
top
変圧器の選び方
変圧器の種類
変圧器には、次の2つの種類がある
- トランス式
- 電子式
トランス式の変圧器は、容量を超えない限り、どんな電化製品でも使える。ただし、トランスは交流の周波数は変えないので、タイの220V50Hzを変圧すると、やはり50Hzのままである。60Hz専用の電化製品は使えない。
電子式の変圧器は、電灯やアイロンなど、タングステンやニクロム線による単純な発熱機器だけを使う事ができる。すなわち、電流と電圧の位相が変化しないという事がポイントである。電子機器(ACアダプターを含む)を使うと、変圧器も電子機器も壊れてしまう事がある。
変圧器の出力について
タイで多く売られている変圧器は、出力電圧が110Vのものである。これに日本製の100V対応の電化製品をつないで使った場合、電化製品が壊れてしまう事がある。
また、変圧器の容量を大きく超える電化製品を長時間使うと、変圧器自体が壊れてしまう。
ジューサーなどのモーターを主とする電化製品は、モーターの始動時に通常の4倍ほどの電流が流れるので、たとえば250Wと表示のあるモーターならば、その4倍の1000Wの変圧器を使うのが安全である。
100Vの変圧器の入手先と値段
100Vの変圧器は、日系のデパートで手に入れる事ができる。
各デパート間での値段の比較
調査日:1999.1.3-4
| SOGO | TOKYU | ISETAN |
| Protech | V.TRANS |
| 100W | 750B |
| 600B | 479B |
| 200W |
| 675B | 760B | 720B |
| 300W |
| 780B | 900B | 840B |
| 400W | 1200B | 960B | 1020B |
|
| 500W | 1550B | 1050B | 1130B |
|
| 1000W |
| 1450B | 1790B | 1410B |
| 1500W |
|
|
| 1835B |
| 2000W |
|
|
| 1835B |
付録 私の変圧器遍歴
|
DELUXE
1650 WATT
DUAL CONVERTER |
私が初めに買った変圧器は、どこかのスーパーで200Bとか300Bとかで安売りしていたものです。変圧器というと普通は大きくて重いものなのですが、その変圧器は小さくて軽くて、しかも最大出力が1650Wと書いてありました。普通の変圧器は200Wでも相当重いものなのですが、これはきっと何か画期的なテクノロジーのたまものに違いないと思いました。出力電圧が110Vなのがちょっと気になりましたが、まあ10%ぐらい高めなのは大丈夫だろうと思うことにしました。また、この変圧器には切り替えスイッチがついていて、50WまでのLOモードと、1650WまでのHIモードの二つのモードがあったので、私は何でこんな面倒くさいことをするんだろうといぶかりながらも、ポジションをいつもHIモードにして使う事にしました。私が日本から持ってきた Canon BJC-35vII というプリンターのACアダプターは100V専用だったので、私はこの変圧器にプリンターをつないで使っていました。ちなみに、プリンターの消費電力は30Wです。
ところがある日、プリンターのACアダプターがプシューッという音と共に白煙を出し始めました。私はあわててACアダプターを引っこ抜きました。テスターで変圧器の出力電圧を測ったら、しっかりと220V出ていました。私はプリンターのACアダプターを買いかえるはめになりました。
私は初め、変圧器が不良品だったのだろうと思ったのですが、後から考えると、その変圧器は普通の変圧器ではなかったに違いないと思うようになりました。普通のACアダプターぐらいの大きさなのに、1650Wも出力できる所が怪しいです。出力がHIとLOに変換できるというのもおかしいです。また、注意書きとして、
Do not connect electronic circuitry.
というような事が書いてあったのも解せません。そういえば、店に売っている普通の大きくて重い変圧器のパッケージに、
Pure transformer. For all kinds of electric appliances.
と書かれてあるのを見た事がありますが、私が買ったこの変圧器は pure じゃなかったのかも知れません。軽くて小さくて、electronic circuitry をつないではいけない変圧器とは、もしかしたらトランスを使わないで、何かの電子回路で降圧しているのかも知れません。あるいは、LOモードではトランスで降圧して、HIモードでは電子回路を併用しているのかも知れません。いや、きっとそうに違いないと思います。そういえば昔勉強した高校の物理で
コンデンサーやコイルに交流を流すと、電流と電圧の位相差がπ/2だけ増えたり減ったりする
という法則がありましたが、プリンターのACアダプターも立派なコイルなので、位相がずれて、変圧器の電子回路が故障したというのが事の真相かも知れません。そういえば、HIモードで使う電化製品の例として、アイロンだとかコーヒーメーカーだとか、単なるニクロム線の発熱機器だけが載っていましたが、これは私の仮説を裏付けます。本当のところどうなのかは、私はこの変圧器を捨ててしまったのでわかりません。捨てる前に分解してみればよかったです。
私が二度目に買った変圧器は、小さいながらもずっしりと重い、本物のトランス式の変圧器でした。Seacon Square の Radio Shack で買いました。どうしても100V仕様のものが見つからなかったので、アメリカ仕様の110Vのものを買いました。110Vの変圧器に日本の電化製品をつないでも大丈夫かどうか、やはりちょっと心配だったのですが、100Vの変圧器が売っていないのだから仕方ありません。
その変圧器に日本から持ってきたブラウンの電動歯ブラシと、ナショナルのデンタルビート(ジェット水流の歯ブラシ)をつないで使っていたのですが、ある日デンタルビートのチャージャーが壊れてしまいました。やっぱり110Vにつないだせいです。チャージャーの蓋をこじ開けてみたのですが、トランジスターやコイルやコンデンサーが並んでいて、私にはどこがどう故障しているのかわかりませんでした。ただ、なんとなく焦げ臭いような匂いがしたので、やはり過電圧のために壊れたのだと思います。
こりゃーもう100Vの変圧器を探すしかない!と、セントラルなどのデパートや、ロータスなどのホームセンターや、Big Cなどのスーパーを探し歩いたのですが、どこにも100V仕様の変圧器は置いてありませんでした。広いバンコクのどこかにはあるに違いないとは思いましたが、どこにあるのかわからなかったのです。
ちなみにこの頃、私は日本から持ってきたお気に入りのCDラジカセをおそるおそる Radio Shack の110Vの変圧器につないでモーツァルトのレクイエムのCDなどを聞いていたのですが、ある日志真子さんが間違えて220Vのコンセントに差し込んでしまいました。志真子さんはすぐに異変に気がついてコンセントを抜いたのですが、私のお気に入りのCDラジカセは既に脳死状態に陥っていました。これというのも、ちゃんとした変圧器を買うまではと、部屋の電気配線を110Vと220Vにきちんと分けておかなかったせいです。
その後、日本に用事があって行ったついでに、秋葉原で100V仕様の変圧器を買いました。秋葉原には海外旅行者向けにいろいろなワット数の変圧器が売っていました。25W程度の小さな物もありました。大きなものだと500Wとか1000Wとかのものがあり、これらは重量が5kg以上はありました。出力が大きくなると値段も高くなるし、タイに帰る時に飛行機で無料で運んでもらえる荷物の重量には制限があって、他にもいろいろと持って帰りたい物があったので、私は必要最小限の出力の変圧器を買おうと思いました。私は、タイでどのぐらいのワット数の変圧器が必要になるのかちょっと見当がつかなかったので、とりあえず200WあればCDラジカセには足りるだろうと思って、トランスがむき出しの200Wの変圧器を7千円で買いました。また、この時、デンタルビートのチャージャーも買う事ができました。2500円ぐらいしました。痛い出費です。
それから気に入りそうなCDラジカセを探したのですが、どうも好みに合うタイプが見つかりませんでした。それで、気に入らないCDラジカセを日本で買ってタイに持って行くのもばかばかしいので、タイに売っているCDラジカセで我慢をする事にしました。
ところで私はCDラジカセの代りに、炊飯器とジューサーを日本から持ち帰ったのです。というのは、バンコクのデパートでは500Bぐらいから安く炊飯器を売っているのですが、デザインや機能が日本の炊飯器に比べると見劣りがして買う気になれなかったので、日本に行ったついでに、以前自分で使っていたナショナルのマイコン炊飯器を持ち帰って使おうと思ったのです。ジューサーも、タイで余分な出費をするよりはと、やはり以前自分で使っていたものを持ち帰る事にしました。ところでこの時私には、炊飯器やジューサーがどれだけの電力を消費するかについての認識が不足していたと言わざるをえません。
それでバンコクに帰ってきて、さっそく200Wの変圧器に炊飯器をつないでお米を炊いたのですが、炊いている途中で、
「はて、炊飯器のワット数というのはどのぐらいなもんだろう?」
と不安になり、
「うーん、いくらなんでも200Wという事はないなあ」
と気がつきました。100Wの電球を二つ思い浮かべてみましたが、あれでご飯が炊けるとは思えません。
「200Wの変圧器に、300Wとか400Wとかの電化製品をつないで使うと、何が起こるんだろう?」
という不安が頭を横切りましたが、大切なご飯を炊いている途中でコンセントを引っこ抜く事は気がひけました。
「発熱量が増えるだろうけど、電子回路じゃないんだからすぐに壊れるという事はないだろう」
「トランスの電線は太いから、多少熱を持っても簡単には切れないだろう」
「もしかしたら、出力電圧が多少下がるだけで、あまり問題なく使えるのかも知れない」
「出力電圧が下がる分には、炊飯器が壊れる事はないだろう」
と、自分を安心させようと努めました。
「今回だけはなんとかがんばってくれ。後でちゃんとなんとかするから」
とお願いしたのですが、ご飯が八分ほど炊き上がった時に、炊飯器の通電ランプが消えてしまいました。私はギョギョギョーとびっくりして、炊飯器のコンセントを変圧器から抜いて、テスターで変圧器の出力を測ってみました。ゼロボルトになっていました。7千円で買って日本から運んで来た200Wの変圧器は、哀れ一回ご飯を炊いただけで壊れてしまったのです。しかもまだ八分炊きのご飯は、芯が残っていてほろ苦い味でした。
炊飯器の裏側に貼ってあったシールで消費電力を確認したら、560Wと書いてありました。これでは変圧器が壊れてしまったのも納得がいきます。ちなみにジューサーの消費電力は245Wでした。私は、台所で使うのならば、値段が高くても1000Wぐらいの変圧器を買ってくるべきだったのです。理系出身の私とは思えない失態でした。
その後、タイでは壊れた変圧器を、電線を巻きなおして安く修理してくれる場所があると聞いたのですが、とにかく200Wでは炊飯器が使えないので、もっと大きな容量の変圧器を探さなくてはなりません。それでインターネットで情報を検索したところ、TOKYUやSOGOなどの日系のデパートには100Vの変圧器が売っているとの情報を得ました。そういえば私は、セントラルだとかロビンソンだとかは探し歩きましたが、日系のデパートとは思いもよりませんでした。
それでまずSOGOに行ってみたのですが、Protechという会社の変圧器がいろいろと売っていました。ちゃんと金属製の箱に入っていて、切り替えスイッチで100Vと110Vを選べるようになっていました。おまけに、POWERスイッチとヒューズまでついていました。ヒューズがあれば、容量をオーバーしてもヒューズが切れるだけで済みます。おまけに、噂に聞いていたとおり、日本で買うのと比べて半額以下の値段です。
私は炊飯器とジューサーが同時に使えるように、1000Wぐらいの変圧器が欲しかったのですが、SOGOには500Wまでの変圧器しか置いてありませんでした。それで次にTOKYUに行ってみたのですが、同じProtechの変圧器で1000Wの物を見つけました。しかも、SOGOにあった500Wのものよりも値段が安いのです。そういえば、日本でもそごうは東急よりも値段が高い気がします。私はインターネットで、「タイで変圧器を買う時には電圧をチェックした方がよい」というアドバイスを読んでいたので、持参のテスターで出力電圧を測ってみました。100.5Vぐらいでした。それで私はとても幸福な気持ちになって、その1000Wの変圧器を買って帰りました。あー、これでご飯が炊ける、と。
翌日、ISETANにもあるのかなーと思って行ってみたら、ここが一番品揃えが豊富でした。Protechの製品が全部そろっている他に、V.TRANSFORMERという、トランスがむき出しの100V仕様の変圧器もあったのです。しかも、V.TRANSFORMERのシリーズには1500Wや2000Wのものもありました。ただし、Protechの値段で比べると、TOKYUが一番安かったです。
蛇足 計算ノート
変圧器の出力を E=Vsin(ωt) で表すと、変圧器につなぐ抵抗 R を流れる電流は I=V/Rsin(ωt) となり、発熱量を W で表すと、
W=∫0→1|EI|dt =V2/R∫0→1sin2(ωt)dt=V2/R/2
となります。
何らかの電子回路を使って I=V/Rsin(ωt+φ) と位相をずらした電流を R に流した場合の発熱量は、
∫0→1|EI|dt = 2W∫0→1|sin(ωt)sin(ωt+φ)| dt
で計算できます。絶対値がついているので計算が面倒ですが、三角関数の周期性に目をつけると、タイの交流は50Hzなので、ω=2πf=100π となり、u=ωt とおくと、
W/π∫0→2π|sin(u)sin(u+φ)| du = 2W/π∫0→π|sin(u)sin(u+φ)| du
これは、0≦φ≦π と −π≦φ≦0 に場合分けをして
sin(a)sin(b)=(cos(a−b)−cos(a+b))/2
という公式を使って積分すると、
| 0≦φ≦π | → | 2W/π(sinφ+(π/2−φ)cosφ) |
| −π≦φ≦0 | → | 2W/π(−sinφ+(π/2+φ)cosφ) |
となり、結局
2W/π(sin|φ|+(π/2−|φ|)cosφ)
となるので、発熱量は 2/π(sin|φ|+(π/2−|φ|)cosφ)倍 になります。増減表を書くと、
| φ | −π |
| −π/2 |
| 0 |
| π/2 |
| π |
| 微分 | 0 | − | 0 | + | 0 | − | 0 | + | 0 |
| 倍率 | 1 | ↓ | 2/π | ↑ | 1 | ↓ | 2/π | ↑ | 1 |
です。
すると、抵抗を通る電流と電圧の位相がπ/2だけずれている時に、発熱量が 2/π=0.6366倍となるのが最小値です。
110Vの電圧で100Wの発熱量を出すニクロム線は、220Vでは400Wになので、倍率を0.25倍にする事ができれば220Vを110V相当に降圧した効果が現れるのですが、位相をずらすだけだと、ここまでいかないなあ。
ふーむ...。
もしかして、パルスで電圧を出しているのかなあ?
うーん、これ以上は私にはわからない。
(上記の原稿は1999年のものです)
追記
220V→100Vの変圧器(Protech)は、Emporium にも売っていました。値段は下記の通りで、1000Wを除けば TOKYU といい勝負です。
| 300W | 759B |
| 400W | 825B |
| 500W | 934B |
| 1000W | 1702B |
追記 2001.7.6
ケンブリッジ情報交換掲示板 からの引用です(引用承認済)。
変圧器の選び方は気をつけてください。重さが「軽い」変圧器は、ほとんどPWM (Pulse Width Modulation)というタイプの変圧器です。これは、もともとの交流(正弦波)をパルス波(電圧のonとoff の繰り返しでできた波形)に変換し、そのonとoffの比率を変えて電力の制御を行う変圧器です。変換された波形はぐちゃぐちゃで、電圧もめちゃくちゃですが、概ね消費電力分の電圧*電流の積分値のみが正しく出るように設計されています。ですから、このタイプの変圧器は、熱機器にしか使えません。マイコン制御してあるようなものにつなぐと一発でだめになります。重さが「重い」変圧器は、中に鉄心が入っていて、コイルがぐるぐる巻いてあります。ただそれだけですので、極めて単純な構造です。でも重いです。これは正弦波が振幅の異なる正弦波に変換されるだけですので、安心です。ただし、使用する際は、定格電力に気をつけてください。電熱器(たとえばトースター)の消費電力が1000Wであれば、変圧器の定格電力は絶対に1000W以上のものが必要です。
ここで注意することですが変圧器を購入するさいによくVAという単位が出てきます。交流の消費電力の表記は、実はVAの方が正しいのです。W(ワット:有効電力)とVA(ボルトアンペア:皮相電力)の違いは以下の通りです。
有効電力 = 皮相電力 × 力率(cosφ)
皮相電力 = (平均)電圧 × (平均)電流
力率とは、交流電圧と交流電流の正弦波の位相のずれのことです。ずれがない状態つまりφ=0だと力率は1.0となります。ちなみに、コンピュータ機器などの力率は一般的に0.66で計算します。したがって、コンピューターの消費電力が229VAと書かれてあれば、これは151Wということになります。逆に、トランスの定格が300VAと書かれている場合、300W相当のコンピュータを接続するのは危険です。電熱器の場合は、ほとんど力率は1なのだと思います。もっと詳しいかたがいらっしゃいましたらコメントいただけるとさいわいです。
結論としては、消費電力の定格を上まわる十分「重い」コイル巻きの変圧器を使えば日本の製品を持っていっても問題ないと思います。