Wの作曲家


レオ・ヴァイネル Leó Weiner (1885-1960)

ハンガリーの作曲家,教育者。1885年4月16日ブダペスト生まれ。兄の手ほどきで記譜法を学んだほかは,ほぼ独習で才能を開花させ,1901年にブダペスト音楽大学へ進学して1906年まで在学。ハンス・ケスラー(Hans Koessler)に作曲法を師事した。在学中に作曲した『セレナーデ』でエルケル賞を獲得。1905年にブダペスト歌劇場(Vigopera)の指導員となったが,ジュビリー賞の報奨金でドイツとフランスを楽遊。帰国後,1908年にはヴィクトル・ヘルツフェルドの後任としてブダペスト音楽大学音楽理論科の講師に就任。1912年には作曲法科の教授となり,1920年には室内楽科教授も歴任した。在任中の1928年には指揮者抜きの学生オーケストラを組織したほか,1949年に名誉教授となったのちも教育活動を続け,ゲオルグ・ショルティ,ジョルジー・クルターグ,アンタル・ドラティら,優れた弟子を輩出。生来の完璧主義から,65才の時点で僅かに30ほどしか残さないほどの寡作であったが,ベートーヴェンからメンデルスゾーン,ビゼーの流れを汲むロマン派の美意識に立脚した作風で知られ,1922年に自作『弦楽四重奏曲第二番』でクーリッジ賞,1933年に『組曲』でブダペスト市民賞(と思われるが不詳),1950年にコシュート(Kossuth)賞の受賞歴がある。1960年9月13日ブダペストにて死去。


主要作品
 

付帯音楽 ・チョンゴルとティンデ Csongor és Tünde, op.10 (1903) ... M.Vörösmartyの舞台作品のための付帯音楽
管弦楽曲 ・スケルツォ Scherzo, op.1 (1905)
・小管弦楽のためのセレナーデ Serenade, op.3 (1906) {small-orch}
・謝肉祭とユーモレスク farsang, humoreszk kis zenekarra, op.5 (1908) {small-orch}
・玩具の兵隊 Katonásdi, op.16 (1930-1931)
・ハンガリー民謡舞曲 Suite: Hungarian folk dance, op.18 (1933)
・弦楽のための喜遊曲第一番 Divertimento for strings No.1, op.20 (1934) {strings}
・パストラール,幻想曲とフーガ Pastorale, phantasie et fugue, op.23 (1941) {strings}
・弦楽のための喜遊曲第二番 Divertimento for strings No.2, op.24 (1939) {strings}
・喜遊曲第三番 Divertimento No.3 'impressioni ungheresi', op.25 (1950)
・序曲【祭囃子】 Unnepi hangok (1951)
協奏曲 ・小協奏曲 Concertino for piano and orchestra, op.15 (1923) {p, orch}
・ロマンス Romance for cello, harp and strings, op.29 (1949) {vc, hrp, strings}
・ヴァイオリン協奏曲第一番 Concerto No.1 in D major, op.41 (1958) {vln, orch}
・ヴァイオリン協奏曲第二番 Concerto No.2 in F sharp minor, op.45 (1957-1960) {vln, orch}
器楽曲 ・二重奏曲 duet for tárogató and cimbalom (1905-1906) ... ツィンバロンの二重奏曲
・弦楽四重奏曲第一番 変ホ長調 Quartet No.1 in E flat major, op.4 (1906) {2vln, vla, vc}
・弦楽三重奏曲 ト短調 Trio for strings in G minor, op.6 (1909) {vln, vla, vc}
・バラード Ballade, op.8 (1911) {cl (vla), p} ...
管弦楽配置あり
・ヴァイオリン・ソナタ第二番 Sonata No.2 in F sharp minor, op.11 (1918) {vln, p}
・弦楽四重奏曲第二番 嬰ヘ短調 Quartet No.2 in F sharp minor, op.13 (1922) {2vln, vla, vc}
・ロマンス Romance, op.14 (1925) {vc, p} ...
1921年とする資料もある
・弦楽四重奏曲第三番 ト長調 Quartet No.3 in G major, op.26 'Pastorale, Fantasy and Fugue' (1938) {2vln, vla, vc}
・ペレグの踊り [Pereg recruiting dance], op.40 (1950) {cl, p}
・(邦訳不詳) Ket tetel (-) {cl, p}
・動き Movements (-) {cl, p}
ピアノ曲 ・変奏曲集 Változatok (1905)
・タランテラ舞曲 Tarantella (1905) {2p} ...
2台8手作品
・カプリース Caprice (1908) ...
1912年にアウレル・ケーン編『ハンガリー近代音楽』に採録された
・パッサカリア Passacaglia, op.2 (1907) ...
未完
・前奏,夜想曲とスケルツォ Praeludium, nocturne and scherzo, op.7 (1911) ...
「3つの小品」と同一,1912年説あり
・小品集 Miniatur-Bilder, op.12 (1917) ...
8曲,2巻からなる,1921年とする資料あり
・組曲 Prinz csongor und die kobolde suite, op.10b (1927)
・パッサカリア Passacaglia, op.17 (1936) ...
未完のパサカリアから改変
・6つのハンガリー民謡 Sechs ungarische bauernlieder, op.19 (1933/1935) ...
2巻
・祝婚の舞踏 Lakodalmas, op.21 (1937) {p /vln, p}
・ハンガリー民謡集第三巻 Ungarische bauernlieder, op.22 (1938)
・若いピアノ弾きのための20の易しい小品 Husz könnyükis darab a zongorázó ifjuság számára, op.27 (1948)
・ハンガリー舞踏曲 [Hungarian folkdances] (1941) {p}
・ハンガリー民謡による変奏曲 [Variations on a Hungarian Folksong], op.32 (1950) {2p}
・連弾のための小品集 [Little pieces], op.36 (1950) {2p}
声楽曲 ・アニュス・デイ Agnus dei (1907)
典拠 J.S.W. 1966. Leó Weiner. In E.Blom (ed.) Grove's dictionary of music and musicians 5th ed. London: Macmillan.


ヴァイネルを聴く


★★★★★
"String Trio, op.6 (L.Weiner) Intermezzo (Kodály) Serenade, op.10 (Dohnányi)" (CPO : 999 950-2)
Deutsches Streichtrio : Hans Kalafusz (vln) Jürgen Weber (vla) Reiner Ginzel (vc)

大国の近所にあるせいで,色々と辛いご経験もなさったハンガリー。本盤は1875年代から10年間に生まれた近代作家三名の弦三を通じて,彼の国における近代の黎明を俯瞰する選集です。とはいえ,いずれも書かれたのは1900年代最初の10年間。何れの作品も,基本は習学期のそれで,いわゆる独襖の流れを汲む保守的なロマン派書法です。コダーイの小品などは,活気のあるリズムや簡素な旋律に民謡偏愛の片鱗が見え隠れこそすれ,のちに民俗主義の大家となるとは思えないほど穏健。期せずしてこの3人がいずれもハンス・ケスラー(独人)の弟子だった事実を鮮やかに示すものです。ヴァイネルのトリオは,作曲者自身が「ト短調で」と書くくらい,調性感も明瞭で主題具象的。「ハンガリーのメンデルスゾーン」そのままのモロ保守派。なのに,その主旋律が実に好ましく聴けてしまう。保守派ロマンティストの枠組み内で,知と情が黄金律と言っても良いくらいに見事にバランス。本家フランスの保守派筋も真っ青の慎ましやかな官能美があり,和声も薫り高い。それに加えて素晴らしいのが,時折その宮廷音楽的な叙情の園に,ちらりちらりと差し挟まれる物憂い翳り。焦がれた音楽の,しかし中心地ではないがゆえ,焦がれた音楽を少し離れた距離で見つめることになった彼ら特有のものかも知れません。特にヴァイネルは異郷のユダヤ人でしたから,西欧音楽に憧憬を抱きながらも,その輪の中に入っていないオノレの微妙な立ち位置を感じてもいたのでしょう。演奏するドイツ弦楽三重奏団は,シュトゥットガルト,ドレスデン,バイエルンの各オケで首席を張った三名が1972年に結成。独方向が鬼門な当館では無名のため,正直全く期待しておりませんでしたが,びっくりするほどの美演。それもその筈,実は仏国際室内楽コンペで優勝した名アンサンブルだそうな。きっとあっしの場合,演奏が抜群だから聴けてる面もあるんでしょうなあ。

(2006. 11. 30 upload)