フグは漢字では「河豚」と書く。
これに関係があるのかどうかは知らないが、一部のフグは、特に幼魚期において、
よく河川汽水域に侵入してくる。
本州では、最もよく見られるのはクサフグであるが、
地域によっては、他に数種のフグが加わる事もある。

クサフグ(紀伊半島汽水域、8月)

河口に群がっていたクサフグの幼魚(日本海側河川、8月)

上から見たところ
クサフグ
海域汽下汽上淡水陸上
元々内湾には多い魚で、
特に幼魚は夏季に河口域でよく見られます。
全国どこでも見られる魚ですが、
地域によって、生息密度にかなりバラつきがあるように思います。
非常に貪欲な魚で、本種の多い河口で釣りをすると、
餌に大挙して群がり、フグ以外全く釣れなくなってしまう事もしばしば。
そうなると、餌盗りというよりは針盗りなので、
こちらはハリスの付け替えに大忙しです。
またフグだけに、釣り上げると、
「キュキュキュキュッ」という音とともに、
パンパンに膨れ上がって激怒します。
釣りの世界では嫌われ者のクサフグですが、
幼魚を飼育してみると、意外とよく慣れ、愛嬌があります。
僕としては、色彩的にも形態的にも鑑賞価値大だと思うのですが。

飼育中のクサフグ幼魚。他魚との協調性は良い

餌をねだるクサフグ。よく慣れるが臆病な面もある。
■長良川とクサフグ■
ある時僕は、岐阜市内を流れる長良川の某支流へと、
釣行した事があった。
川岸の、灌漑用水の樋門の所でフナ等を釣っていたのであるが、
樋門の対岸で釣っていた人が、何とフグを釣り上げた。
15cm程もある、クサフグの成魚であった。
クサフグが川を遡上する事は珍しい事ではないが、
このような河口から遠く離れた中流域の支流で、
クサフグを見たのは驚きだった。
当時、長良川は、河口堰の運用を開始した直後であり、
運用前に遡上した個体が、下流域の「長良湖」化によって、
海に戻れなくなってしまい、このような場所まで迷い込んだのかも知れない。
その後、この場所でクサフグを確認できた事はないし、
運用開始前は多かったウナギも、全くといっていい程釣れなくなった。
広範囲な調査を行ったわけではないので、
この場所でのウナギ減少の原因を断定するつもりはないが、
クサフグの様な遡上力に乏しい魚にとっては、
河口堰が大きな障壁となる事は、現在の堰上流の生物相を見れば、
想像に難くない。
もちろん食用に適さないクサフグは、人(特に漁業者)にとっては、
「商業的有用水産物」ではない。
そこまで配慮したら何も造れないという声が聞こえてきそうであるが、
長良川河口堰に限らず、運用開始後こそ、
そういった「商業的有用水産物」以外の生物種についても、
ちゃんとした追跡調査を行うべきであろう。
そして、調査の結果、生物種に影響があるとされた場合は、
その事を謙虚に認め、対策を講じる姿勢も、
施工者、運用者側には求められるだろう。
野生生物は、法律的な事はともかく、
本来人間だけの為に存在する訳ではなく、
ましてや、行政や漁業者の私有財産でもないのだから。
ヒガンフグの幼魚(日本海側河川、8月)
上から見たところ
ヒガンフグ
海域汽下汽上淡水陸上
日本海側の河川下流域にて確認しました。
これもまた、汽水域に現れるフグの中では魅力的なフグだと思います。
汽水域で、クサフグの幼魚の大群の中に、3〜4尾だけ混じっていました。
これも本来は海産なのですが、
幼魚期にはどうやら汽水域へ侵入する事があるようです。
持ち帰り、塩分濃度約10パーミルの汽水で飼育しましたが、
1ヶ月以上健康状態に問題は起こりませんでした。
 コモンフグ幼魚(伊勢湾流入河川、7月)
コモンフグ
海域汽下汽上淡水陸上
伊勢湾流入河川下流域などにて確認しました。
内湾に多いフグだが、夏季、河口付近で幼魚が見られました。
クサフグやオキナワフグなどが、意図的に淡水の影響下まで遡上している事は明らかなのですが、
このコモンフグを始めとする他の何種かの海産フグ類は、河口付近でたまに見かけるものの、
それ以上遡上する事はまずなく、遇来の要素が強いようです。
ただ、このコモンフグの場合、飼育下の幼魚では、
短期間なら、かなりの低塩分濃度(1/3海水程度)でも平気な事から、
低塩分環境への耐性はある程度持っているようです。
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