Mの作曲家



アルテュール・ミュールマン Arthur Meulemans (1884-1966)

ベルギーの指揮者,作曲家。1884年5月19日,アールショット(Aarschot)生まれ。ルマン(Lemmens)音楽研究院へ進学し,オスカー・ドゥピュイット(Oscar Depuydt)にオルガン,アロイス・デメ(Aloys Desmet)に和声法,エドガー・ティネル(Edgard Tinel)に対位法と作曲法を師事。デメを通じてマーラー,リヒャルト・シュトラウス,ドビュッシーを知り,特にドビュッシーに傾倒して印象主義の影響下に作曲。初期の作品ほど印象主義の影響は濃く,のちには徐々に新古典主義的な作風へと転じた。多作家として知られ,350を超える膨大な作品を遺したが,その多くは彼が国立ベルギー放送管弦楽団の指揮者を務めた1930年から1942年の間に書かれている。1966年6月29日ブリュッセルにて死去。アントワープには,彼の作品の出版を意図して設立されたアルテュール・ミュールマン基金がある。(関連ページ:Meulemans, Arthur ベルギー音楽資料センター内)


主要作品

交響曲 ・交響曲第1番 symphonie No.1 (1931)
・交響曲第2番 symphonie No.2 en ut (1933)
・交響曲第3番 symphonie No.3 (1933)
・交響曲第4番 symphonie No.4 (1935) <winds, perc>
・交響曲第5番 symphonie No.5 (1939) <f-vo, orch>
・交響曲第6番 symphonie No.6 (1939) <alto, choir, orch>
・交響曲第7番 symphonie No.7 (1940)
・交響曲第9番 symphonie No.9 en fa (1943)
・交響曲第10番 symphonie No.10 (1943)
・交響曲第11番 symphonie No.11 (1945)
・交響曲第12番 symphonie No.12 (1948)
・交響曲第13番 symphonie No.13 (1951)
・交響曲第14番 symphonie No.14 (1954)
・交響曲第15番 symphonie No.15 (1960)
管弦楽曲 ・五月の夜 meinacht (1911-1912)
・プリニーの泉 plinius' fontein (1913)
・管弦楽のための狂詩曲 rapsodie (1929)
・管弦楽のためのセレナータ serenata (1929)
・小組曲 ハ長調 klein suite in C (1930) <small-orch>
・ヴィーン風ワルツ wiener walzer (1935)
・アレグロの序曲 overtura allegra (1940)
・ピアノ独奏または小管弦楽のための舞曲第2番 dansensuite No.2 (1943) <p/small-orch>
・小管弦楽のためのシンフォニエッタ第1番 sinfonietta No.1 (1951) <small-orch>
・交響三部作 symphonische triptiek (1951)
・絵画 tableaux (1951)
・交響的なロンド symphonisch rondo (1954)
・学究的な三部作 academische triptiek (1955)
・社会保障 social security (1955)
・交響的舞曲 symphonische dansen (1957)
・小管弦楽のためのシンフォニエッタ第2番 sinfonietta No.2 (1959) <small-orch>
・シンフォニエッタ第3番 sinfonietta No.3 (1960)
・サーカス cirkus (1961)
・管弦楽のためのディベルティメント divertimento (1961)
・ミデルハイム middelheim (1961)
・コンチェルト・グロッソ第2番 concerto grosso No.2 (1962)
協奏曲 ・チェロ協奏曲第1番 concerto No.1 (1920) <vc, orch/vc, p>
・即興協奏曲 concert impromptu (1929) <p, orch>
・クラリネットのための狂詩曲 rhapsodie (1932) <cl, orch/cl, p>
・ホルン協奏曲第1番 concerto No.1 (1939) <hrn, orch/vc, p>
・叙情組曲 lyrische suite (1939) <hrp, orch>
・ピアノのためのコンチェルティーノ concertino (1941) <p, orch>
・トロンボーン狂詩曲 rhapsodie (1941) <tb, orch/tb, p>
・オルガン協奏曲第1番 concerto No.1 (1941) <org, orch>
・アルト・サックスのための狂詩曲 rapsodie (1941) <as, orch/as, p>
・バスーンのための狂詩曲 rapsodie (1942) <bssn, orch/bssn, p>
・オーボエ協奏曲第1番 concerto No.1 (1942) <ob, orch/ob, p>
・ヴァイオリン協奏曲第1番 cocerto No.1 (1942) <vln, orch>
・ヴィオラ協奏曲 concerto (1942) <vla, orch/vla, p>
・フルート協奏曲 concerto (1943) <fl, orch/fl, orch>
・トランペット協奏曲 concerto (1943) <tp, orch/tp, p>
・チェロ協奏曲第2番 concerto No.2 (1944) <vc, orch/vc, p>
・ヴァイオリン協奏曲第2番 concerto No.2 (1945) <vc, p>
・変奏曲 variaties (1945) <p, orch>
・ヴァイオリン協奏曲第3番 concerto No.3 (1950) <vc, p>
・トロンボーンのためのコンチェルティーノ concertino (1953) <tb, orch/tb, p>
・ハープ協奏曲 concerto (1953) <hrp, orch/hrp, p>
・ティンパニ協奏曲 concerto (1954) <timp, orch>
・管弦楽のための協奏曲第2番 concerto No.2 (1956) <orch>
・ピアノ協奏曲第2番 concerto No.2 (1956) <p, orch>
・オルガン協奏曲第2番 concerto No.2 (1958) <org, orch>
・2台のピアノのための協奏曲 concerto (1959) <2p, orch>
・コンチェルト・グロッソ第1番 concerto grosso (1961) <4sax, orch>
・ホルン協奏曲第2番 concerto No.2 (1961) <hrn, orch/hrn, p>
・サクソフォーン四重奏のためのコンチェルティーノ concertino (1962) <4sax, orch>
・オルガン,トランペット,ホルン,トロンボーンのための協奏曲 concerto (1962) <org, tp, hrn, tb>
・コンチェルティーノ concertino (1963) <4cl, hrp, xylophone, bells, perc, strings>
・組曲 suite (1964) <4cl, orch>
・コンサート・ドラムのための練習曲第10番 edude No.10 (1965) <ds, orch>
室内楽 ・ヴァイオリン・ソナタ第1番 sonate No.1 (1915) <vln, p>
・オルガン・ソナタ sonate (1915) <org>
・アルス・スピラールヴィール als spiraalveer (1927) <vc, p>
・哀歌 lente elegie (1929) <vc/vc, orch>
・スケルツォ scherzo (1930) <2vln, vla, vc, p>
・吹奏五重奏曲第1番 blaaskwintet No.1 (1931) <fl, ob, cl, hrn, bssn>
・吹奏五重奏曲第2番 blaaskwintet No.2 (1932) <fl, ob, cl, hrn, bssn>
・弦楽四重奏曲第2番 strijkkwartet No.2 (1932) <2vln, vla, vc>
・弦楽四重奏曲第3番 strijkkwartet No.3 (1933) <2vln, vla, vc>
・吹奏三重奏曲第1番 trio No.1 (1933) <ob, cl, bssn/tp, hrn, tb>
・オバド aubade (1934) <fl, ob, cl, hrn, bssn, p>
・アダージョ adagio (1939/1947) <vln, vla, vc, b/vo, p>
・三重奏曲 trio (1941) <vln, vla vc/vln, vc, p>
・組曲 suite (1942) <4tb/4vc>
・弦楽四重奏曲第4番 strijkkwartet No.4 (1944) <2vln, vla, vc>
・アンダンテとスケルツォ andante en scherzo (1945) <4fl>
・ピアノ五重奏曲 klavierkwintet (1946) <2vln, vla, vc, p>
・フルート,ヴィオラとハープのためのソナタ sonate (1946) <fl, vla, hrp>
・協奏的なソナタ sonata concertante (1948) <cl, p/cl, orch>
・大オルガンのための変奏曲 variaties voor groot-orgel (1949) <org>
・オルガン交響曲第1番 symphonie No.1 (1949) <org>
・オルガン交響曲第2番 symphonie No.2 (1949) <org>
・弦楽四重奏曲第5番 strijkkwartet No.5 (1952) <2vln, vla, vc>
・サクソフォーン四重奏曲 quatuor à saxophones (1953) <4sax>
・弦楽三重奏曲 trio (1953) <2vln, vla>
・2台のヴァイオリンのためのソナタ sonate (1954) <2vln, p>
・ソナタ第2番 sonate No.2 (1953) <vln, p/vc, p/vla, p>
・ソナタ第2番 sonate No.2 (1955) <fl, p>
・チェロ独奏またはヴァイオリン独奏のためのソナタ sonata (1956) <vc/vln>
・吹奏五重奏曲第3番 blaaskwintet No.3 (1958) <fl, ob, cl, hrn, bssn>
・英雄的な小品 pièce héroïque (1959) <org>
・トランペット・ソナタ (1959) <tp, p>
・吹奏三重奏曲第2番 trio No.2 (1960) <ob, cl, bssn/tp, hrn, tb>
・アンダンテとアレグロ andante e allegro (1961) <fl, p>
・セレナータ serenata (1961) <4cl>
・前奏曲 prélude (1961) <hrn, p>
・トランペットのための練習曲 etude (1961) <tp, p>
・トロンボーンのためのソネット sonnet (1961) <tb, p>
・吹奏四重奏曲 quatuor (1962) <fl, ob, cl, bssn>
ベル作品 ・チャイム・ベルのための舞曲 drie dansen (1951) <chime-bells>
・トッカータ toccata (1964) <chime-bells>
吹奏楽 ・ベルギーの民謡 Belgisch volkskied (-)
ピアノ曲 ・夜想曲 nocturne (1911)
・ピアノ・ソナタ第2番 sonate No.2 (1916)
・ピアノ・ソナタ第3番 sonate No.3 (1917)
・ワルツ wals (1917)
・反映 refleksen (1923)
・バガテル,アラベスクと拍動 bagatellen, arabesken en rythmen (1928)
・ピアノのための舞曲第1番 dansensuite No.1 (1943)
・前奏曲集 préludes (1951)
・ピアノ・ソナタ第4番 sonate No.4 (1951)
・アトモスフェリリエン atmosferilien (1962)
歌曲 ・レント lenteavond (1907) <vo, orch/vo, p>
・アド・コンプルトリウム ad completorium (1937) <alto/bass, orch>
・声なき声 la voix du silence (1956) <vo, p>
合唱曲 ・H.ユベルタスの詩による伝説 de legende van de H. Hubertus (1909) <4vo, choir, orch>
・レスポンソリア・ヴァリア responsoria varia (1913) <sop, alto, org (choir)>
・ミサ・デ・パセム missa de pacem (1914) <2tnr, btn, m-choir, org>
・エイドリアン・ブリューワー Adriaen Brouwer (1926/1935) <4vo, choir, orch/orch>
・パニス・アンジェリクス panis angelicus (1935) <f-vo, choir, org>
・クレド credo (1936) <choir, winds?>
・アデスト・フィデレス adeste fideles (1943) <sop, choir, org>
・典礼 de litanie van onze lirve vrouw (1943) <choir, orch>
・詩篇147番 psalmus 147 (1943) <choir, org>
・ロド・ベスペルティーナの4つのモテット quatuor motetta ad Laudes Vespertinas (1944) <2vo, org>
・ミサ曲 missa Alba, missa aurea (1945) <2vo, org/choir, orch>
・アヴェ・マリア ave maria (1946/1950) <2vo, org/vo, p>
・あのお方 de man (1947) <choir, winds/vos, p>
・詩篇 psalm CL (1948) <vo, p>
・イマージュ・ペルデュー images perdues (1956) <4m-vo>
・ウビ・カリタス ubi caritas (1956) <4vo, org>


ミュールマンを聴く


★★★☆
"Pliny's Fountain / Symphony No.2 / Symphony No.3 / May Night" (Marco Polo : 8.223776)
Frédéric Devreese (cond) Moscow Symphony Orchestra

ベルギーに人知れず咲いたドビュッシアンの,おそらく唯一の管弦楽作品集。経歴が示すとおり,書法の上では印象主義,わけてもドビュッシーの影響が非常に濃く,初期のものほど影響は顕著。十全に用いられる平行和音,高い旋法性,頻出する全音階が,一体となって生み出す音は,そっくりといって良いほどに『海』や『映像』の頃のドビュッシーです。いっぽう後年の交響曲は良くも悪くも具象性が増し,舞曲みたいにインテンポのリズムに支えられた新古典的な作風になりますが,ハリウッド映画のBGMのように通俗的で,あまり誉められたものではありません。お国柄か本家に比べると調性感や輪郭は明瞭ですし,官能性も控えめ。ヴォーン=ウィリアムスやレスピーギ臭を加えたような感じでしょうか。初期の作品に限っては,ドビュッシーの語法を直系といって良いほどに継承した数少ない作曲家の中では,恐らく最もそれが上手く行っている部類に属するのではないでしょうか。デヴリーゼ/モスクワ響は,マルコのオケの中では最も力量が確かな部類に属しますが,普段ドビュッシーを聴いている人は殆どが最高のオケに慣れているでしょうから,楽器の響きが些か安っぽく,細部のキメが粗く,線も細くて危なっかしいのが気になるかも知れません。

★★★☆
"James Ensor Suite (Flors Alpaerts) Plinius' Fontain (Arthur Meulemans) Chroniques Breves de la Vie Bourgeoise (Henry Georges D'Hoedt)" (Koch Discover : DICD 920321)
Alexander Rahbari (cond) BRTN Philharmonic Orchestra, Brussels
どうみても,中近東で出所のアヤシイ絨毯を旅行者相手に売ってそうなこのおじさんこそ,ミラン・ホルヴァ,ヴァトー・カヒと並ぶ『牧神』史上三大迷演を残したナクソスお抱え指揮者,ラハバリ氏その人である!(爆)というわけで,もとより演奏に期待なんぞしていない小生の購入動機は,生年が1870年代から1980年代と期も熟して美味そうなベルギーのマイナー作曲家を盛り合わせた中身です。「ベルギーの隅々まで探求したいっ!」という奇特な人間以外,およそ誰からも見向きもされないであろう選曲からして,既にまともに比較されそうなところは避けて通るみみっちい根性丸出しにしか思えないのもまた人徳のなせる業でしょう。そもそも数百曲も書いていながら,マルコ盤の競合らしきものがこれ一つしか見あたらないミュールマン自体が哀れを誘いますが,さらに哀しいことに,まあ何と低レベルな競合であることよ!というわけで,興味は俄然,残る2人の作曲家。1876年アントワープ生まれのアルペルツはチャイコフスキとミヨーをミックスしたような作風。六人組的なキッチュさはあるものの,パリ被れしない分毒気は薄めで見通しは良いです。ただ・・鼓笛隊チックで安っぽい(爆)。聴き映えするところは殆どないです。ドート(と読むんでしょうか?)のほうは1920年のローマ大賞第2位。書法はロシアやチェコの(国民楽とロマン派の)折衷楽派っぽく,和声はしばしば近代的な面もあるものの総じてやや懐旧的でチャイコやボロディン,コルサコフなんかの色が強い。ただ,さすがに構成力は前者とは段違いにしっかりしています。印象主義の耳でならやっぱりミュールマンが一番ましですけど,もう少し守備範囲の広い方ならドートさんも行けるかも知れません。ナクソスよりも機材が良いからか,注意して聴くと実はやっぱり弦部ザラザラな演奏も,かなり巧みにフォローアップされています。


(2002. 12. 8)