Dの作曲家




アルフレッド・デザンクロ Alfred Désenclos (1912-1971)

フランスの作曲家。1912年7月2日,北フランス,パ=ド・カレ(Pas-de-Calais)のポルトゥル(Portel)で,10人兄弟の7番目として生まれる。生活のため20才までインテリア・デザインの生業をして家計を助けたため晩学。1929年にルベー(Roubaix)音楽院へ進学してピアノを学んだのち,1933年に21歳でパリ音楽院へ入学し,ジョルジュ・コサード,アンリ・ビュセールに師事した。1942年にローマ大賞を獲得。翌1943年から1950年までルベー音楽院で教鞭を執り,院長を務めるとともに,シモーヌ・プレ=カッサードの助手としてパリ音楽院でも教鞭を執る。また,パリの聖ノートル・ダム=ドゥ=ロレット(Notre-Dame-de-Lorette)教会で合唱指揮を担当する傍らデュラン社の相談役なども務め,厳しい批評で知られた。作曲家としては,印象主義や表現主義の影響のもとに折衷的な作風を展開。1964年にサックス奏者マルセル・ミュールの依託を受けて書いた『サクソフォーン四重奏曲』が大きな反響を呼んで評価を確立。サックスやトランペットのための技巧的な協奏曲や室内楽の分野では比較的知られており,それらはしばしば採り上げられるが,作曲家としてはいまだ充分に評価されているとは言い難い。仏芸術院委員。1956年にパリ市民音楽大賞(Grand Prix Musical de la Ville de Paris)。1971年3月31日パリにて死去。


主要作品

宗教曲 ・パーテル・ノステル pater noster (1944) {2tnr, org}
・ノス・アウテム nos autem (1958) {choir}
・サルヴェ・レジナ salve regina (1958) {4vo}
・レクイエム messe de requiem (1963) {sop, alto, tnr, bass, choir, orch}
・アニュス・デイ agnus dei (-) {sop, alto, tnr, bass, choir}
・サンクトゥス sanctus (-) {sop, alto, tnr, bass}
・アヴェ・マリア ave maria (-) {bass}
・救い主を讃えよ o salutaris (-) {choir}
管弦楽曲 ・交響曲 symphonie (1956) {orch}
・裏切り 'vitrail' (-) {orch}
協奏曲 ・祈祷,呪詛と踊り incantation, thrène et danse (1953) {tp, orch}
・ヴァイオリン協奏曲 concerto pour violon et orchestre (-) {vln, orch}
器楽/室内楽 ・前奏曲,カデンツァと終曲 prélude, cadence et finale (1956) {sax, p}
・サクソフォーン四重奏曲 quatuor pour saxophones (1964) {ss, as, ts, bs}
・幻想曲 fantaisie (1964) {hrp}
・ピアノ五重奏曲 quintette (-) {p, 2vln, vla, vc}
・嬰児を讃える3つの祈り trois voeux à un nouveau-né (-) {vln, vla, vc}
・ダン・トゥルバドール d'un troubador.. (-) {cl, p}
・アリアとロンド aria et rondo (-) {b, p}
・前奏曲,詠嘆曲と終曲 prélude, cantilène et finale (-) {vc, p}
・詠嘆曲と喜遊曲 cantilène et divertissement (-) {hrn, p}
・前口上,哀訴と終曲 préambule, complainte et finale (-) {hrn, p}
・プシーユ psylle (-) {fl, p}
・牧歌集 bucoliques (-) {fl, p}
ピアノ曲 ・3つの小品 trois pièces (-) {p (vln, p?)}
・若いピアノ弾きのための短い組曲 suite brève pour de jeunes pianistes (-)
歌曲 ・叙情的な捧げもの l'offrande lyrique (-) {sop (tnr) orch (p)}


ドゥサンクロを聴く


★★★★★
"Messe de Requiem / Salve Regina / O Salutaris / Pater Noster / Nos Autem / Ave Maria / Sanctus Agnus Dei" (Hortus : 009)
Joël Suhubiette (dir) Frédéric Desenclos (org) Les Eléments (Choeur de Chambre)
ローマ大賞受賞者にも拘わらず郷里に片足半以上引っ込んだうえ,晩学でエリートともいい難いデザンクロは,現在に至るまで一部の吹奏楽ファン以外には全く無視。何とも可哀相です。そんな中登場したこのCDは目下(2003年初春)現在,世界唯一のデサンクロ作品集。演奏陣はトゥルーズ地域絡みの面々で,はっきりとは書かれていないので分からぬもののオルガンもどうやらデザンクロの息子さんのご様子。しかし,ややローカルな顔触れから生じる不安は意外なほど訓練の行き届いた合唱隊の前に杞憂に終わりました。高度な旋法表現と豊かな和声を利してデュリフレからラングレ方向へと延びる,敬虔にして深遠な『レクイエム』を継承したこのレクイエムも,その出来映えたるや素晴らしいの一語。文句なく,目下デザンクロの才気を正しく推し量ることのできる最右翼の一枚と断言して良いでしょう。これほどの名品にも拘わらず,悔しいことにトンデモないマイナー盤で入手が滅法難しい(;▽;)。不幸にもカードをお持ちでない方は我慢するしか御座らない。ナクソスさん頼むからこのレーベル買収して出してくれ!(本CDの入手に際しては黒山羊さん・myaさんから格別のご配慮を頂きました。記して感謝申し上げます。

★★★★
"Trompette Musique Française :
Incantation, Thrène et Danse (Desenclos) / Concerto No.2 pour Trompette et Orchestre (Jolivet) / Concerto pour Trompette et Orchestre (Chaynes) / Concerto pour Trompette et Orchestre (Tomasi)" (Adda-Besson: 590027)

Eric Aubier (tp) Marius Constant (cond) Orchestre du Théâtre National de l'opéra de Paris
フランスの若手(当時)ラッパ奏者オービエによる仏近代作品集です。既に発売から10年以上経過しているこの盤を入手するのは難しいかも知れませんが,フランスを代表するラッパ吹きであり仏近代の積極的な録音も行っているオービエと,自らも現代音楽の作曲家であるコンスタンががっぷり四つに組んだこの作品,モチーフが双方最も得意とする題材であることも手伝って,意気上がる熱演となっております。デザンクロの作品は最も頻繁に演奏される代表作。緩章の2楽章を除くと,やや現代的で晦渋な語り口ながら,ストラヴィンスキー辺りまで守備範囲な方なら充分楽しめます。併録のトマジも南欧的な名品で代表作とされるものですが,あとの2曲はかなり前衛なのでご了承の程を。

★★★★
"Andante et Scherzo (Bozza) / Quatuor pour Saxophones (Desenclos) / Petit Quatuor pour Saxophones (Françaix) / Grave et Presto (Rivier) / Quatuor pour Saxophones (Schmitt) / Introduction et Variations sur une Ronde Populaire (Pierné)" (Etcetera : KTC 1104)
Aurelia Saxophone Quartet
幸か不幸か,クラシックへの理解がドイツに偏っている我が国でフランス近代の作品が最も好く紹介されているのは,吹奏楽。吹奏楽部や若手ソリストのコンクールなどでは,技巧的にも楽曲の解釈面でも至難なフランス近代の作品が頻繁に採用されるためです。シュミットの「サクソフォーン四重奏曲」は,このCDに入っているデザンクロの「サクソフォーン四重奏曲」と並んで,一般には知られていないくせにこの楽器に関わる人は皆知っているという,妙な逆転現象のただ中にある曲の代表と申せましょう。僅か2分半。第2楽章の「ヴィフ」における書法の天才的な閃きといったら!ただただ “Masterful” というしかございません。他にも秘曲揃いの本盤,演奏も良好なお薦め作です。

★★★★
"Le Saxophone Français" (EMI : 7243 5 72360 2 7)
Sonate bucolique (Sauget) / Sonate (Absil) / Sonate (Creston) / Fantaisie-impromptu (Jolivet) / Gavambodi 2 (Charpentier) / Epitaphe de Jean Harlow (Koechlin) / Printemps (Tomasi) / Le Chant du Veilleur (Nin) / Sextuor (Villa-Lobos) Introduction et Variations sur une Ronde (Pierné) / Quatuor (Désenclos) / Grave et Presto (Rivier) / Quatuor (Schmitt) / Quatuor (Dubois) / Petit Quatuor (Françaix) / Valse Chromatique (Vellones) / Sonate (Hindemith) / Nocturne (Beck) / Sonate (Denisov) / Improvisation I (Noda) / Rhapsodie (Debussy) / Concertino da Camera (Ibert) / Canzonetta (Pierné) / Pâtres (Forêt) / La Précieuse (Kreisler) / La Cinquantaine (Gabriel-Marie) / Chanson Hindoue (Rimsky-Korsakov) / Humoreske (Dvorák) / Variations sur Malborough (Combelle)
Quatuor de Saxophones Deffayet : Henriette Puig-Roget, Pierre Pontier, Marcel Gaveau (p) Daniel Millet (msp) Lily Laskine (hrp) Ramon de Herrera (g) Membres du Quintette à Vent de Paris : Jean Martinon, Philippe Gaubert (cond) Orchestre National de l'O.R.T.F.
どうせなら最高の演奏で聴いてやる!という方にお薦めなのがこのCD。たった3曲のために3枚組というのは痛い出費ですが,もし3曲にしか用がないというわけでないのなら,このCDは他にも珍品揃いで演奏陣も豪華。なかなかにお薦めできる内容です。何より演奏が素晴らしい。シュミットに関しては上記盤に一歩譲るものの,デザンクロに関しては本盤に軍配でしょう。特に第1楽章の出来が素晴らしく,速いテンポをとりながら,クロマチックでゆらゆら揺れる難解なパッセージにも一糸乱れぬ統率。技巧的にも見事な演奏です。

★★★★
"A la Francaise : Sonata (Decruck) Croquembouches (Delvincourt) Lamento et Rondo (Sancan) Tableaux de Provence (Maurice) Etudes (Koechlin) Prelude, Cadence et Finale (Desenclos)" (BIS : CD-1130)
Claude Delangle (sax) Odile Delangle (p)
『サクソフォン・フォ・ア・レィディ』では,そのビロードのように艶めかしい音色で聴き手を圧倒したパリ音楽院教授ドゥラングル夫妻。彼らの手によるフランス近代サックス曲集の第2弾は,サンカン,デサンクロを始めとする激マイナー作家選。そもそもケックランが一番知名度的に恵まれているという発掘精神旺盛な選曲に吃驚。1941年からパリ音楽院長を務めたダルヴァンクール,夫がニューヨーク管のサックス奏者だったドクリュック,プロヴァンス地方の民謡収集をやっていたらしいモーリスなど,名前しか聞いたことがない作家オンパレードです。やや六人組の香りを漂わせつつも,基本的にロマン派イディオムのドクリュック,完全におどけた六人組的作風のダルヴァンクル,同じくミヨー風のモーリス,彼としてはかなりオネゲル的なサンカンに現代音楽要素もふんだんに採り入れたデザンクロと,内容にはかなりの開きがあります。個人的には呪術的な語法に独自性をきっちりと織り込んだデザンクロの出来が突出していると思うのですが,これまで聴いたこともなかったモーリスは思わぬ拾いものでした。前盤同様,現代屈指の名手ドゥラングル氏の演奏は相変わらず見事です。ぜひ続けていただきたい

(2003. 2. 24)