中秋の釧路川ツーリング

10月3日

放浪への憧れは募り

習慣という鎖に心苛立つ

冬の眠りのより再び

野生の血は目覚めていく

---"The Call of the Wild", Jack London

日本のパドラーにとって、日本中のアウトドア愛好者にとって西の四万十川に対して、東の釧路川は東西横綱級のツーリング・メッカである。

釧路川は湿原の大河であり、秋の寂しい季節、水や空気に冬を感じ始める頃に、挺に全てのキャンプ道具などを積み込んでツーリングしてみたい、という希望が以前から抱いていた。野田さんのユーコン、アラスカへの憧れかもしれないし、北海道の大地を体感するためかもしれない。

コースは標茶から河口までの55キロ。釧路駅から、相棒のアベと二人、一人はファルトを背中に背負い、一人はキャンプ道具、パドル他を背負っている。車掌や乗客たちの好奇と迷惑そうな目に曝されながらも荷物を積み込み、早速ビールで前途に乾杯する。まだ、朝の8:55である。ちなみに出発の直前、駅前の和商市場でイクラ丼を大盛りで食べている。


スタート地点、標茶町開運橋にて相棒のアベと。

今回、実はフル装備でのツーリングは初めてである。苦労した割に必要以上に荷物はふくれ、正直言って挺に積み込んだときには、これは水面に浮くのだろうか、と心配してしまった。その心配は杞憂であったが、挺がひっくり返った場合は、間違いなく沈みそうだ。

釧路川は前日までの大雨のため、水量が増え、泥濁水となって流れている。 標茶からは牧場の中を流れ、牧畜の匂いの漂う中、両岸に牛馬が草を食んでいる。さすが慣れているからか、牛馬は大して気にも止めていない。たまに馬と目が合う。ヒヒンとないてやるとソッポを向かれた。水は滔々と流れ、所謂、"瀬"というものは全くない。ところどころ、台風や大雨の爪痕のような倒木に注意するだけである。

五十石橋のところで、途中帯同のおやじとゴトさんが参加する。ここから糖路までが長かった。途中の二本松橋でおやじ、ゴトさんは切り上げてしまった。湿原らしく、緩やかに屈曲を繰返しながら、流れている。流れていないのではないか、と思うこともあるが、パドルを止めるとゆったりと動いて行く。

糖路からは糖路川を遡り、糖路湖へと至る。このあたりで腕はパンパンとなり、辺りはすっかり薄暗くなってしまった。湖に出ると風が波を作り、艇は前後左右に揺れる。キャンプ場が全く見あたらず湖の真ん中で途方に暮れてしまった。まさに漂流していた。明かりを頼りにようやくキャンプ場を見つけて、乗り入れたのが、5時ちょっと前であった。


芽沼の辺りで。

早速、周辺から流木を集めて、焚き火をする。雨で湿った木は煙ばかりでなかなか火が付かない。持参の炭も使いながらの鮭のチャンチャン焼は、ブタ丼のたれと相まって、最高のご馳走となった。あとは煙に塗れながら、ウイスキーで体を温め、宴は深夜まで続くのだった。

10月4日

朝、カラスの騒ぐ声に起こされる。テントのフライの中に隠したはずのゴミをカラスが引っ張り出して、めちゃめちゃにしていた。おそるべしカラス。朝一番からゴミ拾いとなった。火を焚いてヤキソバを作る。残しておいたキャベツまで食べられ、素ヤキドバとなってしまった。

糖路を出発。ここから、細岡、岩保木、鮭捕獲場まではまさに湿原地帯。丹頂が舞い、サギが滑る。カモが飛び立ち、コガラやヨシキリが鳴く。特に細岡からは線路とも離れ、水鳥達の楽園である。両岸は全く上陸できるような岸辺はなく、水辺だけがはるかに拡がっている。途中から土砂降りの通り雨となり、鳥の鳴き声以外は無音となる。跳ね水に煙る向こう岸に丹頂が立ってこちらを見ている。相棒とも無口となり、ひたすらパドルを回す。


雨に煙る川面、遠くに鶴が飛び立つ。

岩保木の水門の所でようやく上陸し、キジ打ちを果たす。 釧路川放水路に入ってから海風がアゲインストで吹き、波が立つ。次第にコンクリート護岸が目立ち、川の匂いが次第にドブのような匂いとなる。100メートル近くはあるような川幅の真ん中をひたすら漕いだ。 ゴールは釧路大橋。後50メートル程で海だ。すぐそこに連絡船が見える。

釧路川の牧場地帯、湿原地帯、市街地と通ってくると川の全体像が見えてくる。兎に角、ゴールを果たした。その感慨だけに浸っていた。


釧路駅前でオヤジとアベと僕の3人で。

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