戻りヤマメは、グリルスではない

ルアー関係の雑誌やホームページを見ていると、時折気になる記載があります。例えば、

「北上川のサクラマスは、グリルスが多い。」

これは戻りヤマメ(短期降海型サクラマス)のことをこのように呼んでいるのだと思います。ところで皆様、グリルスをご存知ですか。英語です。スペルは、grilse です。辞書では、初年鮭と訳されています。私は以前、グリルスについて何も知りませんでした。インターネットで調べましたが、わかりませんでした。そこで、英国の Alan Parker氏にメールで問い合わせ、ようやく理解できました。この間の経緯は、姉妹サイト「グリルスって何ですか?」に掲載しましたので、ここでは簡単に紹介します。

さらに、平成13年10月、グリルスに関するこのページの記載について、日本海区水産研究所の研究員Nさんから貴重な助言をいただきました。Nさんのお許しを得ましたので、下の水産研究所のNさんのアドバイスに紹介します。

Alan Parker氏のメールの要約

Alan Parker氏は angling news の方です。これは英国最大の釣り関係のサイトで、毎週24000人もの人がアクセスするとのことです。 英語の手紙を日本語で簡単に紹介してみます。

川で生まれたアトランティックサーモン(大西洋鮭)は、一生のほとんどを海で過ごします。そして、繁殖のために川に戻ります。はじめて川に戻ったものを グリルス(grilse) と呼び、2〜4ポンド(1〜2キロ)の重さになっています。繁殖後、海に帰り、そして、1〜2年後、再び繁殖の為に川に戻ってきます。この時はサケ(salmon)と呼びます。また、このサケのほとんどは、春に川へ戻ってくるので、Springer と呼びます。 グリルス(grilse)は夏に川に帰ってくるので、summer salmon と呼びます。

アトランティックサーモン(大西洋鮭)は一生の間に数回川に帰ってきますが、その度に大きくなります。 いったん川に入ったアトランティックサーモン(大西洋鮭)は餌を全く食べなくなり、海に戻る際には体重が50%も減少します。この海に戻っていくサケをケルト(kelt)といい、のぼって来た時とは色も形もまったく違う状態です。ケルト(kelt) は全く美味しくないので、釣れても川にリリースします。

以上がAlan Parker氏のメールの要約です。

水産研究所の研究員Nさんのアドバイス

グリルスに関して、このホームページをご覧下さった日本海区水産研究所の研究員Nさんが、貴重なアドバイスをして下さいました。Nさんのお許しを得ましたので、要約して紹介いたします。

アトランティックサーモン(大西洋鮭)は何回も遡上産卵すると信じられていましたが、本当は、多くの魚体が生殖活動を1回しかできない。グリルスとサーモンの違いは、遡上前の海洋生活期の長さの違いであるとのことです。

Nさんに参考図書を推薦して頂きました。

世界動物記シリーズC 今西錦司監修「サケ」J.W.ジョーンズ著(邦訳)思索社

小さなサクラマスはグリルスではない!

以上のことから、小さなサクラマス(いわゆる戻りヤマメ、戻りマス)はグリルスではないことがわかっていただけたと思います。 たしかに、小さなサクラマスは通常のサクラマスより小さく、グリルスと呼びたくなります。しかし、小さなサクラマスは通常のサクラマスのグリルスではないのです。

冒頭で紹介した例は、誤解からくる誤った表記だと思います。 言葉の意味をきちんと把握しないと、魚の生態を理解できないと思います。



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