準備書面 高速道路公害埼玉新都心・道路公害等をなくし
 住みよい町をつくる会 更新日2004.9.27

平成16年 6月 18日 準備書面

  第1  債権者らの申立の立脚点

  第2 確認書は紳士協定にすぎないか

  第3 二回に亘って実施された調査・予測はいずれもアセスメントの名に値しない 違法なものである

平成16年 7月 20日 準備書面

  第1 債務者実施の環境影響調査の問題点

  第2 本件高速道路は環境改善に寄与するとしていることについての反論

  第3 本件換気所の機能に関する反論

  第4 疫学調査が示す窒素酸化物の害悪について

平成16年   8月   13日 準備書面

  第1 前回の債権者準備書面の不正確箇所の訂正

  第2 換気塔は固定発生源としての規制対象である事実

平成16年 9月 6日 準備書面
  1 「第1 環境基準の意義について」に関して

   「第2 二酸化窒素の人体への影響」について

  3「第3 一般大気環境に係わる疫学調査について」に関して

    (1)債務者は、環境庁の61年調査の結果、大気中の二酸化窒素と疾病との因果関係は認められなかった、としている。

     (2)「2大都会ぜん息調査」について

   (3)「3 平成9年報告〜平成15年報告について」に関して

    (4)「 第4 道路沿道における疫学調査結果について」に関して

平成16年 9月 27日 準備書面
  第1  債務者の8月13日付書面第2部「高速大宮線の建設・供用による人体への影響」の部分について

    同書面第1(都市計画決定時及び平成12年調査の結果について)に関して

  1 平成12年調査について債務者自身「任意で実施した」ことを認めており、これの方が正しい。

     平成元年調査においてはバックグラッンド濃度測定場所、いずれもBG濃度を小さく見せかけるための小細工。

  3  交通量伸び率のごまかしと実際の交通量予測

     自動車排ガスの排出係数の低減数値の虚構の件

    二つの環境調査に関して

      同書面第2部の第2(本件換気塔の付近への影響)について

    1 中心から70m離れているから、距離減衰により二酸化窒素の影響はほとんどなくなると

   2 発生源から150m離れてもほとんど減衰せず、逆に窒素酸化物が拡散し、NO→NO2

     3 北袋交差点の交通量が3.03倍に

     債権者の7月20日付準備書面

          5 交通量が3.03倍

     債務者の同書面48頁の4項の主張 

    7 三橋測定局付近の濃度を「超えることはあり得ず」

    (1)北袋2丁目のNO2濃度を高め、三橋測定局の値を超えてしまうことは高い確率で予想される

      (2)換気塔の寄与濃度は

    (3)債務者による自白について

    環境対策について

  第2 被保全権利および保全の必要性について
    環境基準超過の自白とアメリカの環境基準を持ち出した居直りについて

     化学変化について

    高速大宮線による影響は軽微とする点について

    固定発生源の問題

  第3  債務者の9月3日付準備書面に対する認否と反論

書証リスト

書証リスト 2

平成16年(ヨ)第180号、第199号  建築工事禁止仮処分命令申立事件                    債権者 第1次吉田実外87名、第2次天海泰成外15名

          債務者   首 都 高 速 道 路 公 団

          

さいたま地方裁判所 保全係 御中         

                                              平成16年 6月 18日

                                     債権者代理人弁護士 山 本 政 道

    

     準 備 書 面

 

第1  債権者らの申立の立脚点

   債権者らは、大気汚染被害等、本件高速道路換気塔建設の結果被害を受ける  ことが予想される住民、勤務者、通園幼稚園児の立場−−−すなわち予想被害  者個人として工事差止めの申立をしており、各自治会や「住み良い町をつくる  会」などの確認書にある6団体として申立をしているのではない。

   そこで確認書(疎甲第5号証)を調印した6団体と債権者との関係を述べる  と、つぎのとおりである。

(1)まず、確認書締結に至る経過がある。

 本件高速道路換気塔により、もっとも直接的に被害を受けるのが北袋地区と予想 されたのでその地区の5自治会が連絡会議に加わったのであるが、北袋地区以外 にも被害が及ぶことが予想されたので住み良い町をつくる会は北袋地区以外の住 民も参加して結成され、この会を含めた6団体で連絡会議を結成して首都高当局 と交渉を進めた結果、確認書に至ったのである。

調印にあたっても6団体は被害住民の代表としての立場を明確にするため住民 集会(これには住み良い町をつくる会の会員も参加した)を開き、その参加者た ちの面前で確認書の調印をしている。したがって代表者が押印をしてはいるが、 確認書の実質的当事者は高速道路建設で被害が予想される被害者全員ということ になり、被害者は個人として確認書を援用できる関係にある。

(2)6団体で結成する高速道路問題連絡会でも、本件提訴にあたり、代表者会議 を開き、被害者が個人として仮処分を提訴することを是認し、被害者個々が確認 書の効力を援用することを承認している。

   なお、念のため6団体の現代表者も全員申立人債権者となっている。

(3)また、北袋地区を中心として本件仮処分と同趣旨のことを首都高に求めた署 名者は北袋地区の全人口である3000名を集めた上、その周辺地区の3000 名を集めており、確認書6団体と債権者らは不離一体の関係にある。

3 したがって確認書の効力は被害住民等全部が援用できるわけであって、また確 認書の6団体と申立人債権者らは不離一体の関係にあるため、「首都高は確認書 6団体の同意があるまで工事を進めてはならない」の意味は、「首都高は債権者 らの同意があるまで工事を進めてはならない」と同義と考えて差し支えない。

 

第2 確認書は紳士協定にすぎないか

  債務者は、確認書の文言自体抽象的で、債務者に具体的な義務を法的拘束力を もって課する合意とは解されないとする。

    しかし、債務者の引用する高松地裁判決も、その文言に至った経過など諸般の 事情を判断しなければいけないとしているのであり、本件確認書締結に至った経 過、その後の交渉経過をみれば債務者に具体的な法的拘束力を及ぼす文書である ことは明かである。

  まず、確認書の文言に至った経過に関する松下裕陳述書(疎甲第30号証)お  よび吉田実陳述書(疎甲第31号証)に明らかなとおり、本件確認書の始めの案 文は「地元(6団体)の同意なく工事を行わない」とあったのであり、債務者の 担当者は、意味はそれでよいが上司に通らないことをあげて、裏の表現である「合 意を得て工事を進める」に変更した経過があり、この解釈は住民集会でも確認が なされている。

    しかも、その後についても本確認書に基づいた折衝が続けられ、一部区間につ いては文書を交わして工事を認めることにしたのであるし(疎甲第6号証)、北 袋町1丁目の工事も工事協定の合意を成立させたうえで実施されている。

  現在の対立点は、換気塔に脱硝装置をつけるか否かであって、極めて具体的で ある。

  確認書に基づいた交渉経過から明らかなとおり、同確認書の扱かっているテー マも一貫して債務者の計画した工事をめぐる地元の環境問題なのであり、とりわ け換気塔の位置や装備をめぐるものがその中心をなしており、具体的そのもので ある。

  したがって、文言が抽象的であることを理由に具体的な法的拘束力がないなど と言うことはあり得ず、確認書が紳士協定に過ぎないとの議論は成立しない。

 

第3 二回に亘って実施された調査・予測はいずれもアセスメントの名に値しない 違法なものである

  第一回調査について

   債務者は平成元年11月付の環境影響評価を発表しているが(乙第5号証)、 この時期の環境影響評価は、閣議決定である「環境影響評価の実施について」と 題する要綱に則り実施されなければならなかった(疎甲第35号証26頁)。

    その要綱によれば、高速道路の建設は第1番目にアセス実施義務があり、同号 証27頁の流れ図のとおり、アセスの準備書(これには調査・予測の手法まで載 せなければならない)を作成して、公告、縦覧、説明会の開催を経て住民の意見 書提出、それの市町村長・都道府県知事への送付(市町村長・知事の意見追加)  を経由し、環境影響評価書の作成となる段取りであった。

   しかし、債務者の提出した環境影響評価書(乙第5号証)はこの手続きとりわ け調査手法の公開とそれに関する意見聴取の手続きを経ていないものであり、閣 議決定時代のアセスとも言えないものである。

  第2回調査について

    債務者は第2回の調査を平成12年に実施したが、この時期はすでにアセス 法(平成9年6月13日法律第81号)が成立し、施行されていた(同法の施行 は平成11年6月12日)。

     債務者は第1回調査の補充調査と称するのであるが、乙第6号証を見ると第 1回よりも大がかりで分厚い報告書である。せっかくこのように大金を掛けるの であれば、なぜアセス法に即した調査をしなかったのか。前の結論を正当化する ために秘密裡にやったのではないかとの疑問がもたれるのである。しかも閣議時 代のやり方も踏んでいないのであるからお話にもならない。

     債務者はアセスメントには住民参加が欠かせないものであることを理解して おらず、アセスメントでないものをアセスメントと称している。

調査手法を始めに公開してそれへの批判を受けることから始めなければアセ スメントの名前に値せず、住民の批判をごまかすための欺罔手段と化している。                                                        以 上

 


平成16年(ヨ)第180号、190号、248号  工事禁止仮処分申立事件

 

さいたま地方裁判所 保全係 御中               平成16年 7月 20日

                                  債権者ら代理人 弁護士 山 本 政 道

 

                   準 備 書 面

 

第1 債務者実施の環境影響調査の問題点

  環境影響評価法の制定を受けて定められた環境庁告示(平成9年12月12日 環告第87号は、第2種事業について、「当該事業が、他の密接に関連する事業 と一体的に行われることにより総体としての環境影響が著しいものとなるおそれ がある場合」には、個別事業ばかりではなく関連事業の影響も判定基準に加える ことを求めている(甲第36号証5頁)。本件高速道路は第1種事業であるが、 第1種であるならなおさらこの基準を守らなければならないわけである。しかし、 乙5、乙6に示される債務者の2回の調査はつぎのとおり、本件高速道路に密接 に関連するさいたま新都心開発事業による道路網の拡幅整備・交通量増大の影響 を予測から除外しており、調査の名に値しない不正な「調査」である。

2 本件高速道路は、そもそも埼玉新都心開発事業という大規模開発事業の1部な のであって、道路関連の事業は一般道路15本を拡幅整備し、それに本件高速道 路1本をそれに加えた16本の道路整備計画を内容とするものである(甲第4号 証添付の別表1および甲第41号証参照)。

   それら道路網のうち、北袋地区に関連するものだけを見ても7本があり、本件 換気塔の建つ予定の交差点についてだけ見ても東西中央幹線(4車線)と産業道 路拡幅(4車線)がT字形に交差する。開業後のその2線の自動車交通量は、東 西中央幹線は4車線新設であり(JR線の下をトンネルで通って西口とつながっ ている。高速トンネルがその下にある)、産業道路は現在2車線であるから4車 線となれば、この2路線に車両が殺到し、少なく見ても開業前の3倍以上に達す ると思われ、バックグランド濃度に決定的に影響する筈であるが、乙5号証では 1.313倍の自動車台数の伸びを織り込んだだけであり(同181頁のフロー 参照)、乙6号証においても開業直後(平成16年と設定)は開業前の1.06 8倍、平成22年については1.149倍しか見込んでおらず(乙6号104頁 のフロー表)、予測台数を乙5より逆に少なく見ている有様であり、新都心開発 計画を無視した架空の数字をもてあそんでいる。

  乙5や乙6において、将来排気ガス対策が進むとして、排出係数を低減させた 計算をしているのもお笑い草である。

   乙5によれば、昭和61年を1として平成22年には排出ガス対策の結果、排 出ガスは0.594まで低減となるとし(上記フロー表)、乙6によれば平成1 1年を1として平成16年には0.76となり平成22年には0.45となると いう夢のような数字を使っている。しかし、今年はすでに平成16年になったが、 埼玉県南部、とりわけ大宮近辺における排ガス低減目標は未達成が確実であり、 債務者による予測は完全に虚構であることが明らかである。

その根拠は、平成3年から平成15年までの大宮測定局も片柳測定局も、NO2

の年平均濃度は次表のとおり、一貫して横ばいであり(大宮局で0.027〜0.031、片柳局で0.022〜0.027ppmの間である)、これを下回った年はないのであって(平成15年は速報値)、平成16年においてこれが24%も劇的に改善される兆候がないからである(債務者の調査では平成11年を1として、平成16年の排出係数は0.76になるとするから、平成11年の大宮局濃度は0.029ppmだったものが平成16年はその76%=0.022ppmになる筋合いであり、片柳局は0.022《0.0219》→0.0166ppmとなる筋合いであるが、このような急速減少の要素はどこにもない)。

    債務者は大金を使って乙6のような追加調査をコンサルタント会社にやらせた が、はじめから数字を低くはじき出すことを目指しているため、無理な数字操作 をやらせていることが暴露されてしまった。

 

  そもそも環境庁の前記告示第87号においては、環境基準の未達成地域におい て判定をするにはそのことを考慮しなければならない、としており(甲36、6 頁の「ウ」)、債務者は調査を根本的にやり直すか、建設を直ちに中止しなけれ ばならない。

  仮にに排気ガス対策が進み、昭和61年を1としたとき、平成22年に0.5 94まで低減されたと仮定しても、北袋2丁目交差点の自動車台数が3倍になれ ば(この数字は前述のとおり極めて現実性がある)、NO2のバックグランド濃 度は0.0374ppm(年平均値)となってしまい(乙5の181頁の産業道 路西側に関する算定式をつかった)、これに債務者が予測する計画高速道路の寄 与濃度である0.0102ppm(乙5の185 頁の上の表で北袋町2丁目の 欄の数字。これ自体大甘であるが)を加えれば0.0476ppm(年平均値) となってしまう。これを1時間値の1日平均値に換算すれば(ほぼ2倍とされて いる)、0.0952ppm前後という高濃度になってしまい、環境基準(甲3 7参照)を完全に超えてしまうのである。

   まして、排気ガス削減目標未達成の埼玉県の現状を考慮した計算をし、さらに 後述の高速道路の勾配に関するごまかしの訂正、自動車通行速度について実態速 度に即した是正等の是正をすれば、NO2 を始めとする窒素酸化物濃度はとて つもなく高濃度となってしまうことは明らかである。ここからも本件計画の廃止 が導き出される。

  すでに債権者の5月31日付準備書面でも触れたが、疎乙第6号証の90頁に は、排出係数を勾配によって是正した表が載っているが、いずれも最高4%の勾 配を前提としている。しかし、債務者が発表した所によれば本件高速道路のトン ネル東出口手前から見沼地区の高架に向かう勾配は6%の筈である(疎甲第42 号証)。

   上り勾配においては自動車はエンジンをふかすため排出係数が大きく違う筈で あり、とくに大型車では大きく違ってくる。このように実際に造る道路と予測に 用いる数字が異なっていては結果に大きな違いが出るのであり、乙6はまるで信 用できない。

  また、乙5においても乙6においても排出係数算出にあたって自動車の速度を高 速の自動車専用部において60k/時としているが、実態に合わない。

首都高速の戸田南出入口から北側(大宮線)の部分において制限速度が60k

/時となっている部分が多いが、その部分においてその速度を守っていれば、かえって車の流れを妨げて危険となっているのが実態である。ほとんど全ての車が、60k/時制限のところは80k/時以上、80k/時制限の場所では100k/時以上の速度で走っているのが実態である(このことは債権者代理人が常時確認済みの事実であり、債務者が設置した速度超過警告表示がひっきりなしに点灯している現状がそれを証明している。債務者はこれのデータを出すべきである)。

   債務者は自動車専用部において全ての車が60k/時以下で走るという誤った 前提で人の健康に関するデータを扱っており、これ自体違法な態度と言うべきで ある。

  新たな事実の判明

(1)本件高速道路の計画後、埼玉新都心事業に伴う区画整理事業の一つとして新

 都心駅東口駅前にショッピングモールが計画され、当初200台と言われていた 駐車台数が1000台の駐車場であることが判明した。この場所は本件換気塔の 直ぐ近くである。1000台の駐車場が1日5回転しただけで5000台の増加 であり、それらが排気ガスをまき散らすわけである。債務者のいうバックグラン ド濃度に大きく影響するこの事実が明らかになった以上、債務者の調査はやり直 しが必要の筈である。

    環境庁告示第87号(甲第36)においても、その11頁において、新たな事 実が判明した場合については、その評価手法の見直しを要求しているのである。

(2)産業道路の拡幅整備は1部バイパス化を伴うものであるところ、バイパスの 分かれ道となる部分から南西側の住宅地(幼稚園の直ぐ近く)に向かって道路が 拡幅され、産業道路上り線を走る車両が新都心東西中央幹線にその拡幅部分をつ かって直接乗り入れることが判明した。これも新都心開発の結果であるが、NOx のバックグランド濃度に大きく関係する事実である。債務者の調査は、この事実

  も無視しており、杜撰そのものである。甲第36の5頁では、「環境影響を受け やすい地域又は対象が存在する場合」には、判定基準にそれを反映させることを 要求しており、その例として学校、病院、住居専用地域などを挙げている。幼稚 園は影響を受けやすい対象の典型であり、これも含めて債務者の調査には学校、 病院、幼稚園などに対する調査した形跡が全くないが、これも債務者の調査に対 する信用性を失わせている。至急に調査のやり直しが必要である。

第2 本件高速道路は環境改善に寄与するとしていることについての反論

1 債務者は答弁書16頁において、「高速大宮線は、埼玉県南部の道路網を強化 するとともに、新大宮バイパス等の周辺街路の交通渋滞を緩和するもので、二酸 化炭素、窒素酸化物、浮遊粒子状物質(SPM)の排出を減らす効果もあり、環 境の改善に寄与する道路である」とする。

    このうち、SPMについては、5月31日付準備書面ですでに一部反論したが、

  その余についてはまだ反論していなかったのでここで反論する。

   債務者のここで述べる発想自体が、自動車社会を謳歌する発想であり、現代に おいては古くさくなっている。なぜなら、道路を造れば造るほどそこに車が殺到 し、大気汚染がますます深刻になって行く現実を無視している。また、道路を広 くすればするほどそこに車が呼び込まれ、結局さばききれずますます広い道路が 必要となり、さらに大気汚染を深刻化させ、その悪循環は際限がなくなっている のが現状であるが、そこに気づいてもいない。

    債務者のこの発想は国家の手で永遠に道路や高速道路を造り続ける必要がある との思想につながるものであるが、国家財政の破綻とともにすでに破綻を来たし た思想である。

  現代は、高速道路よりもむしろ環境の維持改善や国民の健康に国民の税金(喩 え自動車税であってもである)を回さなければならない時期である。債務者は大 宮線の東北自動車道への延伸を止め、資金を脱硝装置等環境維持に振り向けるよ う発想を変える時期に来ているのではないか。

第3 本件換気所の機能に関する反論

  債務者は、「トンネル内の走行車両からの排ガスは、・・・・・換気ファンに より換気塔の頭頂部から、毎秒10mの速度で上空高く吹き出され、自然風によ り拡散希釈されるものである」(答弁書17頁)とする。

    しかし、NO2をはじめ窒素酸化物の比重は空気より重いから結局地上に降り そそぐものであることを債務者は無視している。風のない日は換気塔直下に降り、 風のある日は半径500〜1000mの範囲に降るという違いがあるだけで、地 上に降ってくることに変わりはない。

  このように換気塔自体が有害ガスの固定発生源なのであり、脱硝装置をつけな いというなら、工場の煙突と同じく固定発生源としての規制に服さなければなら ないのである。

  債権者が乙6の甘い数字をもとに試算したところ、平成22年1年間に排出さ れるNOxの重量は21.7ト ンにも達する。これが毎年地表に蓄積し、子供 も大人もこれを吸い込むのであるから、その有害性は計り知れない。

  また、換気塔頭頂部の排気口そのものにおけるNO2濃度は、同じく乙6のデ ータをもとにして試算したところ、0.253ppmもの濃厚なNO2が、毎秒 換気塔から吹き出されていることになり、これは環境基準の上限値(0.06p pm)の4.22倍の濃度であり、環境審議会の昭和53年答申(甲32)に言 うところの短期暴露(1時間でも吸ってはいけない数値)指針値である0.1〜 0.2ppmを上回る濃度である。

第4 疫学調査が示す窒素酸化物の害悪について

     千葉県環境部が千葉大医学部に委託して行った平成4年から6年にかけての 調査(甲第40号証)によれば、@都市部幹線道路沿道部、A都市部非沿道部、 B田園部の各小学生の気管支喘息新規発症率は、男子で@がBの3.41倍、A がBの1.85倍、 女子で@がBの6.42倍、AがBの2.53倍など深刻 な影響が生じていることが判明しており、債権者らを取り巻く地域が@の地域に 変えられようとしている現在、債務者の工事を直ちに止めさせ、根本的対策を講 じさせなければならないことがいよいよ明確になった。

第5 その他の論点について

  債務者は答弁書18頁の表において、環境基準を単に0.06ppm以下であ るかのように記しているが、環境基準には0.04〜0.06ppmの幅が記載 されているのであって、その幅以下、その幅の範囲内、その幅を上回る場合の3 ケースについてどう考えるべきかの解説と基準が存在するのである。債務者の無 理解については別途述べる。

  その他の論点についても別途準備書面で明らかにする。

                                                           以 上

 



平成16年(ヨ)第180号、199号、248号 建設工事禁止仮処分申請事件

        債権者 吉田実 外157名、 債務者 首都高速道路公団

                                          平成16年   8月   13日

さいたま地方裁判所第3民事部  保全係 御中

                               債権者ら代理人弁護士 山 本 政 道

 

                    準 備 書 面 

 

第1 前回の債権者準備書面の不正確箇所の訂正

  平成16年7月20日付債権者の準備書面中に不正確な箇所があったので、つぎのとおり訂正を行う。

  同書面5頁の2行目に、「当初200台と言われていた」とあるのを「設置基  準では最低200台と新都心建設事務所から説明されていた」に訂正する。

  同書面7頁の2行目の「NOx」は「NO2」に訂正し、「これが毎年地表に蓄  積し、」の語は削除し、「これを」の語に差し替える。

  同書面7頁の、「濃厚な」の語のつぎに「(年平均値)」の語を挿入する。

  同書面7頁の6行目から7行目にかけての( )内にある「0.06ppm」    の語のつぎに「=日平均」の語を挿入し、同8行目の「4.22倍」を「8.  44倍」に訂正する。

  同書面7頁の第4の文中、3行目にある「発症率」の語は「発症リスク」と訂  正する。

 

第2 換気塔は固定発生源としての規制対象である事実

  債務者は、昭和48年5月8日環境庁告示第25号である「大気の汚染に係る 環境基準について」の数値をクリアーするとか、昭和53年7月11日環境庁告 示第38号の「二酸化窒素に係る環境基準について」をクリアーするとかの論を 立てるのみである。また、自動車の排ガス規制(平成4年6月3日号外法律第7 0号など)の目標が達成されることで窒素酸化物の環境基準をクリアーすること になるとするのもその延長線上の議論である。

  債権者の前回(7月20日付)準備書面で述べたように、債務者は、根拠のな い数字を用いているため、それら環境基準の数値をも債務者の計画はクリアーし ていないのであるが、環境基準の観点からのみ問題を考察し計画を正当化してい るのは不十分そのものである。

  なぜなら、それらの環境基準や排ガス規制は大気汚染物質の面的総量規制の範 疇に属する事柄であるのに対し、債務者が建設を計画している換気塔は、不特定 多数の個々の自動車とは異なり、工場の煙突などと同じく、債務者が特別の施設 を作ってトンネル内にたまった排気ガスをわざわざ集める行為をしたうえで債務 者の責任において排出するのであるから、排出主体が特定されており、固定発生 源たる事業者そのものである。また、1箇所に集めて吹き出すのであるから排出 物管理・測定も容易に出来る。   

  したがって、大気汚染防止法による個別規制に服さなければならない施設であ る。

  大気汚染防止法は汚染物質排出事業者に排出抑制義務を課している

  本件換気塔から排出される有害汚染物質は、CO、SOx、NOxなどであり、 いずれも人の健康に有害な物質である。このうち硫黄酸化物(SOx)は同法第 2条1項の「ばい煙」の定義規定の1号に言う「燃料その他の物の燃焼に伴い発 生するいおう酸化物」にあてはまるので最も規制が厳しい「ばい煙」に該当する。

    また、窒素酸化物(NOx)は同法施行令第1条5号に指定物質とされている のでやはり「ばい煙」である。

    したがって債務者は同法第2章に定める罰則つきの厳格な手続きを経て排出規 制を受けなければならないが、債務者の調査報告書(乙5,乙6)にはその検討 を加えた形跡すら存在しない。

   仮に債務者の換気塔が、ばい煙発生施設でないとされたり、あるいはそれに該 当するが排出基準をクリアーするとされた場合であっても(そのことについて債 務者は主張立証の責任があるが、現在までにその主張立証はない)、同法第18 条の21では、「事業者は、……有害大気汚染物質の大気中への……排出又は飛 散を抑制するために必要な措置を講ずるようにしなければならない」と規定して、 事業者に排出抑制義務を課しており、債務者はこの義務を免れることは出来ない。

3 環境汚染が深刻となり、一般人のゴミの焼却すら原則として禁止されるように なった(廃棄物処理法16条の2)現代にあって、公法人たる債務者が答弁書に 堂々と「排気ガスは……換気ファンにより……毎秒10mの速度で上空高く吹き 出され、自然風により拡散希釈される」と書き、未処理の排気ガス集合物を住宅 街の頭上にナマのまま撒き散らすことの違法性(大気汚染)に、全く気づいてい ないことは余りに無責任と言うほかない。

  債務者は浮遊粒子状物質(SPM)を除去するために電気集塵機を設置すると 公表しているが、これは大気汚染防止法にいうところの「粉じん」の1種である から当然の措置である。

    CO、SOx、NOxについても債務者が除去装置等を付けない場合は債務者 は事業者として同法違反の違法を犯していることになり、同法第25条にあるよ うに無過失であっても健康被害の損害賠償をしなければならないとされるほどに 違法性が強いのである。                                                                            以 上

 


平成16年(ヨ)第180,199,248,312号 建設工事禁止仮処分

       債権者  吉田 實      債務者  首都高速道路公団

 

                                           平成16年 9月 6日

さいたま地方裁判所 第3民事部保全係  御中

                                      債権者ら代理人

                        弁護士  山 本 政 道

 

                    準 備 書 面

     債務者(首都高)の8月13日付準備書面に対する反論(1)

 

T 第1部について

1 「第1 環境基準の意義について」に関して

      債務者は、環境基準は「望ましい基準」として将来に向かっての行政上の政 策目標である。環境基準を超えたからと言って直ちに人の健康に影響が表れるというものではなく、疾病が発症する閾値との間には、科学的に見て充分な安全性 が見込まれている、とする(同書面2頁)。  

また、新環境基準を超えたからと言って、直ちに疾病又はこれにつながる影響が現れるものではない、とする(同書面6ページ)。

    しかし、この立場はあまりに人の健康に対する考慮を欠いたものである。

〈債権者からの反論〉

 @中央公害対策審議会の昭和53年3月22日答申(この答申の提起した数値が同年7月11日の環境基準とされた)は、明確に「わが国各地の成年を対象とした疫学的調査の結果から環境大気中二酸化窒素濃度の年平均値0.02〜0.03ppm以上の地域において、二酸化窒素濃度と持続性せき・たんの有症率  との関連があると判断される」と述べており(甲第32号証、Uの10頁)、  債務者はこの記述を無視している。年平均値0.02〜0.03ppmというのは、環境基準の言う1時間値の1日平均値では0.04〜0.06ppmにあたるのであるが、この濃度の地域に於いては持続性せき・たんの有症率との関連がはっきりと肯定されているのである。

   すべての人に影響が現れてからでは遅いのであって、一部の人に健康影響が出ている数値と言うことは、疾病の危険性が指摘されていることにほかならない。

  Aまた、同答申の中には、短期曝露についての指針も盛り込まれており、それによれば、1時間曝露として0.1〜0.2ppmが挙げられている(甲第32号証、Uの10頁)。これなどは1回曝露では現れなくとも2回3回と重なれば直ちに疾病が現れる数値であり、債務者の換気塔の頭頂付近では現にこの数値を上回るNO2の吹き出しが計画されているのである。気象条件・運転条件(無風、換気扇の故障など)によっては、そのままの濃度でNO2が債権者らの頭上に降下してくる危険が存在する。          

   そのようなときでも債務者は安全だと言い張るつもりなのだろうか。それほど安全なものなら首都高理事長や債務者代理人・山下寛部長らが、そのような日は現場に来て、全部自分の肺に吸い込んで処理(人間脱硝装置)して貰っても安全なことになるが、来る勇気はないであろう。

 B債務者の提出した各調査(乙5や乙6)においても環境基準を満たしているかどうかの観点から事業の安全評価がなされているが、上記の債務者の立場は、その環境基準を超えてもまだ余裕があるとするものであり、自らの拠って立つ立場を放棄するものである。

  D環境基準の改訂に当たって、当時の環境庁が都道府県知事と政令市市長宛に出した通知(環大企第262号。甲第43号証)においても、「(新環境基準を)安易に0.06ppmまで濃度を上昇させて良いと解されてはならない」と述べ、また「0.04〜0.06ppmまでのゾーン内にある地域にあっては、原則としてこのゾーン内において……水準を維持し」と述べて、安易な排出を戒め、ゾーン以下に改善する努力を促しているのである。

     さらに「0.04ppm以下の地域にあっては、原則として0.04ppmを大きく上回らないよう防止に努める」ことが求められている(10頁)。

   しかるに債務者が平成12年におこなった不十分な調査に基づく予測でも、換気塔の寄与濃度0.0016ppm(年平均値)によって、開業時(平成16年)のNO2の濃度は年平均値で0.0226ppmになると予測され、これを日平均値の年間98%値に換算すれば0.044ppmだと言うのである(乙第6号証129頁。なお年平均値の2倍が日平均値と言われていることから前者を2倍すると0.0452ppmになるのであるが、ここでは詳論しない)。

   したがって債務者の換気塔からの生排出によって、今まで0.04ppmぎりぎり超える程度であった本件地域が0.04〜0.06ppmのゾーンの中程の位置に来てしまうことがはっきりしている。これは明らかに逆行であって、改善義務のある公の機関がやることではない。

 

「第2 二酸化窒素の人体への影響」について

  債務者は8月13日準備書面の8頁において、「それに曝露した濃度や時間のいかんにかかわらず、単に曝露の事実自体で影響が現れることはない」とし、これを本項の結論としている。

  債権者も曝露の濃度や時間の如何にかかわらずNO2の危険を述べているのではないのであえて反論しなくても良いかのように見えるが、債務者のNO2の危険性に関する理解は過小評価すぎると思われるのであえて述べる。

    中公審答申も短期曝露の危険数値をあげているし、長期曝露の危険に備えて環境基準に向けた指針値を勧告したのである。

    環境庁が専門家委員会に諮問したことをとって見ても、曝露の事実自体で影響が現れることを前提として、その濃度・時間等をどう設定すべきかを諮問しているのである。

3「第3 一般大気環境に係わる疫学調査について」に関して

 (1)債務者は、環境庁の61年調査の結果、大気中の二酸化窒素と疾病との因果関係は認められなかった、としている。

     しかしながら、その根拠とされた61年報告を良く読むと、

     児童のぜんそく様症状・現在については環境庁の2つの調査に共通した結果として、「男で二酸化窒素と、女で二酸化窒素と二酸化硫黄との間に」有意な相関を示し、

     持続性ゼロゼロ・たんの有症率は、「男で二酸化窒素と二酸化硫黄と、女で二酸化硫黄との間に」有意な相関を示した、

  ことが明記されている(乙第26号証、251頁)。

    また、環境庁調査(1986b)によると、(児童の)両親のぜん息、本人のじんましんの既往等からみたアレルギー素因の有無別に大気汚染物質の有症率への影響を検討結果では、

         アレルギー素因ありの群はなしの群に比べ、持続性ゼロゼロ・たんは男女とも二酸化窒素と二酸化硫黄との相関が有意となる傾向が、

          ぜんそく様症状・現在では男で二酸化窒素と二酸化硫黄との相関が有意となる傾向が示されたこと、が明記されている。

さらに環境庁の同じ調査で、(児童の)受動喫煙の有無別、暖房器具などの室内汚染の有無別、家屋構造別などに層別化して検討した結果でも、

          男女とも持続性ゼロゼロ・たんは二酸化窒素との間に有意な相関が認められたことが紹介されている。

    このように昭和61年調査の結果から直ちに、「二酸化窒素と疾病との間に因果関係は認められない」と言うことは出来ず、債務者の引用は不公正であり、結論が逆である。

 

(2)「2大都会ぜん息調査」について

   債務者は、この調査の調査の手法を持ち上げつつ、調査結果の結論の部分を引用し、「(大人、子供を総じて見ると)本調査の結果からは、気管支ぜん息の憎悪因子としてNO2が関与しているとは言えなかった」としている。

   しかし、この調査のデータ収集機関を見ると、国立相模原病院・東海大学病院・京大病院および「これらの病院を通じて協力を得た大学病院」等であり、網羅性に疑問があるうえに、データを直接収集しておらず、信用性にも疑問がある。

    さらに乙第27号証121頁を良く読むと、調査結論の出し方にも疑問がある報告書であることが判明する。なぜなら同頁では、「大人については、……気管支ぜん息の憎悪因子のひとつとしてNO2が何らか関与している可能性を否定できなかった」としながら、子供についてはNO2低曝露群のほうが病態が重い傾向にあることを挙げて「大人、子供を総じて見ると、気管支ぜん息の憎悪因子としてNO2が関与しているとは言えなかった」としているのである。

    大人と子供で異なった結論が出ているわけであるから、それをそのまま書けば良いものを、子供についての結論を基に大人についていったん出した結論を否定してしまっており、お話にもならない。政治的考慮が働いていることが見え見えである。 

(3)「3 平成9年報告〜平成15年報告について」に関して

    債務者は同書面15頁中段において、平成9年報告(債権者ら提出の甲第38 号証)について、「平成9年報告では、二酸化窒素,SPM濃度と『ぜん息様症状』の新規発症率との間に全く相関関係が認められていない」とするが、新規発 症率についてはなるほどそう言う記述が見られるが、問題は有症率である。有症率について同報告書は明確にNO2濃度との対応関係を記述しており(甲第38 号証35頁)、債務者は自己に都合の悪いところは触れず、新規発症率という未解明の分野のみ引用しているのは不公正である。

    同報告書35頁では、「20ppbから30ppbのNO2濃度を境にして有症率と大気汚染との間に対応関係があることが推察される」と明記している。

    なお、同報告書は、小学生の同一対象者を3年間追跡調査した結果の総合評価であるが、債務者提出の、平成10年〜15年報告は、3歳児を対象に環境保険サーベイランス調査が行われたもので、平成9年報告とは大きく性格が異なり、

  重要な内容が検出できていない。

 

(4)「 第4 道路沿道における疫学調査結果について」に関して

  @杉並調査について、

    債務者は、この調査をもとに「11年間の中央高速道路の影響調査は、学童の気管支ぜん息有症率増大の主因とは考えられないことを示唆している」との部分 を引用する。しかし、途中から対象小学校の協力が得られなくなっており、検討が不十分な調査である。ぜん息様症状についても昭和55年以降に対象校で上昇傾向になったが、比較校が脱落してしまい、検討出来ていない。治癒率も対象校で低い傾向が認められながら、検討出来ていない。にもかかわらず結論だけが政治的に出されており理解に苦しむ調査である。

  A東京都衛生局調査について

首都高は、この調査の結果「ぜん息様症状の有症率は成人、幼児を通じて一貫

して沿道が後背よりも低くなっている。自動車排ガスと気管支ぜん息の関連性を認めることが出来ない」とするが、それは手前みそ的ねじ曲げである。乙第47号証49頁〜50頁には逆のことが書かれている。すなわち、「成人の呼吸器疾患については、ほぼ一貫して想定された大気汚染レベルに対応して、有症率に一定の傾向が見られた。その中では、『持続性たん』、『ぜん鳴』、『息切れ』などで有意差が認められた。」「大気中の汚染物質のレベルと住民の曝露レベルに地区間の違いが存在すると考えるのは妥当であると考えられる」との結論を直視すべきである。都合の悪いところを引用からはずすのはやむを得ないにしても逆のことを述べた証拠であるとするのは行き過ぎである。

  Bイースト・サリー州沿道調査について   

   債務者は乙第48号証を我が国の道路事情にも合致するとの前提で用い、自動車道のある地区に居住する児童の方が、ぜん息関連呼吸器症状の有症率が低いと言う結論を援用するが、報告者自身がドイツや日本とは事情が異なる旨を断っており、そのまま用いることは出来ない(訳文8頁)。

  C慢性気管支炎に関する杉並調査(乙第38号証)については、その調査の限界について述べた@の批判がそのまま当てはまる。千葉大調査(乙第49の1〜4)については、沿道部の方が非沿道部より低くなっていることがこの疾病と排ガスとの因果関係の否定につなげて良いのか疑問を提起しておく。

(5)「4 安達ら報告について」の箇所に関して

  債務者は同書面24頁以下において、甲第40号で債権者が提出した報告について、限界なるものを提起し、必ずしも有症率が、沿道部〉非沿道部〉田園部のパターンとなることは証明されていないとする。

   しかし、気管支ぜん息有症率に関し、特に女子では、都市沿線部〉都市非沿線部〉田園部と言う最もクリアーなデータが出ている。男子についても都市部〉田園部の順がクリアーである。債権者は沿道部50メートルと非沿道部を比較すべきだと言っているのではないし、甲40の調査もそうである。つまり面的汚染も考えられるのであって、都市部〉田園部の結果が出ていることを無視すべきでは ない。

  また、債務者は、鉄筋コンクリート住宅に居住する学童の割合が沿道・非沿道・田園の順で54.6%、46.5%11.4%だから有症率の差はそのような諸要因に基づくと考えられるとする(27頁)。

   しかし、甲第38号の34頁においては、ぜん息様症状の「新規発症率」については「木造1戸建て・窓木枠」で最も高いとしており(「有症率」については 鉄筋集合住宅が高いとする)、債務者はこのデータを無視している。すなわち住宅構造のせいにするなら木造1戸建て・窓木枠の比率が最も高い田園部において新規発症が最も高くなるはずであるが、甲第40ではそのようにはなっていないのであり、債務者の主張は言いがかりの珍説と言うべきである。

 

U 債務者書面第2部 高速大宮線の建設・供用による人体への影響にかんする認否反論

    これについては次回にするが、大宮区役所測定局、片柳測定局の最新のNO2濃度を基に債権者側の主張をまじえて述べる。  

 

V 債務者書面第3部 被保全権利および保全の必要性の不在についての反論

     争う。詳細は次回。                                           以上


平成16年(ヨ)第180,199,248,312号  建設工事禁止仮処分

    債権者 吉 田  實 外167名      債務者 首都高速道路公団

 

                                           平成16年 9月 27日

さいたま地方裁判所 第3民事部 保全係 御中

                                      債権者ら代理人

                                           弁護士 山 本  政 道

 

                   準 備 書 面

          債務者の8月13日付準備書面に対する反論(2)ほか

 

第1  債務者の8月13日付書面第2部「高速大宮線の建設・供用による人体への影響」の部分について

同書面第1(都市計画決定時及び平成12年調査の結果について)に関して

平成元年と平成12年に記載の調査がなされ、5つの表記載の評価数字が出ていることを認めるが、そのうち平成12年調査について「住民6団体の要望を受けて」実施されたとあるのは否認する(46頁にも同様の記載があるがこれも誤っている)。

  住民6団体はアセスメントのやり直しを要望したのであって、債務者はそれを拒否したうえで、勝手に調査場所、調査手法をきめて一方的に調査を実施したのが真相であり、債務者自身、同書面45頁において「任意で実施した」ことを認 めており、これの方が正しい。

  平成元年調査においてはバックグラッンド濃度測定場所として県立浦和西高校敷地が選ばれ、平成12年調査においては水資源開発公団宿舎が選ばれているが、そもそも前者については本件換気塔ないしトンネル出口から1.5キロも離れた 浦和区木崎3丁目の見沼田圃沿いにあり、計画地と大きく条件が異なる場所であ る。また後者についても北袋地区のなかでも最も奥まった場所(したがって地元自動車の通行も少ない)を、住民の意見も聞かずに選定したものであり、いずれもBG濃度を小さく見せかけるための小細工と見るべきである。

  交通量伸び率のごまかしと実際の交通量予測

(1)債務者は同書面の37頁において、バックグランド濃度予測のための交通量伸び率計算にあたって、平成元年調査においては東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県を一つのゾーンとして、平成12年調査のおいては埼玉県を一つのゾーンとして計算しているとし、「当然」さいたま新都心開発事業による開発交通量を含んでいるとする。

    しかしながら例えば平成元年調査のゾーンとされた関東南部地区について言えば、丹沢から奥多摩・秩父の山中や房総の海岸も含むし、東京の都心も含む広い範囲であって、そのような広い範囲での交通量伸び率を基に、局所的に開発がなされて集中的に交通量が増大する場所の予測をするのは不適当であり、それを基にするのが「一般的手法」だというなら、その一般的手法そのものが間違っている。

  現に平成12年の債務者の調査においてはなぜか埼玉県を一つのゾーンとして4分の1にゾーンを縮小しており(これでも広すぎる)、これは債務者自身が広い範囲を一つのゾーンとしてその伸び率をもって交通集中場所の伸び率を予測する手法が不適当であることを自白したに等しい。

  交通が集中する場所とまばらな場所を一緒くたにして交通伸び率数値を出した場合、それが交通集中場所の台数予測にならないことは小学生でも分かる理屈であり、債務者の調査手法の破綻は明白である。

本件仮処分は債権者らの健康に対する悪影響が違法の域に達するか否かが争われているのであり、債務者の行った調査が一般的手法に則っていたか否かとか、適法であったかどうか等を審理しているのではない。

    債務者は、開発により自動車が集中してくる現実(現に本年9月にさいたま新都心駅東口に開業した巨大商業施設コクーンに来店する車両で酷い渋滞が発生している。甲第47号証写真参照)を直視し、さいたま新都心開発によって産業道 路と東西中央幹線および本件高速道路に具体的に何台の車両が集中すると予測するのかを基にバックグランド濃度問題を議論しなければならない。

(2)債権者らがさいたま市当局に確かめたところでは東西中央幹線および産業道 路(拡幅後)はいずれも道路構造令に言う第4種第1級道路となる。その設計基 準交通量は1車線12,000台(1日)であることから4車線で各48,00 0台の容量がある。合計で9万6000台の容量であり、容量一杯に車両が通れ ば三橋測定局の1日8万台を軽く超える交通量である。

  2つの道路の4車線供用を開始した場合の当面の交通量予測は、東西中央幹線 が鴻沼用水をまたぐ地点で東西行合計で26,500台、産業道路上下合計25, 100台であり(甲第46号証の2)、両者の合計は51,600台となる。

  なお、産業道路の直進車のみを割り出すのは困難とのことである。

  また、本件交差点の現況はT字型の交差点のため一見両道路の台数の合計を出 すと重複分が発生するかのように感ずるが、そうではなく、乙第56号証の2の 2頁の図のとおり債務者の高速道路が開通すればその側道が加わるため変形十字 路(五叉路)となるのであって、本件交差点の通過台数は両道路の交通量を単純 合計するのが正しい(下図参照)。

(3)他方、債務者の高速道路は道路構造令の第2種第1級の道路と見られ、1車 線の設計基準交通量は18,000台、4車線であるから72,000台の容量 がある。   

  債務者の高速道路が容量一杯の車両を通過させ、これに容量一杯の東西中央幹 線と産業道路の交通量を加えれば1日16万8000台となるが、問題はそれだ けではなく、つぎの3つがわずか200m前後の区間に横一線に並ぶのである。

  つまりこの場合、

  @まず西側の北袋交差点の交通量の最高は9万6千台であるうえに、

  A換気塔施設によってトンネル内の遠いところ(最高7万2000台×約1キ   ロ区間)から排気ガスを集めてきて排出するのであり、

  Bこれに加えてトンネル出入口東の開口部で7万2千台の高速道路上の車両が   通過し、その排気ガスは地上にそのまま排出される、 

 ことになり、@とBの距離は120m(開口部覆いを考慮すれば220m。上図 ではB−2とする)であって、その中央にAが位置することになるから、この三 者が複合して北袋地区の大気を汚染することとなり、その影響は深刻と見なけれ ばならない。

  この量は、合計24万台分であり、三橋測定局付近の1日8万台の比ではなく、 その3倍の交通量(排ガス量)となってしまうのである。

   

  なお、債務者は平成22年の高速道路交通量をトンネル開口部で東行き20, 800台、西行き20,800台と見ており、換気塔の直下のトンネル内ではそ れぞれ17,000台と予測している(乙第56の2、2頁、上図参照)。

    この数字(開放区間4万1600台)と産業道路および東西中央幹線に関する さいたま市当局の当面の北袋交差点の予測交通量の合計5万1600台を合計す れば9万3200台となり、これに換気塔(3万4000台の1キロ区間分を集 める)の排ガスが加わって合計12万7200台分の排ガスが債権者らの頭上に 降りかかるのであって、債務者の予測交通量を一部採用した場合であっても生や さしい排気ガス量ではないことが容易に推定される。

(4)なお、債権者らの主張する複合汚染に関係して、債務者は同書面47頁にお いて、乙第5号証の212〜216頁を引用し、70メートルも離れれば二酸化 窒素の影響はほとんどなくなる、とする(なお、交差点の歩道部分から換気塔西 壁までの距離は48mである)。

  しかし同書証を見ても150メートル離れてなお減衰は0.01ppm程度ま たはそれ以下に過ぎず、債務者の主張とは正反対の事実が証明されている(下記 に同グラフの縮小コピーをつけたので参照)。

  そのうえ債務者提出の乙第22号証(NO2の環境基準を考える)の15頁右

 の段にも「大気汚染物質一般に共通することですが、拡散(窒素酸化物の場合は

 NO→NO2という化学変化を起こしながら拡散します)という現象があり、発

 生源から遠く離れたところまでその影響が及びます」と明記されており、70m

 離れれば影響はほとんどなくなる、とする債務者の主張は自ら提出した書証によ って否定され、アベコベの事実が証明されている。

  自動車排ガスの排出係数の低減数値の虚構の件

(1)債務者は同書面37頁の3項において、債権者が排出ガスの低減計算を虚構 だとしたことについて反論し、建設省の技術指針や中央環境審議会の新長期目標 を基に計算したから虚構ではないとする。しかし債権者は大宮地区の平成15年 までの最近の測定データをもとに国の排ガス削減の目標達成が絵空事となってい る現実をつきつけて虚構だといっているのであって、債務者の予測手法が建設省 の技術指針に反しているとか、中央環境審議会の目標に忠実でないとか言ったこ とはない。そのような指針に基づいた予測が現実の測定数値に合っていないのは 虚構ではないかと問うているのであって、その答えをしなければいけない箇所で 予測手法は適法であったのだが……などと言っても始まらない。債務者は大宮局 や片柳局の現実の測定値の方が虚構だと言いたいのだろうか。

(2)大気汚染測定局である片柳局と大宮局のNO2濃度について、平成16年8 月までの速報値が出たのでそれをグラフにして平成14年度、15年度と比べる と、つぎのグラフのとおりである。7月20日付準備書面に付けた一覧表と合わ せて検討されたい。 

  このグラフの数値に関連して述べれば、債務者の平成12年調査による手法(乙 第6号証104頁フロー図下から2行目の数値)により計算した場合{16年度 予測値=11年度値×(固定発生源0.2295+移動発生源0.7705×台 数増1.068×排出係数低減0.76)という式を用いる}、平成11年度の 大宮局0.029ppmは平成16年度には0.025【0.02479】pp mとなるはずであり、平成11年度片柳局0.0219ppmが平成16年度に は0.019【0.0187】ppmになっているはずであった。

  しかし実際には上記グラフのとおり大宮局の平成15年度年平均値は0.02 9ppm、片柳局は0.022ppmであること、および平成16年度の8月ま での推移から見て、平成16年度通年もほとんど改善されず平成14,15年度 と同等の数値となることが確実である。すなわち債務者の予測は測定の現況によ って誤りであった事がはっきりしたのである。

  したがってこの結果からは、債務者らの用いた交通量の伸び予測(1.068 倍)または自動車排出係数の低減予測(0.76)のどちらかまたはその両方に 誤り=虚構が存在した事がはっきりした。債権者は7月20日付準備書面でその ことを言っているのである。

   

  なお、債権者の7月20日付準備書面2頁で、移動発生源の低減率予測(76 %)だけで測定局のNO2濃度全体の予測を論じた点(固定発生源を度外視した 点)は誤っていたので訂正する。

 

(3)そこで平成16年度に上記グラフから予測されるとおり片柳局の年平均濃度 を0.022ppmとし、北袋地区の年平均濃度を乙6の104頁左上の式を用 いて算出すれば0.0241ppmとなり、これが債務者流の平成16年におけ る北袋地区のバックグランド濃度ということになる(実際には距離減衰がほとん どないことやNO→NO2の化学変化があるのでもっと高いと思われるが)。

  債務者の12年調査による平成16年における北袋地区バックグランド濃度は 0.021ppmと予測していたから、実に15%も低い数値を予測していた事 になる。

    平成16年値がこの調子であるから平成22年予測値の誤差はさらに大きくな るはずである。

    さらに高速道路の平成22年における寄与濃度を見ると、NO2で平成元年調 査と平成12年調査とでは2.08倍も異なっている(元年調査0.0102p pm、H12年調査0.0049ppm)。このように最も重要な寄与濃度をは じめ、大きく矛盾するデータの羅列を見てくると債務者の予測なるものの全てが 到底信用できないものであることがはっきりする。

    加えて本年4月16日の債務者と地元6団体との折衝の席で、債務者は高速道 路の勾配4%と計算していたことに関して、平成元年調査の計算プログラムは残 っていない、と答えており(甲第44号証5頁)、再現も不可能となっている疑 いがあり、ますます出鱈目と言うほかない。

(4)債権者の7月20日付準備書面3頁中段に、大宮周辺がNO2の環境基準未 達成地域であるとした点は撤回する。

(5)債務者は6%勾配を6%で計算した結果、寄与濃度が極めて小さい中での話 だからとして、予測結果は変わらないとしている。しかし、再計算した結果では 平成16年予測値で12.5%、平成22年のそれで8.2%も高くなっており、  重要な違いがある。これだけ寄与濃度が違ってくれば結論に違いが出ることはは っきりしている。現に債務者の52頁の予測数値を見ると、勾配による排出係数 その他の補正も反映された結果、環境基準超過の結論になってしまっている。

(6)債務者は同書面(5)=42頁において、自動車速度を60キロ/時から8 0キロ/時に上げた場合の平成22年の排出係数を示すが、平成16年と予定さ れた開通時の数値(平成17年秋の予定と答弁している)を示そうとしない。

    明らかにされた平成22年の数字をみても、小型車で窒素酸化物0.083→  0.101(21%増)となり、大型車で1.808→2.312(27.8% 増)となっており、重要な差がある。

    大型車で27.8%も増大しているのに、どうして「平成12年調査の排出係 数と大きく変わることはない」と言えるのであろうか。

    また、走行速度が上がれば、走行台数も2〜3割増大する事が知られており、 そうなれば環境濃度(特に寄与濃度)に大きく影響してくる筈であるところ、債 務者の再計算にはそれが反映されていない。

(7)そのように不備なところが数多く見られる予測計算によっても、勾配の補正、 80キロ走行による補正、無風の補正を加えれば、平成22年における高速道路 開口部からの寄与濃度はNO2で年平均値0.0064ppm、換気塔からの寄 与濃度は0.0016ppmとするのが債務者の予測である(乙第56号証の2、 15頁)。

  ところで、この予測の年度である平成22年度は、北袋交差点では5万160 0台の交通量になっているわけであるから、北袋2丁目のバックグランド濃度も 当然に上昇し、三橋測定局並みとは行かないまでも現在の大宮区役所測定局の濃 度である0.029ppmを超えることは、その台数から容易に推定できる。な ぜなら大宮区役所測定局付近の交差点は4車線道路と2車線道路が交差するに過 ぎず、両者の設計基準交通量からして北袋交差点より少ないからである(しかも 測定局の区役所は交差点からビル1つ隔てた奥まった場所であって、北袋2丁目 の換気塔直下地点が北袋交差点から少し入った場所であることと共通する)。 

  そこで、この大宮区役所を超えるバックグランド濃度に、債務者の予測する高 速道路開口部の寄与濃度0.0064ppm(この数値があまりにも低い予測で あることは後述するが、ここでは百歩譲ったとしても、との立場で使う)を加え ただけでも北袋2丁目地区の年平均値は0.0354ppm以上となってしまう。  つまり開口部の寄与濃度とバックグランド濃度だけで日平均値0.0708p pm(年平均値の2倍が日平均値とされる)となって、日平均値0.06ppm 以下と定める環境基準を超えてしまい、換気塔からの排出の余地がなくなってし まうのである。これに換気塔の寄与分0.0016ppm(年平均値)を加えれ ば、年平均値0.037ppm→日平均値0.074ppmとなり、環境基準の 大幅超過をもたらす。

 

二つの環境調査に関して

(1)債務者が同43頁において、元年調査は埼玉県が実施したものだとする点は 認める。しかし、それが公開の手続きであったとする点を否認する。

  そこに添付された住民の意見の内容を見ると、調査計画が公表されそれに対す る意見聴取がなされたものではないことがはっきり分かる。つまりアセスのもっ とも肝心な点である調査手法に対する意見聴取が抜けているのである。

(2)債務者は同44頁において、SPMは当時の技術指針では調べなくても良か ったのだから適法であったと主張するごとくである。しかし債権者が問題にして いるのは、債務者がSPM改善に役立つ道路であるなどと公言していることなの であって、過去のデータが調査されていないのに、そんなことを言えるのかとい う点である。

(3)平成12年調査(同書面4項の(3)の部分)について

    債権者が任意で実施したものであること、アセスメントと称したことはない点  は認める。

(4)同(4)について

    元年調査は県が実施したこと、アセス法施行前に都市計画決定されたものは  アセスメント手続きを要しないことになっている点を認め、平成12年調査が  環境影響評価法に基づいたものではないことを認める。この調査が地元6団体  の要望を受けてなされたとする点を否認する。

同書面第2部の第2(本件換気塔の付近への影響)について

債務者は同書面第2の2項において、東西中央幹線と産業道路の交差点における交通量が仮に増大しても、換気塔は産業道路の中心から70m離れているから、距離減衰により二酸化窒素の影響はほとんどなくなるとする。しかし、この議論が間違っていることは先に述べたが、再度述べればつぎのとおりである。

  @債務者提出の乙第5号証212〜216頁の距離減衰グラフを見ても、二酸化窒素が距離に沿ってなだらかに減衰するのみであり、発生源から150m離れて も0.01ppm程度以下の減衰にとどまるか、ほとんど横ばいとなっている。  A債務者提出の乙第22号証の15頁においても、大気汚染物質全般に拡散とい う現象があり、窒素酸化物の場合はNO→NO2という化学変化を起こしながら拡散し、発生源から遠く離れたところまでその影響が及びます、とはっきり述べている。

2 このように債務者提出のこれら書証の証明している事実は、70mで影響がほとんどなくなるどころか、それとは全く正反対に、発生源から150m離れてもほとんど減衰せず、逆に窒素酸化物が拡散し、NO→NO2という化学変化を伴いながら深刻な影響を及ぼすという事実であり、債権者の主張の正しさを裏付けるものである。

    債権者らが主張するとおり、つぎの3つによる複合汚染が北袋地区の住宅街を襲うことになる。

  イ.高速道路の開口部とランプ部からの窒素酸化物、

  ロ.産業道路と東西中央幹線からの窒素酸化物

    ハ.換気塔施設によって収集され排出されるるトンネル内1キロ分の窒素酸化物

  これらに関係する自動車台数の最大数や交通量予測については一で述べたとおりである。

つぎに債務者は同47頁において、埼玉新都心の開発事業の結果産業道路と東西中央幹線の交通量が3倍になることはないとする。しかし債務者のほうが間違っており、債権者の主張が正しいことは以下の計算ではっきりする。

  ・まず、産業道路の開発前の交通量は1万7000台程度と言うことは債務者も自認するところである。東西中央幹線道路は開発による新設であるから開発前はゼロであった。両者あわせて開発前は1日1万7000台であった。

  ・つぎに、開発によって、さいたま市は両方の道路を4車線で供用開始した場合、産業道路の上下で2万5100台、東西中央幹線の鴻沼用水をまたぐ地点で東西合計2万6500台と予測しているのである(甲第46号証の2)。

    両者あわせて5万1600台であり、北袋交差点の十字路化によってこれが同交差点の通過台数となることは前述した。51600÷17000=3.03であり、3倍強である。債務者はどんな計算で3倍化を否定するのか根拠を挙げるべきである。

債権者の7月20日付準備書面の5頁に、「バイパスの分かれ道となる部分から南西側の住宅地(幼稚園の直ぐ近く)に向かって道路が拡幅され、産業道路上り線を走る車両が.....直接乗り入れる事が判明した」とある部分およびこれに関連するバックグランド濃度に関する主張は、計画の確認が不十分であったので、ここでは撤回する。

債務者の同書面47頁3項の主張(15本の道路整備により自動車交通は分散されるとの主張)を争う。産業道路と東西中央幹線が交差する北袋交差点の交通量が3.03倍に達することは2項に述べたとおりである。

債務者の同書面48頁の4項の主張(債権者による計算式の誤用)については、これを認め、主張を撤回する。

債務者の同書面48頁第5項の主張について

(1)債務者はこの箇所で、さいたま市三橋測定局付近の交通量が1日8万台であること、平成15年のNO2濃度が年平均値0.034ppm日平均値0.058ppmにしかならないことから、北袋交差点の交通量が3倍になったと仮定しても1日5万1千台であり、三橋測定局付近の濃度を「超えることはあり得ず」「同等になることもあり得ない」とすることから論述をはじめている。

 @ しかし、本書面第1の一の3項の(2)で述べたとおり、産業道路と東西中央幹線の合計交通量の予測は当面5万1600台であるが、両者の最大容量は9万6千台であり、埼玉新都心駅の東口開発だけでも多数の自動車の客を誘引する施 設がつぎつぎ出来て、渋滞が起きているくらいであるから、そこに向かう主要交差点たる北袋交差点のNO2濃度がそれ単独で三橋測定局付近のそれを超えることは大いにあり得ることである。前述のとおり、近くの交差点で5万1600台 の交通量があれば、北袋2丁目のバックグランド濃度は、すくなくとも大宮区役所測定局の0.029ppmは超えると見られる。

A そうなると、同交差点の東120mには債務者の高速道路トンネルの出入口が存在し(覆いを100mつけるとしているから交差点から220m東で)、東西行合計4万1600台の車両の排ガスが(換気塔を通さずに)地表に排出されるのであるから、それが拡散現象によって北袋2丁目付近に漂うのであって、両者があいまって北袋2丁目のNO2濃度を高め、三橋測定局の平成15年値を超えてしまうことは高い確率で予想されるのである。

    *この高速道路開口部からの寄与濃度について債務者は、同書面52頁の表で、0.0064ppmに過ぎないとするが、債務者自身が提出する二酸化窒素減衰グラフ(乙第5号証212〜216頁)および拡散現象についての知見(乙第22号証の15頁)から見て、あまりに低い数値であって、低く見せかけていると思われる。

B そのように低すぎると見られる開口部からの寄与濃度に関する債務者の予測数値0.0064ppmを用いても、先に見たとおり、北袋2丁目のBG濃度は大宮区役所局の0.029ppmを超えると見られるから、両者の合計は0.0354ppmとなって三橋測定局の濃度(年平均値0.034ppm)を超えてしまうのである。

 (なお、債務者は同交差点付近の交通量が開発前の3倍に達することもあり得ないが、あえて3倍になると仮定するとの立場であるが、さいたま市の交通予測からも同交差点の予測交通量が5万1千6百台となることが導かれるから、3倍は確実な数値である。前記二の2項参照)

C ところで、この三橋測定局の数値である日平均値の年間98%値0.058ppmというのは、それだけで環境基準ぎりぎりの数値であって、1年365日のうち高い方から数えて7日分(2%)を除外した数値(高い方から8日目の数値)であるから、これを超える日があと1日加われば、除外されていた日も入れて高 い方から8番目の日の数値が98%値となるのであって、いつ0.06ppmを超えてもおかしくない危険ゾーンの数値である。別な見方をすれば、日平均値0.002ppmに相当する別な加算要因が加われば環境基準を超えてしまう危険な数値でもある。

(2)前記(1)のBで、北袋2丁目(本件換気塔の直ぐわき)における二酸化窒素濃度が年平均値0.034ppm、日平均値0.058ppmを超えることが高い確率で予想されることを確認したが、仮に北袋2丁目濃度が(高速開口部の 寄与分を加えて)三橋測定局に等しいとしても、これに債務者の換気塔からの寄与濃度としてわずかに日平均値にして0.002ppmが加わればもはや環境基準を超えてしまうのであるところ、債務者は換気塔の寄与濃度年平均値0.0016ppmだとする(同書面52頁表)。

 @ 債務者はこの数値は、排出係数について6%勾配は6%に、かつ80キロ走行とし、無風状態で計算した結果だとするが、この数値を導いた過程につぎの疑問がある。

  イ.まず、債務者は窒素酸化物が空気より比重が重く、風が弱い場合には十分拡散せず近隣に降下してくることを考慮していないのではないか。

  ロ.また、NOがNO2に化学変化してNO2濃度が下がらないことを考慮したか疑問である。

  ハ.さらに決定的な疑問は、債務者がこの数値を導いた際、乙56号証の2の10頁で述べているところでは「有風時にはプルーム式を、無風時にはパフ式を用いた」と明言していることである。

   両モデルとも平坦な場所では有効であるが、ビルがある場所や窪地など風の流れが複雑な場所では適用できないとされている(甲第48号証、〈株〉環境総合研究所《NGO》のホームページの抜粋)。

    本件地域は基本的には木造住宅街ではあるが、マンション建物も散在し、直ぐ西側にマンション群やビルもある地域であって(甲第45号証の写真参照)、なにより西1キロには、さいたま新都心高層ビル群が林立しており、南と北には谷底平野と言われる窪地があり、本件地域が火山灰台地と呼ばれる丘陵であることは、乙第5号証の17頁とその添付地図にも明記されている。

      このような特殊地は風の流れが複雑であり、田園地帯のような平坦な場所にだけ有効とされるこれらのモデルを使ってはならないはずである。

     数値解析・差分法を用いた他の計算モデルもあり、債務者はマンションが立ち並ぶ東京の山手通地下の換気塔の濃度計算ではこちらのモデルを使った証拠がある(甲第49,50号証)。なぜ本件地域に有効と思われない前記モデルをあえて使っているのか疑問がある。

 A 上記@のような不備があると思われる数値によっても、換気塔の寄与濃度年平均値0.0016ppmという数値は、日平均値に換算すれば0.0032pp mに相当するわけであり、(2)の冒頭で確認した三橋測定局並みの日平均値0.058ppmに加えれば、北袋2丁目地区の日平均NO2濃度は、0.0612 ppmとなって環境基準を超えてしまう。

    また、北袋2丁目が大宮区役所(0.0029ppm)を超えると見て、高速開口部からの寄与濃度0.0064ppm及び換気塔からの寄与濃度0.0016ppmを加えれば0.037ppm(年平均値)となってしまい、日平均値に換算すれば0.074ppmとなって環境基準を超えてしまうのは前述のとおりである。

(3)債務者による自白について

  債務者は、同書面51〜52頁において、三橋測定局と北袋交差点のNO2濃度が同等と仮定し、これに開口部の寄与濃度と換気塔の寄与濃度を合算した場合は、年平均値0.0420ppmとなることを認めるに至った。

  この年平均値を日平均値に換算すれば(2倍するとされる)0.084ppmであり、環境基準の定める日平均値0.06ppmを大幅に超えてしまう。つまり環境基準を超過してしまうことの自白であり、注目しなければならない。

    債務者は交差点の数値を減衰させずに2つの寄与濃度数値と合算するという、理論上もあり得ない無理な仮定をした場合だと弁解するのであるが、そのような無理な仮定をしなくても、(2)で述べたように台数比較に基づく合理的な推論 と債務者の言う「理論的」な数字を組み合わせれば、環境基準を超えてしまうことはすでに述べてきたところである。

   債務者の言い方は、債権者らの主張が理論的でないと印象づけるためワザと「無理な仮定」をして見せたものに過ぎず、環境基準を理論上も超えてしまうことに対するカモフラージュと言わねばならない。

   このように見てくると、債権者らの請求が、根拠のない杞憂に基づくものではないことがいよいよはっきりしたのであり、本件仮処分は認容されるべきである。

環境対策について

   債務者は52頁の第3において、各種環境対策を取ることにしていると述べる が、なかには本件仮処分で争われる大気汚染問題とは関係のない対策まで列挙し ている。関係のある対策について見た場合でも、いずれも対症療法と言うべきも のばかりであって、有害物質の排出そのものを規制するものではない。

第2 被保全権利および保全の必要性について

  環境基準超過の自白とアメリカの環境基準を持ち出した居直りについて

    債務者は、いくつかの無理な仮定を前提としてと断るのであるが、平成22年の年平均予測値で0.0420ppmまたは0.0518ppmとなることを55頁で認めるにいたった。。

   債務者のあり得ないとする仮定をしなくても、環境基準をこえてしまうものであることは前述した。

   債務者の言う数値を日平均値に換算すれば、0.0840ppmまたは0.136ppmであり、環境基準をはるかにこえ、人体に影響があることは明かである。

    債務者は、ここで再びアメリカの環境基準を持ち出し、仮に我が国の環境基準を超えていても、アメリカのそれを超えていないから人体への悪影響はないはずだと居直っている。

  しかし、我が国の環境基準はその数値を境にして一部の人の身体にすでに影響が現れているから設定されたものであることは、すでに債権者の9月6日付準備書面で反論したところであり、国土の高度集中的利用の度合いが全く異なるアメリカの基準をここで持ち出すことは邪道である。

  化学変化について

   また、債務者は56頁において、NO2は亜硝酸塩あるいは硝酸塩に変化して大気中から除去されるとするが、二酸化窒素が亜硝酸塩や硝酸塩に化学変化する のは、塩基性物質に触れることによっておこる化学変化である。ところが、空気中には塩基性物質はそれほど多くは存在せず、この化学変化は急速には生じず、徐々に生じるわけであって、排出された二酸化窒素がこの化学変化によって大気 中から除去されるには長時間がかかるのであり、その間空気中に滞留して人体に 害をもたらすことを等閑視している。

高速大宮線による影響は軽微とする点について

   債務者の同書面59頁には、高速大宮線それ自体の二酸化窒素濃度への影響は

 ごく軽微だとの主張が見られるが、そうでないことはすでに述べた。

   また、同頁では、他の道路の拡幅・新設による影響が大きいところ、債務者はその事業主体ではないとする主張も見える。

しかし、北袋地区の二酸化窒素発生源3つのうち、債務者の造る高速道路からくる排気ガスが2つを占めるものであることから、他者のせいにする論理は通らないことはすでに第1の一、1の3項や二の2項で充分のべた。

  しかも仮に債務者の言うとおり債務者の寄与がわずかだと仮定しても、バックグランド濃度がすでに高いところに高速道路を造るのであるなら、いささかも更 に濃度を上げるようなことをすべきでないことは公的機関なら当然のことである。債務者の論理は、他人が汚しているのだから自分も少しは汚してもいいだろう、という論理であり、見苦しいことこの上ない。

固定発生源の問題

   債務者は、同60頁において、債務者の換気塔がばい煙発生施設ではなく、工場でも事業場でもないから大気汚染防止法の規制に服さないとする。  政令の文言を形式だけ見れば、たしかにそのように言えるかも知れないが、問 題は債務者がトンネル内の有害排ガスを収集した上で排出するための巨大施設を建築し、それを24時間、動力を使って稼働させようとしている実体である。しかも料金をとってこれをやるのであり、その実体は事業場そのものである。                                         

第3  債務者の9月3日付準備書面に対する認否と反論

  債務者が、低濃度脱硝装置を高速トンネル換気所につける要件として、環境基準の達成が厳しい地域に限っていることは不知。

    仮にその通りだとしても、それは債務者が勝手に設定した要件であり、債権者らを拘束するものではない。

本件工事区間について言えば、さいたま新都心開発事業の一環であることから、高速道路工事完成とともに周辺道路も平行して供用開始となり、高い確率で北袋2丁目地区が排気ガスの高濃度汚染地帯となることが予想されるものであり、債務者の設定する要件を満たすと見ることが出来る。

その上に債権者らは、その属する高速道路問題連絡会を構成する地元6団体が債務者との間で締結した確認書の約束を援用出来る立場にあり、そこには本件工 事区間について、「合意形成に達していないので引き続き話合いを継続し、お互いの理解のもとに進める」とあり、反面解釈として「合意なしには工事を進めない」意味が明確に読みとれるのである。

   このように債務者は合意書に拘束されるわけであるから、債務者が一方的に設定した脱硝装置を付けるための要件よりも対外的義務を優先させるべきことが明 かである。                                                以 上


疎 明 資 料(第1次分を援用する)

 疎甲第1号証      高速大宮線のパンフレット(債務者作成 )       1通

 〃  2          説明会資料(埼玉県新都心建設事務所長)      1通

 〃  3          住民要望に対する回答書(新都心建設局長)    1通

 〃  4          街びらきに向けた確認書案(H11.6.4付)1通

 〃  5          調印後の同上        (H11.6.15付)  1通

         高速大宮線の整備についての確認書(11・10・2)1通      

            経過説明書(高速道路問題連絡会)           1通

               解釈変更に抗議する意見書(〃)              1通

           高速道路連絡会に対する回答書(債務者ほか)     1通

     10          住民団体による再度の要望書                  1通

     11      地元住民説明会資料(債務者、県、さいたま市)    1通

     12      8.8住民集会への報告書(連絡会)              1通

     13          経過報告と今後の方針(連絡会)              1通

     14         債務者の工事説明会資料(H14・9・20)   1通

     15          工事着手のお知らせ・2箇所分(債務者)    各1通

     16          工事着手のお知らせ(債務者)                1通

     17      債務者が地権者に収容手続きを開始した文書(県)  1通

     18     埼玉県知事あて陳情書(連絡会H15・2・18)  1通

     19の1,2  国土交通大臣宛陳情書と提出の報告         各1通

     20        住み良い町をつくる会ニュース                 1通

     21の1    住民署名と要望書の提出するにあたっての文書   1通

     21の2 債務者宛提出された署名の1枚目(6306名の一部)1通

     22         債務者と6団体の交渉議事録                   1通

     23   核都市広域幹線道路網の地図(高速大宮線はその1部)1通

     24         4/16話し合いでの説明概要(債務者)       1通

     25         自動車排ガスの毒性と題する論文               1通

     26   東京環6付近住民運動で脱硝装置を勝ち取ったニュース 1通 

     27          脱硝装置のカタログ(松下電器ほか)          1通

     28          脱硝酸装置の詳しいカタログ(松下電気)      1通

 291,2 換気塔とトンネル出口付近の完成予想図2枚(債務者)各1通


疎甲第 号証
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32 二酸化窒素の人の健康影響に係わる判定条件当について (中央公害審議会答申、同専門委員会報告) 

33 大気汚染公害に見る『政官財」の癒着の構造 (弁護士 鶴見祐策)、
   深刻な被害を生み続ける東京の道路公害 (弁護士 小林容子)

34 環境影響評価法 (法律第1号、平成9年6月13日)

35 環境アセスメント入門 (内藤克彦、化学工業日報社)

36 環境影響評価法の規定に基づく基本的事項 (環境庁、平成9年12月)

37 二酸化窒素に係わる環境基準について (環告38、昭和53年7月11日)

38 窒素酸化物等健康影響継続調査報告書、平成4〜7年度 (環境庁大気保全課、平成9年4月)

39 道路トンネルに係わる低濃度脱硝技術 第2パイロットスケール実験について (国土交通省 外)

40 主要幹線道路沿道部における大気汚染が学童の呼吸器症状に及ぼす影響 (千葉大学医学部公衆衛生学 田中ら)、
   島先生講演録(道路環境研究所)

41 さいたま新都心関連街路網図 (采の国さいたま)

42 6%勾配区間 約210m (首都高)


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50 中央環状新宿線換気塔 首都高、株式会社 オオバ

51住みよい会「さいたま新都心公害に対する事前対策を要求し」

52 平成11年8月31日 首公東埼工第30号 「環境への負荷を軽減するために、研究の成果を踏まえ、新たな環境対策に前向きに対応して参ります」

53 2004.11.22 「確認書が成立する直前の状況など」山口義夫

54 平成14年8月「市民参画型道路計画プロセスのガイドライン
54-2 2002.8.16「市民参画型道路計画プロセスのガイドラインについて」 道路局
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55 脱硝装置の約束に関する陳述書 吉田 実 平成16年12月22日

56 記者発表資料 国土交通省 平成15年8月6日

57 陳述書 「首都高はあまりにも人の健康に対する配慮を欠いている、環境汚染について」高松富夫 平成16年12月22日

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