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バンコク運転マニュアル


バンコクのバスはルートがわかりにくいうえに、炎天下での待ち時間や車内の混雑で結構疲れる。タクシーは日本に比べて安いものの、気持ちの良い運転手に当たる確率は低く、うっかりすると料金のトラブルに巻き込まれるし、場所によってはなかなかつかまらない。というわけで、バンコクにしばらく暮そうと思うと、自分で自由に運転できる自動車が便利である。バンコクの渋滞は厳しいが、渋滞に巻き込まれるのはバスもタクシーも一緒である。どうせ渋滞にはまるならば、自分の自動車ではまった方が快適である。

また、バンコクの道路は排気ガスがひどいので、バスやタクシーに乗るために道端に立っているだけも相当息苦しい思いをする。排気ガスの無い自宅の駐車場で自動車に乗りこみ、窓を閉めた密閉空間で移動して目的地まで到達するのが、健康の点からいっても最も安全である。

バンコクから離れて旅行をする時にも、自動車での旅が最も快適で面白い。バンコクを離れるとホテルの値段も急激に下がるので、バンコクでそこそこのホテルに泊まって歩き回るよりも、レンタカーを借りてでも田舎をドライブ旅行をする方が安くあがるのである。


目次

  1. 免許はあるか?
  2. 車をゲットせよ!
  3. 保険のことも知っておこう!
  4. 地図を買おう!
  5. 無事に生還せよ!
  6. 高速道路の利用法
  7. 駐車場について
  8. 道路の乞食
  9. ガソリンスタンドへ行こう!
  10. それでも事故は起こる!
  11. 交通違反と警察官
  12. 飲酒運転について





免許はあるか?

日本から来るときに、国際運転免許証を持参するのが一番簡単である。この場合、ドンムアン空港に着いたら即レンタカーを借りてドライブする事もできる。

タイに長期間滞在する予定なのに国際運転免許証を忘れた場合には、多少時間がかかるが、日本にいる知人に頼んで国際運転免許証を作って送ってもらう事が可能である(参考:外国滞在中の日本人に係る運転免許証関係手続

また、タイで新規に運転免許を取る事は日本と比べるとずっと簡単である。既に運転が出来れば試験場での一発試験となるし、運転未経験者の場合は、電話帳で教習所を多数探す事ができる。

あるいは、まったく別の話になるが、シンガポール、マレーシア、又はラオスの運転免許証を持っている場合には、それがそのままタイで有効である。

あるいは、多少裏話になるが、タイでは運転免許証を持たないで運転する人が多い。日本で無免許運転で捕まるとそうとう大変な事になるが、タイではそれほどたいした事にはならないようである。私のタイ人の知人に、無免許で何年も運転している人が2人いる。一人は運転免許試験に3回落ちたので諦めてしまった人で、もう一人は I have money. と言ってメルセデスベンツを運転している人である。ちなみに、タイでは運転免許の管轄は警察ではなくて陸運局であるが、この管轄の違いも警察が無免許運転をあまり厳しく取り締まらない理由なのかも知れない。

一般的に警察官は外国語や法律に弱いので、期限切れの国際運転免許証を見せても、あるいは日本の運転免許証を見せても、それ以上追求されない事が多いらしい。ただし、無免許で人身事故を起こした場合、相当タイの裏事情に通じた人でないと厄介な立場に置かれるだろうから、運転する前にきちんと有効な免許証を用意しておいた方が無難である。


車をゲットせよ!

一番簡単なのは、レンタカーを借りる事である。ただし、物価の安いタイでも自動車は日本以上に高価なので、レンタカー料金は決して安くはない。Hertz や Nippon Rent-a-car などの大手ならば英語が通じるし、クレジットカードで支払う事もできるし、最高級の保険がばっちりとついているし、故障しても代車と交換してくれるので安心である。ちなみに私は Hertz で1300ccのカローラを1ヶ月間借りた事がある。パワステもパワーウィンドーもセンターロックも装備されていなかったが、何かのプロモーション期間中だったので24,000Bで借りる事が出来た。

タイの新車価格は、日本の同モデルと比べて2倍ぐらいの値段である。これはタイ政府が自動車や部品の輸入に高額の関税をかけているためだ。「自動車は贅沢品だから」というのが元々の理由だが、現在では関税をかけることによって自動車を贅沢品の位置に留めているのである。というのは、もしも自動車の値段が安くなるとこれまで自動車を買えなかった人々までがどんどんと買うようになり、バンコクの渋滞が悪化するので、高額な値段でも自動車を買えるリッチな人々にとっては、自動車の値段が下がる事は脅威なのである。

下の表は、タイにおける自動車の新車価格の一例である。

エコノミー車上級車ブランド車
DAIHATSU MIRA PLUS185,800BNISSAN SUNNY539,000BBMW 1.5MB - 6.9MB
MAZDA FAMILIA 1400192,757BTOYOTA COROLLA574,000BVOLVO1.6MB - 3.5MB
DAIHATSU MIRA MINT A292,000BHONDA CIVIC637,000BMERCEDES-BENZ1.9MB - 10.8MB
HYUNDAI ACCENT SPRINT358,200BHONDA ACCORD990,000BPORSCHE3.8MB - 15.9MB
TOYOTA SOLUNA385,000BHONDA CR-V1,033,000BJAGUAR3.9MB - 5.2MB
HONDA CITY399,000BNISSAN CEFIRO 3.01,150,000BROLLS-ROYCE12.4MB - 24.2MB
MITSUBISHI LANCER431,000BHONDA ODYSSEY1,298,000BFERRARI14.5MB - 23.6MB


タイの中古車市場は、近年の経済不況も手伝って買い手市場になっているので、100,000Bぐらいの予算があれば何かしらの中古車を買うことができる。車種別、年式別の相場価格については、自動車雑誌を一冊買うとだいたい把握できる。ただし、中古車には故障がつき物なので、なるべく友人・知人から買ったほうが、故障したときの相談にも乗ってもらえて安心である。またよく言われる事だが、日本人の場合はタイでの駐在を終えて日本に帰国する日本人から譲り受けるのがいろいろな意味でリスクが少ないそうである。

買った自動車を自分の名義で登録するためには、パスポートのコピーと、大使館が発行する在留証明(住所の証明書)が必要となる。ただし、中古車の場合は所有者の名義を変えないで乗りつづける事も多々有る。これは名義変更に費用がかかる事と、自動車を売るときにはワンオーナーカーの方が高く売れるためらしい。

毎年かかる自動車税は 1000B-3000B 程度であり、車検も無いので、故障さえしなければ自動車の維持費は日本に比べてかなり安く済む。


保険のことも知っておこう!

日本と同様に、人身事故で最低限の保証をする強制保険(年額1300B程度)と、その上乗せとして加入する任意保険の二段構造になっている。任意保険は、保険会社により、保険契約によりいろいろな種類があるが、人身・対物・車両などをフルに保証する契約だと、年額35,000B程度が目安である。これは車両保険の対象となる自動車の査定価格に左右される。


地図を買おう!

バンコクの道路は複雑である。慣れない道路を地図を持たずに出かけると、たぶん必ず道に迷う。一方通行の道があったりして、来た道をそのまま帰れない事もある。加えて道を尋ねるためのタイ語が喋れないとなると、永遠に帰ってこれなくなる恐れもある。そういうわけで、道路地図はバンコクのドライブに必須のアイテムである。

少し大きな本屋に行くと、外国人向けに英語で書かれた地図が何種類も売っている。バックパッカー向けの地図の中には、距離や方向がデフォルメされていてドライブには向いていないものもある。気に入った地図に出会うまで何冊か買い換える事になるかも知れないが、地図は安いものなので、現在持っている地図よりも良さそうなのを見つけたら、迷わず買うべし。良い地図を使うと、効率的にバンコクの道路を覚える事が出来る。

ちなみに私が現在使っている地図は、次の4種類である。

BANGKOK
BUS MAP
バンコクのメインロードをだいたいカバーしている。35B。
BUSINESS LOCATION GUIDE BANGKOK
BANGKOK MAP
細いソイや、ブロックごとの敷地の形まで載っている本。550B。
学校や会社や官公庁などの詳細な索引が便利。
タイトルを直訳すると、「地図と道路利用のマニュアルバンコク」となる。
現在市販されている最良のバンコク地図。バンコクの隅々までカバーしている。
タイ語表記だが、利用価値は高い。600B。
HIGHWAY MAP
バンコクを離れてドライブする時に使う。180B。



無事に生還せよ!

タイは日本と同じで、自動車は左側通行である。各種の道路標識も、日本のそれとかなりの相同性を持っている。すなわち、日本で普通に運転できる人ならば、タイでも運転できない事は無い。要は、タイのローカルルールを速やかに理解して、周囲の交通に同化する事が大切である。

タイで運転するための基本的な原則は、次の2点である。

  1. ぶつけない、ぶつけられないという、野生の感覚を養っておく。
  2. 他の車両の運転手が何をしようとしているのか、想像しながら運転する。


タイで運転するにあたって知っておくと便利なローカルルールには、次のようなものがある。



高速道路の利用法

バンコクには、東京の首都高速に相当する高架式の高速道路がある。有料だが東京の首都高に比べるとバカ安なので、渋滞のバンコク市内をバイパスするのには便利である。高速道路といえども事故や交通集中のために渋滞する事があるが、それでも東京の首都高の慢性的な渋滞に比べるとかなりましである。高速道路の路線図はだいたいのバンコク地図に載っているし、料金所で簡単な地図を貰う事も出来る。

路線によって多少値段が違うが、入口が料金所になっていて、40Bなり30Bなりを払う。日本と違って領収書は特に請求しないと貰えない。領収書を発行しないと料金所の職員が高速料金をネコババするという問題があって、一部の社会派市民は「領収書を貰おう」という運動を展開しているが、多くのドライバーにとっては領収書を貰ってもゴミとして捨てるだけなので領収書を要求する人はむしろ少数派である。なお、この領収書は事業主にとっては、税金の申告時に経費として認められるので、必ずもらうようにしている人もいる。

頻繁に高速道路を利用する場合には、クーポン券を買っておくと便利である。これは料金所で買う事が出きて、例えば40Bの区間ならば25枚綴りで1000Bのところを、50B割引されるのでお得である。

高速の入口には、TAGと書かれて黄色のランプが点いているゲートと、TAG/CASHと書かれて黄色と緑のランプが点いているゲートがある。TAGというのは、何か自動車のフロントウィンドーにTAGというものを貼っておくと、ゲートが自動的にそれを感知してバーが上がって通れるという先進的なシステムらしいのだが、私は使った事がないので詳しい事は知らない。なお、クーポン券の場合はCASH扱いであり、頼めば領収書をくれるところもCASHと同様である。


駐車場について

自動車で出かける先がホテルやデパートならば、きちんと駐車場が完備されているので問題は無い。そういう駐車場に入る時には入口でパーキングチケットを渡されるので、駐車場からでる時まで無くさないように保管しておく必要がある。パーキングチケットは、自動車の盗難防止の役割を持っているので、無くしてしまうとすんなりとは出してもらえない。自動車の登録証を提示するなど、その自動車の所有者である証明が必要となる事もある。

パーキングチケットの第二の役割は、駐車料金の精算である。ちょっと郊外に行くと駐車料金は無料である事が多いが、バンコクの都心では普通有料である。駐車料金は1時間あたり10B−30Bと、日本の東京あたりと比べると格安である。ホテルならばレストランを利用するとか、タバコを1個買うとか、あるいは何も買わなくてもフロントでスタンプを貰えば駐車料金は無料になる。デパートの場合は買い物をしたついでにスタンプを貰う。

動物園や博物館にも駐車場は何かしら用意されているので、入口のガードマンが誘導してくれる。

駐車場が完備されていない場所に行くときには、基本的には路上駐車になる。さすがに交通量の多い幹線道路には駐車できないが、一歩路地に入れば駐車車両のオンパレードなので、開いている場所を見つけて駐車する。

駐車場も無く、路上駐車も困難な場所では、とにかく駐車できそうなスペースを探す。ガソリンスタンドや、レストランの駐車場は、客でなくても駐車させてくれる事が多い。店員やガードマンに「コー ジョーッ ロッ」と言って自動車を指差して「ダーイ」と返事が来ればOKである。帰りに10Bとか20Bとかのチップを渡すのを忘れないように。

路上駐車する時も、デパートなどの駐車場に入れる時も、込んでくると自動車がぎっしりと二重に駐車される。この場合、後から来た自動車は、ギアをニュートラルにしてハンドブレーキは使わないのがルールである。自分の自動車が出るのにじゃまな自動車がある時には、じゃまな自動車を手で押して動かして出られるようにする。汚れた自動車を押すと手も汚れるが、足で押すとその自動車の運転手が怒って飛んでくるかも知れないのでやめておこう。


道路の乞食

交差点の赤信号で止まっている時に、汚いぼろきれを持った乞食が現れて、自動車の窓の端っこをソソクサと拭いてチップを要求する事がある。乞食になるのは老若男女の別は無く、6歳ぐらいの子供が無心に手を合わせてくる事もあれば、美人のねーちゃんがどすのきいた声で要求してくる事もあるし、よぼよぼの浮浪者がうつろな目でやってくる事もある。乞食に狙われるのは、高級車でもボロ車でも同じ事である。これはタイの社会問題であって、狙われた自動車にとってはまったく迷惑な話である。もちろん頼みもしないのに勝手に汚らしいぼろきれで窓をちょこちょこっと拭かれたからといって、チップを渡す義理は全く無い。ただやっかいなのは、チップを断ると、怒った乞食が離れざまにコインで自動車に傷を付けて行ったという話をたまに聞くのである。

乞食に窓を拭かれない予防策としては、それらしき人物が寄って来たら目を合わせないとか、拭こうとするのを「あっち行け」と身振り手振りで追っ払うとか、停止する際に前の自動車との距離を1〜2メートルほど開けておいて、乞食が窓に触ろうとしたら自動車をすばやく前後に移動して拭かせないようにするとかの方法があるが、いずれも完全な防止策ではない。

拭かれてしまった時の対処としては、次のような方法がある。

  1. いやいやながら5バーツ程度を恵んでやる。
  2. 相手が懇願したり脅かすような声を出しても、徹底的に無視する。
  3. 相手が何か言ってきたら、「日本語で喋れ」とか「Speak English」とか返答して、会話が成立しないようにする。
  4. 「もっとちゃんと拭け」と命令して、チップ分の働きをさせる。窓を拭くのならば、水と洗剤を用意するのが常識である。


乞食は、10台に1台でも金をくれる自動車がいる事によって動機付けられて乞食を続けるので、社会の健全な未来の為には断固として金を払わないべきである。それに、乞食はだいたい同じ交差点に出没するので、一度金を払うと、その交差点でストップする度に狙われる恐れがある。


ガソリンスタンドへ行こう!

自分で自動車を運転するようになると、ガソリンスタンドは避けて通れない。ESSO や SHELL など、日本でもお馴染みの系列店もあれば、ptt や Q8 など、日本では見たことも無い系列店もある。ガソリンスタンドでは日本語も英語も通じないが、ガソリンを入れるという行為は単純な作業なので、2、3回行ってみれば慣れる。

日本では、レギュラー、ハイオク、ディーゼル(軽油)といった種類があるが、タイもほぼそれに準じている。ちょっと違うのは、レギュラー/ハイオクという区分ではなくて、オクタン価が91のガソリンと95のガソリンに分類されている事である。95は91よりもやや割高になるが、それにしてもリッター当たり15B前後なので、日本でガソリンを入れるのに比べると、非常にお得感がある。

私はエンジンや燃料についてはあまり詳しく知らないのだが、
 「オクタン価が高いとエンジンがノッキングを起こしにくい。オクタン価に関しては大は小を兼ねるので、高いオクタン価のガソリンを入れておけば問題は無い。」
というのが私の素朴な理解である。

日本のレギュラーガソリンはオクタン価89以上、ハイオクはオクタン価96以上となっているので、これを並べると以下のような不等式ができる。

 日本のレギュラー < タイの91 < タイの95 < 日本のハイオク

よって、日本のレギュラーガソリンに対応しているエンジンならば、91を入れておけば問題は無く、ハイオク対応のエンジンには95を入れる事になる。あるいは、常に習慣として95だけを入れておけば間違いは無い。

近頃はガソリンスタンドで、ポンプに大きく 91 とか 95 とか書かれたステッカーが貼ってある事が多いので、それを指差せばタイ語が分からなくても困る事は無い。ステッカーが貼ってない場合には、

 ディーゼル < 91 < 95

という順に値段が高くなるので、一番高いポンプを指差せば良い。

運転している自動車がディーゼルエンジンの場合には軽油を入れなければならない。タイ語でも「ディーゼル」と発音するのだが、英語式に diesel と発音するよりは、カタカナで「ディーゼル」と発音した方が通じるようである。ディーゼルエンジンに間違えてガソリンを入れられてしまう事もあるので、しっかりと見張っていよう。

日本と違って、ガソリンを入れてもデフォルトで領収書は出てこないので、何リットル入れて何バーツなのかを知りたいときや、領収書を集めている時には、タイ語で「コー バイセッ」と言うか、英語で Bill ! と叫んで、紙の上にペンでさらさらと書く手振りをすれば領収書を書いてくれる。

田舎のガソリンスタンドの中には、雑貨屋の店先にドラム缶と手回しポンプが置いてあるだけというものもあり、これは一見ガソリンスタンドには見えない。ガソリンの残量が少ない時には、こんなガソリンスタンドでも躊躇してはいられない。荒野や山中でガス欠しても、JAFは助けに来てはくれない。

ところで、ガソリンスタンドはドライブ中の休憩場所として利用価値が高い。ガソリンスタンドの基本構造は

  1. ガソリン販売、洗車、整備
  2. トイレ
  3. 売店や食堂

の三部門から成り立っている。トイレだけの為に立ち寄るのもまったくOKだし、ドライブ中に売店でドリンクなどを買って飲むのは良いリフレッシュになる。


それでも事故は起こる!

事故というのはそもそも予測困難な現象なので、ある日突然にやってくる。言葉の通じない外国で事故の当事者となるのは、かなりストレスがたまるものである。
対物事故 日本では、どんな事故でも警察に通報するのが原則だが、タイではそうとは限らない。例えばぶつけた相手が貧乏そうなオートバイの場合には、「ごめんね」と言ってお金を差し出して相手が受け取れば、それで万事OKである。

相手が高級車に乗っている場合などは、損害の額も大きくなるし、そもそもお金を差し出しても受け取らない。相手は携帯電話で保険会社の調査員を呼び出すだろう。もしも自分も保険に入っている場合には、そこから先は保険会社同士の話し合いになるので、だらだらと時間はかかるが特にすることは無い。ただし、過失責任の割合の認定では、自分にどれだけの責任があるのかをはっきりと伝えなければならない。

その場で解決ができない場合には、警察署に出頭して取り調べを受ける事になるが、言葉の喋れない外国人の場合は相当不利な立場にある事を覚悟する必要がある。警察の取り調べの役割というのは、事故の真実を発見する事ではなく、その場をうまく収める事なので、事故の相手のタイ人がベーラベラベラと彼の正当性をまくしたてる中で自分がしどろもどろしていると、わけがわからない間に自分にとって不利な形で決着してしまう事になる。
人身事故入院が必要になるほどの事故の場合は、警察の取り調べを受ける公算が高くなる。取り調べでタイ語が喋れないと、まったく取り調べが進まないか、あるいは納得できない形で調書が作られてしまうので、ここはぜひ通訳してくれる友人に同席してほしいものである。当ての無い場合には、日本大使館に電話をかけて相談するしかないが、大使館員はパーティーやゴルフで忙しいので、命に関わる事でないとなかなか動いてくれない。



交通違反と警察官

好むと好まざるに関わらず、道路標識の不備の為に交通違反を犯す事は避けられない。運が悪いと、オートバイに乗った警察官が追いかけてくる事がある。日本と違って、止めたらまず「ハイ、免許証」とは言ってこず、身振り手振りで「おまえ違反したろー」と言って来る。「タイ語わっかりませーん」とすっとぼけてみるのもいいが、チップをはずむとすんなりと解放される事が多い。チップの相場はタイ人の場合が100B、外国人の場合は200Bと言われているが、交渉の余地はある。1000B札などを出してお釣りをもらうのは双方にとって気まずいので、常に車内に100B札を何枚か用意しておくのが礼儀である。ただし、一斉取り締まりなどでまわりに警察官が大勢いる時にはチップを渡しにくいので、免許書を取り上げられて、後日罰金を払いに行くはめになる事もある。

タイでも数年前からシートベルトの着用が義務付けられた。ただし、シートベルトが嫌いな人は多く、取り締まりがありそうな時間帯(なぜか夜間に多いそうだ)にだけ着用するとか、警察官がやってきそうな時だけ着用している振りをするなど、各自工夫している。あるいは、濃いスモークシールドを貼って車内が外から見えないような自動車ならば、シートベルトを着用しているかどうかが外からわからない。

タイにも一応系統だった道路交通法が存在するのだが、各々の違反行為は、政策的にあるいは習慣的に違法性が軽重されて適用される。タイの道路での法定最高速度は時速80km/hだが、条件が良ければ100km/h〜120km/hで流れている。スピード違反で捕まる事は稀なので、ドライバーは日本のようにバックミラーでパトカーや白バイをきょろきょろと探したり、反対車線のパッシングでねずみ取りを察したりする必要が無く、前方のみに全神経を集中して運転できる。

定員外乗車については、摘発されることはまずない。トラックの荷台にぎっしりと人間が乗っていたり、オートバイに4人乗りをしていたり、あるいはバンコクを離れると、超満員のバスでは屋根の上にまで人が乗っている事があり、壮大な光景である。まさに、物理的に可能な事ならば何でもやってしまうという感がある。

信号無視や右折禁止やUターン禁止場所では、比較的よく警察官が見張っている。

駐車違反の取り締まりは、日本と同じで場所によりけりである。駐車禁止の道路でも、まったく野放しになっていて自動車が数珠つなぎになっている所もあれば、重点的にマークされていて出頭命令の紙をワイパーに挟まれやすい所もある。また、場合によっては、タイヤロックされてしまう事もある。

警察官は自分ではビシバシと交通違反を犯す。一番目立つのは、ノーヘルの同乗者をオートバイの後ろに乗せている警察官である。なぜか後ろに乗っているのは若い女性だったり、子供だったりするので、公務で乗せているとは思えない。警察官の交通違反については、BANGKOK POST の読者の投書欄などで槍玉に挙げられる事があるが、そもそも警察官を捕まえる警察官がいないので、野放し状態である。

路上で見かける警察官の主な仕事は交通整理である。道路や信号機が整備されていないので、警察官のマンパワーは円滑な交通に欠かせない。

一般的に警察官は法律の素人であり、遵法精神は低い。そもそもタイの法体系は日本のそれと比べて得体の知れないところがあり、成文法もさる事ながら、慣習法がものを言う社会である。


飲酒運転について

タイでも一応は飲酒運転は違法行為だが、その違法性は日本のそれと比べて格段に軽い。日本では、「酒酔い運転一発免許取消」とか、「一滴でも飲んだら運転しない」とか、「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」という標語が示すとおり、飲酒運転は極悪非道の犯罪として扱われる。しかしタイではそこらへんは相当おおらかで、酔いつぶれて交差点で寝こんでしまうとか、ぐでんぐでんに酔っ払って派手な事故を起こさない限りは、警察のお世話になる事はまず無い。外食して酒を飲み、ほろ酔いかげんで運転して帰るのは、社会の常識である。

近年、運転中の携帯電話の使用は、飲酒運転と同じぐらい危険であるという研究結果が発表されたが、逆にいうならば、飲酒運転は携帯電話をかけながら運転するほどの危険性しか無いとも言える。アルコールに対する感受性は個人差が大きいので、飲酒運転をする場合には自分なりの運転能力の低下度を認識しておく必要がある。


(上記の原稿は1999年のものです)


追補 2001.5

道路地図に関しては、ここを参照

交通法規に関しては、ここを参照