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クリネットニュース |
住友剛さんは現在、京都精華大学人文学部社会メディア学科の講師を務めておられますが、2001年8月まで兵庫県川西市の子どもの人権オンブズパーソン調査相談専門員として、いじめ・不登校・学級崩壊等に関する対応など、子どもの人権救済・擁護活動に取り組んでこられました。 今回は「子どもの声を聴く」と題して、子どもたちとかかわりをもつ上でのポイントなどについて、豊富な取り組みの経験をふまえたお話をうかがうことができました。ご多忙の中を遠方からお越しくださった住友先生に改めてお礼を申しあげます。
住友先生のお話は、大きく3つに分かれていたように思います。ひとつは、川西市子どもの人権オンブズパーソン制度の概要に関する紹介。2つ目に、同制度における調査相談専門員としてのさまざまな経験談。3つ目に、講演のテーマともなっている「子どもの声を聴く」ということ、とくにその基本的な考え方やポイント・留意点について。 それらのすべてをここにご紹介する余裕はありませんし、先生のお話をここに再現することもできません。ここでは、子どもとかかわる際の心構えの問題に限定して、いくつか印象に残ったお話をご紹介したいと思います。 まず、子どもを一人の人間として認めた上で、「応答的な人間関係」の形成に努めること。「ダメなものはダメ」的な「問答無用の切り捨て」ではいけないが、大人の側に子どもの話を受けとめる余裕がない場合、こういった対応に陥りかねないのも事実。「丁寧にかかわる」ことが基本。 また、自分たちがやろうとしていることと子どもたちの思いがどのくらいズレているか、自覚的でなければいけないこと。「大人の考える子どものため」と「子どもの考える自分のため」とは一致するとは限らないという姿勢が望まれる。一例として、いじめの解決策に対する親子の考え方がズレていること(子どもは話を聴いてほしいだけなのに、親が当事者に罰を望むなど)。 さらに、子どもが主体的に問題を解決する力を育てる点に支援の重点をおくべきこと、悩みを抱えた子どもをサポートする人々の後方支援の仕組みが必要であること、などが話されました。 質疑応答では、基本的な講師の「子ども観」をたずねるものや、特別の技能・技法をもたない人はどのようにかかわっていくことができるのか、といった質問などが出されました。 これらの質問に対しては、子どもとはこういうものだという先入観をもたないこと、子どもとかかわる上で特別の技法などは必ずしも必要ないこと(話を聴いてあげたり、一緒にごはんを食べてあげることで悩みが軽くなることも)などを強調しておられたように思います。 オンブズパーソンには問題が集約的に届けられるが、子どもたちのすべてが悩み・問題を抱えているわけではないし、「子どもたちもなかなかやるじゃないか」という場面も多い、というお話と合わせて、「子どもの声を聴く」というのは特別のことではないという印象をもちました。 自然体で子どもと接すること、日常の人間関係やコミュニケーションを増やし、丁寧にかかわること──こういった考えが市民一人ひとりにゆきわたることが、子どもの人権擁護の出発点であり、行政的な仕組みづくりと同等に重要だと気づくことができました。(S) |
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