top
バンコクのラブホテル


初めにお断りしておくが、私はバンコクのラブホテルは1軒しか利用した事がないので、バンコクのラブホテルについての一般論を論じることはできない。しかし、なかなか興味深い体験だったので、あえてここに紹介するものである。

バンコクのラブホテルの第一の特徴は、名前がアラビア数字で始まる事である。私が泊まったのは、40 WINKS HOTEL という、Sukhumvit Soi 40 にあるホテルである。昼間はあまり目立たないが、夜になるとネオンランプが鮮やかである。なお、この近辺には Four Wings Hotel という普通の(かなり立派な)ホテルがあって紛らわしい。

私は、友人宅に夜中までいて帰りが遅くなった折に、2回このホテルを利用した。お断りしておくが、一人で泊まったのである。2回とも、夜中の12時頃にホテルに入った。ホテルのゲートを自動車でくぐると、ガードマンが懐中電灯を持って部屋に誘導してくれた。各部屋の前には1台分の駐車場があって、そこに駐車するとガードマンが駐車場のカーテンを閉めて自動車が外から見えないようにしてくれた。自動車を出るとガードマンが近づいてきて、休息か宿泊かを尋ねてきた。私が宿泊したい旨を告げると、料金は650Bだと言うので、その場で現金で支払った。

部屋は6畳ぐらいで、簡素な造りだった。ダブルベッドとソファーとテレビの他は何も無い部屋だった。時計も無ければ冷蔵庫も無かった。電話はあったので、私はフロントにビールを注文して飲むことはできた。ベッドの上には薄手のブランケットが1枚たたんで置いてあるだけであった。バスルームもやはり簡素だったが、浴槽はあった。

部屋には窓が無かったので、まるで地下室にいるような息苦しさを感じた。日本でもラブホテルの窓というものは、常にカーテンか鎧戸が閉められていて窓の役割を果たしていないものだが、それでもやはり有ると無いとでは大違いである。

そのホテルでは隣の部屋の声が聞こえたので、私は文化人類学的に興味深い遭遇をしたのだが、その詳細については別稿に譲る事にする。

翌日目が覚めても、時計が無いので何時なのかわからず、窓が無いので外の明るさもわからなかった。

チェックアウトは、自動車のエンジンをかけて、駐車場のカーテンを自分で開けて、勝手に帰るだけであった。

帰りに、自動車の窓から、ホテルの従業員と見られる10代の女の子が洗濯をしているのが見えた。これは日本では中年のおばさんの仕事である。私は、こんなに若い女の子を雇っているというのは何か他に用途があるのかもしれない、と納得しながらホテルを出た。


(上記の原稿は1999年のものです)