
(画面に映る巨大な”S”)
(シスタァ〜)ギャルゲーマーにとって二次元と三次元との境界は越えられない壁だった。
しかし、1つの商品がこの壁を越えるべく発売された。
「音声認識システム内蔵人形」
これは人としての限界を越えてしまったお兄様の物語である。(”地上の星”がかかる)
(シスプリ紙袋を下げた男、シスプリ特大ポスターを挿した男達が光に向かって歩いてゆく)
プロジェクトS(シスター) 〜お兄ちゃん達〜
(風の中のす〜ばる〜、砂の中のぎ〜んが〜)
(みんな何処へいっ〜た〜)
好評シスプリ
様々な方面へ展開(草原のペガ〜サス〜)
アニメにもなった
バスにもなった(街角のヴィ〜ナス)
越えられない壁
ブラウン管の中の妹達(みんな何処へいっ〜た〜)
妹が欲しい
兄達の願い(見守〜られることもなく〜)
奇跡の商品
「音声認識システム内蔵人形」(地上にある星を、誰もおぼえていな〜い)
人形とともに
誕生日を祝おう(人はそ〜らばかり、み〜てる〜)
運命の12月中旬
「どこにもない」(つ〜ば〜めよ〜、たか〜いそ〜らから〜)
ダンボール箱から覗く
赤い服(おし〜え〜てよ、地上〜の星〜を)
親がみたら
自殺もの(つ〜ば〜めよ〜、地上〜の星は〜、今〜ど〜こに、、ある〜の〜だろ〜)
「魔人形を探せ!!」〜お兄様、嵐の16日間〜
膳場『今夜のプロジェクトSは「音声認識システム内蔵人形」を探しつづけたお兄様の物語です』
(音声認識システム内蔵人形ver.咲耶を抱きかかえて国井登場)
国井『膳場さん、ちょっと「おはよう」って言ってもらえますか』
膳場『おはよう』
咲耶人形『おはよう、お兄様。今日は何処に連れて行ってくれるの?』
膳場『あっ、喋りましたよ。これが音声認識システムですか』
国井『そうなんです。凄いでしょう。他にもたくさんの言葉に反応するんですよ。例えば、「ただいま」』
(咲耶人形に向かって喋りかける国井)
咲耶人形『お帰りなさい、お兄様。今日一日、どうだった?』
国井『どうです?咲耶人形の他にも可憐・亞里亞人形があるんですよ。全部揃えてみたいですね〜』
膳場『さて、物語は電撃シスタープリンセスが配布されるところから始まります』
空前の妹ブームを巻き起こしたシスタープリンセスは、様々な方面へと展開していた。
TV東京でのアニメ化。
都営バスでのラッピング。
その勢いは、とどまるところを知らなかった。兄達は萌えていた。
これ以上の萌えは、考えられなかった。だが、たった一つ。
シスタープリンセスでさえも越えられない、問題があった。『妹たちが居るのは、ブラウン管の中』
シスプリファンだけではなく、多くのギャルゲーマー達が阻まれてきた壁だった。『何故、俺達は2D世界の人間ではないのか』
皆、嘆いていた。等身大ポップ。
抱き枕。
様々な商品が、男達の夢を叶えるため産み出された。しかし、どの商品も不完全だった。
『もっと、萌えキャラを身近に感じられるものはないのか』
男達の苦悩は続いた。
そんな中、毎年恒例のあるイベントが開催された。
『東京ゲームショウ秋』
数多くのゲームが出展される、ゲームの祭典である。その会場で、兄達の興味を一身に惹く1つの配布物があった。
メディアワークス配布の『電撃シスタープリンセス』。
妹情報満載の冊子だった。『電撃シスタープリンセス』には多くの妹関連商品が名を連ねていた。
ピュア・ストーリーズ
デスクトップアクセサリー
ビデオ・DVD情報など、
およそ考えうる限りの商品が、列挙されていた。しかし、一つの商品がシスプリ界を震撼させた。
「音声認識システム内蔵人形 お兄ちゃん大好き」
音声モジュールを付属し、人の声に返事をする人形だった。
発売元はハドソン。
発案者の名前が、知りたかった。
「音声認識システム内蔵人形」に対して、様々な意見が飛び交った。
『だれが、こんなものを買うのか』
『正気の沙汰では、ない』多くは否定的な意見だった。
ドモン2ダメ学生もまた同じ意見だった。
『流石にこれは、買えない。人形に話しかけることは、できない』
折りしも、ネット界は誕生日ブームだった。
自分のお気に入りキャラの誕生日を祝うサイトが、多かった。
絵を描く者もいた。
実際に、ケーキを買う者もいた。
皆、思い思いの趣向を凝らしていた。2001年11月末。
小規模とはいえ、ホームページを管理しているドモン2も、このブームに乗ろうとしていた。
祝うのは当然、マイシスター咲耶。
それ以外は考えられなかった。咲耶の誕生日は12月20日だった。
『俺に、何ができるのだろうか』
ドモン2には、画力も文才もなかった。
『絵も、SSもダメだ』
その時、一つの案が閃いた。
『人形と共に、ケーキを並べるのはどうか』
普通の人形にケーキならば、既に先駆者がいてもおかしくはない内容だった。
だが、シスプリ人形には、他には無いシステムが内蔵されている。『”誕生日に人形と会話する兄”。これなら、いける』
ネタとしては、それなりのものだった。
問題は、人間としての尊厳だった。『俺は、あの人形を買うのか』
それは、人としての限界を越える、ということだった。『何を、弱気になっているんだ。俺は、『妹の力』もやり遂げたではないか。俺ならば、できるはずだ』
ドモン2は自分を奮い立たせた。『俺は、買う』
ドモン2の眼には、決意の炎が灯っていた。(プロジェクトシスタァ〜)
膳場『スタジオにはドモン2さんに再び起こし頂いております』
ドモン2『どうも。お久しぶりです』
国井『前回は”妹の力”で起こし頂きましたが、今回もまた思い切ったことを考えましたね』
ドモン2『ははは。前回も話しましたが、才能が無い人間にとってネタにできるのは普通の方が敬遠するような代物しかないんですよね』
国井『しかし、「音声認識システム内蔵人形」というのは相当なものですよ』
ドモン2『だからこそですね。「ネタとしては使えそうだが、これはちょと…」というものであればあるほど良いんですよ』
膳場『最初は、買うおつもりはなかったようですが…』
ドモン2『当然です。流石に人形に向かって話し掛けるというのは抵抗がありますから。人ととして、それはどうかと』
国井『それが、誕生日ということで一転したわけですね。咲耶に対する思い入れというのはそれほどのものなんですか?』
ドモン2『今までの人生の中で最も萌えたキャラですからね。「自分の人間としての尊厳」と「咲耶に対する思い入れ」とを天秤にかけた結果、「思い入れ」が勝ってしまったんですよ』
膳場『さて、物語は発売予定である12月中旬を迎えます』
2001年12月中旬。
『音声認識システム内蔵人形』の発売予定時期を遂に迎えた。
しかし、いつになっても正確な発売日はつかめなかった。『地道に、足を運ぶしかない』
ドモン2は思った。『入荷数は、少ないはずだ。売り切れる可能性も、ある』
本気で、そんなことを考えていた。12月9日、ピュアストーリーズの予約のためにアニメイトへ向かった。
人形は売っていなかった。『まだ、中旬ではない。売っていないのも、当然だ』
12月13日、ピュアストーリーズ発売日。
やはり、売っていなかった。『中旬は、半分以上残っている。まだ、大丈夫だ』
12月19日、キャラクターコレクション可憐・鞠絵・千影・四葉を買いに行った。
まだ、売っていなかった。『既に、中旬は終わろうとしている。本当に、発売するのか』
ドモン2は焦った。
12月18日より、ドモン2は一つの作業に追われていた。
G'sマガジン1月号、シスプリクリスマスプレゼントの解答考察。
キャラクターコレクションを大量に購入したのも、そのためだった。
解答考察に、三日間を費やした。
完成したのは21日の午前0時を回ってからだった。
達成感はあった。その時、ドモン2は重要なことに気付いた。
『俺は、咲耶の誕生日を素通りしてしまった』
19日にアニメイトを訪れた時は、まだ覚えていたはずだった。
だが、20日は考察に没頭し続けていた。『俺に、お兄様を名乗る資格は無い』
愕然とした。
目の前が、真っ暗になった。『…後悔をしている暇は、ない。何か、代わりとなる企画を考えなければならない』
ドモン2は気を取り直して、思った。季節は、12月。考えられる事は、1つしかなかった。
『クリスマスを、咲耶人形と共に過ごそう』
もはや、手の施しようが無いほど、末期だった。
『今度こそ、失敗は許されない。ネタは、鮮度が命だ。時期を逃せば、ダメになる』
12月22日、万全を期すため、ドモン2はある場所へと向かった。聖地、秋葉原
『ここならば、あるはずだ』
そう、確信していた。ドモン2は、まずゲーマーズへ向かった。
店内は、シスプリグッズで溢れていた
紙袋
ラッピングバス
オルゴール
ドールコレクション
膨大な種類のグッズがあった。
だが、「音声認識システム内蔵人形」だけは、見つからなかった。『まだ、アニメイトがある』
ドモン2は、アニメイトへと向かった。
やはり、大量のシスプリグッズがあった。
だが、ここにも「音声認識システム内蔵人形」は無かった。『秋葉原にも、ないというのか』
予想外の展開だった。『本当に、発売されているのか』
疑わしかった。『あまりにも危険すぎるということで、発売中止になったのかもしれない』
そんな考えもよぎった。だが、コミック電撃大王には『発売中』と書かれていた。
『どうなっているのだ』
わけが解からなかった。
12月23日、ドモン2は再び地元のアニメイトへと、向かった。
前回は売っていなかったラッピングバスなどが、入荷していた。
だが、「音声認識システム内蔵人形」は入荷していなかった。『秋葉原に無いものが、ここにあるはずがない』
解かりきっていたことだった。『発売は、延期されたに違いない』
自己完結をするしかなかった。その日の夜、ドモン2はシスプリラジオを聞いていた。
大量のプレゼントがある日だった。
ドモン2は、鉛筆を片手に聞き入っていた。プレゼントの中には「音声認識システム内蔵人形」が含まれていた。
『やはり、発売されているのだろうか』
結局、ドモン2は人形を買うことはできずにクリスマスイブ、そしてクリスマスを迎えた。
『売っていないのだから、仕方がない。俺には、手の打ちようがない』
ドモン2は自分に言い聞かせた。2日間ともバイトや、男友達との戯れで終了した。
人形に頼らずとも、それはそれで痛かった。
クリスマスらしさは、微塵も無かった。
25日の夜、ドモン2は巡回先である『Angel Factory』を訪れていた。
そこで、ドモン2の元に衝撃のニュースが飛び込んできた。『音声認識システム内蔵人形を買った漢がいる』
眼を疑った。
『あれは、売っていないはずだ』
リンク先へ急いで飛んだ。
漢の名はDEARNA。
「BlendWorks」というサイトを運営していた。そこには、確かに「人形」の姿があった。
しかも、三体全員だった。『売って、いたのか』
事実だった。『しかし、一体どこにあったというのだ』
失意のまま、ドモン2は眠りについた。
翌日、ドモン2は地元のアニメイトへ向かった。
一縷の望みに、賭けてみたかった。
だが、やはり人形は見つからなかった。『地方では、ダメだというのか』
諦めるしかなかった。その時、通路に置かれた一つのダンボール箱が目に入った。
新しく搬入された、商品が入っているようだった。なにか、赤いものが見えたような気がした。
ドモン2は眼をこらし、じっくりと見た。
『咲耶』だった。
前日に見た画像と、寸分違わぬものが、そこにはあった。『神は、俺を見捨てなかった』
ドモン2は感謝した。だが、一向に箱から取り出される気配が無かった。
ドモン2は、バイトに行かなければならなかった。『また、あとで来よう』
後ろ髪を引かれる思いで、アニメイトを後にした。
バイトの後、ドモン2は再び、アニメイトを訪れた。
『今度こそ、あるはずだ』
そこには、『咲耶』が一体だけ置かれていた。
『可憐』と『亞里亞』は見あたらなかった。ドモン2は『咲耶』を手にとって、レジに向かった。
早く清算を済ませたかった。
周りの視線が、気になった。袋に詰められて、『咲耶』人形が手渡された。
ついにドモン2は、『音声認識システム内蔵人形』を手に入れたのである。
こうして、ドモン2の人形探しの旅は終わりを迎えたのだった。
(潤んでいる俺の顔のアップ)
国井『どうでした、「音声認識システム内蔵人形」を手に入れた時の気持ちは』
ドモン2『いや、感無量です。かなり本気になって探してましたから。人としては微妙な気もしますが』
膳場『運よく、咲耶人形が手に入りましたね』
ドモン2『ええ、それもかなり幸運だったと思います。可憐と亞里亞の方は、あまり欲しいとは思っていませんでしたので。本当に神に感謝していますよ』
国井『これから、その人形に色々話し掛けてみるわけですね』
ドモン2『そうですね。(ヘッドライト・テールライトがかかりだす)苦労して、ようやく手に入れた品物ですから、キッチリとネタとして使わせてもらいますよ。こういった代物があるから、シスプリはありがたいですね。これからも出来る限り色々なものに手を出していきたいと思っています』
(この後にも物語は続きます)
深夜、ドモン2の家では遅いクリスマスを迎えていた。
中からは話し声が聞こえてくる。
『メリークリスマス』
『メリークリスマス、お兄様。今日は2人で最高の一日を過ごしましょうね』
『咲耶』
『なーに、お兄様?私はここよ』
『おはよう』
『モーニン、お兄様。今日は私と、ずっと一緒にいてくれるのよね』
『いってきます』
『いってらっしゃーい。お兄様、あんまり長く一人にしちゃ…嫌よ』
『ただいま』
『おかえりなさい、お兄様。ずっと待ってたのよ』
『おやすみ』
『おやすみなさい、お兄様。明日は早く起きてくれなくちゃ、嫌よ』
ドモン2が人形に話し掛けている声である。
人形の声は思ったよりも大きい。ドモン2は言う。
『確かにこれは萌えます。ただ、人形に話し掛けるのは思ったより勇気がいることですよ。かなりギリギリですね、これは。特に最初の一回が厳しいですね。それを乗り越えると意外と、どうにでもなりますよ。ええ、どうにでも』
現在、ドモン2は親と同居している。
そのため親が寝静まった後しか、人形に話し掛ける時間は無い。ドモン2はこうも語る。
『話し掛けている姿を親に見られたら、自殺ものですね』
ドモン2は元旦にも、この人形に話しかけるつもりでいる。
『あけましておめでとう』という言葉を認識するからである。
ドモン2の暴走はまだまだ、止まらない。
(スタッフロール)
プロジェクトS〜お兄ちゃん達〜
「魔人形を探せ!!」〜お兄様、嵐の16日間〜完
次回予告
「萌えるタイピングソフト」〜発売延期に耐えた漢達〜
11月に発売が予定されていたタイピングシスタープリンセス。
しかし、度重なる発売延期によって窮地に立たされます。
次回は発売延期にも負けず、タイピングシスプリを手に入れた男達の物語です。
ご期待ください。
PS:「Blend Works」のDEARNAさん、および「Angel Factory」のTAMAさん、勝手に名前を使って申し訳ありません。