メダカカダヤシ


このサイトを開けて下さった方で、メダカの名を知らない人はまずいないだろう。
メダカはそれ程我々にとって馴染み深い魚だ。
最近では環境省のRDBにも記載され、乱獲、乱放流でも話題を呼んだ。
ネット上を徘徊すると、メダカ専門のサイトも数多い。
日本人にとって、故郷の原風景そのものであるメダカは、いわば光の存在だ。
一方カダヤシは、ボウフラ退治の為に持ち込まれたものの、 今やメダカを駆逐する悪しき外来魚として日陰モノの立場を余儀なくされている。
光と影、そんな置かれた立場は違うメダカとカダヤシだが、 共に時として汽水域にも現れる事は、意外と知られていないのではないだろうか。
となれば、本サイトとしても、片足突っ込んでおかなければ・・・。
という訳で、遅れ馳せながらのメダカ掲載と相成りました。






メダカ
メダカ(伊勢湾流入河川、6月)

メダカ

海域汽下汽上淡水陸上

愛知県、三重県、和歌山県、静岡県などの汽水域で生息を確認しています。
メダカは比較的汚染に強い魚で、優れた塩分耐性をも持ち合わせているため、 産卵できるような環境さえあれば、かなり塩濃度の高い場所でも見る事ができます。
つまりメダカにとっては、汚染やある程度の塩分は問題ではなく、 常に水があり、産卵床となる水草のある流れの緩やかな水路などの条件の方が重要のようです。
例えば伊勢湾沿岸のとある生息地は、河口につながるコアマモやシオグサの生える浅い水路で、 上流は淡水ですが、満潮時には塩分を含んだ河川水が逆流してくるような場所でした。
ただ、このような場所は、次項で挙げるカダヤシも好んで生息する場所と思われるため、 一旦カダヤシが侵入してしまうと、置き換わってしまう可能性もあります。
また、日本在来のメダカは、いくつかの地方型に分かれているとされていますが、 他地域からの放流によって、遺伝的な汚染が広がってしまう事も懸念されています。
実際ここで紹介している画像のメダカも、人工的な排水路に生息していたもので、 在来であるかどうかにははなはだ疑問があります。

ところでメダカは近年になって、盛んに減少が言われるようになった気がしますが、 環境省RDBへの記載がその原因の1つである事は間違いないでしょう。
確かに、地域によっては危険な状態にある事は事実でしょうが、 実際にはもっと絶滅に近い種類などいくらでもいます。
自分がメダカが多い地域に住んでいるからそう思うのかもしれないのですが、 メダカがこの日本からいなくなってしまうなど、ちょっと考えられません。
もしもそんな事態が本当に起こるとするならば、その時は現在何の”肩書き”もない他の魚も、 いなくなっている事でしょう。
ならばメダカは全く守らなくていいのかというと、そうではありません。
地域個体群が守りたいのなら地域個体群での記載とすべきであり、 現在のランク付けは全く現状にそぐわない記載であるばかりか、 メダカの種としての記載が、残念ながら逆に乱獲や密放流の引き金となっているように思えてなりません。
せめてもの救いは、最近ようやくマスコミなどにも放流は必ずしもいいことではない という論調が見られることで、
ネット上においても、そういう(他地域への放流は自粛すべきといった)主張を、 何故だめなのか?という理由づけも含めてされているサイトが増えてきた事は、 いい傾向ではないかと考えています。


背面正中の暗色帯が特徴。
上が♀、下が♂。顔が違う。
(伊勢湾流入河川産、6月)


汽水域に群れる。
※右端はボラ。
(伊勢湾流入河川、6月)




カダヤシ
カダヤシ(小笠原河川汽水域、1月)

カダヤシ

海域汽下汽上淡水陸上

本州太平洋側各地の他、四国や沖縄島、小笠原でも見られました。
カダヤシが”蚊絶やし”に由来する事はあまりにも有名ですが、西日本を中心に広く帰化しています。
淡水域でももちろん見られますが、カダヤシはむしろ汽水魚としての側面が強く、 時として内湾で見られることもある程です。
水質汚濁や低酸素環境にも異常なほど強く、他の魚が全く生息できないような汚染された都市運河や、 いわゆるドブのような環境などでも見られます。
しばしば問題とされる、メダカとの生態学的位置の競合についてはメダカの項でも触れましたが、 両種の生息環境の好みは若干異なっていて、淡水域では必ずしも全ての生息地で一致するわけではないものの、 汽水域においては競合してしまい、メダカが駆逐される場合が多いようです。
また、もともと陸水系の狭い沖縄県においては、事態はもっと深刻であるということです。
先日沖縄島北部を訪れた際、某場所で帰化動物問題のポスター展をしている傍らに置いてあった水槽をふと覗くと、 「〇〇村のメダカ」とわざわざ銘打たれたその中にいたのは、全部カダヤシでした。
これにはさすがに苦笑せざるを得ませんでしたが、 同時にこの問題の根の深さの一端を見たような気がしました。

■カダヤシ雑感■
僕にとって、カダヤシはとても思い入れの深い魚です。
何しろ、僕がうまれて最初に採った魚がカダヤシだった程です。
僕が子供の頃、当時から名古屋市内を流れる運河や港の貯木場にはカダヤシがたくさんいて、 メダカ(カダヤシ)が海にいる事は僕にとってはむしろ当たりまえの光景でした。
そしてもう1つ、僕の興味をそそったのが、この魚の卵胎生とういう特異な生態でした。
初めて大量の子供を噴射するように産む姿を目の当たりにした時は、たいそうドキドキしたのを憶えています。
小学校の授業でヒメダカの繁殖をしていた時など、 大型のカダヤシを水槽に持ち込んでヒメダカをボロボロにした挙句、 ”卵ではなく子供を産む”事を信じてくれない先生と論争して騒動を起こした事も今ではいい思いでです。
そんな思い出をくれた名古屋港周辺の環境も、時代と共に随分様変わりしてしまいました。
貯木場は埋め立てられ、丸太でいっぱいだった運河もその役割は単なる排水路となりつつあります。
運河にはまだカダヤシがいますが、以前ほどのものすごい数ではなくなりました。
ヘドロが堆積し、メタンの泡が湧き上がる都市の運河。
他の魚の住めないそんな最悪の環境に、うまく適合して爆発的に勢力を広げたカダヤシですが、 緩やかに日本の自然環境に溶け込みつつあるのかもしれません。
とはいっても、最近何かと話題なブラックバスやブルーギルにしてもそうですが、 蚊の駆除という理由があったにせよ、カダヤシも所詮人のエゴで持ち込まれた外来魚です。
日本の生態系に溶け込むといっても、それは同所的なメダカとの共存を意味するものではありません。
競合する環境ではカダヤシは必ずメダカを駆逐します。
その上でカダヤシの好まない環境でのみ、メダカに生き残る道があるという事なのです。
正直いって、僕はカダヤシという魚にとても魅力を感じますし、大好きな魚なのですが、 本来日本にいてはならなかった生物であることは間違いなさそうです。
しかし現実問題として、今さらカダヤシを完全に駆除することは不可能でしょう。
第2、第3のカダヤシを増やさない為に、我々はそろそろ自然に対する考え方を変える時期に来ているのかもしれません。






グッピー♂
グッピー♂(沖縄島河川淡水域産、5月)

グッピー♀
グッピー♀(沖縄島河川淡水域産、5月)

グッピー

海域汽下汽上淡水陸上

本州での生息地は温泉地などですが、沖縄島や小笠原ではかなり普通にみられます。
カダヤシと並んでしばしば帰化種の代表とされる魚ですが、熱帯魚のため温度的な制約があり、 本土での生息地は限られるものの、沖縄などでは越冬できるため問題は大きいと思われます。
森の中の渓流の淀みに群れ泳ぐグッピーなど、明らかに場違いな感じがします。
カダヤシ同様汚染には強く、卵胎生のためメダカのように産卵床を必要としない事も、 分布を広げる要因と思われます。
沖縄では、カダヤシと混生している場所もしばしば見受けられますが、 メダカに置き換わったカダヤシが、さらにグッピーに置き換わるという図式も指摘されているようです。(※1
塩分耐性も強く、カダヤシ程積極的に汽水域に進出する魚ではありませんが、 小河川の河口近くで見られたりします。
とはいっても、僕はカダヤシ同様にこの魚も大好きなのです。
飼育すると本当に可愛らしく、愛嬌があります。
だからこそ、カダヤシ同様これ以上この可愛らしい小魚を悪者にしないで欲しいと強く思います。
日本の自然には、グッピーは似つかわしくありません。


デルタテール?の名残。
(小笠原河川汽水域産、1月)


表層を群れ泳ぐ。
(小笠原河川汽水域産、1月)



参考文献
(※1 :幸地良仁,1985.沖縄島におけるメダカ類3種の種間関係について. 生物研究,日本生物教育会,21(2):2-18.

(※2 :沖縄県,1996.沖縄県の絶滅の恐れのある野生動物・レッドデータおきなわ



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