Mの作曲家



ピエール・モーリス Pierre Maurice (1868-1936)

スイスの作曲家。1868年11月13日,ジュネーブ湖畔の町アラマン(Allaman)生まれ。幼い頃にマイアベーアの『ル・アフリケーヌ』を聴いて音楽の道を志し,17歳でヒューゴ・デ・ゼンガー(Hugo de Senger)に和声法を師事。次いでシュトゥットガルトへ一年間留学し,パーシー・ゲーツシウス(Percy Goetschius)にも和声法を学んだ。翌年スイスへ帰国。銀行の受付係をしながら,ジュネーヴ音楽院でジャン・ジャック=ダルクローズに和声法および対位法を師事し,さらなる研鑽を積む。彼の両親は息子の才能に懐疑的であったが,この熱意を見てフランス留学を許可。彼はパリ音楽院へ進んでジュール・マスネーに作曲法を,ガブリエル・フォレに編曲法を,アルベール・ラヴィニャックに和声法を,アンドレ・ジェダルジュに対位法およびフーガを師事し,1899年に卒業した。その後,オペラ作家として活躍。大戦中にミュンヘンへ従軍したのちは故国に戻り,病に苦しみながらも生涯を作曲活動に捧げた。作風は和声面ではマスネーの影響下にあり,やや擬古典的な傾向の中に,適度なモダニズムの咀嚼を行った穏健なものである。1936年12月25日ジュネーヴ(Genf / Geneve)にて死去。


主要作品

舞台作品 ・歌劇【預言者のコウノトリ】 le calife cigogne (1886?)
・歌劇【白旗】 le drapeau blanc (1902)
・歌劇【ミゼ・ブルン】 misé brun (1908)
・歌劇【ランヴァル】 Lanval (1912)
・ミモドラマ【アランベル】 Arambel (1920)
・歌劇【アンドロメダ】 Andromède (1923)
・歌劇【夜全ての猫たちは灰色に】 la nuit tous les chats sont gris (1924)
・バレエ【(邦訳不詳)】 das tanzlegendchen (1929)
・オペレッタ【王家の呪い】 la vengeance du Pharaon (1935)
管弦楽曲 ・島の漁師 pêcheeur d'islande (1895)
・ダフネ Daphné (1894-1897)
・交響詩【フランチェスカ・ダ・リミニ】 Francesca da Rimini (1899)
・弦楽合奏のためのフーガ fugue pour instruments à cordes (1901)
・ペルセフォーヌ Perséphone (1930)
歌曲 ・ルノール lenore (1889) <vo, orch>
・翡翠の笛 la flûte de jade (1925-1926) <sop, orch>
合唱曲 ・オラトリオ【ジェフテの娘】 la fille de Jephté (1898) <vos, choir, orch>
・ゴルム・グリンメ gorm grymme (1912) <bass, choir, orch>
・オラトリオ【降誕祭】 nativité (1933) <vos, choir, orch>


モーリスを聴く


★★★★☆
"La Nuit tous les Chants sont Gris / Pêcheur d'Islande / Francesca da Rimini / Daphné / Perséphone / Fugue pour Instruments à Cordes" (Sterling : CDS-1053-2)
Adriano (cond) Moscow Symphony Orchestra
ピエール・モーリスはスイスの作曲家。フランスへの留学経験もあり,マスネーのお弟子さんだった人物です。BISから出た同じモーリス(ポール・モーリスで別人でした)と間違って買ったくらいどマイナーな彼に,飛びついたのはやっぱり東方見聞録出身者の故でしょうか。間違いなく世界初となるモーリス作品集を,マルコお抱え指揮者のアドリアーノとモスクワ響のコンビが録音しました。モスクワ響は,酷いオケを世界のどのレーベルよりも良く知っているマルコ・ポーロのお抱え楽団中では,おそらく最高レベルの性能を誇る楽団。これで曲が良ければきっと素晴らしい発掘ものになるのでは・・聴き手のそんな期待を裏切らない作曲者の才気に快哉を叫びます。作曲者はスイス人。病弱だったにもかかわらず「息子にそんな才能あるわけねぇな」と半信半疑だった親父さんを苦学の末に説き伏せてパリへ渡り,天下の大先生に師事するという劇的な人生を歩み,師匠マスネーに倣って主に舞台音楽作家として活躍したようです。そんな経歴が物語る彼の作風は,形式面ではマスネーの嫡流に属する保守的な後期ロマン派。それでいて,ケックランと大の仲良しさんだったという史実が示すように,和声面では数歩,モダニスト方向へ前進を見せており,両者が相俟って,どこかイベール的な瀟洒さを備えた語法へと立ち至っています。ラボー,ロジェ=デュカス周辺の穏健なモダニスト好きの方は間違いなく愛聴していただけるのではないでしょうか。演奏もなかなかに良いです。


(2004. 4. 18)