ミナミヌマエビ Neocaridina denticulata

<分布>

 このエビは本州中部以南から九州、四国に分布しています。海外からは、本種と亜種の関係にあるエビ達が台湾、中国大陸、韓国などから報告されています。河川の流れの穏やかな場所の他、海とつながりのない池や沼、田んぼの用水路などにも分布しています。

<形態>

 雌の最大体長は30mmほどです。雄はそれより数mmほど小さいだけで、他のヌマエビ科のエビ類よりも雌雄差は少ないです。額角は長くほぼ真っ直ぐです。額角の上側には8-20個の歯がありますが、先端付近にはありません。下側には0-9個の歯があり、上側と同じく先端付近にはありません。また、本種は前側角部に棘があります。前側角部はエビの体で説明していなかったので、下の図を参照してください。

前側角部

 また、雄の第一腹肢は他のヌマエビ類のものとかなり違っていて、洋ナシのような形をしています。これは肉眼でも識別出来ます。体型的には、トゲナシヌマエビとミゾレヌマエビの中間みたいな感じです。ミゾレヌマエビほど腰曲がりではないし、トゲナシヌマエビほど流線型でもないです。色彩的には透明な感じで地味でありますが、正中線上に背骨のような模様があるものや、様々な模様をもったものなどバリエーションに富んでいます。雌は、他のヌマエビ類と同様に濃い褐色になります。

<生態> 

 食性は雑食で、植物質のものでも動物質のものでも何でも食べますが、本種の主な生息場所は流れの穏やかな堆積が卓越する場所であり、自然界では堆積した泥土中の有機物を食べているものと思われます。

 繁殖期は5月から10月にかけての夏です。早いところでは3月頃から産卵が始まるようです。また、春から夏にかけてと、夏から秋にかけての2回の繁殖のピークがあるようで、最初のピークは前年から越冬した雌の産卵で、夏から秋にかけてのピークには、その年の春に生まれたものの産卵です。本種の卵はヌマエビ科エビ類中最大で、卵を見ればミナミヌマエビだとすぐわかるくらい他のヌマエビ類の卵より大きい卵をもちます。そして本種の一番の特徴は、他の川エビたちのように孵化した子供がゾエアではなく、稚エビとして生まれるということです。ザリガニも本種と同じように直接稚エビが生まれますが、このように直接親と同じ形態の子供が産まれる発生様式を直達発生といいます。そのため、他のエビがいないような田んぼの用水路や沼でも生息しており、また、水槽中でも容易に繁殖させることが出来ます。

 本種の生息環境は流れの穏やかな水域です。水槽で飼っていてもあまり活動的でなく、じっとしていることが多かったです。ただ、じっとしているといっても、第一、第二胸脚は盛んに動かしてあたりの砂や石の表面を盛んにあさっていますが。僕が調査していた川では、ミナミヌマエビもミゾレヌマエビも生息していたのですが、ミゾレが多く採れる場所ではミナミが少なく、逆にミゾレが少ないところではミナミが多いという感じで、同じ様な生息環境を利用している種同士でも微妙に場所を違えて生活しているのかもしれません。