申立書 高速道路公害埼玉新都心・道路公害等をなくし
 住みよい町をつくる会 更新日2004.8.15
第1 当事者の関係
第2 建設計画をめぐる住民と債務者との交渉経過と確認書の締結
  本件高速道路計画
  平成2年3月には北袋地区住民集会
  地元の同意なくJR線から東の高速道路工事はしないとの確認書
  債務者による一方的着工開始
第3 債権者らの受ける被害の予想と保全の必要性
  住民に予想される被害
  保全の必要性と緊急性
疎明資料(証拠)

       高速道路建設工事禁止仮処分命令申立書

                  ( 第 4 次 申 立 分 )

                                           平成16年 8月 13日

さいたま地方裁判所 民事部 保全係  御中

                                       債権者ら訴訟代理人

                                               弁護士 山 本 政 道

 

   債権者の表示            別紙債権者目録記載のとおり

  

  債務者の表示      東京都千代田区霞が関1丁目4番1号

                        首都高速道路公団

                          上記代表者理事長 橋 本 鋼 太 郎

            送達先  〒160−0023

                     東京都新宿区西新宿6−6−2

                 首都高速道路公団東京建設局建設第2部

 

               申 立 て の 趣 旨

債務者は、さいたま市大宮区北袋2丁目地内の別紙工事禁止を求める範囲図の赤斜線部分の高速道路建設工事を中止し、これを続行してはならない、

との裁判を求める。

 

               申 立 て の 理 由

第1 当事者の関係

   債権者らは債務者が建設を予定している首都高速道路大宮線のうち、さいたま市北袋2丁目51番地1、5に建設されようとしている地下トンネルの換気所(排気ガス吹き出し用の煙突。以下「換気塔」という)から排出される排気ガスによって大気汚染による健康被害を受ける付近住民および付近に職場を有する者たちである。

   第1次申立の債権者のうち、吉田実、渋谷 十、春日政一、中川治夫、山口義夫については地元4自治会及び1住民団体の会長であり、住民を代表して平成11年6月15日に債務者との間で確認書を締結した各団体の代表者であり、調印当時の当時の自治会長から後任の自治会長に交代があったのは北袋町1丁目養和自治会と北袋1丁目平和台自治会であるが、現会長はそれぞれ天海泰成、塚原亀三郎となっている。天海泰成については第2次申立において追加して申立てたところである。

 債務者は首都圏の高速道路の建設・維持・管理を目的にして設立された公団であり、本件の大宮線の工事を担当しているのは債務者の埼玉工事事務所である。

 平成11年6月15日の確認書に債務者側で署名したのは当時の埼玉工事事務所長の高木武康であるが、その後異動した。。

 

第2 建設計画をめぐる住民と債務者との交渉経過と確認書の締結

本件高速道路計画はさいたま新都心建設事業の一環として、平成元年ころ計画が固まり、平成3年に浦和・与野・大宮の3市の都市計画事業として承認され、平成3年3月11日付都市計画告示されたものであるが、平成14年2月1日付都市計画の変更により、「さいたま都市計画事業1・3・3高速埼玉東西連絡道 路」と名称変更されたものである。

  計画によれば高速道路はJRさいたま新都心駅の地下を西から東にトンネルで通過し、トンネルのまま吉敷町4丁目、北袋町1丁目、産業道路の下を通り、北袋町2丁目地内で地表に出て、その東は高架式で見沼緑地を抜けるというものである(疎甲第1号証)。

  産業道路(県道川口・上尾線)に面して東に約20メートル寄った場所に地下トンネルから排気ガスを吹き出す換気塔が計画されている(疎甲第29号証1)。

    換気塔が計画されている場所は両側に住宅が密集している場所であり、換気塔の高さは30メートル以上とされる。また換気塔の約80メートル東側にトンネルの出口が設計されており、そこからは半地下部分が東に約50メートル続き、その東側から高架が立ち上がる設計である(疎甲第29号証の2)。

平成2年3月には北袋地区住民集会が開かれ、「換気塔及びトンネル出口は住宅の真ん中を避け、計画予定地から300メートル東よりに移動させよ」その他の決議がなされ、地元の住民3000名の署名を添えて債務者および埼玉県ならびに大宮市(当時)に陳情がなされた。

   その後年に数回の割合で地元住民と債務者との話し合いがもたれたが、一向に債務者は譲歩せず、平成8年9月には地元5つの自治会と住みよい町をつくる会(個人加盟の会)とが6団体で高速道路問題連絡会を結成して債務者と交渉を続けた(疎甲第2,3、7号証)。

地元の同意なくJR線から東の高速道路工事はしないとの確認書

(1)平成11年6月に至り、平成12年春のさいたま新都心の街開き(暫定開業)に伴い、埼玉県当局から住民6団体に対し街開きに反対しないで欲しいとの申しれがなされ、住民6団体は、街開きに協力するがJR線から東側の高速道路の計画(とりわけ換気塔およびトンネル出口の位置について)は同意出来ないので地元6団体の同意がなければその工事だけは認められないと回答したところ、埼玉新都心建設事務所長、債務者の埼玉工事事務所長も参加し、大宮地区選出の松下裕県会議員の立ち会いのもとで折衝がなされた結果、債務者は同要求を受け容れ、「さいたま新都心の街開きに向けた確認書」が交わされることになり、平成11年6月4日さいたま新都心建設事務所(県の施設)に於いて債務者側から埼玉工事事務所長の高木武康が出席して案文につき一致を見た(疎甲第4号証)。

(2)それによれば、第4項の「高速大宮線について」と題する項の中で、「高速大宮線の現在の工事区間(東側地区)の延伸整備に関しては、合意形成に達していないため、引き続き話し合いを継続し、お互いの理解のもとに進めるものとする」と明記されており、反面解釈として線路東側の着工には住民6団体の同意が必要であるとする内容であった。   

(3)住民6団体は同確認書を調印するためには住民集会で住民多数の意思を確認

  した上で調印するのが望ましいと決定し、平成11年6月15日に北袋町2丁目の平和台会館に住民約150名が集まり、さいたま新都心建設事務所長森口隆吉氏(埼玉県の役職者)及び債務者の埼玉工事事務所長の高木武康を招いて壇上に上って貰い、調印式を行なった。

  調印の前に第4項の解釈についてその両名に対し確認書第4項の意味について「地元6団体の同意なしに線路東側の高速道路工事は着工しないとの解釈で良いか」との確認がなされた。それに対し両名とも「そのようにとらえていただいて結構です」と答えている。そこでその場で前記の6月4日の案文に地元6団体の代表者が印を押し、前記両名もその場で印を押して調印した確認書が作成された。 それが平成11年6月15日付確認書(疎甲第5号証)である。

    このような手続きを経ているので同文書第4項の解釈は、他の解釈の余地はなく、地元6団体の同意なくしてはJR線から東側の高速道路工事は着工出来ないはずである。もっとも住民側が同確認書に違反するようなことをしたならばそれが破棄されることはあり得るが、住民側は今日までさいたま新都心の街開きを妨害するような違反行為はなにひとつしておらず約束を守っている。

(4)その後同年10月2日付の確認書が交わされ、さいたま新都心駅東口駅前広場付近(吉敷町4丁目)の区画整理事業による道路建設に伴い、その道路の地下部分についてだけは高速道路のトンネル堀削に必要な矢板状の鋼鉄杭を債務者が打込むことに同意することを内容とする文書が債務者・新都心工事事務所と6団体の間で作成された(疎甲第6号証)。

  この文書を交わして地下部分のトンネル準備工事をしておかないと地表の区画整理道路をトンネルのためにまた掘り返すこととなって困ると言ってきたのは債務者からであり、そのことは、債務者も6月15日付けの文書の効力について、地元6団体の同意がなければJR線から東側の高速道路工事の着工が出来ないとの立場であったことを示している。

債務者による一方的着工開始

   債務者は、平成14年に至り、前記確認書に対する解釈を勝手に変更し、@確

 認書は地元の合意がなければ着工出来ないとの意味ではない、Aすでに何回も環境汚染の心配がないことを説明した、B見沼用水までトンネルで延伸すれば見沼緑地の遊水機能を害する、などの理由で住民6団体の要求を拒絶した(疎甲第8,9、10号証)。

  そして一方的に債務者主催の工事説明会を開き(疎甲第11号証)、区画整理東側地区で高速道路トンネル工事を開始し、北袋町1丁目のトンネルをほぼ完成させ、現在は北袋町2丁目地区を工事中である(疎甲第14,15,16号証)。   

    この間埼玉県や国土交通省を仲介とする交渉や直接交渉が何回も持たれ、平成14年8月には住民側の譲歩案として「高速の出口は計画そのままの位置に同意するかわりに排気ガスだけをパイプで見沼用水の東まで送り出して排出する」案を提示し、埼玉県の鈴木副知事に斡旋を依頼した。

    鈴木副知事は、@この案が都市計画の変更といえるほど大幅な変更ではないことの確認がとれ、A技術的にも可能である、と言う条件が満たされれば斡旋に乗り出すことになった。  

    そこで県知事始め各方面に住民は陳情し(疎甲第18号の1,2)、確認した結果前記@Aの条件は満たすことが明かとなり、債務者も@Aを満たすことを認めるに至ったが、今度は債務者は「都市計画を尊重したい」との、わけの分からない理由でこれを断ってきた(疎甲第19号証の1,2)。

      また、平成15年6月の国土交通省を介しての折衝においては、同省が、最低限地元と債務者の間で工事被害問題に関する工事協定を結んでから着工するように、と債務者を行政指導したにも拘わらず、債務者は北袋町2丁目自治会とは工事協定を締結しないまま強引に工事を実行している(疎甲第20号証)。

    平成15年3月には、住民6団体から「換気所とトンネル出口の位置はそのまま計画どおりとすることに同意する代わりに換気塔内に低濃度脱硝装置をつけよ」との譲歩案も提示し、6300名を超える署名を添えて申し入れをたが(疎甲第21号証の1,2)、債務者はその必要はない(電気集塵機を付けることのみは債務者が約束した)とのかたくなな態度であり(疎甲第22,24号証)、強引にトンネル工事を強行している。電気集塵機は脱硝装置の前段階でつける物であるが、浮遊粒子状物質(SPM)を除去する効果はあっても、排ガス中の気体である窒素酸化物や硫黄酸化物は除去することが出来ず、債務者の態度はまことに中途半端なものである(疎甲第27,28号証)。

    債務者は脱硝装置取付を拒否する理由の一つとして金がかかることを挙げるのであるが、東京の環状6号線(山手通)の地下に債務者が建設中の高速道路トンネルには十数箇所に脱硝装置をつけることにしているのであるから1基程度のものをつけられないはずがない。

第3 債権者らの受ける被害の予想と保全の必要性

住民に予想される被害

(1)このまま債務者の計画どおり換気所を作らせた場合には、債務者の高速道路から空高く吹き出される有害排気ガスには浮遊粒子状物質や窒素酸化物、硫黄酸化物のほか1000種類を超える有害化学物質が大量に含まれることから、それが債権者らの頭上から降下してきて、半径500メートル以上の範囲で深刻な大気汚染被害が予想される(疎甲第25号証)。

(2)さらに新都心事業による東西幹線道路が地表4車線で換気塔に突き当たる形で開通していること、産業道路(県道川口・上尾線)が本件換気塔付近では4車線に拡幅されていること、などから本件換気塔脇の交差点は自動車交通の極端に頻繁な街路と化し、排気ガスが充満する場所となり、埼玉県内でも1位、2位を争う高濃度大気汚染地区となってしまう。

(3)そうなれば債権者である住民やそこで働く者はもとより、近くの幼稚園児、小中学校の児童が排気ガス喘息などの呼吸器疾患に罹患させられるおそれが増大するほか、心臓等の循環器疾患、内分泌攪乱作用も指摘されており、それらの健康被害に結びつく可能性が大きい(疎甲第25号証)。

(4)債務者がわずかの設備投資の金を惜しんだがために、債権者らが健康を害されることになるのは耐え難いことである。ちなみに国土交通省が国道建設に当たりわずかの大気汚染対策投資を惜しんだため、川崎地区、東京都内などについて敗訴し、多額の賠償金を支払わなければならなくなったほか巨額の金を使って迂回道路を建設せざるを得なくなっていることを想起すべきである。大量の患者が発生してから後手後手で対策を取るのでは遅すぎるし、お互いが不幸である。

(5)債務者は自動車台数と大気汚染の将来予測を実施したと称しているが、その調査には住民を参加させず、予測の基礎となったデータも15年前のそれであり、実状を無視している。債務者は補充調査を平成12年に実施したが、その際選んだ測定地点は、住民が換気塔脇の自動車交通の頻繁な場所を要求したのにこれを拒否し、換気塔からも産業道路からも奥深く入った、自動車のほとんど通らない場所を選ぶなど汚染予測で過小な数値を導くための細工を行なっている。

    また債務者の従来の説明では、この高速道路はさいたま市見沼区の第2産業道路に接続して終わると言っていたが、最近の説明ではそれを翻し、将来東北自動車道や常磐自動車道までつながる計画があることを認めるに至っており、自動車台数の将来予測についても近い将来の予測しかしていないことが判明した。

    このように債務者は住民との合意にも反し、大気汚染の予測についても不公正な態度をとり続けているので、このまま債務者の計画どおり高速道路工事を完成させることは住民の健康に対する深刻な被害をもたらすものである。

保全の必要性と緊急性

  債務者の工事日程表では、すでに本件換気塔の直下にあたるトンネル工事およびその東側の掘割部分に入っており(疎甲第14号証)、本年6月には換気塔を予定どおり作ってしまう構えである。

  したがって、今工事を止めさせないと、債務者は地元住民の代表たる6団体の同意がないまま当初の計画どおりの位置に本件換気塔を造ってしまい、これを既成事実化して、債権者らの頭上から排気ガスを降らせる計画を債権者らに押しつけようとしており、住民6団体との約束は公然と破られてしまう。

    そうなっては住民が事後的に交渉を求めても債務者がこれをはねつけることは確実であり、平成11年6月15日付の確認書は空文に帰してしまう。

   

  よって債務者が債権者らの代表に対してなした民事上の確実な約束および債権 者らの人格権に基づいて、これ以上の債務者の工事続行を中止させ、債権者らが同意できる大気汚染対策の採用を債務者が約束するまでの間、工事の差止めを求めるものである。                                                                        以 上

 

      疎 明 資 料(第1次分を援用する)

 疎甲第1号証      高速大宮線のパンフレット(債務者作成 )       1通

 〃  2          説明会資料(埼玉県新都心建設事務所長)      1通

 〃  3          住民要望に対する回答書(新都心建設局長)    1通

 〃  4          街びらきに向けた確認書案(H11.6.4付)1通

 〃  5          調印後の同上        (H11.6.15付)  1通

         高速大宮線の整備についての確認書(11・10・2)1通 

            経過説明書(高速道路問題連絡会)           1通

               解釈変更に抗議する意見書(〃)              1通

           高速道路連絡会に対する回答書(債務者ほか)     1通

     10          住民団体による再度の要望書                  1通

     11      地元住民説明会資料(債務者、県、さいたま市)    1通

     12      8.8住民集会への報告書(連絡会)              1通

     13          経過報告と今後の方針(連絡会)              1通

     14         債務者の工事説明会資料(H14・9・20)   1通

     15          工事着手のお知らせ・2箇所分(債務者)    各1通

     16          工事着手のお知らせ(債務者)                1通

     17      債務者が地権者に収容手続きを開始した文書(県)  1通

     18     埼玉県知事あて陳情書(連絡会H15・2・18)  1通

     19の1,2  国土交通大臣宛陳情書と提出の報告         各1通

     20        住み良い町をつくる会ニュース                 1通

     21の1    住民署名と要望書の提出するにあたっての文書   1通

     21の2 債務者宛提出された署名の1枚目(6306名の一部)1通

     22         債務者と6団体の交渉議事録                   1通

     23   核都市広域幹線道路網の地図(高速大宮線はその1部)1通

     24         4/16話し合いでの説明概要(債務者)       1通

     25         自動車排ガスの毒性と題する論文               1通

     26   東京環6付近住民運動で脱硝装置を勝ち取ったニュー7 1通 

     27          脱硝装置のカタログ(松下電器ほか)          1通

     28          脱硝酸装置の詳しいカタログ(松下電気)      1通

 291,2換気塔とトンネル出口付近の完成予想図2枚(債務者)各1通

       

      添 付 書 類

疎甲1〜29号証の1,2(第1次分をそのまま援用)       各1通

資格証明(公団の登記簿謄本)( 同上)                             1通

訴訟委任状                                                     10通

                         

       以上のとおり、仮処分命令を求めて申立てます。