Mの作曲家



ジャン・マルティノン Jean Martinon (1910-1976)

フランスの指揮者。1910年リヨン生まれ。リヨン音楽院に進んでヴァイオリンを学んだのち,パリ音楽院へ進学。ヴァンサン・ダンディとアルベール・ルーセルに作曲法を,シャルル・ミュンシュ及びロジェ・デソルミエールに指揮法を師事。同時にヴァイオリン科で一等を得る。当初はヴァイオリン奏者として1934年に仏国営放送管弦楽団に入団し,その後シャルル・ミュンシュの代役として指揮棒を執るようになった。第二次大戦中は,捕虜生活を含め軍属として過ごし,復員後の1949年にロンドン管弦楽団の助演指揮者に就任。次いで1951年にはラムルー管弦楽団の主任指揮者となり,1957年までその地位を務めるとともに,欧州各地を客演して評価を確立。1957年にはボストン交響楽団の客演指揮者,1959年にはデュッセルドルフ交響楽団の音楽監督などを歴任し,1968年3月に仏国立管弦楽団の音楽監督に就任。その後1974年にハーグ管弦楽団の音楽監督となるまでの6年間で,この楽団を世界的な水準にまで鍛え上げた。パリ音楽院指揮法科の教授に内定していたが,1976年に死去。自作の『詩篇136番』でパリ市民賞のほか,ベルリオーズ『嬰児キリスト』,フロラン・シュミット『サロメの悲劇』で仏ディスク大賞,ドビュッシー管弦楽曲全集で仏大統領賞などの受賞歴がある。


主要作品

舞台作品 ・歌劇【エキューブ】 Hécube (1949)
・バレエ音楽【アンボイマンガまたは蒼の街】 ambohimanga ou la cité bleue (1949)
管弦楽 ・交響曲第3番【アイルランド風】 symphonie No.3 'Irish' (1947)
・前奏曲とトッカータ prélude et toccata (1960)
・交響曲第4番【高地】 symphonie No.4 'altitudes' (1963)
・ヘンデルの主題による【ヴィザントゥール】 vigintuor (1969)
・逃亡者の音楽 musique d'exil (-)
協奏曲 ・弦楽四重奏と室内楽のための協奏曲 concerto pour quatuor à cordes et orchestre de chambre (1944) <2vln, vla, vc, chamber>
・ヴァイオリン協奏曲第2番 concerto pour violon et orchestre No.2 (1959)
・チェロ協奏曲 concerto pour violoncelle et orchestre (1964)
・フルート協奏曲 concerto pour flûte et orchetre (-)
・サクソフォン四重奏と管弦楽のための協奏曲 concerto pour quatuor à saxophones (-) <4sax, orch>
・ヴィオラ協奏曲 concerto pour alto et orchestre (-)
・ピアノ協奏曲 concerto pour piano et orchestre (-)
室内楽 ・弦楽四重奏曲第1番 quatuor à cordes No.1 (1946) <2vln, vla, vc>
・弦楽四重奏曲第2番 quatuor à cordes No.2 (1966) <2vln, vla, vc>
歌・合唱曲 ・詩篇136番 psaume 136 'chant des captifs' (1945)
・オラトリオ【サロンのユリまたは頌歌】 le lis de saron ou le cantique des cantiques (1951-1957)


マルティノンを聴く


★★★★
"Quatuor à Cordes No.1 / Quatuor á Cordes No.2" (Skarbo : D SK 4002)
Quatuor Ravel: Giles Colliard, Reiko Kitahama (vln) Pierre Franck (vla) Christophe Beau (vc)
マルティノンといえば,仏放送管を率いたドビュッシー他の演奏解釈に定評のある実直な指揮者というイメージが先行していますが,作曲も嗜んでいました。このCDはそんな彼の知られざる側面に光を当てた,非常に珍しい室内楽曲集です。同じく前世紀前半に活躍したモントゥー同様,彼ももともとは器楽奏者で,パリ音楽院で一等を取るほどの腕前だったわけですから,こういう余芸があったとしても不思議ではありますまい。作曲の師匠がダンディとルーセルだったことからもお分かりの通り,ここに聴ける作風は師匠譲り。かっちりと具象的でありながら複雑で躍動的なリフが全面を支配した,典型的な多調・新古典派室内楽です。同じ指揮者のグーセンスとか,やや流麗なルシュールあたりが作風としては近いでしょう。生真面目な職人気質の指揮がそのまま譜面に落ちたようなその音楽は,多調様式でありながら六人組らのように人を食ったところがなく,適度に叙情性にも配慮した中庸さが持ち味。印象派ファンでも比較的すんなりと聴けます。逆にそのあたりの中庸さ=地味さが,今ひとつ知名度薄な理由なのかも知れません。演奏するラヴェル四重奏団は1989年に結成された若い奏団。トゥルトゥリエ賞,仏文化省賞などを受けた気鋭のカルテット。アコールから出たカプレの『イエスの鏡』でも優れた演奏を聴かせていました。演奏は生気に富んで引き締まっており,スカルボには珍しいほど良いと思います

(2004. 11. 7)