〜人格と適応〜


<人格と人格の諸理論>
◎人格の諸理論
@類型論・・・多様な性格を少数の典型的な性格像(型)に当てはめることで人格の理解を容易にしようと
         する立場。
 (1)クレッチマー  ・・・精神分裂病患者の発病前の人格の特徴と体格の関連性に注目。
                細長型→分裂気質  肥満型→躁(そう)うつ気質  闘士型→粘着気質
 (2)シェルドン    ・・・成人の身体の各部を測定し、その発達部分の度合いによって人格を分類。
                →内臓緊張型、身体緊張型、頭脳緊張型の3つ。
 (3)ユング      ・・・心の活動をエネルギー現象にたとえ、心的エネルギーの方向により分類。
                →外向型、内向型の2つ。
 (4)シュプランガー ・・・人の基本的な6つの生活領域を考え、最も興味を持つ領域によって分類。
               理論型、経済型、審美型、宗教型、権力型、社会型の6つ。
 (5)シュナイダー  ・・・精神病質を10の類型に分けた。 ※一般の人々は分類できない。

A特性論・・・人格を構成する基本的要素を分析的手法で明らかにして、それぞれの要素ごとの個人差を
         組み合わせて人格全体を理解しようとするもの。
 (1)オルポート・・・行動を観察することで推測。心誌(サイコグラム)を作成し、総合的に示す。
 (2)キャッテル・・・因子分析法を用いて特性を抽出。(35の表面特性、12の根源特性)
 (3)ギルフォード・・・YG性格検査の基礎となるモデルを作成。因子分解によって13の特性を抽象。
 (4)アイゼンク・・・類型論と特性論を統合するもの。因子分析を中心とした厳密な統計処理。
             MPI(モーズレイ人格検査)・・・外向性と神経症傾向の2次元で測定。
 (5)ビッグ・ファイブ論・・・外向性因子、情緒不安定性因子、誠実性因子、調和性因子、開放性因子の
                 5つを基本的特性次元と考え、これらに基づいて人格検査を行う。

B力動論・・・フロイトの理論。意識や行動として表面に現れた現象が生じたメカニズムについて、無意識
         過程を含めて力の相互作用を考察。
  ・エス(イド)・・・無意識的側面であり、人間のあらゆる活動の源であるリビドー(性的エネルギー)
            貯蔵庫。快感原則に従って機能する。
  ・自我(エゴ)・・・人格の中の意識的で知的な部分。現実原則に従って機能する。
             自我防衛機制(適応機制)をつかさどる。
  ・超自我(スーパーエゴ)・・・意識から無意識領域にまたがる存在。幼児期からの両親や社会の働きかけ
                    によって形成された道徳性や良心、価値観など。理想原則に従って完全性
                    を望み、エスの衝動を抑制し、自我機能を道徳的な方向へ導く。

<人格の測定>
◎人格検査・・・質問紙法、作業検査法、投影法に大別。
@質問紙法・・・人格特徴を示す多くの質問項目に対し、自分の当てはまるものを判断するもの。
  (1)YG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)
      適性検査など、様々な領域で頻繁に利用されている。
  (2)MMPI(ミネソタ多面人格目録)・・・ミネソタ大学のハサウェイ、マッキンレイによる、550の質問。
      精神病理学的不適応を識別することを目的。4つの妥当性尺度、10の臨床尺度で示される。
  (3)MPI(モーズレイ性格検査)・・・人格の特性論の研究に基づく。
      外向性(E)と神経症的傾向(N)の2つを測定することを目的。
  (4)EPPS・・・人格の一側面である、欲求の強さを多面的の測定することを目的。

A作業検査法・・・人格の影響が現れやすい一定の作業(精神作業)をさせて、その作業の過程と作業量、
           正確さなどから人格を捉えようとする検査。
  ・内田クレペリン精神検査・・・連続加算法。

B投影法・・・直接的な観察が困難である人の心の特徴が、外の観察可能な反応の中に反映されている
         と仮定する。人の内面に隠れている性格を知るのに適している。
  (1)ロールシャッハテスト・・・左右対称のインクのしみを見えた通りに言語で表現する。
  (2)SCT(文章完成検査)・・・被験者に不完全な文章を示し、続きを完成させていく。
  (3)TAT(主題統覚検査)・・・曖昧な人物が描かれた絵画を見せ、空想の物語を述べる。
  (4)PFスタディ・・・日常の欲求不満の場面が描かれた絵画の人物のセリフを書き込む。
  (5)バウムテスト・・・「実のなる木」を描かせる描画法の一種。
  (6)ソンディテスト・・・選択した内容をもとにパーソナリティを分析。

C行動観察法・・・人を比較的自由度の高い条件下において、定められた観点で行動を記述し、その資料に
            基づいて人格を理解することを目指す。
D面接法・・・他の資料では得られない情報を面接者の意図に応じて収集する。

<カウンセリングと心理療法>
◎臨床心理学・・・個人のより適応した状態を目指した、診断と治療的関わりを軸とした心理学の特殊領域。
@指示的カウンセリング・・・正しい情報を積極的に与えれば、自ら解決できるとする考え方。
A非指示的カウンセリング・・・ロジャーズの来談者中心療法が代表的。
   クライエント(患者)が自発的に問題を解決し、成長していくことの重要性を説く。
B心理分析療法・・・フロイト
   主に自由連想法と連想に対する解釈を用いて、抑圧された無意識内容、特に幼児期の体験を意識化し、
   症状との関係を洞察することで症状が消えることを目的とした治療法。
C分析心理学・・・ユング
   クライエントの夢や空想、絵画などの創造的活動や神話的モチーフを通して、クライエントの無意識の
   イメージ世界の活性化を図る治療法。
D系統的脱感作法・・・ウォルピ
   あらかじめ不安階層表を作成し、それに従い不安を段階的に克服させていく。
E遊戯療法・・・アンナ・フロイト、アクスラインら。
   言葉では十分に自分の考えや感情を表現できない子どもに有効な心理療法。遊びの中で自己を
   表現させるとともに、遊びを通して形成された治療者との人間関係を発展させて問題解決を目指す。
F箱庭療法・・・ローエンフェルド、カルフら。
   砂の入った箱の中に、玩具、人、動物、植物、乗り物、建築物、橋、策などの模型を使って自由に
   作品を作らせ、その中で自己を発散させ、問題解決を目指す。
G行動療法・・・アイゼンク
   古典的条件づけやオペラント条件づけの理論をもとに、客観的に規定できる目標・行動を定め、
   その変容、消去、あるいは望ましい新しい行動を条件づけることで問題解決を目指す。
H自立訓練法・・・シュルツ
   自己催眠による心身の調節法。ストレスの軽減を目的とした心理療法で、心拍や血流など自律機能を
   訓練に伴って自己管理できるようにする。
I心理劇・・・モレノ
   舞台の上で、自由な筋書のない即興劇を行わせ、その中で個人が新しい体験をすることを重視する
   心理療法。その結果、個人の自発性や創造性が培われるという。
J論理療法・・・エリス
   悩みの源は、誤った不合理な思い込みによると考え、合理的で現実的な考えに修正して行くことを
   助けて、悩みを解消させようとする。
Kバイオフィードバック法・・・ミラー
   普段はあまり意識していない心臓の鼓動や皮膚温を、音や光、刺激の変化によって意識させ、
   訓練を通じて制御させようとする心理療法。
L交流分析・・・バーン
   自己理解の促進、自発性の増強、真の対人交流の回復を目的とし、自分の持っている能力の
   可能性を実現することを目指す心理療法。



〜欲求・適応機制〜


@欲求・・・行動を引き起こして特定の方向に導いてゆく主体側の条件。

◎本能と欲求
   ・生得的欲求・・・生命維持や種の保存に関係した生理的な基礎を持つ。
   ・社会的欲求・・・社会の中で自己を位置付けようとする。
              一旦形成されると、生理的欲求から独立=機能的自律性
生理的均衡維持ホメオスタシス)、内発的動機

(1)マズロー欲求階層説
 人間の諸欲求は階層的な秩序をなし、優先権を持った欲求が満たされると次の欲求へと向かう。
  ・一次的欲求・・・生理的欲求安全欲求
  ・二次的欲求・・・所属・愛情欲求承諾・自尊欲求自己実現欲求(最も高次な欲求)。
生理的欲求 → 安全欲求 → 所属・愛情欲求 → 承認・自尊欲求 → 自己実現欲求
<   一次的欲求    >   <             二次的欲求            >

(2)マレー心理発生的欲求・・・人間の持つ多くの社会的欲求のリスト・アップを行った。

A欲求と行動
 (1)誘因・・・欲求行動が向かう外的対象。行動の方向と強さを直接的に規定。
 (2)欲求不満(フラストレーション)・・・欲求が生じていながら満たされないでいる状態。
     欲求不満耐性・・・不適当な反応を生じることなく耐えうる能力、もしくはその限界。
 (3)欲求不満に基づく反応
    ・欲求不満―攻撃仮説・・・欲求が阻止されると必ず自他へ向けての攻撃行動又は攻撃行動への
                     潜在力が引き起こされる。
    ・欲求不満―退行仮説・・・欲求の阻止が発達的に以前の段階でとられた行動様式を引き起こす。
    ・欲求不満―固着仮説・・・この状態が、不適切なある行動パターンを以上に持続させる。
 (4)葛藤(コンフリクト)・・・一方の欲求を満たすと、他方の欲求が満たされない状態。
    ・接近―接近型葛藤・・・二つ以上の目標が共に正の誘意性を持ち、同時に叶えられない場合。
    ・回避―回避型葛藤・・・二つ以上の目標が共に負の誘意性を持ち、どちらも避け難い場合。
    ・接近―回避型葛藤・・・欲求の対象が同時に性と負の誘意性を持つ場合。

B心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  過去の過酷で不快な感情や体験が心の傷(トラウマ)となり、不眠や過度の不安、抑うつ状態をもたらす。


<適応と適応機制>

適応・・・日とが自らの欲求を満たしながらも環境と調和している状態。調和をはかろうとする状態。
@社会的適応と自己適応
   社会的適応・・・自己の欲求の充足と社会的状況からくる要請との間で調和が保たれていること。
             所属集団への同一化が高く、対人関係が安定し、社会規範が遵守され、他者の評価が高い。
   自己(内的)適応・・・自己の欲求と自己の価値観や目標といった内的枠組みとの間で調和が保たれること。
                自己評価や自己受容の水準が高く、充実感や自己存在感、自己効力感が高いといった、肯定的な
                自己像が形成される。
A適応機制(自我防衛機制)・・・フロイトの心的装置論を背景に構成された概念。
     自我はエスの表出と外界との調和を図りながら現実的に適応する機能をになうが、時に過大な負担に直面すると、
     必ずしも適切とは言えないが、自我の破綻を逃れるための借りの手段をとって衝動を制御しようとする。
 (1)合理化・・・自分が行った失敗や不満の真の動機を隠し、理屈付けをして弁解する。  ◎すっぱいぶどうの機制
 (2)同一視(取り入れ)・・・他者が自己に期待している態度や価値観を取り入れて自分の基準とし、
                  それに従った行動をとるようになること。
 (3)抑圧・・・不満や葛藤などの原因となる欲求や動機を無意識の領域に押しやられる機制。
 (4)補償・・・ある面における自己の不満を覆うために、他の面で努力を払って満足を得ること。
 (5)置換(置き換え)・・・ある感情が向けられている対象を別の対象に置き換えること。
 (6)昇華・・・置換、補償などの機制によって本来の欲求が社会的・文化的に価値の高い目的に向けられ、努力すること。
 (7)反動形成・・・自己の弱点に対する非難を避けるために、正反対の行動や態度をとること。
 (8)退行・・・解決困難な状況において自我が合理的な対処を放棄し、未発達な段階に逆戻りすること。
 (9)逃避・・・困難な状況から逃避することによって不安から逃れようとする消極的な機制。
 (10)固着・・・一定の感情や行動パターン或いはその対象が固定し、流動的に欠ける状態。
 (11)投射(投影)・・・自己のうちに存在する認めがたい欲求や感情を、他者が持っていると認知する機制。
 (12)白昼夢・・・現実には満たされない欲求を空想の世界に中で充足させ、一時的な満足を得ること。


<不適応行動>

ストレス・・・自律神経系に異変を生じさせるような生理的・精神的緊張負荷状態。
神経症・・・機能的な異常精神状態もしくは身体症状。脳や神経系の器質的な異常が想定されない場合をいう。不安神経症
        のほか、強迫神経症、広場神経症など。
@子どもの不適応行動・・・ストレスを受けた時の不適応行動が身体症状化されやすい。
  ・非社会的行動・・・間接的に社会に悪影響を与える場合。
               →無気力(アパシー)、自閉、緘黙、陰気、劣等感、チックなど。
  ・反社会的行動・・・社会の秩序を乱し、道徳・倫理的規範を無視したりする全ての行動。
               →嘘、喧嘩、盗み、反抗的な態度、暴力、脅迫、喫煙、飲酒、無断欠席、家出など。
 (1)チック=神経症性習癖・・・不随意かつ急速に繰り返される無目的な筋肉の動き。
 (2)緘黙・・・正常な言語能力を持ちながらも心理的原因によって話せない症状。
          →全緘黙(生活の場面)と場面緘黙(生活の一場面)がある。
 (3)不登校・・・登校したい、しなければならないという意志をもちながら登校できずに心理的苦痛を体験している状態。
     →区分(文部科学省)
        ・学校生活に起因する型・・・いやがらせ、教師との人間関係等の学校生活に原因があるもの。
        ・あそび・非行型・・・遊ぶためや非行グループに入ったりして登校しない型。
        ・無気力型・・・無気力で何となく登校しない型。
        ・情緒的混乱型・・・情緒的な混乱によって登校しない型。
        ・複合型・・・登校拒否の様態が複合している型。
        ・意図的な拒否型・・・自分の好きな方向を選んで登校しない型。
        ・その他
   ◎無理な登校刺激を与えない、児童生徒の『心の居場所』づくりが重要。
 (4)拒食症(神経性無食欲症)・・・節食生涯
 (5)いじめ自殺・・・家庭内暴力→いじめ→自殺
 (6)非行・・・近年様々に変化、増加。
 (7)スチューデント・アパシー・・・無感動・無気力・無関心等  ◎青年期、特に大学生に多く見られる。
A発達障害
 (1)自閉症・・・小児自閉症としてカナーによって報告される。
 (2)ダウン症・・・染色体異常によって生じ、親の高齢出産での出現率が高い精神発達遅滞。
 (3)学習障害・・・子どもの中枢神経の機能障害に基づくと思われるもの。=LD
 (4)病理水準・・・人格の病理性の程度を指す。
   →  ・境界例(ボーダーライン)・・・精神病と神経症の境界上に位置付けられた状態。
      ・精神分裂病・・・陽性症状(妄想知覚、自我障害、作為体験など)と陰性症状(自閉・緘黙など)がある。
      ・躁鬱(そううつ)病・・・うつ病。