Qの作曲家



ファルナン・キネ Fernand Quinet (1898-1971)

ベルギーのチェロ奏者,指揮者,作曲家。1898年1月29日,ベルギー南部ワロン地方のシャルルロワ(Charleroi)に生まれる。幼少期からチェロを学び,当初はチェロ奏者として出発。1913年に王立ブリュッセル音楽院へ進み,1915年に卒業。その後ヴァンサン・ダンディにも学び,1921年にはベルギー・ローマ大賞を獲得した。1938年にはリエージュ音楽院管弦楽団の首席チェロ奏者となり,自らプロ・アルテ弦楽四重奏団を結成して活躍。また指揮者としても,リエージュ管弦楽団の創設に奔走。自らも指揮棒を執って録音を残すなど活躍した。フランス楽壇とは六人組を通じて直接の交流があり,また作曲家としても六人組の影響を受け,印象主義とバーバリズムの折衷的表現に立脚した簡素な多調様式の作品を残している。教育者としては,1924年から1938年にシャルルロワ音楽院院長へ就任。1927年にはブリュッセル音楽院和声法科の教授を務めたほか,1938年には同音楽院院長となり,1963年までその地位を全うした。1971年10月24日,73才でリエージュにて死去。


主要作品

管弦楽曲 ・管弦楽のためのファンファーレ fanfare (1922)
・交響的素描 esquisse symphonique (1930)
・3つの交響的楽章 trois mouvements symphoniques (1931)
室内楽曲 ・ヴァイオリン・ソナタonate pour violon et piano (1916-1917) {vln, p}
・3つのクラリネットのための組曲 suite pour trois clarinettes (1923) {3cl}
・ヴィオラ・ソナタ sonate pour alto et piano (1924) {vla, p}
・ずる休み l'ecole buissonnière (1925) {2vln, vla, vc}
・幻想曲 fantaisie (1926) {2vln, vla, vc}
・文字謎 charade (1927) {p, vla, vc}
オルガン曲 ・パストラール第2番 deuxième pastorale (-) {org}
歌曲 ・5つの東洋風の歌 cinq mélodies orientales (1920-1925) {msp, p}
・3つのヘブライ風歌曲 trois chansons hebraïques (1925) {2vo, p}
・名もなき教訓劇 moralités non légendaires (1926) {msp, 2vln, vc, p, ob, cl, bssn, tp, hrn, tb, perc}
・パストラールとフューガロ pastorale et fugalo (1929) {vo, fl}


キネを聴く


★★★☆
"L'ecole Buissonière / Cinq Mélodies Orientales / Suite pour Trois Clarinettes / Charade / Sonate pour Alto et Piano / Moralités non Légendaires" (Cyprès-Musique en Wallonie : CYP 3604)
Jean-Louis Petit (dir) Orchestre de Chambre Jean-Louis Petit : Quatuor Simon
他ではまずお目に掛かったことのない,ベルギーの指揮者キネの(多分,知る限り唯一の)室内楽作品集です。彼はリエージュ管弦楽団の創設者として有名で,実際このレーベルにジョンゲンのピアノ協奏曲ほかの録音もある人物。しかし,まさか作曲までやってるとは知りませんでした。作曲家としては六人組と交流が深く,影響も受けたそうで,確かに部分的にミヨー(多調)やオーリック(仰々しさ)の影響は見られますけれど,もともとが実直な人だったのでしょう。同じく生真面目なデュレが六人組とは思えないほど地味だったように,この人の作品も,本家のように人を小馬鹿にするような洒落っ気はなく,むしろラヴェルやストラヴィンスキーからデュレ,ドラージュ,ジョベールの流れに近い。仰々しいながらも人を食いきれない堅実地味な書法と,六人組よりも印象派らしい色彩感があり,『ステファヌ・マラルメ・・』や『マダガスカル島民・・』を書いた,エキゾチックでストラヴィンスキー的なラヴェルも聴く方なら,秘曲として愉しんでいただけるのではないでしょうか。演奏はB級。弦のピッチは甘いですし,マリー小林さんの歌も上手いながら鼻に掛かっていてもう一つメリハリがありませんけれど,まずまず好演だと思います。

(2003. 3. 15)