〈陳情の理由A〉

 住民は何故、北袋二丁目住宅地内の換気塔の位置移動と工事協定締結を事前に求めているのか ― 首都高速道路公団の主張に対して

(一)

私たちは本年一月十日から始まった首都高速道路公団の高速大宮線北袋地域内工事強行をやめて、事前に工事協定を結び、北袋二丁目住宅地内に計画されている換気塔を至近距離にある見沼用水路をこえた所に移し、高速道路の出口の上は緑の広場にしてほしいと要求して話しあい解決を求めています。

私たちは陳情の理由@の冒頭で述べたように十五年前に埼玉新都心再開発計画に伴う十五本の緊急街路計画の一環としてつくられる高速大宮線についての埼玉県担当部長の協力要請に応えて、高速大宮線は北袋住宅地域は地下を通し、出入口と換気塔は近くにある見沼田圃の中につくる事を条件に協力するという事にしました。

ところがアセスメントの結果、排気ガス公害等の環境被害は起らないとして住民の要請を無視した一方的な都市計画決定が行われました。

それ以来、十三年に及ぶねばりづよい話し合いの中で一貫して掲げてきた要求事項を首都高速道路公団の工事強行を目前に、思い切って切り下げて、「高速大宮線の北袋二丁目住宅地内のトンネル出入口は現計画のままでよいから、換気塔の位置だけは見沼用水を越えたところに移し最高技術水準の有害排気ガス除去装置を付けて、事前に工事協定を結んで工事に入ってほしい」という要望を昨年八月八日の住民集会で採択して提出しました。

ところが、九月二日、この苦渋に満ちた住民の妥協案を佐藤省三首都高速道路公団埼玉工事事務所長と都木信也埼玉県新都心建設事務所長は連名で冷たく次のように一蹴しました。

「換気所の位置については高速大宮線のルートや道路の構造、トンネルの換気効率等を総合的に検討し、さらに環境アセスメントが実施され、環境基準を満足のうえ都市計画決定されたものであることから現計画を尊重してまいります。そのためご要望には添えませんので、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。」 

 しかも、この文書手渡しの際、お二人は「これで悪かったら裁判でも何でもやって下さい。仮処分決定があっても高裁決定が出るまでは工事を続けて、その間に換気塔も建ててしまいます」と放言しました。

(二)

 この住民の妥協案は「技術的に可能であり、都市計画決定の範囲内であり、違反しない」という結論が出ており、交渉の中で双方が認めています。このことについては埼玉県鈴木副知事に対する埼玉県土木建設部門の回答でも明らかです。鈴木副知事は「この案で円満妥結して早く工事を完成させた方がよい」として、あっせんして下さったことは前述した通りです。ところが首都高速道路公団はこの案を拒否し、工事を強行しました。

 この事態の中で埼玉県担当者は「高速大宮線の予算と発注は国土交通省がやっているので首都高速道路公団に対する監督指導は国土交通省でないと出来ない。埼玉県もさいたま市も住民の要望に配慮する事を要請することは出来るが、監督指導は出来ない」と述べました。

 私たちはやむをえず、本年二月十八日、埼玉県知事に陳情書を提出し、「二〇〇三年一月十日、住民との合意なしで首都高速道路公団が始めた高速大宮線北袋町地域内工事をやめさせて、住民集会が採択した新しい妥協のための提案で円満妥結し、工事協定を結び、工事にとりかかるようにする」ことをお願いしました。

 「この陳情書が埼玉県知事に提出されたことについては埼玉県より伺っております。これまでに要望されていることについて、当公団の見解を申し上げます」として、本年三月二十七日、首都高速道路公団東京建設局建設第二部長長谷川和夫氏が住民代表に文書を携えて説明に来ました。

 その文書の中で「排気塔の位置については埼玉県、さいたま市、当公団が総合的に検討した結果、高速大宮線のルートや道路の構造、トンネルの換気効率等を総合的に検討し、さらに環境影響評価が実施され、環境基準値を下回ることを確認のうえ都市計画決定されたものであることから現計画を尊重していくという回答は一貫して変らない」と答えています。

しかし「排気塔の移動だけなら技術的に可能であり都市計画決定の範囲内であるという埼玉県土木建設担当の意見については既に首都高速道路公団の代表も認めている以上、すでに都市計画決定されたものであるから現計画を変えないという回答だけでは済まされない。」という反論に対して、長谷川氏は次のように答えました。

@「技術的には可能だが工事費が余分にかかる」A「排気塔の位置を見沼の中に移動することになると見沼の環境予測調査を春夏秋冬とやり直さなくてはならないので工期が一年半以上延びて平成16年度末までに完成せよという厳命に反する結果となる。その上予定された料金収入も入らなくなる。」B「いずれにせよアセスメントの結果、排気ガスは環境基準値以下で公害は起らないのだから排気塔の位置移動の検討は必要ない。」 C既に50回以上話しあい、環境対策として10項目の施策を講じている。この上換気塔の位置移動に応じることはできない。北袋二丁目も含めて全面的に工事に入らせていただきたい」D工事協定については地元代表者の方々との話しあいや結果を確認できる文書等の交換により対応してまいりたい。」

 これに対して住民代表は次のように質問し反論しました。

@     技術的には可能だが工事費が余分にかかるということが排気塔を移動しない理由になっているが、どの位工事費が余分にかかるのか、今まで何度要求しても回答がないが明らかにしてほしい。

A     見沼に排気塔の位置を移動することによって生じる環境影響予測調査が必要ならすぐ始めてほしい。その結果どういう評価となるのか是非知りたい。いずれにせよ、見沼の中を高速大宮線は高架で通すことになっているのだからそのアセスメントもやってその結果を知りたい。これは近隣住民として当然の要求である。アセスメントを新しくやらなくてはならないから、一年半以上も工事期間が延びるし予定料金収入も入らなくなるという理由は了解し難い。

B     「十三年前のアセスメントの結果と都市計画決定を楯にとって排気ガスは基準値以下だから公害は起らない。排気塔の位置移動は必要ない」という公団の回答は了承できない。

 

(三)

 私たちは二月十八日の埼玉県知事に対する陳情書の中で、せめて排気塔の位置を見沼用水を越えたところまで移動する必要があるという理由について次の三点をあげています。この事を首都高速道路公団をはじめ国土交通省をはじめ関係自治体が真剣に考えていただきたいと存じます。

第一に排気塔は、その後換気塔と名称が変更されたとおり地下高速道路に排気ガスが立ち込め視界不良で交通事故が起こったり、運転手の健康を害することが起こるので換気するためにつくられるものであり、有害排気ガスを除去することはできず拡散するのみであります。しかも、長い間排気ガスは健康被害の原因として認められていなかったのであります。排気ガスが健康被害の原因と  して裁判で認められたのは、一九九五年の西淀川裁判以来でその重大な原因となるジーゼル車規制も最近始まったばかりです。このように有害排気ガスの除去、規制はようやく最近重視されるようになりました。この点でも十三年前の高速大宮線アセスメントの結果で、環境公害なしとして私たちの新しい提案を拒否することは納得出来ません。この問題は電気集塵機を取り付けるだけでは解決出来ません。私たちはこの事を重視し最高技術水準の有害排気ガス除去装置を付けることを要望しています。

第二にそのため道路が近接し重なる排気塔の複号汚染対策等も最近重視されるようになり、昨年の東京公害裁判で正式に認められるようになったばかりです。十三年前の高速大宮線の環境アセスメントでは殆ど重視されておらず、産業道路と東西中央幹線道路、南大通り線と赤山東線、新都心内排気塔等による複号汚染のアセスメントは行われなかったのであり、私たちはこの点を重視して換気塔の位置の移動をお願いしているのであります。

特に、大宮産業道路と東西中央幹線道路、けやき通り線と旧中山道、南大通り線の交通渋滞にとりかこまれ、新都心内排気塔と北袋二丁目住宅地内換気塔が噴き上げる排気ガスが重なって沈下する幼稚園、小中高が密集する文教地帯の公害を阻止するためにせめて北袋二丁目住宅地に予定されている換気塔を見沼用水路をこえたところに移し、トンネル出口の上は緑の広場にしてほしいという住民の要求は切なるものがあります。

第三に北袋二丁目住宅地内に高さ三〇米〜四五米の排気塔建設を認めることは高層ビル林立の契機となるということです。北袋町二丁目では環境自主規制としてこれまで五階以上の高層ビルの建築は認めない方針で来ました。埼玉新都心再開発で高層ビル林立の波が起こるとして憂慮されている折柄、首都高速道路公団の一方的強行による住宅密集地内の高層換気塔を認めるわけにはいかないのであります。

北袋二丁目住宅地内に高速大宮線トンネル出口を認めたことによって既に北袋町の南北分断は確定し、産業道路四車線化で東西分断がさらに進みます。その上、四車線となる道路の両脇は高層事務所ビル地帯として用途地域指定変更となります。今後の再開発と町づくりは住民の自主計画を尊重しながら進めて下さることをあらためてお願いします。

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長谷川部長との話合いの中で住民代表は工事強行はやめて排気塔の移動と工事協定の内容で地下水、地盤沈下の調査結果と予測、工事時間、被害補償等についての質問に答えること等を要求し、さらに話しあうことにしました。

ところがその後も北袋一丁目の工事はそのまま強行し、五月十四日より北袋二丁目地域の工事も始めました。話しあいには佐藤埼玉県工事事務所長は数回出席して工事強行はやめないと主張し、その上司である長谷川部長は一切出席しません。これで誠意のある話しあいの態度と言えるでしょうか。換気塔のみを移動した場合の工事費超過額は二十一億円との回答を別紙のようにいただきました。

その中で、地下水調査資料と議事録方式による工事協定原案の交換は行われましたが、とりきめもなしに、工事は実力行使で一方的に進められています。双方の議事録方式による工事協定の原案は別紙のように提出してあります。マンション建設の場合でも住民側の原案程度の協定を事前に結ぶことは常識であると考えます。

首都高速道路公団はこれまで工事協定などというものは地域住民と調印したことはない。初めてのケースだと言っています。国土交通省の管轄する道路工事は多いのに道路公団はどこでも工事協定なしに工事を進めているのでしょうか?監督指導を厳しく行って下さる事を重ねて要請し陳情する次第です。

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