
十勝孤高激闘の巻
今回はソロである。以前よりソロツーリングなら天塩と決めていた。川下り距離としては日本一の175kmを下ってみたいと思っていた。そして今年こそは、と意気込んでいたのである。しかし、出発前日、ICI伏古店のスタッフと話した結果、ちゃっかり十勝川93km孤高の旅と相成った。
朝8時札幌出発、274号をひた走り、新得に至り、スーパー・フクハラで買出し、トンカツ・みしなでトンカツそば定食なるもの(オススメ!)を食べて、新清橋たもとに着いたのが午後1時、組み立て、パッキングを済まして、出発は2時を過ぎていた。

独りぼっちで空を見上げる
川は先週まで大雨を孕み、かなり流れが速い。当然、水も緑白色に濁っている。周囲には倒木が散らばり、そこで激しい流れを作っている。艇が巻き込まれたら、ほぼ回収は絶望的だろうなあと思う。瀬は2級程度だが、流れが速い分、パドリングが難しい。リバーマップには、前半にテトラの瀬なる難所があるらしいが、結局わからずじまい。水量が多すぎて、瀬が潰されてしまってる。
20km程、漕いで川原地でテントを張る。兎に角、西日がきつい。ここで、大変な失敗に気がつく。なんと、虫除けスプレーを忘れてた!虫が多い。既に手足は腫れ上がり、痒い。夕食は、米飯とベーコンの炒め物。盛大に焚き火をして、虫除けにしようとしたが、ますます汗だくになってしまう。結局、暑いながらもテントに退散するしか方法がなかった…。
翌日、曇天。虫を避けて早々に出発する。相変わらず、流れは速く、2級の瀬が続く。10時頃から青空が見え始め、11時には十勝らしい真っ青な空が広がる。暑い。兎に角、暑い。泳ごうと思うが、流れが速すぎてとても泳ぐことができない。
This shining water
that moves the streams and revers
is not just water,
but the blood of our ancestors.
The ghostly reflection in the clear water of the lakes
tells of the events and memories
in the life of my people.
The water's murmur
is the voice of my father's father.
-----Chief Seatle
ドッドッドと激しい瀬の音が聞こえる。適当に回避しながら近づいたところ、すごい瀬が逆巻いている。‘やばい!’と思ったが、既に回避不能。そのまま、波に垂直になるように艇を立て直し、突っ込む。波は2m以上の高さで逆巻き、向こうが見えない。艇先が波の壁に突き刺すと同時に跳ね上げられ、空を向く。‘コンチクショー!‘とパドルを回す。艇先が壁を破り、分けられた水が頭から降り注ぐ。すぐに次の壁が…。兎に角、艇が斜めになれば終わりと思い、パドルを回す。大波が4回程続いたろうか。中波に移ることには艇は横になってしまっていたが、パドルで安定を保つ。まだ大波が続いていたら、間違い無く沈していた。まだまだビギナーやなあと反省。十勝川、侮りがたし。

河川敷でビールを飲む
悪名高き、千代田堰堤に差し掛かる。手前の右岸から上陸。結構、足場も悪くポテージは苦しい。特にボイジャー本体はとても持てたものではなく、汗だらだらで運ぶ。堰堤を越えた時点で精も根も尽き果てて、今日はこのまま千代田温泉だな、もう旅館に泊まって温泉入ってビール飲んで布団で寝ようと心に決め、一休みしてからたらたらと歩いて行ったところ、なんと!旅館自体がつぶれてた…。このショックは計り知れない…。もうほぼ完全に茫然自失していた…。

美しい夕日、しかし心の中は茫然として川辺にたたずむ

ちっちゃな上陸地点で
第3日目、堰堤下から出発。堰堤からは、ほとんど水の流れが無くなり、ただの湖状態となる。ひたすら漕ぐ。無我無心無欲、まさに禅の境地。河川改修で、川は真っ直ぐに造り替えられ、10km先の橋が川霞に煙って見える。川幅は100mm近くにも広がり、両側までぎっしりと深緑色の水を孕んでいる。ここから、ひたすら40km。途中、豊頃町で上陸を試みたが、あまりの水辺から堤防までの距離に驚愕し、艇に乗ったまま、残ったパンを齧る。ほとんど耐久レース並みの様相を呈する。
大津大橋を越えると、序々にカモメが舞い、潮の香りが漂い始めるうちに、周囲にうっすらと霧が立ち、その向こうに投げ釣りの人が、そしてその足元には波が寄せ…。なんだか幻想的な感じで、海に出た。太平洋の波に揺られるとなんだか楽しくって、しかも恐ろしい。早々に引き返し、船着場に入り、ゴール。

海の波に洗われながら…
いつもならここで車を寄せて、艇を回収してお終い、なのであるが、そこがソロのつらいところ。艇をたたみ、パッキングして大津の商店を探す。船着場から10分程度といっても、ボイジャーを肩に西日の中を歩くのもつらい。ようやく荷を宅急便として預ける。豊頃行きのバスの時間を聞くと、なんと1日に1本のみ、朝8:20発であった…。旅館があることを聞き、電話してみるが、あっさり断られる。アキアジの密猟者対象で、季節運用らしい。大津開村50周年記念広場なるところにテントを張る。近所の兄弟が遊びに来て、ワイワイと話す。小学1年生のヒロキが、‘オジちゃん、独りで寂しくない?’なんて泣かせることをじゃべる。なんか、温かいな、とようやく人心地着いて、海を眺めるのであった。

ガキどもとバス停前で
Return to HOME