「道徳授業記録」島根             2000年3月24日
     
                 NO.240
       文責 高田 保彦
 

 ◎授業日  2000.3.6
 ◎学年 6年
 ◎ねらい
     脳死問題を通じて人の死について考えると共に、生の尊厳に気づく。

  *ACポスター「臓器提供意思表示カード」(穴あき)を貼る。
  *読む。


「言いたかぁないけど・・・、
 良い事なんて、
 なんにもしてこなかったよ。
 一応、人並みに
 暮らして来たけど、
 人様のために、何かを
 した事ぁなかったな。
 でも、
 俺、持ってるよ。

 

 

 死んだ後で、初めて人様の
 お役に立てる。
 ちょっとてれくさいけどな・・・。」
 

発問1 このおじさんは、何を持っていると言っているのでしょう。
 

 すぐに「ドナーカード」と答えが出た。

*ACポスター「臓器提供意思表示カード」(完全版)を貼る。


説明1 ここには、「意思表示カード」と書いてあります。このおじさんが持っていた
のは、「臓器提供意思表示カード」です。「ドナーカード」とも呼ばれています。
 

*臓器提供意思表示カード、臓器提供意思表示カードの説明書を全員分配布。コンビニでいくらでももらえる。)


説明2 1997年に臓器移植法が作られ、去年その法律に基づいて、4人の脳死
   患者からたくさんの臓器が取り出されました。
 

「これがその時の写真です。」と述べて、手術中の写真を貼る。

*写真「心臓移植手術・1999年2月28日阪大付属病院」(所収『朝日新聞報道写 真集2000』朝日新聞社)


発問2 あなたは病気で、臓器をもらえば治るかもしれません。さあ、あなたなら
   臓器をもらいますか。もらいませんか。
 

  臓器をもらう 20人     臓器をもらわない 20人

 理由は聞かずに次へ行く。


発問3 では逆に、脳死の時あなたは臓器を提供しますか。
 

臓器を提供する 28人 臓器を提供しない 12人

 理由を聞く。

  ◇臓器を提供しない
○まだ生きているのなら何となくやだ。
○もし自分が死んだらやだから。
○自分を解剖されたくない。    
○人の体ならいいけど、自分の体は最後まで何も入れてない状態で死を迎えたいから。
○生まれてきた自分の状態で死にたいから。そのままで死にたい。

  ◇臓器を提供する
○0.00001gくらいならいい。ちょっとはいい。
○死んだ後、親類にお金が入りそう。
○今日の国語で勉強したみたいに、「死の中にも生」だから。(高田注:「やまなし」の討論のこと。)
○お金もだいぶはいるし、自分の一部を他の人にあげたりすると、他の人の中で一部だけど第2の人生を送れるから。 でも親から考えると、子どもが死ぬのはいやだから考えるかもしれない。
○(臓器提供を)しなかったら病院とかにいることになるから、家族に迷惑がかかる。
○どうせ死んだり、もう死んでたりするんだから、一部が動いてても自分が臓器提供して他の人が生きれるのなら、考えがないかもしれないけど死んだっていいと思えるんじゃないかな。
○もし脳死になってしまったら、死んだなら死んだってはっきりさせたいから、(臓器を)あげてから安楽死させてもらって、それでお金が入るし、自分が死ぬ代わりに・・・二人死ぬより一人死ぬ方がいいから。
○臓器を提供しないでそのまま火葬されるより、提供してその人の命が助かった方が、家族も一部だけ生きていると思って少しは心が楽だと思う。それに、できるだけ死ぬ人の人数は・・・いっぱい死なない方がいい。
○人の役に立って死んだ方がいい。
○家族が許したらそれでいいと思うんだけど、自分の意志でできる事じゃないから、すごく大事なとだし、お金もかかると思う。  時間がないので、話し合いはしない。
 臓器提供には家族の同意がいることを押さえ、次のように述べる。 「実際に家族に同意をしてもらって、自分の臓器をあげた人がいます。」 *写真「笑顔の間澤朝子さん」(所収『ASAKO』間澤洋一著、ポプラ社)を貼る。


説明3「まざわあさこ」と読みます。24才。間澤朝子さんは、大学を卒業後アメ
   リカへ留学して勉強をしていました。
   夏休みにバイクの後ろに乗っていて交通事故に遭い、脳死状態になりました
   朝子さんは、生前ドナーカードに、臓器を提供してもよいと署名をしていま
   した。そして、朝子さんの心臓は40歳の女性に移植されました。肝臓は、
   62歳の女性。肺は52歳の二人の女性、腎臓と膵臓は54歳の男性と32
   歳の二人の男性に移植されました。肝臓を移植されたドリスさんという方が
   いらっしゃいますが、次のような手紙を書いておられます。
 

 こう述べて、次の文面(DORISの手紙)を読み聞かせた。(前掲書所収P160)

         貴殿の親愛なるお嬢様の臓器恩恵者

     さすがに、手悪さをしていた子もマーカーペンをしまって聞いていた。


説明4 このドリスさんに、間澤朝子さんの妹さんが会っておられます。その時の
   記事があるのでちょっと読みます。
 

     (所収『ニュートランスプラント』Vol.11  1999.9 日本臓器移植ネットワーク TEL03-3502-2071)

 次に、臓器提供に反対の立場のプリントを配る。

*プリント「臓器を提供するか、しないか悩んでいるあなたへ」1枚目全員に配布。

 (発行 「脳死」臓器提供による人権侵害監視全国ネット TEL/FAX06-315-7278)  以下の文面を読む。

 臓器移植法が施行され、政府や移植学会は地方自治体や医学界を総動員してドナーカードの普及をはかっています。特に若い人たちの新鮮な臓器が狙われています。臓器摘出の為救命治療はおろそかにされる危険性があります 

続けて、プリントにある問題を読む。選択肢もプリントにあるものを読む。


発問4 あなたは交通事故にあったらどの道を選びますか。
@ドナーカードの「臓器提供します」に○マルをつける。
A考えていない。
B臓器提供を拒否し救命治療を求める。
 

   @臓器提供する  17人
   A考えていない      17人
   B臓器提供を拒否      6人

 人数確認をした後で、「答え」を配る。

*プリント「臓器を提供するか、しないか悩んでいるあなたへ」2枚目配布。

 プリントの内容は下記の通り。

      @臓器提供する  → 病院はすぐに移植医に電話連絡。救命治療をうち切り、
              臓器保存術に切り替え方針決定。脳死判定を待って臓器
              摘出。
      A考えていない  → 臓器提供を拒否していないので、病院はすぐに移植医
              に電話連絡。救命治療をうち切り、臓器保存術に切り替
              え方針決定。心停止後、家族の承諾のみで臓器摘出。
    B臓器提供を拒否  → 家族の救命治療要求に基づき、脳低温療法(救命治療)
              実施。75%が回復。または、家族に看取られ安らかな
              死。

   以上の結果を読んだ後、脳低温療法(救命治療)の実際をビデオで見せた。   

*ビデオ「NHKスペシャル 『柳田邦男の生と死を見つめて〜低体温療法の衝撃〜』」

   30才男性・交通事故の例 (3分)・・・林先生が「普通なら手術は難しく、その
                     まま死亡。」と説明。低体温療法の説明。

   最後は、ふじ子さんの今の様子を見ながらの説明となった。
 ビデオを10分近く見たため、時間が足らなかった。


説明5 脳死は人の死ではないという考えが一方であります。心臓が動いている人

   は死んでいるのでしょうか。体温があり、汗をかく人は死んでいるのでしょ
   うか。痛みを感じて筋肉が堅くなる人は死んでいるでしょうか。赤ちゃんを
   産む人は死んでいますか。日本で本当にあった話ですが、妊娠9ヶ月の人が
   脳死状態になりました。その後陣痛が始まり、元気な赤ちゃんを産んだそう
   です。産まれた子は普通に育ち、今元気に中学校に通っているそうです。ま
   た、「移植すれば必ず助かる」のではないそうです。本当は、「移植すれば助
   かるかもしれない」が正しいようです。さらに、けがをしても臓器提供のた
   めに治療をあきらめる可能性もあります。
 

 最後に二つ発問をして、人数を数えた後授業を終えた。


発問5 脳死は人の死だと思いますか。
 

脳死は人の死である  0人 脳死は人の死ではない 40人 


発問6 脳死の時あなたは臓器を提供しますか。
 

臓器提供する 28人 →  4人     臓器提供しない 12人 → 36人

 発問6は発問3と同じ発問である。

 授業の前と後で、考えが逆転しているのが判る。

    【子どもたちの感想】

◆私は最初、「臓器提供は人のためになるからドナーカードには絶対あげる事を約束する」と思っていました。脳死になってそのままにしておけば、どうせ死ぬんだとも思っていた。でも、そのままにしている時間にもう一度生きることができるというのは知らなかった。なんだかんだいっても、本当に脳死になったときは、みんな(ほとんどの人)は、生と死の境目で、「もう一度いきたい」と意識がないながらも思うだろうと思えてきた。だから、今は臓器は心臓が止まってから提供したい。15才までそう思っているか分からないけれど・・・。(美希)

◆医りょう技術の発達は,嬉しいかもしれない。けど食物連鎖と同じで、一つでも多くなったり、少なくなったりすると、バランスがくずれてしまう。医りょう技術の発達で、生存者は増え、長生きするようになった。バランスがくずれて起こった問題は、たくさんある。ドナーは、自然界のおきて(バランス)をくずすきっかけになりかねない。全てが共に生きていくということは、そういうことだと思う。何を大切にするか。私は共存することを大切にしたい。(まりこ)

◆今日の授業はしんけんでした。臓器をもらうかもらわないかといえば、ぼくはもらいません。なぜなら人のをもらうのはやだし、他にも心臓とかの病気の人にあげたらいいと思うからです。臓器提供するかしないかは初めはすると思っていたけど、今はしたくありません。なぜなら、人に臓器をあげて人を助けたいと思うけど、提供しなかったら死なない可能性は0じゃないから、ちりょうをしてもらいたいと思います。臓器提供した人は、自分よりも人の命を考えていたと思います。(努)

◆今日は臓器提供のことについて話し合いました。ぼくは、もし自分が臓器提供してくださいといわれたら、たぶんすると思います。理由は、自分がのうしになっていつでも死ぬような状態なら、少しでも生きのこれるのぞみのある人にあげたいなと思った。(陽介)

◆私は、人の役にたつことはとてもいいことだと思う。だけど、それは家族は喜ばないと思う。そして、まだ死んだってきまったわけじゃない。自分自しんをしんじて、私は一生けん命生きたい。もしていきょうする人が死んで、私も死んだとしてももうしわけないとは思わない。なぜなら、自分でも一生けんめいがんばったから。親からもらった大事な体だから。(菜々子)

◆僕は、臓器を提供した方がいいと思う。理由は、もし生きたとしても自分一人しか生きられない。でも、臓器を提供すれば、最大10人までの人が生きれるかもしれない。だから、臓器を提供して、たくさんの人の命が助かった方が僕もうれしいです。(将浩)

◆私は臓器提供します。だって、人が助かるならうれしいから。いいことをしたなと思えるから。二人死ぬより、一人でも最後まで生きる努力をした方がいいと思うから。「ありがとう」と思ってもらえるから。お金なんかいらない。お金より命が大切。私は生きることの喜びと、命の大切さを大事にする人になりたい。(真緒)

◆私はやっぱり臓器提供をしない方がいいと思いました。脳死はしてても子どもだって産んだりできるし、体のどこかが動いていれば人にあげない方がいいと思いました。臓器提供をすると、人のためになったりするけど、やっぱり提供をしない方がいいと思いました。間ざわ朝子さんはすごいと思いました。その家族の人もすごいと思いました。体のいろんな所を人にあげていてすごいと思った。(香里)

◆私は初め、簡単に臓器提供のことを考えていたけど、臓器提供の大切さと重みが分かったような気がします。今日、ノン・ドナーカードがあることを知ってびっくりしました。あと、ビデオを見てとてもおどろきました。(知子)

  参考文献・ビデオ (本文に記したもの以外)

『異議あり! 脳死・臓器移植』(渡部良夫監修、天声社) 『検証 脳死・臓器移植』(平野恭子著、岩波ブックレットNO.497) 『「脳死」からの臓器移植はなぜ問題か』(渡部良夫,阿部知子編、ゆみる出版) 『脳死』『脳死再論』(立花隆著、中公文庫) ビデオ『意思表示カードって何?』(日本臓器移植ネットワーク)・・・無料で送付