永劫回帰プロローグ・


――――出会いは突然だった。
偶然と運命とが呼び起こした『奇跡』…
崩壊してしまったこの街で、『宿命』の名のもとに私達は出逢った――――

永劫回帰 〜Return To Forever〜
―Prologue―


ここは、とある街の―――今では見る影もなくなってしまったが―――かつて商店街であった場所。そこを走る一人の少女がいた。

セーラー服を纏ったその少女の背後には、無数の異形なる者達の影…状況から察するに、どうやら彼女はそれらから逃げているようである。
やがて、少女は追いつめられた。行き止まりにさし当たってしまったのである。

もう駄目かと思ったその時、少女の前に一つの大きな影が現れた。それはよく見ると少年のようだった。

その影は少女を追いつめていた異形なる者達の方を向き、それらを瞬く間に一掃してしまった。一瞬の強い光と共に…
「…見つけた…」
少年の発した光を見て、少女は一言、呟いた。

その時、異形なる者達を完全に倒したのを確認した少年が、少女の方へ歩いてきた。頭には赤いバンダナを巻き、前を赤い止紐で止めた緑色のノースリーブの上着と同じ色のズボンといった、少し風変わりな格好であった。
「…大丈夫か?」
「あ…はい」
(関西弁…?)

少年の言葉に、少女は一瞬止まった。関西弁を話すとは、見た目からは到底予測もつかなかったのである。
けれど、少女はその事を悟られない様にしながら尋ねた。
「あの…お名前は?」
「名前?わいは椎拳崇や。…それより、なんでこんなとこ一人でうろついとんねん?危ないやろ?」

拳崇と名乗ったその少年は至って普通に答えた。少女を諭すような事も付け加えて。
それを聞いた少女は、とっさに彼―――拳崇の腕を掴んで叫んだ。
「あ…あのっ、ちょっとだけ話を聞いてもらえませんか?あなたのような人を捜してたんです!」

…当然の事ながら、拳崇は呆気に取られた表情をした。見ず知らずの少女に突然、『あなたのような人を捜してた』と言われてハイそうですかと言う人間は、普通ならまずいないであろう。

けれども、彼はどうやら優しい性格らしい。見知らぬ少女のその誘いを、二つ返事で受けたのであった。

「私の家に、こんな言い伝えがあります。『世界が破滅に向かう時、二人の《選ばれし者》が世界を救う』と…」
誰もいない路地裏で、少女の話は始まった。
「そしてその二人は、私と…中国人の男の子だって…」
それを聞いた少年―――拳崇は、少女の方を見て言った。
「…で、それはわいの事やと?」
「…はい」
少女も彼の方を向きながら言った。そして続けた。
「…見えたんです。さっき、私を助けてくれた時…私の持っている『力』と同じ『光』が…」

異形なる者達を一瞬で葬った時の『光』…その時拳崇は少女の真ん前に立っていた為、少女は彼が何をしたのかが見えなかったのだが、その『光』に自分と同じ何かを感じた。
しかしその言葉は、拳崇にはいいようには聞こえなかった様である。
「…お前、わいを試したんか?」

拳崇には、少女が、自分を試す為に、異形なる者達にわざと襲われたと聞こえたのだ。
しかし少女はその誤解を解こうとして言った。
「違いますっ、あれは偶然だったんです」
少女の弁解が続く。
「…気がついたら周りを囲まれてて、相手にしようにもハンパじゃない数だったから…必死になって走って、いくらかはまいたんですけど…結局追いつめられて、どうしようって思った時にあなたが…」
少女の声が段々大きくなってくる。かなり必死になっている。
「本当なんですっ!本当に偶然で…お願いですっ、信じて下さいっ!」

叫びに近い声と共に、少女が頭を下げた。拳崇は、その勢いにしばらく唖然としていたが、何故か笑いが込み上げてきて、ついには大笑いしてしまった。少女が、拳崇の反応に、不思議そうな顔をしながら頭を上げた。
「あんたオモロイな。…よっしゃ分かった、あんたの話信じたる。確かにこんな世の中ずっと続くのもイヤやしな」

それを聞いた少女は、一瞬戸惑いの表情を見せたが、すぐにその言葉の意味を理解し、今度は歓喜の表情になり、再び頭を下げた。
「あ…ありがとうございますっ!」
「…で一つ聞きたいんやけど…」
少女の言葉を遮るように拳崇が口を開いた。
「…『力』って…何や?」

頭を下げたまま少女が止まる。…どうやら、その言葉は予測していなかったらしい。
「まさか…『サイコパワー』を使ったコト…」

少女がおそるおそる尋ねる。まるで、ある答が返ってくるのを恐れているかのように。
しかし、拳崇はあっけらかんとしたまま告げた。
「『サイコパワー』?…わい、拳法はできるけど、そんな『力』使ったコトもないで。大体、存在自体知らんし…ってオイ?」

それを聞いた少女は、頭を抱え込んでしまった。…一番心配していた事が現実となってしまったようだ。

今度の少女の話は、『サイコパワー』についての講習会の様なものになった。
「…『サイコパワー』とは…私達《選ばれし者》の中に、潜在的に秘められた『力』のことです」
拳崇は、それをふんふんとうなずきながら聞いている。
「あの時の『光』は、『サイコパワー』そのものでした。あの時…あなたは何をやったんですか?」
「何をって…わいはただこうやって…」
そう言って拳崇は両手を前に突き出した。
「掌底をやっただけやで」
少女はそれを見て、何か分かったようにうなずき、言った。
「じゃぁ、それをもう一回やってみて下さい。ただ…」
少女が目を閉じて手を前に出した。一瞬、周りの氣が変わるのを拳崇は感じた。

そして次の瞬間―――少女の手の上には、ふよふよと浮いているこぶし大の光の玉があった。
「今度はこれぐらいの光の玉をイメージしながらやってみてくれませんか?」

目の前で起こった少し普通じゃない出来事に、拳崇はかなり驚いたようだ。しかし、異形なる者が辺りを飛び回っている今のご時世なら何でもアリなのかもしれないと思ったのか、さっき少女を助けた時のように構えた。
(神経を研ぎ澄まして…)
拳崇のまわりの空気が変わり始める。彼がかなり集中している証拠である。
(光の玉をイメージしながら…)

さっきは一瞬でこれらの事をしたのだが、今度は訳が違う。『力』を使うにはかなりの精神力を要するであろう事を本能的に悟っていたのか、拳崇は長い時間をかけて自らの氣を高めた。
と同時に、彼の周りに光の帯が見え始めた。少女はそれを見てハッとした。
「この光は…」
彼の氣が高まっていくにつれ、光も強くなっていく。
「やっぱり『サイコパワー』!」

その時、拳崇が目を見開き、両手を前に突き出した。先程、彼が言っていた、掌底を繰り出したのである。
「破!!」
少女は息をのんで成り行きを見守ろうとした…が。
―――ぽすっ―――

突き出した手のひらからは何も出ず、彼の周りにあった光は消え、空しくなるような音だけが響いた。不発である。
少女は緊張がきれたと同時に、見事にコケた。

しばらく呆けていた拳崇だったが、我に返ったとたんに悲しくなり、そのままいじけてしまった。
「まっ……まずは自由に『サイコパワー』を使えるように…ね?」
少女が必死になって彼をなだめても効果ナシ。
「椎さん、元気出して下さい〜っ!」
しかし、少女のこの言葉を聞いた拳崇は一言、こんなことを言った。
「呼び捨てで構わんで」
「へっ?」
少女が抜けた声を上げる。拳崇は立ち上がりながら続けた。
「それがイヤなら、せめて「くん」付けにしてーな。「椎さん」なんてよそよそしい呼び方せんといてや。わいらは…」
そこで一旦言葉を止め、そして振り返りながら言った。
「わいらは…仲間なんやろ?」

振り返った拳崇の顔には、微笑みが浮かんでいた。少し意地悪そうな、でもとても優しい微笑み…
「……はい!」
少女は、目頭と胸が熱くなるのを感じながら応えた。
そんな、ちょっと良さそうな雰囲気を一気に変えたのは拳崇だった。
「…そーいや、まだ名前聞いとらんかったな」
「あ゛。…そういえば…」
二人で顔を見合わせ、くすっと笑う。
「麻宮―――アテナです」

少女―――アテナはそう言って、拳崇に手を差し出した。拳崇は迷わずその手を握った。
「アテナはんか。よろしゅうな」
「こちらこそよろしくね、椎くん」
「…………」
(…「椎さん」よかマシか…)
少し拳崇は悲しそうだったが。
そして、拳崇はずっと言いたかった事をついに言った。
「…で、わいはこれから何をすればええんや?」
「修業です。『力』使うための」
アテナはきっぱりと言い切った。
「え゛っ……ホンマかいな…」
その時拳崇は、これから自らに起こるであろう悲劇を想像した。
…彼が修業好きであるのが、せめてもの救いであろうか…

「……できた……」

拳崇が感嘆の表情で呟く。彼のひろげられたその両手には、こぶし大の光の玉が静かに浮いていた。
先程からその様子をずっと見ていたアテナが、満面の笑みを浮かべて走ってきた。
「椎くん、やったじゃないですか!私、すっごくうれしいですっ!」
「ア…アテナはん……」

拳崇に呼ばれて、初めてアテナは自分のしている事に気がついた。彼女は喜びのあまりに、拳崇に抱きついていたのだ。どうやら、本人の全く無意識のうちにやってしまったらしい。

アテナはハッと我に返って、あわてて飛び退いた。拳崇は突然の事に驚いたのか、それともその様なことをされた事が今までなかったのか、真っ赤になったまま動かなくなってしまった。
「あっ、あの……」

しばらく間を置いて、落ち着いたアテナが呼びかける。拳崇もようやく我を取り戻したらしい。アテナを見て照れくさそうに笑った。
「ごっ…ごめんなさいっ!ちょっと舞い上がっちゃって…」
「ええねんええねん。わいの方も、慣れとらん事されて驚いただけや。けど……やったな」
アテナに笑いかける。達成感に満ちた眼差しで……
アテナもそれに応える。
「ええ、ついにやりましたね。あとは…闘うだけです。邪悪なる者と…」
アテナが不敵の笑みを見せる。機は熟した、という事であろうか。
「ああ…奴等には絶対負けへんで。世界の…そして、わいらの為やもんな」
拳崇が応え、そして二人は歩き出した。己が進むべき道を……

――――龍と鳳凰の力を受け継ぎし二つの光…………
龍は鳳凰に導かれてその『力』に目覚め、自らの宿命を受け入れた
そして……――――


暗く長い洞窟の奥深く、対峙する3つの影があった。一つはアテナ、一つは拳崇。もう一つは……
「何故だ…何故、我の邪魔をする。『光の戦士』達よ……」

そのもう一つの「影」が二人に語りかける。その名は『屍愚魔』―――永き封印を解かれ、この世に甦った邪悪なる者の長である。
凶々しきその姿に怯む事なく、二人はそれと向き合っていた。
「前の時もそうであった…何故、我を滅ぼそうとする…」
拳崇の周りの氣が変わり始めた。『力』を使う前触れである。

アテナがその氣に気付き、拳崇の方を見た。彼の周りに、いつもと違う氣のオーラが見えた。それは…龍の形に見えた…
しかし『屍愚魔』はそれに気付いていない。怒りで周りが見えていないようだ。
「…許さぬぞ『光の戦士』……我はいつか必ず甦る。その時にこの恨み晴らして……」
「言いたい事は、それだけか?」

拳崇が『屍愚魔』の言葉を遮る。いつのまにか、彼の周りの氣は煌々たる輝きを放つようになっていた。よく見ると瞳孔の形も違う。細長く、それはまるで…龍の瞳のようだった。
そして拳崇は、それに向かって右腕を伸ばし、一言、言った。
「御託はもうええ……失せろ」
次の瞬間―――――
――――――カッ!ドォ……ン――――――
ものすごい風と共に、拳崇と『屍愚魔』を中心として巨大な光の柱が現れた。

一人だけ光の柱の外に残されたアテナは、強い光に手をかざしながら、その強大な『力』に、拳崇以外の何かの『力』を感じた。
(…これは……天龍の力―――!!)
光の柱が消えた時、そこには拳崇しかいなかった。
「椎くん!!」
アテナが叫ぶ。しかし拳崇は、その場に片膝を付いてうずくまってしまった。
(なっ…なんや…?力が抜ける……)
「椎くん!大丈夫?」
額に手をあてたまま動かない拳崇を心配して、アテナが駆け寄ってきた。
「…ああ、大丈夫や」
アテナに精一杯の笑顔を見せる。しかしその顔は辛そうだ。
「今のは…何?」
アテナが尋ねる。拳崇はゆっくりと立ち上がりつつ言った。
「……奴を封印した………わいの身体にな」
「えっ……」
拳崇の答えにアテナの顔色がさっと変わった。
「それってどういう…」
「安心しい」
アテナの言葉を遮り、うつむき加減に拳崇は続けた。
「わいが死んだら解けるような、そんなヤワな封印やない。…今のわいの『力』ならできるて思ったからやったんや」
「でもっ…!」

アテナがつらそうに叫ぶ。自らに封印を施す事―――それが、どれだけやる側にとって危険な事かが分かっているのだ。
しかし拳崇はためらう事なく再び続けた。
「封印と共に転生して、それを守り続ける……それが、天龍としてのわいの宿命なんや」

自分の宿命…それは『力』を手に入れたとはいえ、まだそれが未熟であった為に、邪悪なる者を完全に倒す事ができなかった、自分自身への罰ともいえる。
「そんな……」
「けど…」
今にも泣き出しそうなアテナに拳崇が優しく語りかける。
「もし、また封印が解けるような事があったら……その時は、また一緒に闘ってくれるか?」
そして、スッとアテナの前に右手を差し出した。
(…たとえ…)

同時に、テレパシーで拳崇の心の声が流れ込んでくる。優しい『声』……自分を包み込んでくれる……
(たとえ、何度転生したとしても……)
胸が熱くなる。
(その時…己の使命を忘れていたとしても……)
こみ上げてくるものをこらえつつ、アテナはその手を握った。
「……はい!」
―――私の分まですべてを背負い込んでしまった、貴方の為に……―――

「…アカン、崩れてきおった」
どこかでパラパラという音が聞こえてきたと同時に、周りが崩れ出した。
「逃げるで、アテナはん!」
そう言って、拳崇はアテナを誘導するように走り始めた。
「あ……はい!」
あわててアテナも後に続いた。

…既に周りは瓦礫の山と化しつつあった。さほどに狭くない洞窟だったのだが、今では2〜3人並んで走るのが精一杯の所もある。
「大丈夫か?ここもそんなにもたへんで」
「ええ……あっ、あれは…」
その時、アテナが急に立ち止まった。拳崇もつられて立ち止まる。
「椎くん、あそこから出られそうよ」

アテナの指差した先には光が見えた。おそらく、岩が崩れて外への道が開けたのだろう。
しかし……
「アテナはん、危ない!!」
「えっ……」
ガラガラガラガラ……

アテナの頭上に崩れた岩が落ちてきた。アテナはとっさにそれを避けようとしたが、左足を挟まれてしまった。
「アテナはん!!」
「あ……足が……」
アテナが力なく呟く。

彼女の足には、並大抵の力では到底持ち上がらないであろう程の大きな岩があった。いつものアテナならテレポートで抜け出す事も可能かもしれないが、長い闘いの後であったのと、足の痛みがひどく、神経を集中させる事ができないのとで、それも無理なようだった。
「お願い…椎くんだけでも逃げて……」
「んなコトできる訳ないやろ!…こんなもん……!」
拳崇が岩に向けて手をかざす。『力』で岩をどかせようと思ったらしい。
しかし……彼の手のひらに生まれた光は、すぐに消えてしまった。
「なっ……」
驚愕の表情が隠せない拳崇。再び試みたが、彼の手に光が宿る事はなかった。
(『力』が出えへん…まさか……さっきのアレで、力使い果たしてもうたんか……!)
彼のそんな想いとは関係なく、無情にもアテナの頭上に再び岩が……
「キャーーーーーッ!!」
「あ……」
拳崇が無意識にアテナに手を伸ばす。
「アテナーーーーーっ!!」

――――宿命に導かれて出逢った二つの『光』……
『光』を失った龍の叫びが空に響き、再び時が流れた――――

何時しか二人の活躍は伝説となり、人々の間に永く語り継がれることとなった。
そして気が遠くなるほどの時と共に、いくつもの時代が過ぎていった――――――

中国の山奥に、大きな古寺がある。
その門の前に立つ一人の少女……

セーラー服を着た、長く美しい黒髪のその少女は門を見上げ、『鎮元大仙』と書かれた札を見ると、微笑みを浮かべて呟いた。
「……見つけた……」

――――二人の道が再び交わりし時、運命の歯車がまわりだす――――

☆あとがき☆

★はじめましてこんにちわ♪私、鈴峰春奈と言う者です。以後お見知り置きを。
まず初めに、千年サマごめんなさい。原稿あるのにこっちばかり進みました(爆)
そして私が書いたとは思えないくらい短い…いっつも10〜20Pいくのに(汗)
う〜ん…さすが突発。←2日で書いた(苦笑)…まぁ、長いよりはいいかな…?
★内容説明。え〜…これは、『遥かなる想い《拳崇sideandアテナside》』につながっていきます…っつーかつなげました!(爆)いつのまにか『永劫回帰』シリーズ化してるし。

もともと千年サマの本のゲスト原稿として考えていたものを、小説として書き起こしてみました。

だって…私ごときのへっぽこ小説(と、我が相方こと飛拳嵩ちゃんの素晴らしい小説)の為に、わざわざページ作って下さってるんですもの…(うれし泣き)だったらこっちにも書かなきゃぁ、と思ったワケです。

…だけど、プロローグより先に本編書く人って、普通いないよな〜…私だけ!?(たぶん。)まぁ、こっち(プロローグ)は後からとってつけたように考えたものだしな〜…(暴露)一回書いてみたかったけどね、こーゆーの。
…内容説明になってない…(爆)
※ちなみに、ゲスト原稿の方ではこれのマンガVer.描いてます。
★…とりあへず、アテナと拳崇好き好き同人娘が、ドリーム突っ走ったあげく、慣れないコトをやったんだという事で、皆サマお許し下さい(汗)

それでわ。ご意見・ご感想・クレームなど(笑)ありましたら、メールなど送って頂ければ幸いです♪

次は『遥かなる想い《アテナside》』でお会いしましょう♪(《拳崇side》であとがき書き忘れてた(爆))

‘00,11月某日 鈴峰春奈 拝。





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