千葉県我孫子市(人口約13万人) 焼却灰溶融施設の稼動停止しエコセメントに
1.施設導入の経緯
本市では地理的条件等から昭和51年以降、自区域内に最終処分場が確保できず、焼却灰と不燃物の最終処分については、長年にわたり茨城県北茨城市の民間最終処分場に委託処理してきたところであった。 全国レベルでは、廃棄物行政のソフト分野、特に資源分別回収はトップクラスでありながら、ハード分野すなわち施設整備面における最終処分場対策の立ち遅れは否めず、昭和56年に廃棄物処理基本計画で定めた「埋め立て処分場のない都市清掃を目指す」実現するためには、廃棄物の減量と資源化は大きな課題であった。 この状況にあって、昭和46年以来、市の環境装置に関わっていた日立造船株式会社では、焼却灰を減容・無害化し、資源化するための施設である溶融リサイクルシステムを開発し、実証プラントでの試験段階にあり、この施設の基本理念と市の廃棄物処理基本計画に掲げる理念が合致したことから共同での実証試験に至ったものであった。 実証試験では、溶融施設と溶融スラグの安全性についての実証を日立造船(株)が、また、溶融スラグの利用用途の研究では市が行うという役割分担のなかで、平成6年から1年間、実証実験を実施したのち、本市に無償譲渡され、平成12年度末をもって溶融施設の稼動停止するまでの間、焼却灰の減容・無害化並びに溶融スラグの資源化を担ったきた。
2.施設の課題について
市に移管された当時、溶融施設は廃棄物処理施設の最先端技術を駆使したものであり、施設の維持管理にあたって、メーカー側でも予期できなかった不都合や施設の構造上避けられない問題点も出てきた。 例えば、溶融過程において焼却灰が比重分離し、焼却灰に含まれる比重の重い非鉄金属が溶融炉床に堆積するため長期連続運転ができなかったことは、実機としての使用によって明らかになった不都合であった。また全国トップクラスの資源分別回収を誇る本市であっても、焼却灰中の金属を起因とする搬送機器の損傷、故障が多発したことは、今後の廃棄物減量施策を展開するうえでの再認識しなければならない課題である。 これらの他にも、突発的な故障による溶融施設の運転停止や焼却灰の含有水分の影響による処理能力低下は、解決できない課題として残った。 ところで、円滑な施設運営を図るには、突発的或いは経年変化による機器の故障等を回避するための計画的修繕(工事)を立案し、施工、及び施工に対する検証が必要と思われるが、本施設は実証プラントの延長線上のものであった故、機器の損耗は想像を超え超えるものがあり、併せて、施設維持管理に関するノウハウが蓄積されていなかったことは施設運営において、大きなマイナス要因であった。
平成13年4月 我孫子市クリーンセンター 近年のごみ量の増大と埋立て処分場の確保が年々難しくなる状況のものごみ焼却灰を溶融スラグ化し資源として有効利用を図るために日立造船(株)と共同で開発、実証試験を進めた。この実証試験プラントは平成6年の実証試験終了後、我孫子市に無償譲渡され平成7年からは市による運転を開始いたしました。 しかし、施設の更新時期が来ていることと、焼却灰のエコセメント化事業への参画が決定され平成13年1月末に溶融施設の稼動を停止いたしました。 ここでは、平成7年から平成13年1月までの稼動実績を報告するものであります。 1.施設の概要 名称 焼却灰溶融リサイクルシステム(焼却灰溶融施設) 溶融処理能力 15トン/24h 形式 灯油バーナー式表面溶融炉 処理灰 ごみ焼却施設から排出された焼却灰および飛灰 2.施設の稼動期間 平成7年4月から平成13年1月まで(平成7年4月から3ヶ月間は運転実習期間) 3.運転体制(委託業務) 2名×4班(12時間勤務の2直) および日勤2名(8時間勤務) 以上10名 4.年度別溶融処理実績(詳細は別紙表1に示す) 溶融施設が稼動した6年間の焼却灰溶融処理量およびスラグ発生量を示します。 表のようにごみ焼却灰約26,000トンのうち約15,000トンを溶融処理し約8,400トンのスラグが生成されました。 これはこの6年間に発生した焼却灰の約6割を溶融処理し、この焼却灰が重量比で約半分に減量されたことになります。 単位:kg
5.施設維持管理費と処理コスト(維持費の詳細は別紙の表2に示す)
表のように灰1トン当たりの溶融処理コストは平均すると約69,000円であった。
6.スラグの有効利用状況(平成13年3月31日現在) スラグの有効利用の用途として計画当初では公共次号の埋め戻し材等の土木資材としての利用を図っていく予定でありましたが、下水道工事等の発生土は再生土として再利用するようになり埋め戻し材としての利用が無くなってまいりました。 このため、表に示すように約1,800トンのスラグがストックされています。 今後の利用用途の検討が必要となります。
1.既存の溶融施設を生かした施設の整備 平成11年度費用総額 456,927千円 ○ 溶融処理及び埋立処分費 毎年かかる費用 溶融処理量 処理単価 81,255円/t(11年度) 埋立量 処理単価 39,375円/t(11年度) 溶融処理及び埋立処分費総額 296,927千円 ○ 分離装置の設置年度にかかる費用 分離装置を設置する費用 約160,000,000円(その他ばいじんを処理するための薬剤費等の経費が必要となる。) 以上の方法で実施した場合、付議書の課題(1)は解消できるが課題(2)から(5)については解消できない。 2.新たな溶融施設の建設をした場合 1)建設方法 @ 既存の施設を生かし全量処理する場合 新たに1基15t/日の施設を建設 建設費14億円(日立造船概算見積による) A 新たに全量処理できる施設を建設した場合 20t/日の施設を建設 建設費 17億円(日立造船概算見積による) B 既設施設の老朽化及び不慮の事故等を考慮し、2基による交互運転ができるように新たに2基建設した場合 15t/日を2基建設 建設費 28億円 3つの方法のいずれかを実施した場合にも施設維持管理は発生する。しかし、現時点では想定できないため算入しないこととする 2)スラグを全量利用するシステムづくり 将来的には、スラグが建設資材としてJIS規格品に認定されれば有償で売却することができ、有効利用が図られると思われる。しかし、現在認定の時期は不確定のため、現行のとおり発生土が再利用されることを考えると、スラグ単体ではなく二次製品を作り有効利用する必要があると考える。そのためには、二次製品を生産する施設が必要になる。 以上の方法実施した場合、付議書の課題(1)、(2)、(5)は解消できるが(3)、(4)の課題が残る。
11年度の溶融施設の維持管理費と焼却灰の処理量 維持管理費 222,232千円 処理量 2,735トン 1トン当たりの処理単価 222,232千円÷2,735t=81,255千円 13年度の焼却灰発生予測量 4,632t 溶融施設の処理能力 4,632t×60%=2,779t 埋め立て処分委託 4,632t×40%=1,853t 13年度の経費比較 (11年度同様に焼却灰を処理した場合) 溶融施設の処理費 81,255円×2,779t =225,807,645円 埋め立て処分委託費 39,375円×1,853t = 72,961,875円 合計 298,769,520円 エコセメント委託費 41,685円×4,632t =193,084,920円
経費比較 298,770千円−193,085千円≒106,685千円 ※エコセメントへ委託することで約106,000千円の経費節減が図れる
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