Vの作曲家


ルイ・ヴュイルマン Louis Vuillemin (1879-1929)

フランスの批評家,作曲家。本名ルイ・フランシス・ヴュイルマン(Louis Francis Vuillemin)。1879年12月19日ナント(ロワール州アトランティク県)生まれ。父は砲兵隊の士官だったが,祖父はピアノ工房の創始者(M.ディディオン)という家系に育ち,ほどなくピアニストとチェリストを志してナント音楽院へ進学。次いで1899年にパリ音楽院チェロ科へと進み,グザヴィエ・ルルーに和声法を,ガブリエル・フォレに作曲法を師事。特にフォレやラドミローには傾倒し,ブルターニュ地方の民謡に着想して作曲活動を展開した。著述の分野でも『近代和声法概論(Traite de l'Harmonie moderne)』のほか,『フォレとその作品(Gabriel Fauré et Son Oeuvre)』(1914年),『アルベール・ルセルとその作品(Albert Roussel et Son Oeuvre)』(1924年),『ルイ・オベールとその作品(Louis Aubert et Son Oeuvre)』などがある。当時名声を博したオペラ歌手の妻とは早婚だったため,独身が参加資格のひとつだったローマ大賞へは応募せず,現在ではこれが過小評価に大きく影響しているものと思われる。しかし,ルネ=バトンやロパルツを思わせる,地方情緒と近代の書法を巧みに融合した筆致は大いに再評価すべきものがあるといえよう。1929年4月2日パリにて死去。彼の表音については「ルイ・ヴュイユマン」ないし「ルイ・ヴィユマン」とするものが多いが,パリで「ヴュイルマン」と呼称されることが多いとの情報を頂いたので,本ページ内ではこれに従っております。ただし,現地訛りでヴィユマンとなる可能性は残りますので,お含み置きください。資料収集にあたっては【あんぐら社中某氏】のご厚意により,多くをご提供いただきました。無断複製を厳禁します


主要作品
 

舞台作品 ・歌劇【貿易船】 le double voile: drame lyrique (-) {1act 2tab.} ...René Fauchois台本
・叙情劇【ヨレーヌ】 Yolaine: conte lyrique (-) {4acts}
・【シーラ】のための劇音楽 musique de scène pour 'Sylla' d' Alfred Mortier (-)
管弦楽 ・コルヌアイユにて en kerneo (en Cornouaille), op.23 (-) {orch/p}...全7楽章
 1) Ar zac'h bennio (Les binious)
 2) Dindan ar goe fo ( Sous les hetres)
 3) Ar pesceter hanter-veo (Le pecheur en goguettes)
 4) Notre-Dame de Kerinec
 5) Var an ennt ( Sur la route)
 6) Ar lann rose ( La lande rose)
 7) A c'hoas ar zac'h bennio ( Et encore les binious!)
器楽曲 ・アルモリカの夕暮れ soir Armoricains: étude d'apres nature, op.21 (1913-1918) {p}... モリス・デュメニルに献呈。
 1) Au large des clochers
 2) En Rivière
 3) Carillons dans la Baie
 4) Appareillage

・牧人の踊り danse bucolique (1922) {2p}
・4つの舞曲 quatre danses, op. 16 (-) {2p}
 1) ブーレ bourrée
 2) ジーグ gigue
 3) パヴァーヌ pavane
 4)
パスピエ passpied
・5つの軽いワルツ cinq valses légères, op.22 (-) {p}
・3つの前奏曲 trois préludes (-) {p}
・鐘 carillons (-) {p}
・3つの易しい小品 trois bluettes faciles (-) {2p}
 1) 間奏曲 intermezzo
 2) カンティレーヌ cantilène
 3) ヴァルス valse

・ホルンパイプ hornpipe (-) {hrnpipe}
歌曲 ・私の蝉 ma cigale (1898) {vo, p}.. J. Marcel詩
・盲目のパヴァーヌ pavane aveugle: pour l. automne: Romance (1898) {vo, p}... Edm. Haraucourt詩
・我がもとに来たれ laissez venir à moi (1903) {vo, p}...A.De Hormon詩
・あるフルート吹きのロンデル rondel sur une joueuse de flûte (1904) {vo, p}...
A. d. Hormon詩
・アヴェ・マリア ave maria (1905) {vo, p}...
カプレに献呈
・期待 attente (1912) {vo, p}...
C. Mendès詩
・今この時:家路 présents, retuor (1913) {vo, p}...
Cl. Croiza詩
・オ・サルタリス o salutaris (1914) {vo, p}...
ユレに献呈
・メランコリックなロンデル rondels melancoliques (-) {vo, p}...
C. Mendès詩.
 1) Le Poète porte le deuil des joies pas encore nées
 2) Il songe que nul ne saurait naître pour la première fois
 3) Il implore la mékancolique rose
 4) Il croit entendre pleurer son coeur dans la plainte du ruisseau

・はちどり le colibri (-) {vo, p}..Leconte de l'isle詩
・肖像画 le portrait (-) {vo, p}..Léon Dierx詩: L.Pelletierに献呈
・夢 les rêves (-) {vo, p}..René Fauchois詩: Aline Vallandri(オペラ・コミーク)に献呈
・リート lied (-) {vo, p}..Aug. Angelier詩: L.Muratore(オペラ座)に献呈
・疲れた歌 chant lasse, la route (-) {vo, vln (vc), p}...
H. Montasssier詩
その他 ・選手団の行列 cortège d' athlètes, composé à l' occasion des Jeux Olympiques de 1924 (1924)


ヴュイルマンを聴く


★★★★
"La Mer (Debussy) Une Barque sur l'Ocean (Ravel) Soir Armoricains (L. Vuillemin) L'isle Joyeuse (Debussy)" (Ar Re Se : AR 2001-1)
Lydia Jardon (piano)
「海」をテーマに作られたこのCDは,リディア・ジャルドン女史による選集。無名のソリストはパリ高等音楽院とエコール・ノルマル卒。ジョルジュ・シフラ基金の奨学生でもあったそうで,1998年には国連の依託を受け,ボスニアへ楽遊した経験もあるそうです。ただ,国際的な受賞歴には乏しく,技巧的にも闊達な方ではないご様子。『喜びの島』などの技巧的な曲になると,完璧に運指は摩滅してしまっており,力量不足の感は否めません。しかし,その代わりにあるのが主役の丁寧な仕事ぶり。『喜びの島』も,やっつけ仕事の大物にはない丁寧な譜読みで好感度大です。そんな彼女の主張は,両巨匠の間へブルターニュ地方の激マイナー作家,ルイ・ヴィルマンを含める見識の高さに,色濃く現れている。彼女によって救済された原作者の筆致は,印象主義の薫陶を受けながらも,強い旋法性と,民謡に根ざしたより武骨なリズム,簡素な旋律を利して独自の詩的情緒を追い求めたもの。ドビュッシーやラヴェルが,中央の楽壇を改革し音楽史における楽理そのものを拡張していた頃,地方ではセヴラックやロパルツ,フレムらが,ドビュッシー等の作った新しい絵の具で,それぞれの土地に眠った素材を再現前するもう一つのモダニズムを推し進めていた。ともすれば巨匠の影に隠れがちなフランスにおけるもう一つのモダニズム。その両方を見つめることなしに,本当の意味での近代の理解はないでしょう。仏近代に於ける二枚岩的コントラストを見事に描き出す巧妙な選曲こそ,このCDの真骨頂です。

(2005. 3. 6 upload)