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携帯電話の選び方


Keywords: TOT, CAT, AIS, TAC

日本で携帯電話が流行する1〜2年前から、バンコクでは携帯電話を持つ人が増えていった。その理由は公衆電話が少ない事と、渋滞にはまった時に自動車の中から連絡を取れる事の利便性である。利便性はいつしか必要性となり、今や携帯電話を持たない事は、少なくとも自動車を所有できるクラスの人々にとっては人間関係を悪化させる要因ともなる時代である。


ネットワークの種類

日本の場合は、まず NTT Docomo という大会社があり、IDO という2番手があり、TuKa と JPhone が隙間を狙って奮戦している。普通の人ならば、あまり迷わずにNTT Docomo の 800MHzデジタルを選んでおけば間違いは無い。

タイで携帯電話を選ぼうとする場合、普通は AISTAC を選ぶ。AIS はAdvanced Information Service という Shinawatra Group の会社であり、TAC はTotal Access Communications という UCOM Group の会社である。

AIS も TAC も、それぞれアナログとデジタルのネットワークを持っており、アンテナ基地数と利用者数は次の通りである(データは、1998年10月の Bangkok Post から)

OperatorSignalネットワークの名称商品名周波数アンテナ基地数利用者数
AISanalogNMT 900Cellular 900900MHz1335720,000
digitalGSM 900Digital GSM900MHz1270280,000
TACanalogAMP 800/BWorldPhone 800800MHz1150850,000
digitalPCN 1800WorldPhone 18001800MHz1457330,000


また、現在 Digital Phone Co. - DPCPCN 1800TawanCDMA というネットワークが稼動し始めているが、まだ十分な通話エリアを持っていないので、現時点においては上記2社、4ネットワークの中から選んでおくのが無難である。 CDMA は数年以内に GSM を凌いで世界の標準となりそうな気配だが、タイの CDMA ネットワークが整備され、小型で高機能な電話機が普及するのは、まだ先の話である。


解説:タイの携帯電話の歴史
タイの携帯電話の歴史は、TOT と CAT という2つの国営企業の間の利権争いの歴史でもある。

1954年Telephone Organization of Thailand - TOT が国営企業として設立された。1977年には Communications Authority of Thailand - CAT という、国際電話部門を独立させた国営企業が設立された。 TOT と CAT の関係は、日本で例えるならば NTT と KDD の関係に似ていなくも無い。

1986年に TOT が NMT 470 という、タイで初めての携帯電話ネットワークを開始した。翌1987年には CAT も独自に AMP 800/A という携帯電話ネットワークを始めた。これら初期の携帯電話は相当大きくて重かったようである。ちなみに NMT 470 と AMP 800/A は、現在でも現役で稼動している。

1990年には、TOT とライセンス契約を結んだ AIS が、NMT 900 というネットワークを開始した。翌1991年には、CAT とライセンス契約を結んだ TAC が、AMP 800/B というネットワークを開始した。

1994年には AIS が GSM 900 というデジタルネットワークを開始し、TAC が PCN 1800 というデジタルネットワークを開始した。GSM 900 というのはヨーロッパで発展したネットワークであり、PCN 1800 というのも、実はヨーロッパでは GSM 1800 として知られているネットワークである。

1996年には、「携帯電話の周波数の割り当ては国が直接行うものであり、TOT や CAT がコントロールすべきではない」との国の方針が打ち出され、Post and Telegraph Department - PTD (Ministry of Transport and Communications の内局)が直接周波数の割り当てを行うことになった。ついでに TOT も CAT も民営化してしまおうとの機運が高まったが、その後の経済不況のために国の持ち株が高く売れそうもないので、依然として国営企業の形態を取り続けている。

1998年には、CAT のライセンスの下に、Tawan が次世代のネットワークとして有望な CDMA を開始した。これはそもそもは TAC が AIS に対する反撃として準備を進めていたネットワークなのだが、TAC のネットワーク構築を請け負っていた Tawan が独自に CAT とライセンス契約を結んでしまい、TAC としてはトンビに油揚をさらわれた形である。また、現在日本の NTT Docomo は、W-CDMA という 2M-bps のデジタル通信を可能にするハイテク規格を開発中であるが、タイの提携先としては TOT を選んだ。数年後、CDMA の時代となっても TOT と CAT のバトルは続きそうである。



AIS と TAC

あえて極言するならば、AIS は上がり調子の会社であり、TAC は下がり調子の会社である。これは要するに、経営陣の能力の差を反映している。AIS と TAC のホームページを見るだけでも、カスタマーサポートにかける意欲の違いを感じ取ることができる。AIS は、同じ Shinawatra Group の中に SC MATCHBOX という優秀な広告会社があって、ホームページの作成も依頼できる強みがあるとはいえ、TAC のホームページの情報の古さと少なさは改善して欲しいものである。

タイの携帯電話事情を多少なりとも理解している人ならば、あえてTACを選ぼうとはしない。それでもTACが未だ存続しているのは、初めて携帯電話を買う人が各種のプロモーションにつられてTACを選ぶからである。

TAC が良質のカスタマーサポートを提供し、AIS とサービスの点で競争できるようになるためには、頭の硬い経営陣を一掃して、会社の雰囲気を近代化する必要がある。


アナログとデジタル

利用者の立場からアナログ方式とデジタル方式を比較すると、

という点が挙げられる。

日本ではデジタル携帯電話網が整備されているのでアナログ携帯電話は廃止の方向にあるが、人口密度の低い農村が国土の大半を占めるタイでは、全国をカバーするデジタル携帯電話網を構築することはコスト的に困難である。タイのデジタル携帯電話の通話エリアというのは、たとえば日本のPHSの通話エリアを想像してもらえば当たらずといえども遠からずである。このために、タイではアナログ方式にもまだ根強い人気がある。

アナログ方式の問題点として、悪意の第三者に電話番号を盗まれて、知らない間に使われ放題使われてしまい、巨額の請求書が届いてから異変に気がつくという事件が頻繁に起こった。そのために、現在はセキュリティー対策として、AIS のアナログ方式は、Subscriber Identity Security - SIS という、18桁の乱数を利用した方法を取っている。AIS の言葉を借りるならば、100% guarantee against cloning である。また、TAC のアナログ方式も PIN Security という対策を取っているが、AIS ほど完璧なものではなく、番号を盗まれる事件は後を絶たない。

デジタル方式ならば電話番号を盗まれる可能性は非常に少ないが、電話会社(オペレーター)が集計ミスをして請求額が多めに来る事があるので、油断は出来ない。

AIS も TAC も、SIM Card と呼ばれる取り外し可能なICチップの中に電話番号やその他の情報を記憶しているので、SIM Card を外して他の電話機に装着すると、あっという間に電話機の機種を変えることができる。

AIS が提供する GSM というのは、ヨーロッパで発展したデジタル通信の規格である。TAC が提供する PCN というのも、その実態は GSM である。ヨーロッパでも以前は PCN 1800 と呼んでいたが、近頃では GSM 1800 と呼ぶようになっている。要するに、同じ GSM という規格の中で AIS は 900MHz の周波数を使い、TAC は 1800MHz の周波数を使っているわけなのだが、900MHz と 1800MHz とでは、電波特性が違ってくる。1800MHz は 900MHz に比べると1個の基地局がカバーできるエリアが狭いので、同じ面積の通話エリア(例えばバンコク内)を確保するためにはより多くの基地局を設置しなければならない。その反面、単位面積あたりのサービス可能なユーザー数は 900MHz よりも多いので、人口密度の高い都市には適している。もっとも、現在のバンコクに適しているかどうかは別問題である。利用者の立場からすると、1800MHz は 900MHz よりも電話機の出力が小さくてすむので、バッテリーの持続時間の点で有利である。また、人体への電磁波の悪影響を心配する人にとってもグッドチョイスである。その反面、周波数が高くなると電波が障害物によって減衰しやすいので、鉄筋の建物の中では電波が届きにくいという欠点を持つ。また、TAC はコストのかかる 1800MHz の通話エリアの拡大には乗り気でないので、バンコク外では AIS の通話エリアに追いつくことは期待できない。


ローミング

GSM は元々ヨーロッパ諸国で、携帯電話の方式を統一してビジネスマンや旅行者に便利なシステムを作ろうという発想から生まれた。AIS の 900MHz も TAC の 1800MHz も、ヨーロッパやアジアの多くの国でローミングが可能である。日本は携帯電話ネットワークが独自の発展を遂げたので、GSM のローミングができないのが不便である。

ローミングは、各国のオペレーターの間の協定によるものなので、同じ GSM で同じ周波数を使っている国でも、協定がなければローミングはできない。ローミングパートナーのリストは、AISやTACのホームページで見る事ができる。


電話機の選び方

予備知識を持たずに携帯電話の販売店に入ってカタログなどをもらってくると、情報が混乱して何が何だかわからなくなる。AIS か TAC か、アナログかデジタルか、という分類を常に念頭においてカタログを読もう。

タイには携帯電話機を作れる電気メーカーが無いので、全て外国メーカーの電話機で占められている。よく見かけるメーカーは、Nokia 、 Ericsson 、 Motorola 、 Philips 、 Siemens である。日本の小さくて軽くて多機能でファッショナブルな携帯電話に見なれた人にとっては、「何これ!うわー!ダサいのばっかり!」と溜息が出るような機種が多いのが残念である。近頃は Panasonic が参入してきたが、日本で販売している機種に比べると見劣りがする。

AIS や TAC の系列店では、それぞれのネットワーク用の電話機を扱っている。系列に入っていない店では、何でも扱っている。同じ機種でも店によって価格が異なるので、安そうな店を探そう。電話機が故障した時には、サービスセンターに持ちこんで修理する事になるので、大型店で買う事がアフターサービスの点で有利になるわけではない。

アナログの電話機には予め電話番号が割り当てられている。デジタルの場合には、SIM Card に電話番号が割り当てられている。なるべく覚えやすい電話番号を選ぼうとするならば、各店舗に在庫として置いてある電話機や SIM Card の電話番号のリストを見せてもらって、気に入った番号があったらその店で買うとよい。

電話機の値段とネットワーク加入料金(電話番号の値段)は本来別のものだが、店頭ではこれらが込みで表示されているのが普通である。ただし、店によっては電話機のみの値段を表示してある所もあるので、あまり安い店を見つけたら要チェックである。

携帯電話機を選ぶ際の大切なポイントは、バッテリーの種類と持続時間である。こまめに充電してもメモリー効果が現れないリチウムイオンバッテリーが使える機種が理想的である。

カタログでおおよその目星をつけたら、その機種に対する情報をインターネットで検索してみるとよい。詳しい説明やユーザーの意見、さては裏情報までも手に入れる事ができる。


携帯電話はなぜ高い?

タイでは携帯電話機が高価である。日本の場合は通話料金で回収するという各社の経営戦略の為に過度に安く手に入るので比較の対象としては適切ではないが、タイの携帯電話機は国際価格と比べても2倍ほどの値段で売られている。具体的には、大きくて不恰好な機種で10,000B、妥協できる程度の機種で20,000B、日本で手に入るような小型で高機能の機種だと30,000Bから40,000Bといった所である。

タイの携帯電話機が高価な理由は、AIS や TAC などのオペレーターが大きな利潤を得るためである。これはまた、 TOT や CAT にキックバックとして流れる仕組みになっている。

シンガポールやホンコンで安く買ってきた最新型の携帯電話機をタイで使う事は、技術的には可能だし、実際そうしているタイ人も少なくない。これは違法行為となるらしいが、何という法律がそれを禁じているのか、あるいは罰則規定がどうなっているのか、私は知らないし、知っている人はほとんどいない。

デジタルの場合は SIM Card を差し替えるだけなので一見簡単そうだが、次の2点をクリアしなければならない。

  1. 電話機によっては使える SIM Cardの種類 に制限を設けている場合があるので、それを外さなくてはならない。( SIM Locking )
  2. 電話機ごとに International Mobile Equipment Identity - IMEI という番号が与えられている。一方 Sim Card には International Mobile Subscriber Identity - IMSI という番号が与えられている。IMEI と IMSI は、通話のたびにオペレーターに送信される。これは元々は盗難電話機の使用を防止する手段なのだが、その気になればオペレーターは、海外で買ってきた電話機の使用をチェックする事もできる。


アナログの場合は自分では改造できないので、口コミで改造ショップを探して持ちこむ事になる。ただし、この場合には電話番号を盗まれるリスクが伴うし、電話料金をめぐるトラブルでは「電話機を持って来てください」と言われるのが常なので、オリジナルの電話機を保存しておく必要がある。


外国人の場合

外国人が携帯電話を購入する為には、タイで仕事を持っている事が前提となる。この条件は、通話料金の取りはぐれを警戒するからである。現在携帯電話の通話料金はクレジットカード決済ができないので、銀行口座から引き落とすか、毎月送られてくる請求書を持って支払い窓口まで出向かなくてはならない。将来クレジットカード決済が可能になれば、クレジットカードを持つ外国人が簡単に携帯電話を購入できるようになる事が期待できる。あるいは、ヨーロッパで実現されているようなプリペイド制の SIM Card が導入されれば、誰でも買えるようになるであろう。

私は AIS と TAC に、次のような e-mail を出して問い合わせてみた。

I have a non-immigrant visa class O, as a spouse of a Thai citizen,
but I have no work permit. Can I buy a mobile phone?


AIS からは、その日のうちに、次のような返事が返ってきた。

Dear Khun Shinji,

Thank you for your interest in AIS services. If you wish to buy a mobile
phone in Thailand, we would need to have a passport and a letter of
guarantee from an employer in Thailand. If this is not possible, you may
request your spouse to have a mobile phone registered in his/her name.


TAC からは、一週間後に次のような返事が返ってきた。

Dear sir ,
Thank you for your interest in our firm.
In answer to your inquiry, we are really sorry to say
that to buy mobile phone . If you don't have a work permit
you can't not to buy.
Welcome to service you
Customer Relations Division





私の場合

私は1998年の12月に AIS の digital (GSM) を買いました。正確には奥さんに買ってもらって、使わせてもらっています。当時はまだタイの携帯電話事情に疎かったので、何を買ったらよいのかずいぶんと迷いました。
 「バンコクを離れて一人でドライブ旅行をして事故にあった時の事を考えるとアナログの方がいいかなー」
とも思ったのですが、バンコクを離れる機会というのはあまり無いし、
 「事故にあったらその時はその時だ」
と思いなおしてデジタルを選ぶことにしました。1800MHz よりは 900MHz の方が通話エリアが広そうだったので、GSM を買うことに決めました。

電話機の機種を選ぶにあたっては、次の点を考慮しました。

  1. リチウムイオンバッテリーが使える事
  2. ほどほどに小さい事
  3. あまり高くない事

それで Nokia 5110 という機種にしました。26,000Bぐらいでしたが、別売りのリチウムイオンバッテリーと自動車用のチャージャーと卓上充電スタンドも買ったので、しめて10万円ぐらいの買い物になりました。日本で携帯電話を買うのと比べてものすごく高かったです。ちなみにこの機種は1ヶ月あまりの後に、5,000Bほども値下がりしたのがショックでした。

Nokia 5110 は、まあまあ小さくて多機能な電話機なのですが、タイマーを設定して電源をON/OFFできないのが不便です。私は日本では Docomo の携帯電話を、バッテリーの持続と安眠のために、0時〜8時までタイマーでオフにして使っていたので。


携帯電話を持つ人に対するアンケート調査

ネットワークの種類そのネットワークを選んだ理由不満やトラブル次に買うとしたら?
AIS analog3年前はデジタルが高かったので、アナログにした。叔母が AIS に勤めていたので、良い電話番号を選んでもらえて、電話機のディスカウントもあった。特に無し。GSM
TAC analog5年前、気に入った電話機のモデルがあって、それが TAC analog 用だった。当時はデジタルは無かった。雑音がひどい。バッテリーがもたない。近頃電話番号が盗まれたようだ。GSM
TAC digitalプロモーションで安かったから。特に無し。GSM
TAC digitalプロモーションで安かったから。たまに通話エリア外で通じない事がある。GSM は電波が強くて脳に悪影響がありそうなので、今のままでいい。
TAC digital友達が TAC の関係者だったので、安く買えた。特に無し。今度は GSM を試してみたい。
AIS digital (GSM)TAC digital を買ってトラブった友達に、「GSMが一番だ」と言われた。特に無し。やっぱり GSM
TAC analog2年前に買ったときには、デジタルの通話エリアが狭かったから。半年前に10,000Bの通話料金が請求された。番号が盗まれたのか?GSM
TAC digital3年前に買ったときには、GSM よりも通話エリアが広そうだった。たまに通話エリア外で通じない事がある。電話番号を変えたくないので、今のままでいい。
TAC digital以前に TAC analog を使っていたので、プロモーションで乗り換えた。特に無し。TAC はナンバーディスプレイなどの付加サービスが別料金なので、GSM の方がいい。



(上記の原稿は1999年のものです)


追補 2001.5

近頃、プリペイド制の携帯電話が流行っているようです。

携帯電話の値段もだいぶ下がってきました。また、販売競争の激化のために、work permit 無しでレギュラー契約できた人もいるそうです。