
初の飛行機での現地入りのため、ルート選びに苦労した。18:30千歳発の大阪伊丹行き、深夜0:15新大阪発の夜行普通列車に乗って、翌朝7:20に高知入り、足摺行きの特急南風に乗り換えて、窪川で普通列車に乗り換え、10:40に現地入りするという案が選択された。艇は、江川崎の西土佐ヘルスセンターが宅急便を引き受けてくれるという情報を得て、既に1週間前に送っている。

土砂降りの中、淘々と流れる四万十川沿いに、カヌー館までとぼとぼと歩く。地図では1kmとあるが、遠い…。あれはなんか案内板を駅前につけるべきではないか?しかもカヌー館の職員が冷たい。再び土砂降りの中、西土佐ヘルスセンターに向かう。
冷え切った体に、我慢できずセンター内の用井温泉に浸かる。これがすこぶる気持ちいい。もう、今日はもういいんじゃない、ビールで乾杯でしょ、という非常に怪しいムードが全員の中で漂い始めていた。
ずりずりと温泉の温かさに引っ張られ、やっぱり行かなきゃなあ、という気持ちと激しく格闘した挙句、午後3時、出発となる。


“ギャハハハ…”、と笑いながら、下流に待つ。
“荷物大丈夫か”、と笑いながら、近づくと、一言、“ビールが流れた.…”。
この一言で、目はみるみる釣り上がり、罵詈雑言の嵐。
ゴトさんは、陳謝しながらも、さらに荷物を一部ボイジャーに移している。たたでさえオヤジの大量荷物に過積載気味の艇は、ずっしりとくる。
再び、出発。山間の渓谷の中を川は淘々と深緑色の水を孕み流れていく。両岸は石コロの川原が広がり、山桜のちらつく山間いからは煮炊きの煙が上がる正しい日本の川風景。
前半、2級程度の瀬を何箇所が通る。倒木をすり抜けた後の横から来る返し波は、沈を覚悟させるだけの迫力があった。下流で再びゴトさんを待っていると、青い艇だけがドンブラと流れてくる。
“やばい、ゴトさんがいないぞ”、
と双眼鏡を取り出し、覗いてみると、パドルを立てて、泳ぐゴトさんの姿が…。
南国高知で春の雨も川の水も冷たく、ゴトさんを濡らす…。歯をがちがちと鳴らしながら上陸。日も暮れかかっており、次の上陸地点でキャンプを張ることとなった。早速焚き火の設営に取り掛かる。オヤジが豚汁を作り始める。焚き火が燃え始めて、ようやく人心地がついてくる。よし、ビールで乾杯だ!といっても無いものは無い…。三日月が、山高く、おぼろげに輝いている。今夜は詩人にでもなるしかない…。
酒無花豈花
此是酒世界
不飲可如何
嗚呼我麦酒
酒無くんば花豈に花ならんや
これ是の酒世界
飲まずんば如何とすべし
嗚呼わたしはビール・・・



途中、艇内の排水のため、上陸したところ、艇から流していたルアーにウグイが釣れていた。四万十川で最初のヒット?となる。すっかり気を良くして、再び釣りモードに入る。しかし、凍てつく春雨はオヤジの心を荒らし、もういい加減、さっさと中村に行って乾いた服と暖かい部屋でくつろぐモードに突入しており、ぶつぶつとぼやき始めている。

兎に角、漕いで漕いで中村到着。土佐湾に出たかったが、それも叶わず、なんというか、はい、中村と〜ちゃ〜くという感じで到着してしまった。南国土佐で桜見をしながら、のほほん、のほほんと下るという目論見は物の見事に霧散し、なんだか寒く厳しい土佐の旅となってしまった。その夜は、四万十温泉に浸かり、ビールを飲んで、乾いた服で四万十料理を食べてようやく?至福の時を過ごしたのであった…。
翌日、ずぶ濡れの衣類は全て宅急便で送り、サンダル履きで札幌に帰った我々を待ちうけていたのは、名残雪というより