(画面に映る巨大な”S”)
(シスタァ〜)

2001年11月25日、一つのイベントが開かれた。
『妹の力』。シスタープリンセス出演声優のイベントである。
これはシスプリ関連イベントに初めて参加した一人のお兄様の物語である。

(”地上の星”がかかる)
(ラオックスの袋を下げた男、ポスターをリュックに刺した男達が光に向かって歩いてゆく)

 

プロジェクトS(シスター) 〜お兄ちゃん達〜

 

(風の中のす〜ばる〜、砂の中のぎ〜んが〜)

(みんな何処へいっ〜た〜)

シスタープリンセス
12人の妹

(見送〜られることもなく〜)

空前の
妹ブーム

(草原のペガ〜サス〜)

妹に萌える
ダメ学生

(街角のヴィ〜ナス〜)

HP設立
伸びないアクセス数

(みんな何処へいっ〜た〜)

『ネタを探せ』
決死の覚悟

(見守〜られることもなく〜)

一筋の光明
イベントに参加せよ

(地上にある星を、誰もおぼえていな〜い)

生明祭
『妹の力』

(人はそ〜らばかり、み〜てる〜)

敗北感
本物との遭遇

(つ〜ば〜めよ〜、たか〜いそ〜らから〜)

マフラー
時計

(おし〜え〜てよ〜、地上〜の星〜を)

後悔は
してねーよ

(つ〜ば〜めよ〜、地上〜の星は〜、今〜ど〜こに、ある〜のだろ〜)

「激闘!『妹の力』」〜退くに退けなくなったお兄様〜

 

膳場『今夜のプロジェクトSはイベントに初めて参加したお兄様の物語です』

(シスプリをプレイしている国井)

膳場『国井さん、何をやってるんですか?』

国井『膳場さん、このゲーム知ってますか?』

膳場『いえ、知りません』

国井『これは”シスタープリンセス”といいましてね、一部の若者に爆発的な支持を得ている作品なんですよ』

膳場『そうなんですか。何だかカワイイ女の子が出ていますね』

国井『ええ、そこが魅力なんですよ。今日のプロジェクトにはこの作品の声優が2名登場するんです。とってもステキな声なんですよ』

膳場『さて、物語はイベントの申し込みをするところから始まります』

 

2001年3月、『シスタープリンセス』が発売した。
前評判とは裏腹に、売れに売れた。
空前の、妹ブームが訪れた。

ドモン2、21歳。ダメ学生だった。
彼もまた、シスプリを購入した一人である。
マイシスターは咲耶。暴走気味なところがお気に入りだった。

ドモン2はHPを開設していた。
日記系サイト。
流行だった。
しかし、ドモン2には文才が無かった。
毎日のネタにも、困っていた。
アクセス数も、伸びていなかった。

『このままでは、だめだ』
ドモン2は思った。

『何か、ネタを探さなければ』
必死に考えた。
何も思いつかなかった。
時間だけが過ぎて行った。

 

ドモン2には毎日、巡回しているサイトがあった。

『好き好き大好きっ』
シスプリ関連の大手サイト。
バキコラや日々の日記が秀逸だった。

ドモン2にとって、『好き好き大好きっ』は雲の上の存在だった。
『いつかはこんなサイトになりたい』
憧れていた。

ある日、いつものように『好き好き大好きっ』を見ていると、一つの知らせが目にとまった。

 

明治大学生明祭、声優トーク&ライブ企画『妹の力』

 

シスタープリンセスのイベントだった。
出演するのは、桑谷夏子と横手久美子。
可憐と白雪だった。

『これだ』
ドモン2の胸は高鳴った。

『これで11月25日のネタには、困らない』

早速、主催者である明治大学アニメ・声優研究会にメールを送ろうと思った。
送信ボタンが、押せなかった。

ドモン2は、声優イベント参加経験がほとんどなかった。
一度だけある経験は、関智一のイベント。
方向性が、全く違っていた。

『俺は、兄達の雰囲気に馴染む事ができるのか』
不安だった。

『だが、やるしかない』
貴重なネタだった。

『みすみす逃すわけには、いかない』
送信ボタンを押した。
メールが、送られていった。

参加費用を振込んだ。
数日後、チケットが送られてきた。
シスプリのイベントに相応しい、ピンクのチケットだった。

『もう、後には退けない』

本当の闘いは、これからだった。

(プロジェクトシスタァ〜)

 

膳場『スタジオにはドモン2さんに起こしいただいております』

ドモン2『どうも』

国井『日々の日記の更新にも苦労なされているようですが』

ドモン2『そうですね。もともと文才の無い人間でして。その上、平凡な日常ですから面白い話題もなかなかでてこないんですよ』

膳場『そこで”妹の力”の存在に気付いたわけですね』

ドモン2『ええ』

国井『ところで、ドモン2さんのマイシスターは咲耶とのことですが、何故、堀江由衣さんの出ないイベントに参加しようと思ったんですか?』

ドモン2『ネタに困っていましたから。ワラをもすがる想いだったんだ思います』

膳場『それだけでは少し動機が薄いような気がするんですが』

ドモン2『…実はですね。以前、”シスタープリンセスEVE”というDVDを見たんですが、桑谷夏子さんの”お兄ちゃん、ありがとう”という呼びかけに萌えてしまいまして。ましてや横手さんが出るということは”にいさま〜”も聞けるわけですよ。これはもう、行くしかないと』

国井『それでつい、申し込んでしまったと』

ドモン2『はい』

膳場『さて、物語はイベント当日をむかえます』

 

11月25日、イベント当日。
ドモン2は寝過ごしていた。
危なかった。
親に叩き起こされなかったら、参加できなかった。

電車を乗り継ぎ、目的地へと向かった。
小田急小田原線、生田駅。
遠かった。

電車の中で、ドモン2はハッ、とした。

『メテオさんを、見忘れた』

迂闊だった。
しかし、後悔している暇はなかった。

 

明治大学は、生明祭で湧いていた。
カタギの若者がたくさんいた。
酒を飲む者、カップルの者。
楽しそうだった。

ドモン2は思った。

『俺はもう、戻れないのか』

 

受付へ向かった。
受付の対応は清々しかった。

『駐車場で、お待ちください』
受付の男は言った。

午後1時30分。駐車場に参加者が集められた。
その数、のべ300人。
圧巻だった。
全員がお兄ちゃんのはずだった。

他の参加者達は堂々としていた。
そんな中、ドモン2は一人、不安だった。
馴染めるかどうか、気になった。

ふと、一人の男に目が行った。
胸に亞里亞の人形が入っていた。
携帯のストラップもシスプリグッズが山のようについていた。

キーフィギアをつけている者は何人かいたが、別格だった。

『これが、本物か』
ドモン2は愕然とした。

『俺の完敗だ。世の中は、まだまだ広い』
不思議と、晴れやかな気分となった。

 

午後3時。予定より30分遅れて、イベントが始まった。

『生の”お兄ちゃん”が、聞ける』
緊張した。

拍手とともに、二人が入場してきた。
桑谷夏子と横手久美子。
本物だった。

司会との軽いトークが行われた後、横手の歌となった。
歌は、『テレビトラブル』他一曲。
シスプリとは、関係なかった。
だが、良い曲だった。

司会、桑谷、横手のトークが始まった。
内容は、彼女達の学生時代の話だった。
これも、シスプリとは関係なかった。

面白かった。
素の二人も、魅力的だった。
ドモン2は特に、桑谷に萌えていた。

桑谷は言った。
『私、高校時代、男子テニス部のマネージャーでした』

ドモン2は思った。

『俺なら、その部に入る』
馬鹿だった。

トークが終了し、桑谷の朗読が始まった。
キングレコードが発売してる、癒しを目的としたリラクゼーションCD。
ふられた女の子のラブレターだった。

癒されなかった。
だが、萌えた。
すさまじい、萌えだった。
桑谷の声は驚異的だった。

 

会場は盛り上がっていた。
そして、ビンゴゲームが始まった。

『豪華景品が、当たります』と、司会が言った。
ステージの机の上に景品が並んでいた。

二人との記念撮影用のポラロイドカメラ、サイン色紙、二つの紙袋。

皆、紙袋の中身が気になった。

司会は言った。

『袋の中身は、お二人の、私物です』

皆、息を飲んだ。

袋の中には二人の私物が入っていた。

横手は愛用のマフラーと手作りクッキー。
桑谷は中学時代に作った、愛用の目覚し時計だった。
手書きの取り扱い説明書付きだった。

『あれは、俺のものだ』

皆、そう思った。
全員の眼つきが変わった。
本気だった。

抽選は、箱から数字の書いてある紙を取り出していく、という仕組みだった。
二人によって、次々と数字が読み上げられていった。
番号の書いてある紙には、”読み方”の指示があった。
”赤ちゃん風に”と書いてあったら、そのように読まなければならなかった。
桑谷と横手は、苦労していた。

その中には、”あのキャラで”というものもあった。
その紙を桑谷が引いた。
桑谷は、可憐の声で番号を読んだ。

『○○番です、お兄ちゃん』

皆、聞いていなかった。
番号の方が重要だった。

いくつかの数字が読み上げられると、一人の男の手が挙がった。

ビンゴだった。

男は嬉しそうだった。

次々とビンゴを達成する者が現れ始めた。

横手の私物を当てた男は、横手にマフラーをかけてもらっていた。
皆、羨望の眼差しで見ていた。

『俺も、かけてもらいたい』

 

遂に景品が無くなった。

皆、絶望した。
場内に暗い空気が、流れてきた。

その時、サンタ姿の一人の男が、司会に何かを手渡した。

司会は言った。
『まだ、プレゼントは、あります』

皆、顔を挙げた。

『次の景品は、声を収録したテープです。皆さんの好きなシチュエーションを収録することが、できます』

皆の目に、光が戻った。

桑谷が例としてのシチュエーションを喋った。
可憐による、受験生である兄への励ましだった。
素晴らしかった。
その場にいた全員が、萌えていた。

横手も言った。
白雪による、朝のメッセージだった。
本日、初の白雪声だった。
今まで焦らされただけあって、驚異的な萌えだった。
ドモン2の口は、にやけていた。

再び、場内は戦場と化した。

 

決着は一瞬で着いた。
新たに7人の幸せ者が、誕生した。

ドモン2は、ダメだった。
リーチすら、していなかった。

『運を、今使わずに何時使うというのだ』
悔しかった。
だが、どこか”助かった”という気もした。

 

最後に、再び横手が歌った。
やはり、シスプリとは関係なかった。

 

全てのプログラムが終了した。
惜しみない拍手の中、桑谷と横手が退場していった。
二人は手を振っていた。
ドモン2は、妙に萌えていた。

午後4時半の明治大学。
兄達は、帰路についた。

ドモン2は思った。
『また、イベントに逝こう』

帰り道、兄達は、イベントの余韻にいつまでも浸っていた。
『妹の力』は盛況のまま、幕を閉じたのだった。

 

(潤んでる、俺の顔のアップ)

国井『ドモン2さん、『妹の力』はどうでした?』

ドモン2『最初は、シスプリ色が薄かったので心配でしたが、桑谷さん、横手さん、ご本人が十分魅力的だったので楽しかったですよ』

膳場『特に桑谷さんに萌えたようですけれど』

ドモン2『横手さんもお綺麗でしたが、桑谷さんは大変可愛らしくて。可憐よりも萌えるくらいですよ』

国井『また、イベントには参加されますか?』

ドモン2『ええ、是非行ってみたいです。特に桑谷さんのなら。ファンクラブにも入りそうな勢いですよ』

国井『これでまた、シスプリから離れられなくなりましたね』

ドモン2『ええ。(ヘッドライト・テールライトがかかりだす)ですが、シスタープリンセスには感謝しています。本当にたくさんのネタを提供してもらいましたから。これからも、シスプリブームには続いてもらいたいものですね』

(この後にも物語は続きます)

 

2001年12月13日発売予定、『シスタープリンセス・ピュアストーリーズ』。
前作『シスタープリンセス』を妹視点から捉えたものである。
ミニゲームや、クリスマスストーリーも収録されている。

その他にも、タイピングソフト、妹ユニット”プリッツ”の形成など、シスタープリンセスは成長しつづけている。

兄達に、安息が訪れるのはまだ先のことである。

 

(スタッフロール)

 

プロジェクトS〜お兄ちゃん達〜
「激闘!『妹の力』」〜退くに退けなくなったお兄様〜完

 

次回予告

「12cmの悪魔」〜脅威のピュア・ストーリーズに立ち向かえ〜

遂に発売されたピュア・ストーリーズ。
その恐るべき萌えの前に次々と兄達が萌死んで逝きます。
次回はピュア・ストーリーズに敢然と立ち向かった男たちの物語です。
ご期待ください。

 

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