Hの作曲家



ジャン・ユボー Jean Hubeau (1917-1992)

20世紀前半のフランスを代表するピアニスト,教育者,作曲家。1917年7月22日パリ生まれ。9才でパリ音楽院へ進学。ポール・デュカに作曲法,ラザール・レヴィにピアノ,ジャン・ガロンに和声法,ノエル・ガロンに対位法を師事。1930年にピアノ科でプルミエ・プリを得た。1934年にカンタータ『ルクマニの伝説』でローマ大賞第2位を受賞(一位はウジェーヌ・ボザ)。翌年にはルイ・ディエメル賞も受賞。その後,ウィーンでフェリックス・ワインガルトナー(Félix Weingartner)に指揮法も学んでいる。1942年にクロード・ダルヴァンクルがパリ音楽院の院長に就任した際に,後任としてヴェルサイユ音楽アカデミーの院長へ就任。1957年にはパリ音楽院室内楽科の教授へ就任し,1982年に退くまでの間に,シプリアン・カツァリス,ジャック・ルヴィエ(ピアノ)やオリヴィエ・シャルリエ(ヴァイオリン),ソニア・ウィーデル・アサートン(チェロ)などの優秀な後進を育成。ピアニストとしても知られ,中でもヴィア・ノヴァ四重奏団との共演でエラートに残したフォレやシューマン,デュカの録音は,古典的名演奏との声も高い。しかしながら,演奏家としての名声の陰に隠れ,作曲家としてはいまだ無名のままに置かれている。1992年8月19日パリにて死去。


主要作品

バレエ ・ラ・フォンテーヌの3つの寓話 trois fables de la Fontaine (-)
・悪魔との婚約 la fiancée du diable (-)
・金剛石の輝きか皇女か un coeur de diamant ou l'infante (-)
カンタータ ・ルクマニの伝説 la légende de Roukmani (1934)
協奏曲 ・ヴァイオリン協奏曲 concerto pour violon et orchestre (1939) {vln, orch (p)}
・チェロ協奏曲 イ短調 concerto pour violoncelle et orchestre en la mineur (-) {vc, orch (orch)}
室内楽曲 ・トランペットとピアノのためのソナタ sonate pour trompette chromatique et piano (1943) {tp, p}
・ヴァイオリン・ソナタ sonate pour violon et piano (-) {vln, p}
・ソナタ・カプリス sonate caprice (-) {2vln}
・ユーモレスク風ソナチヌ sonatine humoresque (-) {fl (hrn), p}
・優しいアリアと変奏 air tendre et varié (-) {cl, p}
・牧歌 idylle (-) {fl, p}
ピアノ曲 ・英雄的な協奏曲 concerto héroïque (-)
・変奏曲集 variations (-)
・アメリカ風の歌 chanson Américaine (-) ...
ラグタイムの書法で作曲
歌曲 ・4つの歌 quatre chansons (-)


ユボーを聴く


★★★★
"Alla Francese :
Sonate (Poulenc) / Cavatine (San-Saëns) / Villanelle (Dukas) / Impromptu (Ibert) / Choral, Cadence et Fugato (Dutilleux) / Divertimento (Françaix) / Sonate (Hubeau) / Recreation (Gabaye)" (Pierre Verany - Victor : VICC 23005)

Thierry Caens (tp) André Cazalet (hrn) Michel Becquet (tb) Yves Henry (p)
リヨン管やパリ歌劇場のソリストを歴任したカン,パリ管ソリストのカザレ,ロマンド管およびパリ・オペラ座独奏者のベケ,サンカンの弟子アンリと凄腕が揃った本盤,顔触れ以上に姿勢も強気。キョーミないヤツに買って貰う必要はない感が全面に横溢した,超然主義の選曲をご覧ください。もちろん,ピアニストとしてのみ有名なユボーがローマ大賞2位の作曲家であるところに焦点を当てるなど充分な知識の裏打ちがあってこそ,その向こうっ気の強さも光るというものです。フランス金管アンサンブルを構成する斯界の重鎮らが固まった演奏陣だけに,演奏は高品位に安定。収録曲も,単に珍しいだけの堕曲ではなく,わざわざでも回り道してくる奇特なファンの好事家趣味を満たして余りある,魅力的な小品揃い。印象主義の外苑墓地を散策したい方には得難い一枚になっているのでは。ユボーの作品は,ベルガマスク当時のドビュッシーや充実期ラヴェルを思わせる品の良い和声と,ラグタイム風リズムの3楽章に象徴される,かっちりとした平明な新古典主義的形式感とが織りなす,音の風刺画。かつて蒔絵の魚に霊感を得たドビュッシーの心象風景を,今度はハリウッド映画の流儀で書き直したような,開放的でおおらかな書法は,フランス人にとって心惹くエキゾチズムが,いつの間にか神秘の東洋から,好景気に沸く新大陸のキッチュな娯楽文化へと移りつつあったことを,皮肉に反映しているのかも知れません。

(2004. 8. 15 uploaded)