低周波(音)公害 基礎の基礎

あるいは(超)低周波空気振動被害

 騒音を原因とする被害問題の場合、その被害状況は様々で一概に述べることはできません。その中でこのサイトでは主に騒音としては極めてマイナーで特殊な存在とされている低周波音(or超低周波音or超低周波空気振動)による騒音(?)公害"問題"を中心にしています。
 
 わざわざ"問題"としたのは、低周波音あるいは低周波騒音そのものを物理学的・工学的に理論として専門的に論じるのは私の能力外と考えるからです。また、騒音に(?)を付けたのは低周波音、超低周波空気振動においては音として聞こえにくい場合が多々あり、音そのものを一般的な理工学的な見地から見ると、「聞こえない音で被害は生じない」と言う"専門家"達のまやかし的理論と、一般の人々の「音は聞こえるモノ」という”誤解”を容易に導き出してしまうからです。

 一方、低周波被害を取り巻く環境は、単に空気の振動と言う物理的な現象がもたらす被害としてのみ捉えるべきではなく、そこには極めて恣意的な政治的、経済的、行政的要因が存在すると考えざるを得ないため総括的に扱うため「問題」としています。しかし、低周波騒音によってもたらされる被害はあくまで全て空気の振動によってもたらされる被害である点に於いては共通ですので、ひとまず低周波(音)被害とします。

 従って、私が主に述べようとするのは
低周波音(100Hz or 80Hz以下)によってもたらされる「公害」を取り巻く、特殊な社会的、政治的、経済的環境とします。

 と言うことで、これを読めば、低周波音問題については”一応解る”という内容を、私の理解の範囲内で概論的に
「基礎中の基礎」としてまとめてみました。


 日本で騒音・振動を「専門」的に扱っている唯一(?)の団体として日本騒音制御工学会という学会があります。このサイトは「平成3年7月に環境庁(現環境省)所管の社団法人として 新発足しました。」とあるように、いわば典型的な××学会と言えましょう。

 さて、その学会は騒音問題をどのように解説しているかをみますと、下記のようになっています。それに基づけば、私がサイトで扱っているのは「騒音を形成している3つの要因」の内、人や社会の関係に関わる現象現象としての音」(この「現象現象」と言う箇所はミスでしょうか?)と「聴覚・心理現象としての音」と言う点における一被害者としての経験からからの”証言”が中心と言うことになります。ただし、現状では、この「聴覚・心理現象としての音」という点に於いては非常に研究は未発展で、日本騒音制御工学会学会では、「普通の状態では心身への影響ない」とし、低周波音被害者に対して、単に「気にしないように」と言うような結論しか出していません。それに追随するかの如く、他の理工学系分野はもちろん何も感知せず、わずかに心理学的分野に於いてささやかになされているだけで、、心身に影響決定的に有るにもかかわらず医学的視点からはほとんど何もなされていません。


 低周波音が如何に特殊な存在と言っても、もちろん低周波音が音であることには変わりませんので、それにより生じる騒音も広義ではもちろん普通の騒音に含まれ、環境省などでも騒音の一部として処理しています。しかしながら、低周波音騒音はいわゆる普通の騒音と厳密に一線を画さざるを得ない極めて特殊な存在で、騒音的にはいわば「鬼子」的存在である側面を持っています。

 それでは、これが日本に於けるひとまずの騒音問題の”定説”とされている日本騒音制御工学会の解説を見てみます。


騒音問題とは

身の周りの様々な音のうち、人に好ましくない影響を及ぼす音、不必要な音、邪魔な音が騒音です。

騒音のもたらす影響は

  1. 睡眠妨害(眠れない、目が覚める…)
  2. 心理影響(うるさい、気になる、やかましい…)
  3. 活動妨害(会話妨害、テレビやラジオの聴取妨害、読書・勉強・作業の邪魔…)
  4. 聴力障害(難聴)や身体被害(頭痛・めまい、ノイローゼ…)
  5. 物的被害(瓦のずれ、壁のひび割れ、精密機械などへの影響…)
  6. 社会影響(地価下落や土地利用の制限、相隣問題…)

など様々な問題があげられます。 

騒音を形成している3つの要因:

 第1に、騒音は音。物理現象としての音の存在が原因となります。

 音は大気に生じた音圧の微少な乱れが波として伝わる現象です。物理現象としての音の性質には空間、時間、周波数が関与します。また、音の発生源・伝搬の経路・受音側の音響的性状も影響します。しかしながら、騒音の問題を単純に音の物理現象としてのみ捉えると、問題を正しく把握することが難しくなります。 

 第2に、騒音は人が音を知覚することに伴う問題です。

 人は聴覚により音を聴きます。物理現象の音を、人が「音」として知覚し(聴取し)、「大きな音だ、うるさいな!」と判断される事によって、はじめて「騒音」となるわけです。聴覚は視覚よりも早く、胎内に生命が宿ってまもなく機能し始めます。人は音に敏感です。音を聞くとすぐに反応し、影響を受けます。さらに、心理現象面は複雑です。意識を集中していると、無関係な音が聞こえても、全く印象が残らない場合もありますし、逆にかなり小さな音にでも耳を傾ける事ができます。 

 第3に、騒音は、人と人、人と社会の関係に関わる現象でもあります。

 騒音問題には、「発生源(音を出す人)→伝搬経路→受音側(影響を受ける人)」という構図が必ず存在します。
特に、音の印象は聞く人の状態によって大きく左右されます。

 何をしているのか?
 心理状態はどうか? 音の発生源との関係や社会的立場はどうか? 等など、様々な要因の影響で、物理的には同じ音であっても、それぞれの状況によって、異なる影響を生じる事があります。ある人にとっては、快い音楽であっても、別の人には騒音と受け取られたり、飛行機の音に悩まされている人が、逆に自家用車のアイドリング音で、近隣住民に迷惑をかけているような場合もあるのです。


 騒音問題の”定義”は以上なのですが、現実として実際に騒音被害を受けている場合、被害者が騒音発生源者や行政に単に「うるさい。何とかしろ」と苦情を申し立てても、「はいそうですか。早速何とかしましょう」等と言う事には決してなりませんと断言して先ずよろしいでしょう。

 基本的には、行政は基本的には中立的存在であり、民民の問題には介入しないと言う態度をとります。これが相手側が何らかの事業者ならまた問題はまた別で介入品かければなりません。しかし、中立的立場を旨とする行政の建前としては、一応「被害者側の言い分が全く一方的であり、単なるイチャモンである」と考えることも必要だからです。で、しつこい粘りやなんやかやで行政の仲介による話し合いまでは持って行けるかもしれません。
 一般の騒音問題ならそこから擦った揉んだの挙げ句、運良く防音処理乃至は機器の移設などの処置がなされるかもしれません。しかし、被害者側が望む結果が得られない場合も多々あります。この場合は非常に面倒です。即ち、”「発生源者」は誠意を尽くした。受音側は「全然変わっていない」”等となります。

 従って、現実的には、相手が特定の”個人or企業”ならば時として、回りくどいことをせずに、普通の人にはとても勇気の要ることですが、被害者が
直接騒音発生源者に怒鳴り込んだ方がすんなりと解決する場合もあります。

 しかし、相手が個人の場合は、昨今の世情に鑑みるに、この方法にはそれなりの”用心と覚悟”が必要な時代となっています。少なくとも相手”をそれなりに一応、充分に”調べた上でないとお互いに
”思わぬ結果”(=殺す、殺されるかも知れない)を招きかねない場合がありますので充分なる慎重さが必要です。 


 ここでは個人の被害者が騒音被害を訴えていく場合を中心に考えてみます。その場合、やはり両者での話し合いで解決できればベストなのですが、問題となるのは大抵それが上手く行かない場合で、その場合には、ひとまず一般的には行政等(市町村の環境(担当)課など)に問題解決への仲介を依頼するのが無難です。しかし、それは現実的にはかばかしく進展しない場合が少なくありません。特にその騒音問題の原因が低周波騒音である場合には相当の困難を強いられます。


 低周波騒音に問題を限定する前にまずは、騒音問題についての一般的な見方を考えてみます。

 @騒音発生源「管理者」の資質

 一般に騒音問題に関して、日本では日常の些細(ささい)な問題”であるとして扱われるということです。特に最近増えている日常の近隣騒音は社会全体が”お互い様”の精神で、なぜか非常に大様で寛容です。本来ならば、お互いに相手に迷惑を掛けないように、騒音の発生を抑えると言うのが「近隣良識」なのですが、むしろ現実はその逆で、現実的に問題になる場合は、騒音を出しまくり、受音側の被害者が一方的に我慢を強いられる状況となっています。

 近隣騒音と言ってもその種類は様々で、その典型的な一例として、犬の吠え声を考えてみましょう。犬を飼っている”同志”はかなりのレベルまで、それこそ”お互い様”で吠え声に非常に寛容です。これを”理解”と言うのかも知れません。しかし、犬を飼っていない人間にとっては、犬の吠え声は騒音以外のなにものでもありません。
 犬の吠え声は、犬の種類や大きさにより異なりますが、時として
100dBと言う物理的数値としては一般工場の最大騒音レベルに等しいモノとなっています。特に昨今のペット・ブームでこんなに犬が増えて来たのに、吠え声については全くの野放し状態で、その鳴き声が騒音規制の対象にならないのは全く不思議です。(外国では飼い主に様々な規制を設けているところが少なくありません。)
 一方、犬と言うよりそれを所有する「騒音発生源者」は、吠え声に苦情を言う人を、「家の××チャンの可愛いor元気な吠え声をうるさいとは、アンタこそ何を”吠えるの”。犬は吠えるモンなのよ。それをグダグダ言うアンタこそおかしいんじゃないの」と、言うような場合にみられます。
 
 犬の吠え声に問題があるのは、その音の大きさそのものに一番問題があるのは間違いないのですが、それなりに躾をされた犬は、まずむやみに吠えません。ところが昨今のペット・ブームとやらで己の住宅事情を考えずに猫も杓子も飼い始めます。例え戸建てでも狭い庭の中で吠えればその吠え声は近隣に響きまくります。アパート・マンションなどの集合住宅等での吠え声は非常識としか言いようがありません。
 ところが、最近はペット可のマンションの方が増えてきているそうで、それはそれで共通理解が有るのですから結構でしょう。しかし、ペット(主に犬ですが)混在地域では、やはり、無神経、吠えさせ放題の我が侭者の方が有利のようです。
 しかし、言うまでもなく、例え犬(騒音源)は敷地内にいても、吠え声(騒音)は敷地内や部屋内に留まることは決して無く、他人の敷地内に入り込み環境を蹂躙します。しかし、法的には、「音」は幾ら他人の敷地、住居に侵入しても問題になりません。

 犬の吠え声に良く似ている存在は、道路を我が物顔に”爆走”する”合法”爆音マフラー装着車です。これを付けている人間は××××としか言いようがありません。そもそも「マフラー」は「消音器」なのです。それをわざわざ大きな音にしてその響きを楽しむというのですから、合法も非合法もありません。しかし、まー車は通りすぎれば騒音もひとまず去りますが、犬の吠え声は、同じ場所にどちらかが死ぬまで存在します。その点では爆音より始末の悪いモノです。

 子どものわめき声もうるさいモノですがこれこそお互い様で、それに子どもは何時までも喚き続けません。犬よりはましです。爆音マフラーは子どもではないのがやっているのですから始末に負えません。

 騒音源が長期にわたり無くならないと言う点は、飛行場に始まり鉄道、道路、工場、…、身近では駐車場のしつこいアイドリング、室外機、…と同じです。これらは要は「発生源」を「所有」する「騒音発生源管理者」が
他人に迷惑が掛からないかどうか等と言うレベル以前の人間良識としての「他者の存在」を考えることができる資質があるかどうかという極めて根本的な問題です。

 このような騒音問題の本質を考えてみると、今後も騒音が増えることはあっても、軽減されることは今後しばらくは望めないでしょう。しかし、駐車場のアイドリングについては、これは最近、騒音という視点からではなく、地球温暖化軽減という全然別の観点から条例等で禁止されるようになり、法的根拠が出来、非常に有り難いことです。

 昨今の沖縄の米軍飛行場問題で、政府はしきりに「地元の”理解”を求める」と言っていますが、これはどういった意味の”理解”でしょうか。私にはこの理解の意味が日本語として理解できません。
私の家の犬は米軍並に必要だからみんな犬の吠え声を好きになれと言う様なモノでしょう。


 Aマスコミの報道姿勢

 そして、このような問題の解決への進展を難しくしている大きな原因の一つに、”事件”が起こった際のマスコミの報道姿勢です。それは、たかが”騒音ごとき”を大仰に騒ぎ立てる人間の方を異常者かのごとく、興味本位に取り扱うことです。これは当にマスコミは未だに「犬が人に噛みついても話題にならないが,人が犬に噛みつけば話題になる」と考えているからでしょう。私の様な騒音被害経験者からすれば犬が吠える度に「犬に噛みつき」たくなります。犬と飛行場では問題のレベルが違うと思うかも知れませんがどちらも当事者としては「騒音」と言う視点では問題の本質は同じです。

 私が一見して、騒音問題に端を発しているのではないかと思われる様な昨今の”事件”の多くの報道をみていると、取材者の無認識は元より、無知識が故にと思わざるを得ないような不十分な取材のママが報道されているように思います。それが一番客観的に解るのが音の大きさの単位であるデシベル(dB)の意味もよく解らず「(ラジカセで)何々デシベルの音を出していた」と報道していることです。”人間加害者”の騒音値をデシベルで言うならバカ犬どもの無駄吠えも100dBで有ることを報道すべきです。これは騒音に関するマスコミの無知を証明する単純な例です。

 そして、論調のほとんどは”たかが”「犬の鳴き声で…」「ステレオで…」「布団を叩く音で…」「ピアノの音で…」「バイクの音で…」「車のアイドリングで」「エアコンの室外機で」、…で「そこ(殺人)までするのか」と言う語調です。あたかも”人が犬をかみ殺した”かのように”最終の形(=殺人、刃傷沙汰、…)”だけが大仰に興味本位に報道されることです。

 もちろん
紙面、時間の都合もあるでしょうが、一番肝心であるところの「そこに至るまでの経緯」が詳細に報道される事は非常に希です。現実として、これらの加害者の”最終の形”はある日突然発作的に生じる訳では決してなく、それまでに相当長期にわたる”被害者”との「経緯」が必ずあるはずです。犬は発作的に人に噛みつくことはありますが、もちろん犬には犬の噛みつく必然性が有るのでしょうが、私は人間ですから犬の気持ちは解りませんし、「飼い犬に噛まれる」と言う言葉が有るくらいですから、飼い主でも犬の気持ちが十全に解るわけではないのでしょう。しかし、”人が突然発作的に犬に噛みつく”ような事が無いように、人が隣家の人間を突然の騒音が原因で突然殺すような事はないでしょう。もしそうであればそれは病気であり、罰することはできないでしょう。


 騒音が問題となるのは、その騒音が一時的なモノでなく、騒音が長期にわたり継続的or断続的に続く場合にあります。尚かつ、「発生源」を被害者が自らの力で断つことができないという精神的な苛立ちが被害者の状態を一段と悪化させます。これが長期化すると、被害者はもちろん、(被害者が相当に”強力”な場合には)しつこい被害者からの苦情により加害者をも、私言うところの”音アレルギー”症状にしていくのではないかと考えます。

 マスコミの報道姿勢に関してもう一つ触れておくべきは「発表ジャーナリズム」です。これは官公庁などの発表に依存しがちな取材、報道を批判した言葉だそうですが、それは単なる批判ではなく、全くその通りであることを、私自身この問題に関わることにより明確に知ったからです。

 低周波音問題に関し汐見氏らは既に30年以上にもわたり訴え続けており、また最近では環境省の発表の度に、その不備を指摘する懇談を環境省としています。しかしそれが一般紙で伝えられることはなく、当局の”発表もの”だけが一方的に報道されるだけです。これでは一般の人は当局の発表内容にある問題点を知ることなく、”適切な”対処がなされていると思わざるを得ません。

 「発表ジャーナリズム」
の問題は、事この問題だけに関わらず、総体において、万が一当局の発表に対し批判的で”お気に召さない”内容を書けばその後の取材が少しは難しくなるであろう事は素人でも容易に察しが付きます。また、よしんば、批判的内容を付けたとしても、デスクなどからその記事の裏付けを求められたとき明解に答えるには記者に相当のお勉強が必要なわけで、詰まるところは、「発表ジャーナリズム」のみが全てというような現状になります。

 この姿勢は単にこの問題に限ったことでなく全ての問題においても同様なことが言えるでしょう。問題の本質に近づこうと思ったらマスコミの報道、特にTVや新聞の報道は単なる「目次」くらいに考え、実体を知ろうとすれば多くの可能性を推理しなくてはないでしょう。


 B日本人の国民性

 最近では必ずしもそうとは言えないとは思うのですが、日本人は元来世間体を重んじ、事を荒立てる事を極端に嫌う民族ではないかと思います。裁判なんてのは、する方も、される方も出来れば避けたがります。昔はそれが前提で、お互いに”問題”を起こさないようにしてきました。
 しかし、その結果、昨今では、むしろ我が侭勝手放題にしている人間の方がヤリ得で暮らしやすいような世の中になり、おとなしい「良識ある人間」がバカを見る結果となっているような場合が多々あります。

 そんなことを考えると、「良識ある人間」とまで行かなくても極々「普通」の人間が、事件を起こすとか、裁判に訴えるように事を荒立てる場合は、基本的には、既に我慢出来るだけして、もうどうしても耐えられなくなってからです。しかし、現実的には既にこの時点で「良識ある人間」の”良識”もかなり失われて居るであろうことは容易に想像できます。従って、最終解決法として「騒音発生源管理者」に対する「最終形態」に至ってしまう場合があるのでしょう。

 しかし、多くの騒音被害者は、何とか、その一線を越えずに、できれば、穏便に、遠回りに、できれば世間体よく、”合法的”に問題を解決したいと考えます(これは私の経験からですが…)。その点まだまだ実に素晴らしい国民性であると思います。

 しかし、
実はこの「穏便さを重んじる我慢強い国民性」が、騒音問題においては、自らの不幸を一層悲劇的にする決定的な個人的要因の一つです


 C「風土病」的要素

 特に、この低周波音問題というのはどうも日本という国のみに存在する、極めて「風土病」的要素を持つのではないかというのが私が到った結論です。詳しくは拙文「低周波公害は日本の”風土公害”か」をご覧頂きたいのですが、日本の”専門家”達にありがちな、そこでの”話し”を国内に於いては”国際標準”と転換し易い国際会議と称する場においても、日本に於けるような低周波騒音被害(比較的低い音圧の低周波音で人的被害が生じる)の問題提起or問題報告が他国から全くなされていないことです。
 そして、その傍証の一つに日本に於いてこれまで低周波騒音に関する幾つかの裁判が展開されたにも関わらず、あれだけ、何でも裁判にする米国に於いてもこの種の問題が何ら裁判沙汰になっていないことです。これは単純に米国にはこういった問題は無いと考えたほうが合理的なのかも知れません。

 この状況は本来ならば”日本の低周波音専門家”は低周波騒音被害研究の場としては、独占的に研究成果を上げうる可能性が有る、最高に”美味しい”状況に有るはずではないかと思うのですが、現実は全くその逆で、国内的にも「世界にも無い問題なのだから日本にあるはずがない」という似非専門家だけならまだしも、政府・”専門家”なども「問題の黙殺」という点で一致団結していることです。

 低周波騒音被害者は良識有る「専門家」の出現を一日千秋の思いで待っています。


 D法規制の甘さ

  最後に、当然のことながら低周波音問題に限らず一般の騒音問題においてもその解決を難しくしている決定的な要因は、一に法規制の甘さです。騒音そのものはもちろん「公害」とされ法的に規制されています。しかしながら、余程大きな音(いわゆる「受忍限度」を超える)でもない限り、法的に罰せられることはありませんし、例え規制値を超えても、その規制自体が非常に甘いことです。規制の甘さそのものの一例が文末に記してありますが、ここではその理由をまとめ的に考えてみます。
 
 @騒音そのものが極めて感覚的な面を持ち、個人差が大きい。→一律に規制しても実は意味がない。
 A被害が「点状」「面状」あるいは地域的にしか存在しない。→飛行場、鉄道、道路などを別として団結化が難しい。
 B音は消えてしまい証拠が残らない。→第三者への証明が難しい。
 C決定的なことは、化学物質被害のように人体に明確な障害をもたらさない。→騒音では人は死なない。
 D騒音のキツイ規制は日本の経済活動を停滞させるという一見経済的言い訳。


 と言ったところでしょうか。


 低周波騒音問題の増加

 普通の騒音問題自体は機械等の工学的”改善”によりここ数年減少しました。その改善は一般騒音の”低騒音化or静音化”と言う形でなされました。この一番判りやすい例は冷蔵庫です。数年前からコンプレッサーの音は随分静かになりました。しかし、その方法は「法規制がない騒音の低周波騒音化(=回転数を少なくして音を低くする)」と言う形でなされました。これにより一時期無闇に稼働時間が長く、その間延々と低周波音が発せられ続けるようになりました。

 しかし、実は最近の冷蔵庫は、本当に静音で稼働時間も短くなり文字通り”低騒音化or静音化”されています。と言うことは技術的に可能になったと言うことです。単純に言えば、技術者がその気になれば本来の静音化はできると言うことです。
 
 「低周波音に法規制がない」
と言うことは、後述する
公害防止条例等の環境基準などの法的規制においても全く評価外(規制に引っ掛からない)と言うことで、一般騒音外の騒音である低周波騒音は全くの無法地帯なのです。しかも、評価外の低周波騒音は人体の健康には被害は生じえないという”専門家”のお墨付きがあるのですから、騒音源者にとっては鬼に金棒です。

 しかし、その結果は「騒音問題の減少=低周波騒音問題の増加」という形で明確に環境省の統計数値として現れてきました
まー、もちろん冷蔵庫の音で低周波騒音被害者が新たに造られ等とは思いませんが、既に低周波騒音被害者になっている人には非常に辛い「音」であることは事実です。


 騒音問題解決への具体的対応

 現状に於ける騒音問題の処理は実は極めて単純なことです。即ち、早めの苦情、早期解決がベターであり、ベストは、騒音源を造らせないような「予備的予防措置」をとる事です。単純で極めて簡単な例としては、個人の家屋の室外機は論家の有る自宅家屋の両側でなく、道路の有る正面に設置すると言うような事です。これをどうデザイン的にまとめるかは業者への単純な課題です。

 しかし、残念ながら、これは日本の現状では
”被害者予備軍”の無知”加害者”予備軍の”合法的・意図的無知”によりほとんど行われておりません。ましてや加害者やその予備軍が「法規制外」「合法性」を持ち出した場合には被害者側には為す術が無いのが現状だからです。

 即ち、全く矛盾した話しですが、現実に事件が起きて、死者でもでない限り、警察が動かないのと同様、
現状においては被害が出てからでないと、(時既に遅しとなってからでないと、)問題解決への道は始まらないのです。よしんば、その後、防音の措置が成されたとしても、経費対効果からすれば非常に効率の低いモノです。

 それでもひとまずは”合法的”に行政に訴えて問題を解決しようと騒音被害者が考えた場合は、何はともあれ、法的にはもちろん、まずは騒音(=音)に関して最低限の”理論武装”をしておくことが必須です。

 さて、前書きが随分長くなりましたが、以下は、騒音源と闘おう、無理解な行政に行動を促そうとする騒音被害入門者のあなたに贈る序章です。


1 音の基礎

1−1 音の三要素

 人が音の違いを知覚することができるのは、単なる空気の振動である音を「音の三要素」と言われる、「大きさ(強さ)」、「高さ」、「音色」の感覚的な三要素の微妙な組み合わせの違いを判断しているからです。これらの要素に対応する主な物理的要素は、それぞれ「音圧(単位dB=デシベル)」、「周波数(単位Hz=ヘルツ)」、「音波の波形」です。

1−2 周波数(Hz)

音は空気の振動が縦波(粗密)として伝わるものですが、1秒間の振動数(1秒間に繰り返される音波の1波長の数)すなわち周波数により音の高低が決まります。人間は周波数の多い音を高い音、少ない音を低い音として知覚します。また、ある音の周波数を基準にした時に、他の1つの音が基準の2倍の周波数であるとき、この音は基準の音に対して1オクターブ上の音程であると認識します。1秒間に10回振動すれば10Hz、100回なら100Hzと言います。

一般的に人間の耳に音として聞こえる音(音波)の周波数はほぼ20Hz〜20,000Hz程度といわれています。これを人間の可聴域と言います。他の動物の可聴域は犬は1550,000Hz、猫は60〜65,000Hz、コウモリは1,000〜120,000Hzなどと言われています。

 
周波数の身近な例では、
人間が普段話す声はだいたい80Hz〜4,000Hz、固定電話機で伝わる音は400〜3,000Hzの範囲内と言われています。このため電話の音は直接の話し声より少し甲高く聞こえます。NHKの時報は始めの3音が440Hz、第4音が880Hzだそうです。

 
また、最も音域が広いと言われる88鍵のピアノの一番上の音はド(またはハ音またはC)で振動数は約4200Hz、一番下の音はラ(またはイ音またはA)で振動数は約27Hzです。従って、ピアノは100Hz以下の低周波音を出すことができます。しかし、騒音の”専門家”とされる一般行政の環境担当者の中には「低周波音(100or80Hz以下)は聞こえない」と思っている輩が少なくありませんので、それらの人間にはこの例を挙げて、「低周波音は聞こえる音である」事をまず「必ず講義」してあげて下さい。

 即ち、まずは
「低周波音は聞こえますが、知っています?」と言う質問をするだけで”専門家(=この場合は行政担当者)”の低周波音に対する"知識レベル"を知ることができます

一般に音は人間の可聴域を中心にして、20,000Hz以上の音波は超音波80Hz(or100Hz)以下の音は低周波(low frequency)、20Hz以下の音は超低周波(infrasound)と区別して呼ばれています。また、音は一般的には音が小さい(=音圧が低い=dB数が小さい)場合には聞き取りにくく、特に、超低周波音は「人間に知覚されない」と”言われています”。確かに、音としては聞こえない可能性はありますが、「知覚されない」と言うのは、地鳴り、海鳴り、等 (これらは超低周波音です)の例を考えると、少なくとも人を不安にさせるような「異常な感覚」を覚えさせることはこれまでの経験から間違いないないのですから知覚されないことはありません。もちろん感覚の鈍い人は何も感じないかも知れません。

 低周波音、超低周波音については、少々マニアックな事ですが、インナー・イヤーレシーバーと言われる耳に入れて聞く、最近のiPodなどに付いているタイプ(私はあくまでイヤホーンと思うのですが)は2,3千円のものでも性能的には実は驚くことに6Hz〜23000Hz
の人間の可聴域を遙かに超えた周波数の音が出されているのです。
 特に低周波音に関しては、イヤーホーンではどうもがいてもその機構からして物理的に発生し得ないはずですし、また同時に聞き取れないはずの音なのですから発生できようができまいが無意味なはずの「6Hzの音が出ているかどうか」と言うことに、技術者達はいたく拘るのだそうです。
 その理由は仮に聞こえなくてもその音が出ることにより聞き手の音の感じ方が異なるからだそうです。
この「聞き手の音の感じ方」と言うことが次に述べる音色とか聞こえないはずの低周波音に大きく関係しているのではないかと私は考えます。

 普通のスピーカーを通して音楽を聴く場合にはそのすべての周波数範囲が発生されることは必要ではなく、低音で40〜50Hz、高音で12,000〜13,000Hzまでの間が、歪が少なく再生できれば、音楽としての音色をほとんど損なうことなく、美しい、しかも生々しい音を聴きとることができるとされています。オーディオ装置のスピーカーのカタログを見れば製品間の差はあるもののおよそ40Hz〜60,000Hzのモノが主流です。
 
 最近普及しているホームシアター(
5.1chサラウンド)の低音部の再生を専門とするサブウーファーと言われる一番重いスピーカーは28Hzまでの低音(ピアノの最低音とほぼ一致しますね)を再生します。このスピーカーの音量を上げてみると「ボンボン」とか「ドー」と言う音が増します。これは、基本的には、映画などを視聴する際の迫力を増す事を使命としています。この再生音を強調しすぎると音楽などでは、その音域の楽器は無いのですから、むしろ音のバランスが崩れクラシック音楽などの再生には向いていないのでしょう。


1−3 音圧(dB)音色

日常生活でも経験するように余りに小さな音は聞こえません。従って、人間にとって「聞こえる、聞こえない」の可聴域は音圧(音の大きさ)により決定される要素がまずは第一でしょう。しかし、音が聞こえる限界は音の性質、聞く状況、音圧を測定した地点などにも影響されますが、音の高さ(=周波数)」によっても異なります。即ち、人間の耳は低い方の音でしかも音が小さくなってくると聞こえにくくなり、逆に高い方の音は比較的小さくとも聞こえるとされています。この事は後で述べる低周波音問題での焦点となりますので、ご記憶下さい。

 この音圧と周波数を加味し、聞こえるギリギリの大きさの音を最小可聴域あるいは聴覚閾値(いきち)と言います。しかし、この閾値には音の要素の中で最も音を音たらしめているはずの「音色」の要素は全く加味されていません。音色には感情的な色合いが加味されるため、現在騒音の「専門家」とされている理工学的分野の方々にはこの分析が難しい、と言うよりむしろできないのでしょう。
 何故なら、簡単に言えば、音色は今のところ、その感じを言葉で表すしか方法が無いわけで、日本語でも人による感じ方の表現が異なるので、その違いを音圧や周波数のように容易に絶対的に数値化できないからです。更に、外国語との相関を考えた場合現実的に非常に困難となります。

 従って、当然のごとく理工学的見地からのみ創られている現在の騒音規制などの数値では音色的視点は全く考慮されていません。これが出来るのは恐らく別の分野の「専門家」なのでしょうが、騒音の規制に”別の分野の「専門家」”達はどうもあまり参加していないようなのです。私個人としては、可能・不可能は別として、こう言った規制の策定に関してはそれなりのより多くの分野の専門家達の参加が当然と考えるのですが、現実は必ずしもそうでなく全く不思議な事です。

 私的にはこの騒音規制から全く無視されている音色こそが騒音問題、特に心理的影響の強い低周波騒音問題を考える場合には必要不可欠な要素であると考えています
 
 積極的な証左は有りませんが、逆説的にその証左の一つに、低周波音不可聴域者(=”健聴者”)と低周波音可聴域者(=低周波騒音"苦情者")の間に音圧と周波数による聴覚閾値に差異がないと言うより、低周波騒音苦情者のほうが、むしろ閾値が高い、即ち、「聞こえが悪い」と言うことが公的機関(ズバリ言えば環境省)の実験により証明されているからです。

 従って、低周波騒音問題の本質を究明しようとするならば、本来ならば一体全体如何なる理由により低周波騒音被害者と低周波音”不可聴者”との間に被害者と否被害者と言う差異が生じるのか、そして、その差異には音圧と周波数による閾値が関係しないなら、如何なる原因により差異が生じるのかを研究する事こそこの問題の研究者、専門家が本来とるべき方向のはずです。

 しかしながら、騒音の「専門家」達は「聞こえないはずの音により被害は生じない」などと言う被害者の現実を単に全く否定するだけの非科学的な虚論を展開するに留まっています。これでは被害者の一人の方が言ってみえるように「見えないバイ菌では病気にならない」という理論と全く同様です。

 結局、現在の騒音専門家は決して音の「専門家」ではなく、問題を処理しきれるわけではなく、「聞こえないはずの音により被害は生じないのだから気にしないように」などと嘯いて済まそうという、単なる騒音問題の"処理屋"にしか過ぎません。


2 騒音

2−1 騒音とは

「騒音」に対する統一的な明確な定義は無いようですが、その幾つかを上げますと

“身の周りの様々な音のうち、人に好ましくない影響を及ぼす音、不必要な音、邪魔な音が騒音です。”

日本騒音制御工学会 騒音とは:

“騒音とは、望ましくない音である音声、音楽などの伝達を妨害したり耳に苦痛、傷害を,与えたりする音である。”

JIS Z 8106-1976

 “音の聞こえ方は、人によって違う。音というのは、ある人にとっては好ましい音でも、他の人にはうるさい音にもなるという主観的なものである。我々の周りの音は大まかに「必要な音」と「それ以外の音」の2つに分けることができる。この「それ以外の音」すなわち、不必要な音、不快な音、邪魔な音、好ましくない音などが一般に騒音と称される。したがって、聞く人が「必要でない」と感じることによってその音は「騒音」となる。よい音楽、感動的な話でも、聞いている人には楽しく感動的でも、それらに興味のない人、勉強している人、あるいは寝ようとしている人にとっては騒音であり、うるさくて困ることもあるというわけである。

音の辞典


 と言う事で、その音が「騒音」であるかどうかは個々の人間の感覚に多いに関わり合いを持ちます。感覚に関する価値観を一概に律し切る事は単に音の世界だけに止まらす、容易ではありません。それ故に音色が重要なのですが、それが研究されておりませんし、現実的には低周波音を制御(防音)することが出来ないので、できないことは放置、黙殺、野放し状態で、結果、容認されていることになります。卑近な例では巷に蔓延る「爆音マフラー」と同じです。爆音マフラーは言うまでもなく低周波音ですが、これを感覚的に心地良いと感じる人間が少なからずいると言うことです。

2−2 環境基準

詰まるところ、周波数とか音色等と言う面倒なモノは置いて、結局、手っとり早く客観的に数値的に表す事ができる音の大きさ(音圧=dB)のみで規制値がつくられているのが現実です。更に、一般の騒音として規制対象となっているのは一般的に聞き取りやすい可聴域の音(100Hz以上)に限られ、このサイトで問題とするいわゆる(超)低周波音(100Hz or80Hz以下)は対象外となっています

 そこで、”賢い”メーカーや業者は、昨今騒音を出す機器の騒音を規制外の低周波音域に追い込み始めました。こうした”技術的進歩”が更に低周波音問題を日常生活に持ち込み、新たなる低周波音被害者を生み出すこととなりました。
 
 では、その
一般の騒音を規制している環境基本法ですが、その第16条第1項(騒音の環境基準)では、「騒音に係る環境上の条件について生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持されることが望ましいとされた騒音レベル」として、昼間、夜間、住居地域、対象物などにより異なりますが、下記のように法的な基準値を示しています。
 ここで、誤解無きように付け加えますが、ここで示される基準値というのは、必ずしも良好なレベルと言うことではなく、あくまで最低レベルであると言うことを忘れないでください。メーカーなどは、あたかもこれをクリアすれば大丈夫であると誤解を与えるような説明をしますが、それはあくまで単に「違法ではない」と言うだけのことです。違法でなければ合法と言うだけの話しであって決して必ずしも優良などと言う話しでは有りません。こういった話しには灰色の部分が非常に幅広いと言うことをお忘れ無く。

 従って、
流石に行政も灰色帯に存在する「爆音マフラーに対する苦情」(この問題は紛れもないれっきとした低周波音問題なのですが、それを知らない人がほとんどです)の多さから、低周波音を無視することもできなくなり、2,3年前には、音の大きさだけの規制では不十分であると国土交通省などでは”音の質”(この場合は周波数)にも注目するようになってきたのですが、結局、依然として何らの進展はないようです。

基  準  値 時間の区分は、昼間を午前6時から午後10時までの間とし、夜間を午後10時から翌日の午前6時までの間とする。
昼  間 夜  間
AA 50dB以下 40dB以下 AAを当てはめる地域は、療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域など特に静穏を要する地域とする。
A及びB 55dB以下 45dB以下  Aを当てはめる地域は、専ら住居の用に供される地域とする。Bを当てはめる地域は、主として住居の用に供される地域とする。
60dB以下 50dB以下  Cを当てはめる地域は、相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域とする。

ただし、次表に掲げる地域に該当する地域(以下「道路に面する地域」という。)については、上表によらず次表の基準値の欄に掲げるとおりとする。

地 域 の 区 分 基 準 値
昼  間 夜  間
A地域のうち2車線以上の車線を有する道路に面する地域 60dB以下 55dB以下
B地域のうち2車線以上の車線を有する道路に面する地域及び
C地域のうち車線を有する道路に面する地域
65dB以下 60dB以下

備考  車線とは、1縦列の自動車が安全かつ円滑に走行するために必要な一定の幅員を有する帯状の車道部分をいう。 この場合において、幹線交通を担う道路に近接する空間については、上表にかかわらず、特例として次表の基準値の欄に掲げるとおりとする。

基準値
昼  間 夜  間
70dB以下 65dB以下
備考
 個別の住居等において騒音の影響を受けやすい面の窓を主として閉めた生活が営まれていると認められるときは、屋内へ透過する騒音に係る基準(昼間にあっては45デシベル以下、夜間にあっては40デシベル以下)によることができる。

上記の「備考」は非常に重要だと考えます。

詳しくは「
騒音に係る環境基準について」を参照して下さい。

なお、環境基準値は各自治体により多少異なります。まずは、各自治体の環境課などに「地域の区分」「基準値」などを確認して下さい

3  低周波音とは

3−1 環境省の定義

さて、ここで当サイトのメインである低周波音とはどのようなモノであるかと言いますと、環境省は以下の様に述べています。

“低周波音は、超低周波音に、可聴域ではあるが音としてあまり明確には知覚されない領域の音を加えたものであり、その周波数の範囲については明確な定めはない。因みに、環境省では、「低周波音の測定方法に関するマニュアル」及び「低周波音防止対策マニュアル」の取りまとめに際しては1Hzから80Hzまでの音波を低周波音としている。なお、環境省では以前は低周波空気振動と呼び、振動の領域の現象と分類していたが、音波に基づく事象であることから現在は騒音の一部としてとらえ、低周波音と呼んでいる。”

低周波音の測定方法に関するマニュアル(平成1210月)

可聴域とされる騒音については前述のように法的な基準値が定められており、また一般の普通の騒音計で測定できます。この測定はどこの自治体でも大抵”対応”してくれます。
 何故か?それは法的規制もあり、普通騒音計も持っており、場合によっては一応行政の対処が可能だからです。

 しかし、同じ騒音と言っても、低周波騒音被害者が苦しみ、尚かつ最近、増えている”耳に聞こえない音とされる”「低周波音」あるいは「超低周波音」という法的規制のない音の騒音苦情は全く別問題となります


3−2 低周波音公害と行政の動き

 低周波音問題は最近の事のように思っている人が少なくありませんが、私も低周波音被害になるまでは全く預かり知らない事でしたので、決して偉そうに言う気はないですが、低周波音騒音は既に1970年代(昭和40年代)から有りました
 その代表的な例は昭和55年(1980年)に提訴された「西名阪自動車道香芝高架橋公害」に見ることができます。(詳細は「低周波公害裁判の記録」1989 清風道書店をご覧下さい。現在は絶版かもしれませんが図書館等には有るところも?)。しかし、当時は被害者はもちろん、「専門家」自体にも(超)低周波音に対する認識そのものが明確ではありませんでした。問題の初期においてはそれも仕方ないことかも知れません。しかし、逆に真摯な取り組みがなされ、今改めてその調査書を見ると既に全ての問題点が提示されていることが解ります。その後その姿勢がとり続けられ、問題がそれなりに進展すれば今日のような問題は無かったのかも知れません。

 しかし、結果としてこの問題は「封印」されるような形となり、その後、長期にわたり明確にされる事も有りませんでした。一方、その後の一段の機械文明の発達は、普通騒音の一段の増加をもたらしました。そして、多くの騒音苦情をもたらすことととなりました。その結果、と言うだけではないでしょうが、遅ればせながら、昨今、騒音の低減化
「騒音の静音化」と言う名の下に一般騒音の低周波音化(「聞こえる音」を「感じる音」にする)が図られました。
 
これにより普通騒音部分(100Hz以上の「聞こえる音」)の”音を小さくする”と言う”騒音の低減”はそれなりに進歩したのですが、その方法は「法的規制のある普通騒音を法的規制のない低周波音域に追い込む」という方法でなされました。その技術の基本は比較的簡単で、騒音源となるモーターの回転数を減らすという方法なのですが、これによりカタログ的には「騒音は小さくなった」ことになり、結果として、低周波音発生源が多くの日常生活の場にも増える事になりました。身近な例では、冷蔵庫、エコキュート、建設重機の騒音問題がこれに当たります

 この低周波音域というのは、騒音がやっと見つけた”逃げ道”です。早々簡単に塞がれては敵わないのでしょう


少し話しを戻して、低周波音公害の流れをおさらい的に概観してみると以下の表のようになります。1970年代の問題発生以降、'84年に「一般環境中に存在するレベルの低周波空気振動では、人体に及ぼす影響を証明しうるデータは得られなかった」という調査報告書を発表以来、長い放置がありました。

 
平成12年に到り岩佐恵美議員の国会質問により、行政としては珍しく手早い動きを示しました。余程それなりの緊急性を感じたとしか考えれられません。その結果、現況に於ける最終形態として香芝高架橋公害当時からこの問題に携わっている山田伸志氏により「参照値という形でそれなりの形は整えました。

 
しかし、「参照値」は作成者の意図とは関係なく(かどうかは解りませんが)、そこに示されている数値はむしろ騒音源者(機器製造者)、あるいは騒音発生者、そして、自治体にとって、「現場での騒音値は”参照値”を下回っているので被害はない」と言う公的な免罪符的な意味あいを与えることとなり、被害者の現状にそぐわない、被害者を一層苦しめるモノとなっています。

 最大の問題の一つは、低周波音は今もって、いわゆる騒音評価の際の評価外に置かれ、低周波音騒音は他の騒音との整合性をもつことなく、騒音規制の対象外とされていることです。

 即ち、低周波音公害は昭和59年の環境省の報告「一般環境中に存在するレベルの低周波空気振動では、人体に及ぼす影響を証明しうるデータは得られなかった」と言う段階から確たるデータ収集もなく、「公害の封じ込め」として悪質な対応がとられることになりました。こういった行政の対応がこの問題を決定的に悲劇的なモノとしています。

低周波音問題年表
1977 昭和52年 低周波空気振動調査委員会発足
1978 昭和53年 沓脱タケ子議員 西名阪道路沿線低周波音被害に関する質問
1981 昭和56年 西名阪自動車道、香芝高架橋問題科学調査団 測定調査開始
1984 昭和59年 環境庁 低周波空気振動調査報告書公表
「一般環境中に存在するレベルの低周波空気振動では、人体に及ぼす影響を証明しうるデータは得られなかった」と調査報告書を発表
1985 昭和60年 環境庁 低周波空気振動防止対策事例集公表
2000 平成12年 岩佐恵美議員 低周波音公害の対策に関する質問 答弁
環境省 低周波音の測定方法に関するマニュアル策定
2001 平成13年 環境省 低周波音全国状況測定調査(〜3月19日)
2002 平成14年 環境省 低周波音防止対策事例集
環境省 低周波音全国状況調査結果について発表
2004 平成16年 環境省 低周波音問題対応の手引策定


3−3 低周波音の影響

ここで、改めて低周波音公害の本質を見てみます。低周波音は以下の様に独特の影響をもたらします。建具等をがたつかせる「物的影響」、低周波音が眠りを妨げる「睡眠影響」、低周波音の知覚により圧迫感、振動感や頭痛、吐き気等がもたらされる「心理的・生理的影響」等。

 この内、人間の体に直接影響するのは「睡眠影響」と「心理的・生理的影響」です。環境省が、平成12年度に地方公共団体が同省の依頼によって実施した「低周波音全国状況調査」の結果では

心身にかかわる苦情が最も多く47%となり、複合要因による苦情も含めると全体の71%を占めました。過去の調査結果と比較すると苦情の内訳は物的苦情から心身にかかる苦情へと重点が移行する傾向が明らかになった。

低周波騒音被害によって実際にもたらされる「苦しみ」は、心身に関わる問題ですのでそこに限って論を進めます。

心理的影響 低周波音が知覚されてよく眠れない、気分がいらいらするといった現象
生理的影響 胸の圧迫感、息苦しい、吐き気、ふらつき、立ちくらみ、頭痛、頭に帽子をかぶったような感じ、耳の圧迫感・痛み・ふさがり感、目がクシャクシャする、肩の痛み・凝り、のどがはしかい、全身の圧迫感、手のしびれ、足が痛い・だるいなど

「低周波公害のはなし」(汐見文隆 晩聲社)

等の現象です。因みに私の経験ではこの”影響”の全てが当てはまり、汐見氏の本を読むまで、当初は自分の苦しみの症状を何と説明して良いのか解りませんでした。それは、それまで、こういった複雑な症状に遭ったことが無かったからです。
 
 この症状を内科医に訴えると、大抵の場合、自律神経失調症と診断します。しかし、自律神経失調症と言うのは私の主治医の話では「原因不明」と言う事であり、要するに「現在の医学的知見では解りません」と言う事だそうです。従って自律神経失調症を病名とするのはおかしな話しです。

 また、上記に加え、勿論のこと音に対する感覚が「異常に鋭敏化」するので、耳の異常ではないかと思い、耳鼻科に行って、聴力検査等をしても多くの場合、異常はありません。強いて言えば、高齢者の場合は「耳鳴り」で済まされることが多いようです。

 で、精神に異常でも来したのかと思い、精神科、あるいは心療内科等に行っても、その診断は「気にしないように」ということで、抗鬱剤、精神安定剤、入眠剤等をもらうことになります。それは一時的にはそれなりの効果はもたらしますが、根本的な解決にはなりません。

 何故、彼がらそのような診断を下すのか、あるいは下し得ないのかと言えば、それはただ単に彼らが「低周波音によって障害が起きる」という「医学的知見」なるモノが全くないからにすぎません。こんなに長い間かなりの数の人がかなり酷い被害を受けているのに被害=障害、病気としての認定は当然のこととして、何ら研究もされず医学的にも全く黙殺されているのは非常に不思議と言うより、恣意的な意図さえ感じます。

 低周波音被害の機序について専門家は何も考えてくれませんので、汐見先生の考えを参考に、やっと最近私が考えついたのは「低周波音が脳に少なからぬ影響をもたらした結果」と言う考えに到りました。
 一般的に脳の障害によってもたらされる心理的影響は「記憶障害。疲れやすい。注意や集中力の低下。やろうという気持ちの低下。イライラ、怒りやストレスを感じやすい。不適切な行動や社会的技能の低下。自己中心的、依存心、病識の欠如。反応が遅くなる。問題解決が不得手になる。鬱症状や感情のコントロールができない。衝動的。」などとされていますが、被害者感としては思い当たるところ多々です。

 これらの結果が時としてこれまでの取り返しのつかないピアノ殺人事件に代表される幾つかの騒音に関した刃傷事件に発展しているのでしょう。それらの事件は原因を究明されることもなく、あくまで単なる個人の「キチガイ沙汰」として処理されています。

3−4 影響をもたらす原因

元環境省大気生活環境室室長補佐 石井鉄雄氏は

睡眠影響や心理的・生理的影響については、原因を特定することが困難である場合が多く、低周波音が原因である場合と低周波音以外の原因による場合があるとされています。

このうち、20Hz以下の超低周波音によって心理的苦情、生理的苦情が発生している場合には物的苦情も併発していることが多く、建具等の振動によって二次的に発生する騒音に悩まされている場合もあります。可聴域の低周波音の場合は非常に低い音が聞こえる(感じられる)ことによって上記のような苦情が発生することが多いとされます。睡眠影響や心理的・生理的影響をもたらす低周波音のレベルについては明確な結論は得られていない。

としています。

 環境省などでは「影響」等と実に曖昧な言葉を使っていますが、英文サイトではハッキリと”damage”=「被害」と表現しています。


3−5 G特性

低周波音についてはいわゆる「普通の騒音計」(以下、騒音計)では測定出来ません。私は詳しくは述べられないのですが、何故かを簡単に言いますと、いわゆる騒音計は”人間は低音は聞こえにくくなる”という人間の聴感覚に近づくように、低音に近づくに連れ一定の割合により修正する(大きな音でないと聞こえない)様に作られています。これを評価加重特性と言い、普通の騒音計ではA特性と言われる“修正方法”が用いられています。この特性では低音部は、100Hzで約19dB,50Hzで30dB,20Hzでは50dBがマイナスされ、それ以上の大きな音が出ていない場合には、測定値は0(ゼロ)と言うことになってしまい、仮にそれなりの騒音が出ていても、測定値的には”0”と言う事になり、計数的には“音はしていない”という事になります。

従って、下記のような低周波音発生源が存在している場合には低周波音が発生している可能性が大なのですが、「普通騒音計」のみの測定では原因を明確にする事はできず、「騒音問題はなし」とされてしまう事が通常です。行政が低周波音に関して無知な場合はこう言った事になります。

そこで、考え出されたのでしょうが、G特性と言われる、「120Hzの超低周波音の人体感覚を評価するための周波数補正特性で、ISO-7196 で規定された、可聴音における聴感補正特性であるA 特性に相当するものである。」とされる特性により測定する事ができる「低周波音用の騒音計」で測定することになります。

 しかし、この測定器を”自前”で持っている自治体はまだまだ少ないようです。しかし、実はこの騒音計は以前環境省が各自治体に「無いところには長期貸し出ししますよ」と言っていた時期があり、どの自治体もその時ゲットしようと思えば入手出来たはずです少なくとも県レベルに於いては必ず所有しているはずです
 従って、現在も所有してない自治体はこの時全くこの問題に無知であったか(ほとんどがそうでしょうが)、意図的に無視していた自治体と考えて良いでしょう。使っても使わなくてももらえるモノはもらっておけば良かったのです。
無知の成せる業です。ハッキリ言ってそのような自治体は低周波騒音問題に関しては完全に後進地域と言って良いでしょう。
 しかし、流石に最近は「無知」でいることはできなくなり、無視もできないので、手っとり早く早々に門前払いをするようになっている自治体が少なくないようです。

 このような自治体に対して低周波騒音の苦情を訴える場合は非常に大変です
そんな場合には、少なくとも「あなた自身」が低周波騒音について一から説明する覚悟が必要です。

G特性は一見正当なようなモノに聞こえますが、このG特性なるものが全く曲者で、実は、これはあくまで低周波音の感覚閾値に基づいて定められたもので、ISO-7196では、「G特性音圧レベルで100dBを超えると超低周波音を感じ、120dBを超えると強く感じるとされ、概ね90dB以下では人間の知覚としては認識されないとされている。」と言う考えを基として創られている代物なのです。

まー、矛盾した話しですが、例えばG特性では80Hzの音では36dB減算されますのでA特性の場合の環境基準値70dBを達成するには逆算すると70+36=106dBという轟音がしていることになります。因みに100dBと言いますと、飛行機の離陸直前、電車通行時のガード下、電車通行時のトンネル内などの騒音レベルと同様という事になります。

 この80〜100dBの間の特性の違いによる「不整合」さには多いに疑問の有るところです。

さらなる最大の論理的問題点はこのG特性は上記、石井氏が、

現在ではG特性の自動演算機能を持つ低周波音計も市販されているので、G特性による評価値は超低周波音の評価の目安として手軽に利用することができる。ただし、G特性では20ヘルツ以上の可聴域の低周波音については考慮されていないため、これをもって低周波音のすべての領域の評価を行うことはできないので注意を要する。

と、述べているにも拘わらず、注意を要する」事はされることなく、このG特性が20〜80Hz以下の低周波音にも適用されてしまっているのです。

即ち、”音として全く聞こえない音”であるはずの超低周波音の感覚閾値に基づいた特性が、聞こえない訳ではなく”聞き取りにくい”低周波音である20Hz〜80Hzの低周波音についてまで援用され得るモノであるかどうか非常に疑問と言うより、科学と言う衣を着た欺瞞的行為なのです


4 低周波音の発生機構と発生源

環境省の「低周波音の測定方法に関するマニュアル」(平成12年10月)によれば

可聴域の低周波音は、機械や構造物が通常の稼動状態でも発生する。一方、超低周波音は、多くの場合、機械・構造物が正常な稼動状態になく、何らかの異常な稼働状況にある場合に発生する。

低周波音の主な発生機構と発生機構別の発生源を以下に示す。

1) 平板の振動によるもの:板や膜の振動を伴うものなど

大型の振動ふるい、道路橋、ダムからの溢水等

2) 気流の脈動によるもの:気体の容積変動を伴うものなど

空気圧縮機、真空ポンプ等の圧縮膨張による容積変動等

3) 気体の非定常励振によるもの

大型送風機の翼の旋回失速やシステムのサージング、振動燃焼等

4) 空気の急激な圧縮、開放によるもの

発破、鉄道トンネルの高速での列車突入等

 

 低周波音の問題が発生する可能性のある主なものを以下に示す。

・送風機(送風機を用いる集塵機、乾燥機、空調機冷却塔等)

・往復式圧縮機

・ディーゼル機関(ディーゼル機関を用いる船舶、非常用発電装置、バス、トラック等)

・真空ポンプ(ロータリーブロワ、脱水ポンプ)

・振動ふるい(類似の振動コンベア、スパイラルコンベア、破砕機等)

・燃焼装置(ボイラー、加熱炉、熱風炉、転炉、燒結炉、焼成炉、電気炉、ロータリーキルン、キューポラ等)

・ジェットエンジン(ジェットエンジンを用いる航空機、非常用発電装置等)

・ヘリコプター ・機械プレス・橋梁・鉄道トンネル・治水施設(ダム、堰堤等)・発破・ガスエンジン・変圧器

参考:時田保夫 低周波音公害問題をめぐって 日本音響学会誌、35巻7号

井上保雄 低周波音の実態と対策 騒音制御、23巻5号

低周波音の測定方法に関するマニュアル
http://www.env.go.jp/air/teishuha/manual/index.html

低周波音問題について
公害等調整委員会広報誌「ちょうせい」(第 28 号 平成14年2月)環境省大気生活環境室室長補佐 石井鉄雄


5 “音アレルギーへの道”

ここには低周波音発生源の代表的なモノが上げられていますが、実生活に於いてはこれらの騒音源の存在を自覚していない場合が”普通”です。しかし、実は、全ての電気機器、モーター類からは常用電流(普通の電気)の50or60Hzの低周波音が発せられています。例えば、古くなった蛍光灯の「ブーン」と言う音、冷蔵庫の「ドゥー」と言う音などは身近なモノです。最近は“静音設計”と称して、この半分の周波数25、30Hz、あるいはその半分の周波数の12.5、15Hzの音となっているモノも多くなっています。

これらの音は、通常は音が小さく(音圧が小さい=40dB以下)ために、上記のようなモノにより”低周波音の影響”を格別自覚することはありません。従って、低周波騒音被害者でもない普通の身体状況であれば、単に少々煩いかな、あるいは格別気にする事もないと言った感覚で日常を過ごしていけます。

しかし、一度、「低周波音の影響(被害)」を受けた後の“音アレルギー”状態となると、これらの音は我が身の神経と体を苛む地獄の音となるのです。
 
 ”音アレルギー”になったしまった場合、この症状の存在を行政自体が「否認」していますので、規制は無いわけで、当然、治療法などの研究はなされていません。従って、低周波音の生理的影響(汐見氏の言う低周波音症候群)の改善法は現在の所、「騒音源を絶つ」か、「あなたがその場を去る」しかありません。

 
現実的に低周波騒音に対しては法的規制が無い訳ですから、例え苦情を言ったとしても、騒音源者はあなたの苦情や行政の仲介など全てを無視する事が可能です。従って、あなたが低周波騒音地獄から脱する現実的な一番の近道はあなたがその場を去る事です

 「騒音源を絶つ」べく相手を去らせるには低周波騒音地獄の中を這いずり回りながら、敵とほとんど勝ち目のない長期の闘いを自らに強いるという相当の覚悟と決意と体力が必要となります。公害等調整委員会で争われている低周波騒音問題はこれに当たります。

 現在、汐見文隆氏を始めとする非常に少数の人々により低周波騒音が体に被害を与える事を公的に認めるよう環境省に働きかけています。しかし、環境省を始めとして”専門家”とされる人たちは、一丸となって「聞こえない低周波音により生理的に被害が生じる事はなく、それは単なる気のせいである」としています。そして、被害者達をあくまで単なる”苦情者”と言う言葉で切り捨てています。

 しかし、その音が聞こえないからと言って音の本体である空気振動のエネルギーが無いわけでは有りませんから、そのエネルギーが(振動として)何らかの影響を及ぼす可能性は有り得る、いや「有る」と考えるのが私の論です

 因みにGoogleで「低周波騒音 公害」で検索してみますと(2005/3/9)日本語サイトで4,620件がヒットします。しかし、同じく「low frequency noise,pollution」で検索してみますと256,000件がヒットします。※

 低周波騒音を「公害」と呼ぶ事は最早世界では常識
なのかもしれません。しかし、一向に「低周波音公害」と言った話しは出てきません。不思議なことです。


※久しぶりに(07/01/03)Yahoo!で検索してみたら「低周波騒音 公害」で約29,500件、「low frequency noise,pollution」では何と、1,110,000がヒットします。


さて、何故にこうまでこの問題は黙殺されるのか、その唯一最大の理由は詳しくはここでは述べ切れませんが、一言で言えば、低周波音を排除することは現況に於いては技術的に不可能であり、この被害を認め、低周波音の発生を法的に禁止すると多くの機器を「違法扱い」しなくてはならず、そんなことをしては「日本の産業が成り立たなくなる」という極めて単純な経済効率的な理由の様で。

 と言う事で、まずは、できればあなたの騒音問題の原因となる音が普通に聞こえる音(可聴域=100Hz(or80Hz)以上の音)であることを祈らずにはいられません。


6 低周波音の鑑別

 現在あなたを苦しめている騒音が普通の騒音であるか低周波騒音であるかは低周波音が測定できる測定器で測定してみない事には判明しません。しかし、行政が「待ってました」とばかりに低周波音の測定にホイホイと動いてくれる事はありません。それは、

 @低周波音に関する認識、知識がない
 A低周波音用の測定器がない
 B元々やる気がないという行政の怠慢
 Cそして、決定的なのは警察同様民民の問題には介入しないと言うことです。勿論犯罪となれば警察は介入どころか主役になりますから、「低周波音被害を起こすことが犯罪」となれば良いのですが、低周波音被害の存在そのものを国が認めない、と言うより寧ろ風車騒音被害においては低周波音の影響を否定しているのですから難しいところではありますが。

 など、容易ならざる状況があります。その重い腰を上げさせるために、被害当事者であるあなたが、その騒音が「普通騒音」であるか「低周波騒音」であるかを事前にある程度見当を付けておくのが良いのですが、比較的簡単に判別できる方法を汐見氏の著作より引用します。

 もし、下表によりその騒音が低周波騒音の可能性があれば、被害者自身がそれなりに”お勉強”しておかないと行政に良いようにあしらわれる可能性が大です。特に
行政が低周波騒音計を持たないような”無知””無理解”な自治体である場合には自分自身がこの「被害の現実」を「一から教えてやる」位の意気込みが必要でしょう。

表4 騒音公害と低周波音公害との鑑別表
騒   音 低周波音
感覚 聞こえる 感じる、わかる
被害の表現 やかましい(うるさい) 苦しい(うるさい)
被害の実際 聴力障害(不定愁訴?) 不定愁訴(不快感)
被害の状況 戸外できつい 室内できつい
戸や窓 閉めたら楽 開けたら楽
テレビなど 楽になるとは限らぬ つけたら楽
振動 伴わない きついと伴う
個人差 少ない 著しい
普通騒音計 測定できる 測定できない
対     策 耳栓 有効 無効(憎悪?)
遮音壁 有効 かえって憎悪
閉め切る 有効 かえって憎悪
防音室化 有効 かえって憎悪の恐れ
難易さ 対策は容易 対策は極めて困難
経過 慣れてくることもある 鋭敏になっていく
規制基準 あり なし
汐見文隆 著 「道路公害と低周波音」より(P.50)

 

 特に
「戸や窓」の開け閉めによる判別は非常に簡単である上に極めて有効な方法であると私の経験からも考えます。これは閉め切った部屋では普通騒音レベルの周波数はある程度遮断されます。しかし、低周波音部はほとんど遮断されないという特性を持っていますので、高周波部分が遮断された分、低周波音が相対的に強調されることになり、苦しさが増します。開け放つと他の高周波の騒音と混じり合い低周波音が聴覚的に打ち消され(マスキング)比較的楽になります。マスキングについての詳細はこちらのサイト「聴覚のマスキング」を参照されると良いでしょう。

 もし、測定が可能なら、汐見氏はこれまでの多くの現場での測定から
 現場に於いて、およそ
10Hz〜40Hzの間に卓越周波数(ピーク)があるかどうか、そしてその値が(木造の日本家屋で)60dB前後(55dB以上。過敏化すれば50dBでも苦しい)であるかどうかを目安とするとしています。最近では調査の積み重ねによりもっと少ないdB数でも被害があるとされています。
 また、
音源の停止と共に症状が消失し、同時に測定値のピークが消失すれば(20dB前後低下)ほぼ間違いなく低周波音による被害「低周波症候群」であると診断されます。ただし、環境省はこれを認めていません。


 最近の私の考えでは絶対的な音圧は必要ではなく、環境によりその数値は異なり、特に静かな環境では明らかなピーク値は示されない場合も有ると考えています。それは何の被害もない普通の状態でも測定器に定在波or暗騒音と言われる形で40〜50dBの数値が計測されてしまうからです。そう考えないと、閑静な住宅地に於けるエコキュートの12.5Hz-45dBGで低周波音被害者が出ていることは説明できません。
 
定在波程度の「問題の無いはず」の騒音で騒音被害が生ずるのは何故か。それは繰り返しになりますが、音の質とも言える音色(例えば唸り)と継続性に問題が有るとしか考えられません。


7 まとめ

 最後にもう一度騒音公害の背景を挙げますと

@日本では騒音問題は”日常的な些細な問題”として扱われ、騒音”ごとき”に声を荒立てる人間を”異常者”扱いする風潮がある。

A日本では法的規制を含め騒音問題そのものがその件数の多さにも関わらず非常に軽視される社会的背景。

B日本では被害者自身にも問題解決への面倒を嫌う性向が強い。

 そして、以下は特に低周波騒音被害についてですが、

C世界的に類例が無く当然法的規制が全く無く、野放し状態である。

D国内的には法的規制が無いため
行政の現場自体に低周波騒音問題に対する理解が無い。仮にあっても適切な手段がないので何ともならない。

E
従って、当然ながら加害者には加害者としての認識が全く無く、被害者から苦情を言われた加害者はむしろ逆に「とんでもない言いがかりを付けられた」と言う逆ギレ被害者意識を持つ場合が通常。

F一番悲惨であり、むしろこれがある意味全ての根本原因とも考えるのですが、低周波騒音に限らず騒音被害そのものは多いに感覚的な面が大きく、その感覚というモノは”個人差が非常に大きい”事です。では感覚の鋭い者だけががなるかというと、それは未だ不明です。私としては、被害者に共通する何らかの個人の本質的な質性が関係しているのだと考えるのですが、それが何かも未だもって全く未明です。

 一方、全ての人間が低周波音被害者になり得る可能性は否定できませんが、同じ状況にあっても被害者が家族の中で「あなた一人」という場合が少なくなく、と言うよりむしろそれが「通常」であることを考えると、やはり、低周波音被害者に共通する「何らかの資質」が有るのではないかと思わざるを得ません


 もし、家族全員、あるいは近隣住民の複数人が”その騒音”に苦情(苦痛)を訴えるような場合は、まずは低周波騒音ではなく「普通の騒音」と思ってほぼ間違い有りません


 この点に関しては世の「専門家」と言われる人々は意図的にか、あるいはあり得ないはずですが、本当の無知からか、低周波音被害と普通騒音被害を混同あるいは巧妙に
「問題の本質のすり替え」を行います。その具体的な典型的な例は公害等調整委員会の「低周波音が問題とされた公害紛争事件の処理について」に見られます。

 また、被害者個人には「そんな事を言っているのはあなただけです」と言う話しに持っていき、あなた個人の病気(具体的には「耳鳴り」or「気のせい」)とし、被害者がしつこく言い張れば最悪の場合あなたはキチガイとして処理されるかもしれません。


Gそして、国、”専門家”などが
低周波音被害を黙殺し続けなければならない最終、最大の理由は、騒音、就中、低周波音は現況では制御(防音)の方法が極めて高価である、あるいは、技術的に現実的にほとんど不可能と言ってよい状況であるためです。現実的に低周波音の厳しい規制は日本のような貧困な住宅事情(建物自体or住環境)の国では国全体の経済活動の停滞あるいは究極的には停止を招く恐れがあるとまで言い切る専門家もいるくらいです。


 即ち、この問題を根本的に解決することは、@技術的に非常に難しく、A尚かつ例えできたとしても経済対効果が非常に低く、Bその恩恵はたまたま被害者になってしまった人にだけしかもたらされないと言う、非常にメリットが少ないからです。

 もし、解決が相当に安い金額で、ある業界や政治家に大いなる経済的利益があれば既に何らかの方策が成されているでしょう。そう言った意味ではこの問題も多くの公害がそうであるように極めて政治的・経済的問題です。


 ”運悪く”も低周波騒音被害者となってしまった場合、現在のところ、機器の設置不具合、整備不良などにより低周波音が発生している場合はそれを修理させて改善させると言う場合以外は、合法的な解決法は基本的にはありません。
 しかし、「それでも何とかしよう」と考える場合は、まずは被害者自身のあなたが、低周波音騒音問題と言うモノが現在おかれている状況と騒音源者側の理屈をある程度”お勉強”し、法の盲点を突くと言う程度ではなく、根本から「法に立ち向かう」くらいの覚悟が必須
となります。有り体に言って、「この苦境を何とかしてよ」と誰かに縋っていても決して問題は解決しません。

 現在こうした状況に果敢に立ち向かおうとしているのがSTOP!低周波音被害」-エコキュート、エネファーム、エコウィル、エネフロー、空調機器、風力発電、携帯基地局等による低周波音被害をなくそう!です。

 
 本来ならこの問題は、問題発生以前に手を打つという予防原則(予防的措置・Precautionary Approach)措置が採られることが望ましい。
 しかし、日本に於いては残念ながら、「環境保全などに関する政策において具体的な被害が発生しておらず、また、科学的な不確実性があっても予防的な措置を取って影響や被害の発生を未然に防ぐ予防原則そのものを明確に導入した法規制はない。」と言うことである。
 従って、次善の策としては、できれば極めてごく初期の段階で、被害として手を打つことが必要である。もちろん、それも残念ながら必ずしも有効な方策ではない。


付録  深夜騒音等の規則に対する罰則

 最後に非常にショックな事を付け加えておきます。それは、あなたの騒音源がよしんば可聴域の騒音で尚かつ環境基準に違反している場合に騒音源側に課せられる罰則です。これはほんの一例ですが、それはあくまで加害者側に”負担”にならいよう”配慮”されており、結局は相手方の”良心”に依るところ大、と言うより、むしろ全てなのです。これが騒音問題がおかれた実情です。


(深夜騒音等の規制)

第二八条 飲食店営業等に係る深夜における騒音、拡声機を使用する放送に係 る騒音等の規制については、地方公共団体が、住民の生活環境を保全するため 必要があると認めるときは、当該地域の自然的、社会的条件に応じて、営業時間を制限すること等により必要な措置を講ずるようにしなければならない。
第六章 罰則 第二九条 第十二条第二項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役 又は十万円以下の罰金に処する。

第三〇条 第六条第一項の規定による届出をせず、若しくは虚偽の届出をした 者又は第十五条第二項の規定による命令に違反した者は、五万円以下の罰金に 処する。

第三一条 第七条第一項、第八条第一項若しくは第十四条第一項の規定による 届出をせず、若しくは虚偽の届出をした者又は第二十条第一項の規定による報 告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、 妨げ、若しくは忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。

第三二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

第三三条 第十条、第十一条第三項又は第十四条第二項の規定による届出をせ ず、又は虚偽の届出をした者は、一万円以下の過料に処する。


 もし私が騒音源の経営者なら、設備の改善に数百万、あるいは時としては数千万円の費用を必要とするなら、苦情者から何を言われても無視し、行政からの「勧告」「命令」も聞き流し、”最悪で”罰金を払って済ますでしょう。少なくともこの違反行為にはゼロを最低2つは増やさないことには改善はあり得ないでしょう。

 世にザル法は多く存在しますが、騒音規制に関してはザルにもなっていません。底抜けです。

 騒音公害が何故にかくまで軽々に扱われるのか。その最大の理由は、(低周波音)騒音で人は死ぬほど苦しみますが、「低周波音は直接人を殺しはしない」からでしょう。しかし、低周波音がもたらす被害の苦しさ故に自殺された方もみえると聞いています。でもその場合の死因は決して騒音ではありません。あくまで勝手に自殺したのです私自身もその直前まで行きましたので死にたくなる様な気持ちは非常に良く解りますが、ひとまず、その前に騒音の無い場所に一時的にも緊急避難して、時間を過ごして見てください。何らかの道が見えてくるかも知れません。


 この文は元より私のサイトに何度も出現する"専門家"とは一体どういった類の存在であるかを、解りやすく説明してくれている新聞記事が08/10/31の中日新聞(関東地方では「東京新聞」)に「御用学者・評論家」増えるワケと題して掲載されました。私どもは当にこういった存在と闘っています。まー、こちらはそのつもりでいるのですが、相手にとってはたかが素人、毛ほどの存在ではないでしょうが…。

 低周波音問題に限らず、解決困難な問題の行く手を大きく阻む最大の存在は、「産官学の癒着」の存在であり、少なくとも低周波音問題においては一連の御用学者の存在を否定することはできません。もちろん彼らにとっては、私などは、「素人風情が何を言うか」とも言わない様な存在なのですが、しかし、現実の低周波音被害者を救えないどころか、その存在さえ否定する様では、こういった誹りは免れないのではないでしょうか。

 新聞記事の転載は著作権の侵害に当たることを承知の上で、新聞をご覧になられなかった方は、当サイトでは非常に見にくい状態ですが、是非ご一読を。


 なお、低周波音被害に関しさらに詳しくお知りになりたい方は私のサイト汐見文隆氏の著作等をご覧下さい。

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