Fの作曲家



ラファエル・フューメ Raphaël Fumet (1898-1979)

フランスのオルガン奏者,作曲家。作曲家でオルガン奏者のディナム・ヴィクトル・フューメを父に持つ恵まれた環境に生まれ,幼少期から才能を発揮。スコラ・カントールムへ進んでヴァンサン・ダンディに師事するとともに,モンパルナス界隈で無声映画のオルガン伴奏者として活躍し,ベルナールやモリディアーニと交流した。学閥を嫌った彼はその後パリを離れ,1930年にジュイリー音楽大学(Collège de Juilly)校長としてセーヌ=エ・メルヌへ赴任。合唱団長を兼任し,10年間音楽活動を続けた。1940年のパリ陥落を受けて,家族と共にアンジェへと移り,アンジェ音楽院ピアノ科および作曲法科の教授に就任。同時に聖ジョセフ教会のオルガニストを務めている。1979年,アンジェにて死去。バロック音楽に傾倒。擬古典的な形式に立脚しつつモダンな和声法を採り入れた典雅な作風を得意とし,室内楽などの分野で優れた作品を遺している。合理主義的価値観の台頭に懐疑的だった彼は,純音楽的な美観に基づいた自作が評価されることにも頓着せず,経歴,作品ともに不明な点が多い。近年,実息でフルート奏者のガブリエル・フューメによる室内楽作品が復刻され,再評価が進められている。


主要作品

協奏曲 ・協奏的頌歌 ode concertante (-) {fl, strings (p)}
・夜 nuït (-) {strings}
器楽曲 ・フルート三重奏曲 trio pour flûtes (1935) {3fl}
・薔薇 la rose (1943?) {vln, p}
・芽生え frondaison (1950) {fl, org}
・バロック風二部作 diptyque baroque (1958?) {vla, fl}
・フルート四重奏曲 quatuor pour flûtes (-) {4fl}
・ラクリモーザ lacrymosa (-) {vla, p /fl, org}
・聖書風のカンタータ cantate biblique (-) {4fl, vc}
・ヴィオラのための作品 l'oeuvre pour alto (-) {vla, p}
・加筆 interpolaire (-) {fl}
・舟歌 barcarolle (-) {vla, p}
・森の天使たち l'anges des bois (-) {p}
オルガン曲 ・ミゼレーレ miserere (-)
・愛の歌 chant d'amour (-)
・古風な形式によるコラール choral à l'ancienne (-)
・五旬祭 pentecôte (-) {tp, org}
・花の眠り le sommeil des fleurs (-)
・トッカータ toccata (-)
・前奏曲とフーガ prélude et fugue (-)
歌曲 ・ある日曜日 un dimanche (-) {vo, p}
・夜の言葉 verbe des nuits (-) {vo, p}


フューメを聴く


★★★★
"Prélude et Fugue / Miserere / Nuït / Pentecôte / Le Sommeil des Fleurs / Frondaison / Choral à l'ancienne / Lacrimosa / Chant d'amour / Toccata" (Ligia Digital : Lidi 0109103-01)
Henri-Franck Beaupérin (org) Gabriel Fumet (fl) Hervé Noël (tp)
ダンディの弟子ラファエル氏は,近年,実息のフルート奏者ガブリエル・フューメ氏によって精力的にその作品を音源化してもらい,急速に認知度が上がっている作曲家です。もともと寡欲な人だったからでしょうか。作品数も多くはないようで,オルガン作品については,くだんの息子さんが1曲,ラッパとの合奏が2曲入る本CD一枚で全集になってしまいます。彼のCDは,既に息子さんも参加した室内楽作品集がマルコ・ポーロからも出ていまして(下記),そちらは擬古典的な形式の上に,モダンな和声を上乗せした瀟洒な作風が印象的でした。しかし,こちらは教会音楽に通じるジャンルだからでしょうか。現代的な表情も覗き,メシアンやラングレを思わせる部分と,ダンディの影響下に比較的保守的な筆致で書かれた部分とが,曲の中で代わる代わる顔を出してきます。オルガンはパリ音楽院オルガン科一等を得たのち,第1回のパリ市国際オルガンコンクール(1995年)で優勝した気鋭の若手。演奏優秀です。

★★★★
"Trio pour flûtes / Diptyque baroque / Quatuor pour flûtes / Lacrymosa / Cantate Biblique / Interpolaire" (Marco Polo : 8.223890)
Gérard Jarry (cond) Gabriel Fumet, Benoît Fromanger, Philippe Pierlot, Hubert de Villèle (fl) Gérard Caussé (vla) Michel Poulet (vc) Désiré N'Kaoua (p) Jean-François Paillard Chamber Orchestra
何でも発掘あるある大事典なB級グルメの楽園マルコから出た,フューメの室内楽作品集。直前に出たアリオン盤と並んで,彼が認知されるきっかけを作ったCDだと思います。息子さん親孝行ですねえ。そのアリオン盤と内容が被ってしまうところを見ると,おそらく室内楽に関しても,彼はそう多作家ではなかったのでしょう。パリを離れた経緯から考えても,時代から隔絶するかのように温厚な内容からしても。きっと彼は殺伐と虚栄心に満ちた現代音楽より普通に耳に快い音楽を好み,同じくあくせくした都会暮らしよりゆったりとした田舎の空気を選んで,のんびり人生を楽しみたかったんでしょうねえ。この作品集に溢れた空気もまさにそんな感じ。古典音楽によく学び,あくまで簡素。印象派の書法(全音階や旋法)はあくまでアルカイック情緒を増すための味付けに留めます。功名心と実験精神に富んだ中央官僚の作品ばかり聴いている耳には,一聴確かにやや地味。しかし,春を告げるうららかな日射しの下で,ギリシャ装束を身にまとった女官が談笑しているかのような,いたって温厚な作風の中には,不惑のサラリーマンを魅了して止まない田舎暮らしにも似た,捨てがたい魅力があると言えるでしょう。豪華な顔触れながら演奏やや垢抜けず。一線級の優れた演奏陣で聴けば,きっと見違えるように魅力的に聞こえると思います。ものの情報によると既にナクソス化され半値になったようなので(Naxos: 8554082)これからお求めになりたい方はぜひそちらで。

(2003. 2. 18 upload)