Rの作曲家



アレクシス・ロラン=マニュエル Alexis Roland-Manuel (1891-1966)

フランスの批評家,作曲家。ベルギー系。本名アレクシス・ロラン・マニュエル・レヴィ(Roland Alexis Manuel Lévy)。1891年3月22日,パリ生まれ。スコラ=カントールムへ進み,作曲法をアルベール・ルーセル,ヴァンサン・ダンディに師事。その後,1911年にエリック・サティを介してラヴェルと知遇を得,その弟子となって深く傾倒。同時に,彼の無二の親友となる。1947年にパリ音楽院美学科の教授へ就任。1961年に退官するまで,その地位を勤め上げた。作曲家でもあるが,こんにちでは,その知名度の殆どは著述・批評家としてのものに限られる。著作には,編書として『音楽史』(Gallimard刊:1960年),著書に『ラヴェルの栄光(À la Gloire de...)』(Nouvelle Revue Critique刊:1938年),『モリス・ラヴェル』(London; D.Dobson刊:1947年)などがある。1966年11月2日(※1月と記した資料もありますが,ニュー・グローヴの記述を信頼します),パリにて死去。ちなみに,『アフリカの樹』の著書があるクロード・ロラン=マニュエルは,ラヴェルとも親交が深く,彼との往復書簡集もある人物だが,彼はアレクシスの実息で別人である。


主要作品

舞台作品 ・軽劇【イザベルとパンタロン】 Isabelle et Pantalon (1922)...M.Jacob台本。唯一の上演作。
・ジャンヌの扇より【カナリー】 canarie (1927) {orch}
・軽劇【多情な悪魔】 le diable amoureux (1929)...
CazotteによりR. Allard台本
・歌劇【ドン・ファンの過ち】 échec à Don Juan (1941)...
C.A.Puget台本
・中国の女 la célestine (1942)...
F. de RojasによりM.Achard台本
・歌劇【ジャンヌ・ダルク】 Jeanne d'Arc (1955)...
C. Péguy台本
・バレエ【奇妙な模擬戦】 (1922-)
映画音楽 ・地の果てを行く escape from yesterday La Bandera (1935)...Julien Duvivier 監督
・不思議なヴィクトル氏 l'étrange monsieur Victor (1938)...Jean Gremillon 監督
・この空は君のもの le ciel est'à vous (1943)...Jean Gremillon 監督
・高原の情熱 lumière d'été (1943)...Jean Gremillon 監督
管弦楽 ・副王のハレム (1916-1917)
・サンティア (1920) ...
未完,破棄
・テンポ・デ・バロ (1922-)
器楽曲 ・スカルラッティの名によるサラバンド sarabande (1911?) {p}
・ラヴェルの名によるメヌエット menuet (1912?) {p}
・田園詩 idylles (1916?) {p}
・弦楽三重奏曲 ホ調 trio à cordes (1917?) {vln, vla, vc}...ラヴェルに献呈
・幻想曲 fantaisie (-) {ob, p}
・スペイン趣味の組曲 suite dans le goût espagñol (-) {ob, bssn, tp, cvcn /p}
歌曲 ・(微笑む薔薇の如き)ファリザード farizade... (1916-1917) {vo, p /small-orch /vo, orch}...小管弦楽は作曲者,オケ版はカプレ編
・3つの詩 trois mélodies (1922-) {vo, fl}
・トーレのロマンス (1922?) {vo, orch}
・3つの曲 (1922?) {vo, orch} ...
モーリス・セーヴ詩
・ベネディクトネス benedictonnes (-) {choir}
・2つのロンデル deux rondels (-) {vo, p}
・ délie object... (-) {vo, p}

・2つのエレジー deux élégies (-) {vo, fl}
 1) 可愛いうぐいす charmant rossignol (text: F. Maynard)
 2) 歌 chanson (text: J. Pellerin)

・詳細不明の合唱曲(1917?) ... うち1曲をイザベルへ転用
典拠 Smith, R.L. 2004. Roland-Manuel. New Grove Online.
Ravel, M. 1986. Lettres à Roland-Manuel et à sa famille. Quimper: Calligrammes.

※もかさんより{小松耕輔(1927)「現代佛蘭西音楽」東京,アルス}を典拠に,数点の作品をご紹介頂きました。原題は確認中(2005.11.14)


ロラン=マニュエルを聴く


★★★
"Fantaisie (Fauré) Tzigane, Introduction et Allegro (Ravel) Trio à Cordes (Roland-Manuel) Concerto en Sol Majeur (Ravel)" (Manchester Music Festival : CM1361)
David Gilbert (cond) Shoshana Rudiakov (p) Jayn Rosenfeld (fl) Lun, Quan and Danwen Jiang, Eric Rosenblith, Xin Ding (vln) Karen Lindquist (hrp) Morrie Sherry (cl) Ariel Rudiakov (vla) Ann Kim, Michael Rudiakov (vc) Manchester Music Festival Symphony Orchestra
マンチェスター音楽祭は,現在は故人となったユージン・リストご夫妻が,1974年バーモント州で創設したローカルな音楽祭。1985年以降は,チェロのルディアコフ氏が音楽監督を務めているそうで,本番以外にも,年6回の若手演奏会を始め,12人の専任講師による6週間の室内楽講座,地元の若手を対象とするレッスンや家族向け公演を併行。地域密着型の活動をしているようです。どうもくだんのルディアコフ一党が主要ポストを占領しているらしく,25周年記念で大挙リリースされた本シリーズの殆どは,常に家族の誰かがフロントを固め,当該地区の権力構造が透けて見えてしまう。恐らく来館なさる音楽好きの誰一人知らぬであろうこの一家が,四半世紀近くに渡って半ば私物化できるわけですから,当然ながら演奏もアマオケに毛が生えたレベル。物申す人がいなけりゃナルにもなります。ライヴだろうがお構いなく,無謀にもラヴェルへ挑み,派手に玉砕。音を外しまくる管部,青息吐息のピアノ,ガラスを爪で擦るような弦,後ろで鳴る携帯(爆),全てがミステリーの演奏にはもはや苦笑いしか出ません。関係者以外の世界中の皆様にとって本盤の存在価値は,従いまして大御所2人に挟まれ場違いな彩を放つ,ロラン=マニュエルの三重奏曲のみ。予想通り怪しいピッチで,屠殺前の鶏の如き苦しげな音色を披瀝するトリオの謎パフォーマンスを,頭の中で懸命に篩いに掛けてみますとなかなかの佳品。循環形式に則る穏健なポスト・ロマン派旋律の後ろで,煌びやかな重奏トレモロを絡めつつ分厚く下支えする二弦。旋律の所々に少しアマっぽい隙があり,本家より田舎風で垢抜けしない点を除けば,誰の耳にもラヴェルの影が。似た作家を捜すなら,イギリスの室内楽。バックスやモーラン辺りに近い風合い。もう少し清らかな弦で聴けば見違えるほどいい曲なのでは。まともな録音はこれ一枚。偉大な師匠に隠れ,不幸な役回りになってますねえ・・。

★★★★☆
"L'Eventail de Jeanne / Les Maries de la Tour Eiffel: French Ballet Music of the 1920s" (Chandos : CHAN 8356)
Geoffrey Simon (cond) Philharmonia Orchestra
本盤は『ジャンヌの扇』と『エッフェル塔の花嫁花婿』という,2つの共作一幕ものバレエ音楽をカップリングした徳用盤。最近新装なって再び発売されましたが(CHAN 10290),再発された事実ひとつ取っても,いまだ本盤が,この2つのバレエ音楽を聴くのに最良のセレクションだとの事実は御納得いただけるでしょう。実際,これだけ名のあるオケで,この2作品がカップリングされたというのは,他に余り例を見ないのではないかと思います。前者はラヴェル以下フェルー,イベール,ドラノワ,ルーセル,ミヨー,プーランク,オリック,シュミットに加えて,ロラン=マニュエルが一曲書いて10曲分。後者は六人組の共作という体裁で,いずれもコクトー界隈の匂いがプンプンする軽めにして人を喰ったバレエ音楽。おまけに前者はバイキング形式。つまみ食い以上の感慨はありません。六人組絡みの面々が主体となると,俄然浮いてしまうのがラヴェルと,その弟子にして親友のロラン=マニュエルでしょう。僅か2分。4曲目『カナリー』に聴ける,ラヴェルも真っ青の熟達したオーケストレーションにはまさしく感服。さらりと何気ない風を装って流していながら,素晴らしい筆力です。ヴュイエルモーズ然りこの人然り。ベテルギウスの如く巨大な星の周りを回ってしまったが為に,本当は相当な才能を持ちながら衛星扱いされてしまうこの皮肉。僅か一曲しか聴けないこの哀しみ。幾ら本業が批評家だからって,そういう色眼鏡で聴く前から値踏みされ,喰わず嫌いされてしまうなんて。もはや全人類にとって不幸以外の何ものでもないと断言します。誰かもっと録音してえ!

(2005. 2. 15 USW standard time)