Sの作曲家



シリル・スコット Cyril Scott (1879-1970)

イギリスのピアノ奏者,作曲家。1879年9月27日オクストンのビジネスマンの家庭に,第三子として生まれる。12才でドイツのフランクフルトへ留学し,ホッフ音楽院でラツァーロ・ウジェリ(Lazarro Uzielli)にピアノ,フンパーディンク(Engelbert Humperdinck)に楽典を師事。フランクフルトへは2度留学し,2度目はイヴァン・ノールに作曲法を師事した(パーシー・グレインジャー,ノーマン・オドネル,ロジャー・キルターら,のちに【フランクフルト派】と呼ばれる若手たちと,ここで知遇を得る)。1898年に帰国後はリバプールやマンチェスターを拠点にピアノ奏者として活動する傍ら,ユニバーシティ・カレッジ仏文科の教授シャルル・ボニエ(Charles Bonnier)やフランクフルト時代の友人シュテファン・ゲオルゲ(Stefan George),ウィリアム・デ・ハーン(William de Haan)との交流の中で東洋哲学や神智学に興味を持ち詩作を行うと同時に,音楽で認められてロンドンへ移住。ドビュッシーやラヴェルとも知遇を得て印象主義へ傾倒。ピアノ曲を中心に,簡素な様式の描写音楽,東洋的題材の小品を執筆している。1969年にシカゴ音楽院名誉博士号。1970年12月31日,イーストボーンにて死去。


主要作品
※ Hull, A.E. 1919. Cyril Scott: composer, poet and philisipher 2nd ed. Kegan Paul, Trench, Trubner& Company.
入手。前半生についてはフォローできました。作品表改訂予定です。また後年に書かれた自叙伝も入手交渉中です。

オペラ ・ジ・アルケミスト the alchemist (1924)
・山の聖人 the saint of the mountain (1924-1925)
・神社 shrine (1925-1926)
・モリーン・オハナ Maureen O'Hana (1946)
管弦楽曲 ・交響曲第1番 symphony No.1 (1899?)
・交響曲第2番 symphony No.2 (1902?)
・アイルランド民謡の主題による2つのパッサカリア two passacaglias on Irish theme (1912)
・海王星 neptune (1933/1935)
・交響曲第3番 symphony No. 3 (1937)
・ナポリ風の狂詩曲 Napolitan rhapsody (1960)
・海難 disaster at sea (-)
・幻想組曲 suite fantastique (-)
・3つの舞曲 three danses (-)
協奏曲 ・ピアノ協奏曲第1番ハ長調 piano concerto No.1 (1913-1914) {p, orch}
・詩曲 【ある朝早く】 poem 'early one morning' (1931) {p, orch}
・ピアノ協奏曲第2番 piano concerto No.2 (1958) {p, orch}
・ヴァイオリン協奏曲 violin cncerto (-) {vln, orch}
・チェロ協奏曲 cello concerto (-) {vc, orch}
器楽曲 ・タラハシー舞曲 Tallahassee suite (1910) {vln, p}
・ヴァイオリン・ソナタ第1番 violin sonata No.1 (1910) {vln, p}
・オバド aubade (1911) {fl, p}
・ソナティナ sonatina (1927) {g}
・ソナタ・メロディカ sonata melodica (1950?) {vln, p}
・フルート・ソナタ flute sonata (1961) {fl, p}
・我を忘れた羊飼い the ecstatic sheperd (-) {fl}
ピアノ曲 ・2つの道化師的な小品 two 'pierrot' pieces (1904)
・2つの小品 two pieces (1905)
・黒人の踊り danse nègre (1908)
・ピアノ・ソナタ第1番 piano sonata No.1 (1909)
・3つの悲しい舞曲 trois danses tristes (1910)
・ミズセキレイ water-wagtail (1910)
・組曲 suite No. 2 (1910)
・ピエレット Pierette (1912)
・詩曲 poems (1912)
・ピアノ・ソナタ第3番 piano sonata No.3 (1956)
歌曲 ・子守唄 lullaby (1908)


スコットを聴く


★★★★
"Symphony No. 3 'The Muses' / Piano Concerto No. 2 / Neptune" (Chandos : CHAN 10211)
Martyn Brabbins (cond) Howard Shelley (p) The Huddersfield Choral Society : BBC Philharmonic
スコットランド放送管と組んでハイペリオンに演奏秀逸なマッケンジー管弦楽作品集を吹き込み,鮮烈な印象を残したリーズ国際指揮者コンクールの覇者,マーティン・ブラビンスが,スコット管弦楽作品集を吹き込みました。まさか天下のBBC響が,スコットを録音する日が来ようとは思っても見ませんでした。言うまでもなく,パラグライダーの如くフラフラと低空飛行するマルコ盤とは高度にして数千メートルは落差のある美演です。加えてこの盤,選曲が素晴らしい。いずれもスコットの書いた曲の中ではかなり現代寄り。ピアノ曲やマルコ盤で聴ける凡庸なドビュッシアンとは趣が大きく異なります。「交響曲第3番」はギリシャ神話に出てくるミューズの物語に着想し,1937年に書かれた作品。規模の大きい打楽器や風音機,ハープ2台を付帯した大仰な編成で神話をモチーフ・・と聞けば想像が付く通り,いつものドビュッシーもどきに加えて,ポリモードや変拍子の使用にはストラヴィンスキーの影響が見え隠れします。オグドンが初演した「ピアノ協奏曲」も,バルトークやオアナ界隈の色合いが入り,凝ったリズム配置と無調前夜なピアノが絡み合った野趣溢れる意欲作。ストラヴィンスキー被れが空々しく響く「海王星」などを聴くに,やっぱりこいつは二流以下との感は拭えないものの,野蛮主義の表情を加えたのが大当たり。スコットの書いた管弦楽としては,最上の部類に属するのではないでしょうか。おめでとうございますスコットさん。漸く貴兄の真価を聴いて貰えるCDが出ましたね。これを聴いて「詰まんね〜」と仰る貴兄は以降スコット禁止。面白い方はいい印象を持ったままご一緒に次の録音を待ちましょう。

★★★☆
"In the Gardens of Soul-Sympathy - Scott Piano Works :
Two Pieces / Two 'Pierrot' Pieces / Pierrette / Poems / Trois Danses Tristes / Sonata" (Etcetera : KTC 1132)

Dennis Hennig (piano)
決して有名な作曲家ではないものの,幾つかの文献では,「その他の印象主義作家」として名前の挙がることがあるので,後学のために紹介しておくことにしました。本盤はピアノ作品集。多分スコットの作品では最も有名な「蓮の国」を収録しています。全半音階やペンタトニック・スケール,平行和音をこれ見よがしに多投して,印象主義色の強い作品を書きますが,最も重要な構成力が脆弱。このため,全ての手管がスカスカに見え透いてしまい,全くうだつが上がらなくなってしまう。メロディーは平凡なうえ新鮮味がなく,リズムは変化に乏しく捻りもない。意図的に簡素にしているのではないサティみたいにスカスカの,出涸らしめいた旋法基調の安っぽい曲想は,アマチュアの手習いなみの凡庸な響きとしか表現のしようがない。下記に紹介する管弦楽も陳腐の極みです。所詮は,印象主義にあこがれたイギリス人の猿真似。凡才と敢えて断言しましょう。どうしても手を出したいというなら,演奏に関しては許容範囲に軟着陸してくれたこのピアノ盤を。マルコ盤は演奏にいたるまで醜悪。到底誉められたものではありません。

★★
"Aubade / Neapolitan Rhapsody / Three Dances / Suite Fantastique / Two Passacaglias on Irish Themes" (Marco Polo : 8.223485)
Peter Marchbank (cond) National Symphony Orchestra of the S.A.B.C.
管弦楽作品集。印象主義の特徴的な語法(全音階・平行和音・旋法性の高さ)などが冒頭からこれでもかとてんこ盛りされ,確かに気分はドビュッシーなんですが,やはりここでも,憧れのレベルで止まっているとの印象は拭えません。ドビュッシーからその官能性や流動感,閃きをどんどんお茶を出すように抽出したら,残ったのがスコットだった・・と形容すればいいでしょうか。取り敢えず後期ロマン派や印象派の語法なので一聴の価値はあるのかも知れませんけれど,本家よりは遙かにディズニー臭く,キッチュといわざるを得ません。ところで,このCDも,現在入手可能な唯一のスコット管弦楽作品集。どマイナーばかりに手を出して,全ての近代ファンに他の選択肢を許さない,このレーベルの辺境見聞録根性には頭が下がります。マルコさん。こんな未開の地まで探検済みの足跡を残してるあなたは凄いよ,認めるよ・・。しかしまた,このレーベルくらい演奏に無神経な会社も珍しいんじゃなかろ〜か。も〜ちょっと人選考えましょうよ。なんで・・なんでイギリスの印象主義作家のオケ作品を作るのに南アフリカの楽団なんだよ!(怒)ザラザラした揃わない弦部の鳴りはまさに斯界の南北問題そのものです。


(2002. 12. 3/2003. 1. 6 revised)