦楽曲 ・ la chevauchée des valses qui rient (1914) {chamber}
・ sardane (1931) {orch /chamber /f-vo, orch(chamber)}
・ゴドフロイ godefroy (1943) {orch /p} ...
舞台音楽の管弦楽版か
・アルハンブラ交響曲 symphonie de l'Alhambra (1947)
協奏曲 ・ブルゴスの詩曲 poème de Burgos, op.30 (1912) {vln, orch} ... のちRecuerdos vol.1に「Burgos」として編曲され収録
・ romeria, op.54 (1920) {vln, chamber} ...
詩曲をもとに改訂したものか?
・カスティリア狂詩曲 rapsodie castillane, op.73 (1924) {vla(vln), orch}
・フラメンコ協奏曲第1番 concerto flamenco No.1 (1946) {p, orch}
・フラメンコ協奏曲第2番 concerto flamenco No.2 (1946) {vln, orch}
室内楽曲 ・カスティラーナ castellanas, op.32 (1921) {2vln, vla, vc, p}
・カスティリア風のソナタ sonate Castillane, op.60 (1921/1922) {vln p /fl, ob, cl, bssn, hrn, perc, hrp}
・カスティリア風の三重奏曲 trio Castillan, op.61 (1921) {vln, vc, p}
・カスティリアの歌 chants de Castille (1922) {ob, p}
・十重奏による【ラ・ペーラ・モラ】 la perra mora, op.77 (1925) {fl, ob, cl, bssn, hrn, 5strings (vln, vc, p)}
・ロメリア・カスティラーナ romeria castellana, op.76 (1925) {5winds}
・カスティリア風弦楽四重奏曲 quatuor Castillan (1937) {2vln, vla, vc}
・ブリヴィエスカ briviesca (-) {g}
ピアノ曲 ・カスティリア民謡集第1集 cantos de Castilla, vol.1 (1920)
・カスティリア民謡集第2集 cantos de Castilla, vol.2 (1922)
・ recuerdos, vol.1 (1923)
・ recuerdos, vol.2 (1923)
・カスティリア舞曲 danzas Castellanas vol.1, op.75 (1925) ...
第二集は紛失,未発見。
・クラベリトス clavelitos, danses gitanes, op.87 (1928) ...
同名のバレエ音楽より編曲
・スペインの黄金の騎士の踊り danses espagnoles de la chevre d'or (1936) ...
同名の歌劇より編曲
・ alma espanola: 75 recuerdos, cancionero espagnol (1942)
・ danses espagnoles provencales, (1943)
・ album d'Espagne (1948)
歌曲 ・フランシス・ジャメの5つの詩 cinq poèmes de Francis Jammes (1909) {f-vo, p}
・4つの風景 quatre paysages (1920) {vo, p} ... S.Austin詩
・ある一日の詩 poema de un día: six mélodies castillanes (1920) {f-vo, p}
・カスティリア地方の5つの民謡 cinco canciones populares Castellanas, op.69 (1923) {f-vo, p}
・ガリシアの恋人たち los amantes de Galicia (1942)
・7つのブルゴスの民謡集 siete canciones populares de Burgos, op.80 (1926) {vo, p}
・痛み la pena (1932/1933) {alto, fl, ob, p(hrp), strings (vln, vla, p)} ... M.Machado詩
・15世紀スペインの14の多声唱歌 14 chants polyphoniques espagnols du XVe siecle (1935) ...
編曲作品
・ sur les sentiers du rêve (1945) {vo, p} ... E.-E. Marliac
合唱曲 ・インヴィオラータ・マリア inviolata Maria, op.88 (1928) {2vo, org(pf) /f-vo, cl, org(p)}
・五旬節の短いミサ missa brevis in Pentecoste: et in Honorem, op.90 (1928) {f-vo, sop, alto, tnr, bass, cl, hmn(org), 2vln, vla, vc}


コレを聴く


★★★★
"Concerto Flamenco No.1 pour Piano et Orchestre / Concerto Flamenco No.2 pour Violon et Orchestre / Sinfonie de l'Alhambra" (Claves : CD 50-9801)
Gary Brain (cond) Régis Pasquier (vln) Ricardo Requejo (p) Real Orquesta Sinfonica di Sevilla
六人組の命名者としてのみ知られる批評家アンリ・コレは,1885年パリ生まれ。仏人でありながら早くからスペインに憧憬を抱いた彼は,20世紀に入ると程なく彼の地に渡り,カサ・ヴェラスケスの教授に就任。民謡を収集しながら,スペインの作曲家たちとの交流の中で生涯を送りました。専ら批評家としてしか認知されていない彼ですが,実はかなり積極的に作曲もこなした様子。本盤はその知られざる側面に光を当てた世界初のコレ管弦楽作品集。大物レジ・パスキエがヴァイオリンで参加し,ディアパゾンで5つ星を獲っただけに,演奏もややヴァイオリンが硬く僅かに細部のコントロールが緩い(恰幅良い)他は大変見事なものです。特にセヴィリア交響楽団の演奏が素晴らしいのにはびっくりしました。コレの作風は作品の標題が示す通り,終生愛して止まなかったスペイン音楽への憧憬の念を形にしたもの。世代的にはドビュッシーより一回り若かったにも拘わらず,形式はむしろ懐旧的なロマン派優等生。スペイン訛り全開の独奏部を,スペイン民謡のリズムが支えながら,そこに土着の彩りを加える。いかにも批評家だった彼らしく,イデオロギー先行気味の分かりやすい作風といえるでしょう。

★★★☆
"Cantos de España / Cinco Canciónes Populares / Castellanas / Cantos de Castilla / Siete Canciónes Populares de Burgos / Poema de Un Dia / La Pena / Los Amantes de Galicia" (Claves : 50-9506)
Rachel Yakar (sop) Claude Lavoix (p)
六人組の命名者コレの作品集は2枚あり,こちらは1995年に,世界初のコレ作品集として発表された歌曲集です。コレはフランス人ながら,早くからスペインに憧れ,ついには彼の地に移ってしまうほど。この歌曲にも,そんな彼の偏愛ぶりがべったり記録されております。田舎者ほど,東京に住んだ途端めかし込んで渋谷に出たがるもの。これと同じく,フランス人だったがゆえに尚のこと,彼は憧れの地に染まろうと必死。スペインと言えばカンツォーネ。歌曲のジャンルで彼が張り切らぬ筈はありません。スペインの風を一杯に受け,親交の深かったファリャやトゥリーナ以上にコッテコテ。ブラインド・テストで,(言語が仏語なのを別にすれば)これが仏人の作であると気づく人は殆どいないんじゃないでしょうか。逆に言えば,仏人であることの価値を端から投げた彼は,作曲家としてファリャやトゥリーナと互することを自ら放棄してしまった。好きだから亜流でも気にしない・・そんな素直さ(悪く言えば自覚のなさ)が,批評家の批評家たるゆえん。同時代を生き,同じくスペイン情緒たっぷりの歌曲を多数遺したラヴェルと比べれば,皆さんにもご納得いただけることでしょう。ソプラノは,アルミン・ジョルダンと組み,エラートにラヴェルの『シェヘラザード』を録音しているリヨン生まれの仏人。パリ高等音楽院を出て,オペラ・コミークでプルミエ・プリを獲得。ドイツ楽壇とも縁が深く,1964年からライン地方ドイツ・オペラ協会の委員をなさっているとか。確かに声質は甘く軽く,昔はさぞかし美声だったんだろうな・・と思わせずにはおかないものです。ただ,「昔は」と書くのも道理。どうもお年を召して居られる様子。やたらカンツォーネ風のコブシ回しが利いているこんな曲を歌いこなすには喉の筋力が衰えすぎていて,コントロールが不安定。声量の不足を感じさせてしまうのが哀しいですねえ。

(2004. 5. 25)