雲ノ平山行記

1日目:折立〜太郎平小屋

 今年の夏山行の目的地は、一年間計画を温め続けてきた雲ノ平だ。単独山行なので、登山者が多い道を歩くのが無難だと判断し、折立→太郎平→黒部五郎岳→鷲羽岳→水晶岳→雲ノ平→薬師沢→太郎平→折立、というコースにした。高天原温泉に寄りたかったのだが、休暇の都合上、惜しみつつ計画から外した。
 7月26日(金)午前3時30分、両親を起こさないように気を遣いながら家を出る。東名高速道路春日井ICから東海北陸自動車道荘川IC、国道156号線、再び五箇山ICから高速道路に入り、立山ICで降りて有峰有料道路へ向かう。有峰有料道路は工事中でダートもかなりあるクネクネ道だ。運転に飽きたなぁ、と感じ始めた頃、折立に到着した。4時間30分のロングドライブであった。
有峰湖
【登山道より有峰湖 左後方は白山】
石畳の道
【石畳の道】
 8時20分、「今回の山行が、何事もなく楽しく過ごせますように」と手を合わせて折立を出発する。登り始めのしばらくは、樹林帯の急登であった。ゆっくりとしたペースで体調を確かめるように一歩ずつ足を進める。登山道は乾いて締まっており、歩きやすい。快調な滑り出しのように思えたが、登り始めて15分もたたないうちに18kgのザックの重さが肩に堪えてきた。早々に休憩をとり、荷物の多さを悔やんだが、後の祭りだ。5分程休憩し、再び歩き始めようとザックを持ち上げると、あまりの重さにふらついてしまった。これから太郎平まで登り続けられるのだろうかと不安になりながら、再び足を踏み出した。
 ザックの重さに苦しみながらも、高度を上げるにつれ展望が開けてきて気分が高揚してきた。登ってきた道を振り返ると、有峰湖が水をたたえ、はるか後方には白山まで見渡せる。今日の富山は、良い天気のようだ。
 登っていて気になったのだが、登山道にドラえもんやドラミちゃん、アラレちゃんの看板があるのはどういった訳だろう。地元の小学生が描いたのだろうか。この道は、地元の人々に大切にされているのだなぁ、と感じた。しばらくして、木枠に石を敷き詰めてある道に出た。こんなに立派な石畳を整備してあるとは大感激だ。炎天下の中、この道を整備してくださった方々に頭が下がる。ありがとうございます。
薬師岳
【薬師岳】
木道
【太郎兵衛平へ続く木道】
 白樺の林を抜けると、10時に1870.6mの三角点に着いた。ここは薬師岳が見渡せる絶好の場所だ。大勢の登山者が薬師岳を見上げながら歓声をあげている。薬師岳を“女性的”と評した文章を読んだことがあったが、なるほどと肯ける。なだらかに広がる山容からは、おおらかな、母なる山という印象を受けた。私は、青い空と薬師岳を眺めながら、今日ここへ来られて本当によかった、と感謝した。そして、さっきまでの不安はどこかへ飛んでいってしまった。
 さらに登り続けると、歩きやすい木道に出た。木道は心材を使って作られた立派なものだ。これが、太郎兵衛平まで続いている。先程の石畳の道といい、この木道といい、なんと立派な登山道だろう。
 木道をポクポク鳴らしながら歩いていくと、前方に太郎平小屋が見えた。疲れた体は水分が足りなくなっており、冷たい炭酸ジュースを欲しがっている。一歩ずつ歩きながら「炭酸ジュース、冷たいジュース・・・」と呪文のように呟く。どうか冷たい炭酸ジュースがありますようにと、強く祈りながら太郎平小屋へ向かった。
 12時25分、太郎平小屋に到着し、真っ先に売店へ向かう。あった!売店の冷蔵庫にサイダーがあった!他にも冷やした果物の缶詰やゼリー飲料もある。私はサイダーを購入し、ベンチで一気に飲み干した。乾いた体にサイダーが染み渡り、すっかり幸せな気分で笑みを浮かべた。
丘の上の太郎平小屋
【丘の上の太郎平小屋】
太郎平小屋
【太郎平小屋】
 小屋で受付を済ませ、部屋に通される。この6畳くらいの部屋は、単独行や二人組の女性ばかりを集めたらしい。皆で、どこから来たのか、明日はどこへ行くのかなどの話を咲かせた。私は、単独でアルプスを縦走をする同じ年代の女性と同部屋になれて、とても嬉しかった。
 太郎平小屋は、山小屋と思えないくらい清潔な小屋だ。トイレが水洗なので、屎尿の臭いがしない。シーズン始めだということもあるだろうが、ふとんも清潔で、汗臭さはまったくなかった。私はこの小屋を、たいへん気に入った。
 今日は早朝に起きたためか、まだ夕方だというのに眠気が襲ってきた。明日がハードな行程なので、18時になり、眠気に逆らわず就寝することにした。


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