この文章は1998年11月ごろにフリーペーパー「独善」第2号として発行されたものに手を加えてみましたものですよ。




東海道自転車旅日記(2)

8月18日(火)二日目

 ほかに聞くものがなかったので、ロンドンブーツ1号2号のオールナイトニッポンを聞いていた。まだ寝られなかった。
 波の音がうるさかった。
 顔にタオルをかけてみたり、寝袋(クローアップシーツ/モンベル)に頭まで入ってみたり、いろんな方法で波の音を軽減しようとたくらんだが、結局なんともならず、自分でも寝たのか寝ていないのかよくわからないまま、4時27分、いちおう目覚めた。もう明るい。

 とりあえず5時まで寝袋の中でなにもせずすごす。こんな薄いものでも夏なら寒さを防げるのだなとクローアップシーツとモンベルを誉める。ほんと、もらえるならなんでもいいですから、モンベル。東京なら恵比寿と台場と町田に店舗がありますよ。
 ラジオを聞きながらただただボーっとする。人が犬を散歩させにきている。えらく早起きだな。
 ようよう寝袋から抜け出す。ちなみに、右の写真はビデオカメラで撮影したものだ。
 くわしくいうと、それをVHSに落として、インターネットビューカム(シャープ)でスマートメディアにMPEG4化しておとし、PCに移動させ、そのヒトコマを取り出してみた、というものだ。ビデオカメラとPCを直結させることは、俺のPCにIEEE1394がなく、現在ビデオカメラを持っていない、という理由による。
 ダビングする際に表示を消すのを忘れていたのでSPだとかなんだか表示されているがそれはすまん。
 ちなみにこの映像は、起床したあと、ビデオカメラを設置し、録画ボタンを押し、寝袋に戻って、というヤラセが行われている。というか俺はいつから顔出しOKになったんだ。
 まいいか。

 ペットボトルの水でタオルを湿らせて、体を拭く。
 日焦け止めを塗る。
 散歩の人もいなくなったので、海岸で大便をする。尻を拭いた紙を燃やす。
 さて出発だ。
 今日はこの旅で最大の難所である箱根峠越えがあったので、なんとなく気が急いていた。明るいうちに峠を越えたかった。
 6時19分、葉山町、長者ヶ崎を通過。御用邸の前には警備員がいた。えらいなあ。
 48分、逗子市に入る。
 7時5分、鎌倉市に入る。よしもとよしともの漫画では、海岸沿いに「→大仏」って看板があるようなんだけどそれには気づかなかったな。
 46分に藤沢市に入る。ここが稲村ヶ崎かあ、と興味もないくせに感慨深げに。
 既に、尻が痛い。むろん、自転車に乗っているからだ。ここで俺がむかし言及したことを思い出さずにはいられない。すなわち、荷物は最小限しか背負うなという格言を。だから自分で言った事ぐらい守れよ。
 7時54分、日本テレビがよく写す片瀬海岸のそばのローソン片瀬江ノ島店でおにぎりとアロエ&ホワイトグレープ500ミリリットルパックを購入し、店の前で食べ、飲んだ。海に楽しみに来たというフゼイの若者が多く来ていて、その中で俺はこれといって楽しむそぶりも見せず、かっこよく出発。
 なんとなく自転車道に入り、ちんたらと進む。浜辺には波乗りをしている若者が多く、所々にサーフボード用キャリアをつけた自転車を見かけた。
 「ボードウォークには自転車は立ち入らないでください」みたいな看板が出ていたりして、波乗りの人には都合の良い海岸となっているようだった。俺もしばし立ち止まりそれを眺める。実はケツが痛かったから休憩しただけだ。炎症を押さえるには、と思いバンテリンをケツに塗る。非常に沁みて痛いが、なんとなくマシになったような気もしたのでまた出発する。
 8時52分、平塚市に入る。予定している時刻を大幅に過ぎていた。今まで自分の立てた予定を下回るなんて事はなかったので、非常に狼狽する。できれば昼前に箱根越えをしたかったのだが、それすらも不安になる。
 9時7分、ロングビーチでおなじみの大磯町に入る。そして13分、R1号に入る。19分、スリーエフでGet500ミリペットを購入し、店の前で休憩する。空はどうしようもない曇り空。どうか降らないでくれよと祈りながらスタート。
 ここからは当面1号だ。と思って走っていたのだが20分ごろ「太平洋岸自転車道」の表示を見つけて、海の方へ左折する。すると1号線西湘バイパス(自動車専用)に沿うようにして自転車道があった。車道と海を眼下に据えつつ走るのは気持ちいいなあと思っていたら、10分ぐらいで道は消滅、また1号に戻る。
 9時54分、二宮町。
 10時21分、小田原市に入る。小田原に来りゃあ箱根は目前の気がする。どうでもいいけど、ちょっと陽が差してきた。曇り空は雨の心配があっていやだけど、晴れていても暑いからいやなので、いやだなあと思う(我儘)。
 ここで体力を回復しておかないと、もうする場所がないのではないかと思ったので、この辺で昼食を摂ることにした。11時過ぎ、ガストに入る。日替わりランチ(大盛り)とドリンクバーを注文。ICレコーダを再生しここまでの記録を紙に起こす。なんとなくビタミンを摂ろうと思って、いつもは飲まないオレンジジュースを飲む。気分の問題だから、実際どうであろうと関係ない。
 12時4分ガストを出発。ローソン小田原風祭店で、ウインナークロワッサンとメロンパンを買う。箱根峠にはそういう店もないのではないかと俺は思っていたからだ。
 32分、箱根町に入る。地球なんたら館という俺の心のやらかい場所をぐわっとわしづかみするような館の看板があったが俺はストイックに、この数ヶ月で失われてしまった野性味とかそういうものを取り戻すためにこの旅をしていたのでそういう娯楽性は排除の方向で動いていたのでなんとかその手を心から引き剥がし、ペダルをいっそう強く踏んだ。つーか明るいうちに峠越えをしておきたかったんですね。

 48分。すでに俺は否応なく自転車を押す人になっていた。
 はじめのころは、たまにゆるい坂になったりすると、また自転車にまたがりペダルを踏んだりしたものだが、すぐに面倒になって、単に押す人になった。ラジオを聞き始めた。高校野球を放送していた。
 それにしても夏休みだからだろうか、交通量が多い。路線バスもひっきりなしに俺を追い抜いて行く。
 道は狭い。俺はテールランプを点滅させて、少しでも俺の存在をドライバーにアピールした。俺が渋滞の理由になるのはいやだからな。ラジオからはテリー伊藤の声が聞こえていたっけ。
 13時25分。何の駅かは知らないが大平台駅というところでCCレモンの350ミリ缶を買ってすぐ飲みほす。
 俺はてっきり150円くらいになっているものだと思っていたが、120円だった。あまつさえ100円のところもあった。
 そして14時33分にスプライトの350ミリ缶を買ったが、俺はまだ押す人だった。
 軽トラックのおっさんと少し話した。テントとか持ってるのか、と聞かれた。そう、俺もテントが必要だと思った。
 小雨がぱらついてきたのだ。
 それから10分ほどして、雨がひどくなってきたのでバス待合所に逃げ込む。もしかしたらこのままここで夜を過ごすのではないかと少々おびえながら。

 時計の針は15時半を示していた。だんだんとまわりがもやってきた。そういえば数年前に同じルートを逆方向に通った友人が、箱根は早い時間に越えないと靄で大変だと言っていた。
 いちおう急いだんだけど、間に合わなかったみたい。

 39分、国道1号の最高地点に到達する。海抜874メートル。
 874メートルってのは俺の登山記録に照らし合わせてみてもずいぶん高い。もしかすると最高高度ではなかろうか。そんなところに自転車で
 いずれにせよ最高地点ということは、よーし、ここからは下りだな、と思って自転車にまたがるが、別にそういうわけでもなく、それから一時間ほどは乗ったり押したりの緩慢な繰り返しが続いて(芦ノ湖畔を通っていたようだが靄で見えやしない)、16時32分、道の駅箱根峠に到着し、爽健美茶を飲んで休憩する。まわりは靄で真っ白。すでに靄じゃなくて霧だな。


 休憩の後スタート。下り坂が始まる。
 45分に島田市に入る。そうだ、ようやく静岡県だ。静岡に足踏み入れるのも俺初めてだった。
 しかしそんな感慨よりも箱根峠を越えた喜びのほうが大きく、俺はとても大きな声を出してみたりした。
 下り坂は20分程度続いた。その間、ペダルを踏むことは一切なかった。
 俺は自動車と同じぐらいのスピードでくだりおりた。カーブなどでは自動車を凌駕するスピードを見せたが、追い抜いてもまた直線で抜かれるだけなので、勿体ないがブレーキング。
 というのを実はまるまるビデオで撮影してある。自転車の前カゴに、タオルでくるんだビデオカメラをセットし、録画ボタンを押してスタートしたのだった。
 圧縮率の高いというMPEG4でも60メガをこえるので、動画をアップはしません。というか俺が見ててもつまらん。こんど箱根を下るんです、って人には参考になるかもしれないけどさ。
 そんなわけで、その動画から切り出した静止画をいくらか見てください。
 
 ね、もやってるでしょ。
 
 こういうデコボコ道では画面は荒れ放題。帰宅後、ビデオカメラはズーム/フォーカス機能がおかしくなった
 
 このトラックのうしろを暫くついていった。トラック、遅いからカーブで追いついてしまうんだ。
 
 俺を抜くためにちょっと寄ってるのがわかるな。
 
 けっこう長くてまっすぐな橋だった。
 
 ちなみに画面が傾いてるのはカメラが傾いていたからだ。
 
 17時4分。久しぶりに現れた信号が赤だったので止まった。まだ坂は続いていたし赤になったばっかりだったので大丈夫そうだったし位置エネルギーから得られた運動エネルギーを熱エネルギーに変換するのはもったいなかったが、このへん俺って非常にモラリスト。
 そして20分ごろ、吸い込まれるようにCASAへ。注文したシーフードカレーはひどくしょぼいもので、やっぱりCASAってだめだなあと思った。アイスコーヒーを飲みながら、道路地図で残りの距離を計算する。
 残り235キロと出た。出たからどうだというわけもなく、今後に生かされるというわけでもなく、この計算結果は旅が終わるまで忘却の彼方に葬り去られることになる。
 18時、CASAを出る。ふらりと書店に入り、すでに持っている北杜夫『船乗りクプクプの冒険』(新潮文庫)を購入する。これは俺の中ではとんでもなく名作なので人に遣ろうと思って買った。
 11分、清水町。沼津市に入り1号線がとつぜん高架になり自動車専用になり走る道を探していると夕立ち、びしょ濡れになる。だから一桁国道は好きじゃない。自転車に対して冷たすぎる。側道を設けるなら本線に合流するまできっちり誘導すべきだ。
 そんなわけで適度に道を誤りながら本日の宿泊予定地、千本松原へ到達する。遠くの浜辺では花火をやっている。
 ああいうのとはあまり関わり合いになりたくないなあと思いながらゆるゆると海岸に降りて自転車を押す。砂浜を押していても埒があかないのでとりあえず防波堤まで戻る途中で東屋風のところを見つけ、そこのベンチのようなものに腰掛ける。小雨っぽいし、今日はここだな、と決める。
 20時20分。水を飲んで、パンを食べた。行儀のいい俺はそれをゴミごとザックに収納した。
 もう秋はすぐそこまで近づいていて、虫の鳴き声が五月の蝿のよういにうるさい。まあ波の音がないだけいいや。
 例によって、とんでもなくつまらない静岡のラジオを聞きながら眠りにつこうとした。
 深夜に近づくにつれ、虫の声は減っていった。友人からまた電話がかかってきたが、砂浜の真ん中なので電波状況が悪く互いの言ってることが殆ど判らなかった。



18日の出費
 ローソン(231)/スリーエフ(147)/ガスト(714)/ローソン(231)/CCレモン(120)/スプライト(120)/爽健美茶(120)/CASA(1186)/クプクプ(420)


18日の走行距離
横須賀市(斉田浜)→富士市(千本松原) 117,3キロ

 めんどくさいんで地図はこれ一枚で。

2002.5/10

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