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幽閉されたチカさん
亜種? 否、別種扱い

 このチョウほど日本人と因縁の深い外国産のチョウはいないだろう。最初の発見者は日本人だった。場所はフィリピン・ルソン島バギオ。原田基弘氏は新種の学術種名に、普段から大変世話になっている五十嵐邁氏の母親の名前「チカ」を授けた。1965年のことである。そして、本種最初のメスを採集したのも日本人である。採集者は昆虫写真家としても有名な海野和男氏だ。彼はサヤガンという集落のそばで、日本のアゲハに大変よく似たベンゲットアゲハというチョウを採りに行き、偶然にも世界で2頭目ルソンカラスアゲハを採集する。しかも世界初のメス個体。1969年3月であった。
 その後はルソン島の特産種として現地の人々により数多くが採集され、日本にも多数の個体がもたらされた。そのアゲハチョウは正に日本人好みの妖艶な衣装を身にまとっていたのだ。貧しかった村民も多少は裕福になったに違いない。
 ところが、世界中の富が日本に集中し出した1980年代半ば、世界の動物を保護するために設けられたワシントン条約第砧爐離船腑Δ箸靴董△の有名なアレキサンドラトリバネアゲハとともに種指定されてしまったのである。2万種もいるチョウの中から第砧爐呂燭辰燭裡桓鑪燹産地は限定されているにしろ、実際には数も多い。明らかにジャパン・バッシングとしか思えなかった。
 数年後、ルソン島のとなりの島・ミンドロ島から大変よく似たカラスアゲハが採集された。ルソンカラスアゲハの亜種として記載されるべきところ、新種ヘルメリとして記載された。世界中の昆虫学者の誰一人、異論を唱える者はいなかった。
レイアウト例
標 本
ラベル
ミンドロカラスアゲハ♂
ミンドロカラスアゲハ♀
ルソンカラスアゲハ♂
ルソンカラスアゲハ♀